補足 5-1 クロンバックのα係数の証明 いま、M個の群からなるテスト

岡本安晴「計量心理学」補足-1
補足 5-1 クロンバックのα係数の証明
いま、M個の群からなるテストにおいて、第 i 群の問題の得点を X i 、i = 1, , M
で表す。検査全体での得点 X は、これらM個の得点の和である。
X = X1 +  + X M
(附 5−1.1)
第 i 群の問題の得点 X i における真の値を Ti 、誤差を ei とおき、
X i = Ti + ei
(附 5−1.2)
と書けるとする。式(附 5−1.2)を式(附 5−1.1)に代入して次式を得る。
X = (T1 + e1 ) +  + (TM + e M )
= (T1 +  + TM ) + (e1 +  + e M )
=T +e
ここで、
T = T1 +  + TM
は、得点 X における真の値を表し、
e = e1 +  + e M
は誤差を表す。
いま、任意の2群、 i 群と j 群、において
Ti − μ Ti = T j − μ T j
が成り立っているとする(豊田、1998、p.184)。ここで、μ Ti および μ T j は、Ti お
よび T j の平均値を表す。上式における共通の値を T ∗ とおくと
T ∗ = T1 − μ T1 =  = TM − μ TM
となる。したがって、得点 X における真の値 T の分散 σ T2 は、次式で与えられる。
岡本安晴「計量心理学」補足-2
[
σ T2 = E {(T1 +  + TM ) − ( μ T +  + μ T )}2
=E
1
M
]
[{ (T − μ )} ]
2
i
{
Ti
= E (M ⋅ T ∗ ) 2
{
}
= M 2 ⋅ E (T ∗ ) 2
}
= M 2σ T2∗
(附 5−1.3)
ここで、 σ T2∗ = E {(T ∗ ) 2 }は、 T ∗ の分散を表す。 E (T ∗ ) = 0 に注意。
また、
E{( X i − μ Ti )( X j − μ T j )} = E{(Ti + ei − μ Ti )(T j + e j − μ T j )}
= E (Ti − μ Ti )(T j − μ T j )
= E (T ∗ ) 2
= σ T2∗
(附 5−1.4)
が成り立つ。ここで、
E ( X i ) = E (Ti ) = μ Ti
および、誤差項 ei は他の変数と独立であると仮定されていることに注意。
式(附 5−1.4)より、σ T2∗ の推定値として、X i と X j の標本共分散 sij を用いる。
すなわち、σ T2∗ の推定値を、すべての標本共分散 sij の平均値として、次式で推定
する。
σ T2 =
∗
1
 sij
M ( M − 1) i ≠ j
上式において、 i と j が異なるとするのは、 i = j のときは
E ( X i − μ Ti ) 2 = E (Ti + ei − μ Ti ) 2 = E (T ∗ ) 2 + E (ei2 )
(附 5−1.5)
岡本安晴「計量心理学」補足-3
となり、誤差の分散も含まれるからである。
式(附 5−1.3)と(附 5−1.5)より、 X の真の値 T の分散 σ T2 を、次式により
推定する。
σ T2 = M 2
1
 sij
M ( M − 1) i ≠ j
(附 5−1.6)
次に、 X の分散 σ X2 について考える。まず、次式に注目する。
σ X2 = E{ X − E ( X )}2
= E{( X 1 +  + X M ) − ( μ T1 +  + μ TM )}2
=  E{( X i − μ Ti )( X j − μ T j )}
i, j
上式より、 X の分散 σ X2 を、標本共分散 sij を用いて次式により推定する。
σ X2 =  sij
(附 5−1.7)
i, j
ここで、 sii は X i の標本分散となっている。
式(附 5−1.6)および(附 5−1.7)より、信頼性係数を次式によって推定す
る。
σ T2
ρ= 2
σX
M2
=
1
 sij
M ( M − 1) i ≠ j
 sij
(附 5−1.8)
i, j
M
=
⋅
M −1
s − s
ij
i, j
s
ii
i
ij
i, j
  s i2 
M 

=
⋅ 1 − i 2 
M −1 
sX 


(附 5−1.9)
岡本安晴「計量心理学」補足-4
ここで、 X i の標本分散 sii を si2 、 X の標本分散を s X2 とおいた。
s X2 =  sij
i, j
である。
式(附 5−1.9)によって信頼性係数を推定する次式
  si2 
M 

α=
⋅ 1 − i 2 
M −1 
sX 


(附 5−1.10)
で与えられる値が、アルファ係数あるいはクロンバック(Cronbach)のα係数
と呼ばれているものである。式(附 5−1.10)は、式(5.7)と同じである。