(保安院/JNES)(PDF形式(211kb)) - 原子力規制委員会

資料2-4
意見聴取会委員からの質問に対する回答
原 子 力 安 全 ・保 安 院
(独)原子力安全基盤機構
(岡本委員からの質問)
1.クリフエッジの意味
ステップ1では、書類上の実力を試すのだと理解していますが、「実力」には様々な内
容があります。例えば、弾塑性解析における余裕と、座屈評価における余裕では、明ら
かに余裕の程度が異なります。弾塑性解析で制限値を超えても、少なくとも 1.5 倍以上
の余裕はありますし、さらに、システムとしての機能維持まで考えれば、さらに大きな余
裕になります。一方、座屈は、制限値は十分に低いですが、実際に壊れる荷重を超えて
しまうと、確実に壊れ、タンクなどではその機能維持が困難になります。また、今回、地
震でクリフエッジになっているとされている、メタクラなどのいわゆる動的機器は、実力値
は十分に高いのに対して、実際に実験データが無いという事だけで、制限値を低く設定
していると思われます(日本機械学会の昨年度調査による)。おそらく、実際に機能維持
できなくなるには、実験値(制限値)と実力値の間に数倍の余裕があります。
このように、単純にクリフエッジといっても、その意味するところは大きく異なっており、そ
こを明らかにしないと、本当に書類上の評価だけをやっていることとなって、弱点を見つ
け出す事は出来ないと思います。少なくとも、JEAG4601 ベースで良いと思いますので、
座屈評価、弾塑性評価、動的機器機能維持評価の3種類については、その制限値の持
つ余裕を定性的にでも明らかにしていただきたいと思います。
【回答】
今回、10月28日付けで、ストレステストに関し関西電力より報告のありました「東京電
力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた大飯3号機の安全性に関
する総合評価(一次評価)の結果について(報告)」は、表題にありますように一次評価
(ステップ1)の範囲の報告です。
「地震」に関する一次評価に関する要求は、「地震動が、設計上の想定を超える程度に
応じて、・・・(省略)・・・建屋、系統、機器等が損傷・機能喪失をするか否かを許容値等
の比較若しくは地震PSA(確率論的安全評価)の知見等を踏まえて評価する。」ものとな
っており、報告書では、大飯3号機の耐震バックチェック評価に基づき、発生応力と許容
応力(または発生加速度と機能確認済加速度等)の倍率(以下「耐震裕度」という。)を設
備毎に算定し、起因事象のイベントツリーにおいて耐震裕度が最小となる設備を抽出し、
その時の値がクリフエッジとして評価されております。なお、今回の大飯発電所3号機の
評価に採用している固有の制限値の余裕の傾向については、今後、可能な範囲で検討
していく考えです。
今回の回答では、ご提案に沿って機器・配管系における「座屈評価」、「弾塑性評価」、
「動的機器機能維持評価」の3項目に関して、日本電気協会「原子力発電所耐震設計技
術指針(JEAG4601-1984、JEAG4601-1987、JEAG4601-1991)」(以下「JEAG4601」とい
う)の記載内容を踏まえ、制限値の余裕に係る概要を以下に述べます。
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(1)座屈評価
JEAG4601 では、容器を対象に弾性座屈及び塑性の影響を考慮した座屈評価を行う
ための評価式が用いられております。弾性座屈の場合には座屈が発生すると容器の変
形は急激に増加し破壊が発生するため、許容値と終局耐力との間の裕度は比較的小さ
いと考えられますが、原子力発電所で使用されている安全上重要な円筒容器は、形状
特性(容器半径/板厚比等)から塑性座屈となると考えられ、座屈発生後、直ぐに保水
機能は喪失せず、塑性変形によるエネルギーが期待できます。その場合の裕度は円筒
容器の形状にも寄りますが、JNES が実施した円筒容器の耐力試験の例では、象脚形の
座屈の場合、許容値の2倍以上に相当する地震力まで容器の保水機能が維持されるこ
とを確認しております。
(2)弾塑性評価
JEAG4601 では、構造物の弾塑性応答挙動の解析評価手法について取り扱っており
ません。しかしながら、弾性応答解析における1次+2次+ピーク応力に係る既往評価
では、構造物が塑性域に入ることも勘案し、(社)日本機械学会「発電用原子力設備規
格」等に記載されている設計疲労曲線を用いて累積疲労が評価されております。ここで
使用する設計疲労曲線は、試験結果に対して、繰り返し回数で20倍、発生応力で2倍
の余裕が含まれております。
ただし、今回のストレステストでは、基本的に設備の一次応力と許容値ⅣAS(2/3Su)と
の比較が行われており、この場合は材料の引張強さ(Su)に対し 1.5 倍の裕度があること
になります。なお、配管については、地震時の損傷モードは疲労破壊であり、一次応力
評価は配管の耐力に基づく実際の裕度より安全側となっていると考えております。
(3)動的機器機能維持評価
機器の動的機能維持評価に用いられる許容値(制限値)は、振動試験や詳細解析に
よる検討に基づいており、JEAG4601-1991 に規定されております。この許容値(加速
度)は設計レベルに対するものです。その後、2006 年の「発電用原子炉施設に関する耐
震設計審査指針」改訂における鉛直方向の動的評価の要求と残余のリスク考慮の追記
を受け、限界値を求めるために設計条件を超えた地震力に対する試験や鉛直方向の機
能確認済加速度の確認が行われております。また、非常用ディーゼル発電機や弁等に
ついては新たに試験等を行い、機能確認済加速度の改訂が行われております。
機器の動的機能維持に関する評価は、水平方向に関しては設計レベルを超えた状態
に関する評価が、実験等に基づき概ね実施されたと考えられますが、鉛直方向について
は、試験装置の容量の制限により設計レベルを超えた状態を見極めるまでの状態には
なっておりません。
大飯 3 号機のストレステストにおける、盤、計装器具等の損傷モードは、動的「機能損
傷」で評価され、その「地震」のクリフエッジは、メタルクラッドスイッチギアとパワーセンタ
ー(双方とも鉛直方向)の 1.80 とされていますが、実際の機能損傷の限界値(実力値)に
対してまだ余裕があるものと思われます。
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