第2部 社会構造概念の彫琢 第4章 社会構造概念はどのように豊穣化されるか Social Network Seminar 内容 ・社会構造概念のモデリング様式 3つのモデリング様式 ・古典的な社会構造の概念のモデリング クリークの同定 1 社会構造概念のモデリング様式 3章までではまだ社会構造概念は抽象的に理解されるのみ。 具体的にしていくには概念を精錬化する必要がある。 精錬化にはどのような方向が? ①社会の相(マクロ)→個人・アクターの相(ミクロ) ②ミクロ→マクロ ③ミクロとマクロの連結性 トップダウン型のモデリング 社会ネットワークを構造的下位概念を使って分 解・モデル化する方向。 2つの様式が区別できる。 ①社会ネットワーク(N)をアクターの集合とみる(P) 社会構造 社会ネットワーク Pとしての 社会ネットワー ク Rとしての 社会ネットワー ク 社会ネットワーク上に定義される集団の下位集団 を発見し、アクターを下位集団に分割すること クリーク(閥)の同定 部分集合 ポジション ・ロール ②社会ネットワークを結合関係(R)の集団とみる 社会関係を一つの塊として意味のあるブロックに 分割すること ブロックモデリング(ポジション・ルール) 個人(アクター) ボトムアップ型のモデリング 個人が社会ネットワークの中で社会構造のどこ に位置づけられるかという視点からのモデル化。 社会構造 アクターの構造的な特性を表す指標がモデル化 される。 階統的社会構造 フラットな社会構造 そのとき焦点となる指標に関して、各アクター には、その統計量の分布のどこに位置づけら れるかをしめすようなスコアが与えられる。 中心性・離心性・相互性・受信性など 個人(アクター) リンゲージ型のモデリング 社会構造 個人の相と社会の相の連結性を明らかにするモデル。 社会システム アクターがシステムとどのように絡み合っているかが 問題になる。 個人(アクター) 社会構造モデル化の3つのタイプ タイプ トップダウン型 ボトムアップ型 焦点 システムの下位シ ステムへの分解・分 別 アクター、 ダイアッドへの注目 リンゲージ型 システムとアクター の連結(相関)性 関連する 社会構造概念 主なモデル 手法体系 クリーク ポジションとロール 構造同値性 クリーク同定 中心と中心性 中心性モデル 送信性、受信性、相 互性 集団と個人の弁証法 ブロックモデリング 確率論的ブロックモデリ ング 統計的社会ネットワー ク・モデル アフィリエーション・ネット ワークモデル ガロア束 コレスポンダンス分析 構造内構造=クリークによるブロック分け 社会ネットワークの凝集的な部分集合は、ネットワークの構造内に見い だすことのできる構造内構造とも言うべきもので、ネットワーク分析では クリーク(閥)と呼ばれている。 クリークとは・・・ メンバー外との結合に比べて互いに密に結び ついたアクターの集合 (1)凝集的部分集合(集団)、集団の微細な「分裂」 構造を見いだすことによって、アクター間の紛争発 生の可能性を示唆する (2)凝集的部分集合(集団)にぞくするアクターは構 造的な同質性が仮定され、同じような社会行動が 仮定できる 構造内構造=クリークによるブロック分け クリーク概念の定式化 gのユニットからなるネットワークを考え、 gsを部分集合Sにおけるアクターの数とすると以下を満たす集団のこと x x ij gs g gs gs gs 1 部分集合(内部集団)の平均強度 x x ij iS j S ij gs g gs 凝集度 部分集合のメンバーからメンバー以 外のアクターへの平均強度 iS j S gs gs 1 ij iS j S iS j S この値が1のとき、内集団と外集団 を区別することはできない。 構造内構造=クリークによるブロック分け クリークとして確定されたクラス ターは右図のようにソシオマトリク スをブロック化したものとなる。 最適クリークの探索 最適クリークを見つけるには大きく言って、3つの方法がある ①凝集性を最大にするようにソシオマトリクスの行と列を同時に並 び替え、ソシオマトリクスの対角に凝集的な構造を発見していく という方法(最適クリーク化) ②アクター間に定義できる非類似性に基づいて、クラスター分析 や多次元尺度法を利用する方法(クラスター分析的クリーク化) ③あらかじめ分別するクリークのモデルに依拠して行う方法 (演繹的クリーク化) 最適クリーク化 凝集性を最大にするようにソシオマトリクスの行と列を同時に並び替え、 ソシオマトリクスの体格に凝集的な構造を発見していくという方法 クリークが完全に分裂していると、対角線上に結合 が集中するような形で表現される性質があるから まず行列のi行目をn先の行の後に入れ替えたとすると、列について もj番目をn先の列に入れ替える。これを何度も繰り返し、その際各部 分集合で凝集度を測定する。最適のクリーク化は、これを最適に分 割するよう局所最適なものとして確定することができる。 このようなクリーク同定は、コンピュテーショナルな最適化に依拠して いるので、最適クリーク化と呼べる。 クラスター分析的クリーク化 アクター間に定義できる非類似性に基づいて、クラスター分析や多次元尺 度法を利用する方法 ソシオマトリクスが X x で与えられるとき、アクターiとjの間の非類似性は、 すべての第三者kとのユークリッド距離 d として測定できる。 ij ij g dij k1 xik x jk xki xkj 2 2 この値が、入力としてクラスター分析にかけられると、クリークは同質性の 高いアクターの集合としてのクラスターとして分割され、同定される。 演繹的クリーク化 予め定義されたクリークの概念のクラスが、グラフ理論的に定式化される。こ のクリーク化によってレベルごとにiクリークを形成する部分集合が分別され 、アクターが各部分集合に分割される。 予め分別するクリークのモデルに依拠してクリークが同定されるので、このよう なクリーク同定は演繹的クリーク化と呼べる。 これら3種類のモデル化のうち、クリークの概念を最も忠 実にモデル化しているのが最適クリーク化モデルである。 クリーク同定アルゴリズム NEGOPY アクターのコミュニケーションの頻度などの類似性データをもとにアクター間の 距離を測定し、その距離に基づいて行と列を並び替え、距離の近い順にアク ターを並び替えることで最適配置を行う。 手順 (1)各アクターが結合するほかのアクターのID番号の平均を計算する (2)平均ID番号に基づいてアクターの順番をつける (3)平均ID番号に基づいて、ソシオマトリクスの行と列を並び替えアク ターを並び替える (4)安定した結果が出るまで(1)〜(3)を繰り返す 実際の計算には、近接性行列という間接結合を勘案した重み付け行列が使用される n M it 1 I t j Sij W ij j1 n S ij W ij j1 n:ネットワークの成員数 Sij:ソシオマトリクス W ij :近接性行列 M it :t反復目のアクターiのネゴピー値 I tj :t反復目のアクターjのID番号 クリーク同定アルゴリズム NEGOPY 最終的に並び替えられたソシオマトリクスから、クリークのほか、3つの構 造的な役割が確定される。 ①クリーク システムにおいてほかのアクターよりも相対的に高い頻度で相互作 用を行う3アクター以上からなる下位システム ②リエゾン システムにおいて、2つ以上のクリークを結びつけるが、それ自身 はどのクリークのメンバーでもないアクター ③ブリッジ システムにおいて1つのクリークのメンバーとして2つ以上のクリーク を結びつけるアクター ④アイソリット 誰にも結合しない単独アクター クリーク同定アルゴリズム NEGOPY ザンビアのネットワークの例 C1={ヘンリー、アンドリュー、ジョ シュア、アブラハム、アベル} C2={マックスウェル、ダミアン、 ソロトソン、ジャクソン} C3={ジャクソン、ベンソン、ドナ ルド、ソフト、ゴットフリー、ノア} この3クリークが出現する。 C2は多重送信的に結合した凝集 的なクリークを形成しており、C1と C3のブリッジとなっている。
© Copyright 2024 ExpyDoc