不全分葉の切離について

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P31−04
騒呼外会誌 22巻3号(2008年4月)
組織工学による切除断端に用いる無茎被
覆材料の作製
1東京女子医科大学第一外科,2都立府中病院胸部外科,3東京女
子医科大学先端生命医科学研究所
肺癌術後の肺痩に対する少量希釈フィブ
リン糊胸腔内注入法の経験
P31−05
1京都第一赤十字病院呼吸器科,2京都第一赤十字病院外科
上島康生ま,栗岡英明2
井坂珠子1,神崎正人12,大和雅之3,洵野千夏3,岡野光夫3,
紹的1肺癌衛後の肺痩は衛後合併症の中で頻度が高く,胸腔ドレーンの
大貫恭正ユ
長期問留置に伴う患者の苦痛,入院期問の延長の原國となる,従来の胸
【背景】糖尿病等の全身疾患,炎症牲肺疾患,長期ステロイド使用症例,
膜癒着徳は疹痛や発熱などの苦痛を伴うことも多く,また癒着による肺
術前後の放財線治療・化学療法施行症例などの肺切除時の気管支断端や
機能低下をきたし,低肺機能症例ではその影響が危惧される.肺痩闘鎖
気管・気管支再建時の縫合部分に縫合不全防止のために筋肉,脂肪紐織
の一法として希釈フィブリン糊の胸腔内漉入法の報告がなされているが
などの馬辺組織を用いて,被覆を行うことがある.近年,組織工学とい
使用するフィブリン糊の量が多く,医療経済上実施が姻難である.今回
う新たな概念が提唱され,培養細胞を用い組織構造を人工的に再構築す
るための技術である.我々は,生分解性高分子の細胞の足場を屠いず,
通常量のフィブリン糊を用いて肺旗閉鎖を試みた3症例を経験したので結
果を検討し,報告する.1方法1フィブリン糊は5mlの製剤を使用し,ト
必要な大きさの綴織を再構築する新技術である紙胞シート工学を駆使し,
ロンビン,フィブリノーゲンとも珪倍希釈とした.まず,胸腔ドレーンか
角膜上皮細胞,心筋継胞,歯周組織による細胞シートを作成し,脇床応
用に至っている.【目的1皮下脂肪織を用いて,紹胞シートを作成する.
ら胸腔造影を行い,肺痩部位の確認を試み,その後にフィブリノーゲン
希釈液を注入,体位変換の後,トロンビン希釈液を涯入,再度体位変換
1方法】SDラット(8週雄)より全身麻酔下に腹部の皮下脂肪組織を採取
し,酵素処理により単離した細胞を初代培養に供した.継代では,温度
を行った.胸腔ドレーンのクランプは手技終了後15分闘とし,その後は
水封とした、症例1,2は左縢上葉切除,症例3は右S8区域切除,いずれも
応答性培養1薩Lに5×103蟹/cm2で播種し,紹胞シートを作成し,位相差顕
咳蹴時のエアリークが持続し減少傾向がない症例で術後8B目に施行した、
微鏡所見,組織学的に評懸した.【結果1位相差顕微鏡では,培養3日目
1成績】症例1は泣入直後から,症例2は翌目までにエアリークが停止した.
に線維芽細胞様細胞が増殖し,1週聞目以降より円形を呈する編胞となり,
症例3は48時間後もエアリークが減少せず,OK432による胸膜癒藩術を行
細胞質内には脂肪小滴が出現した.以鋒,脂肪滴は増大し,多胞性の細
った.3例とも発熱,疹痛等の有害事象を認めなかった.1結論13例のう
胞となった.これらは,オイルレッド0染色陽性の細胞であった,継代
ち2例で早期の肺痩闘鎖が得られた.本法施行による有害事象はなく,試
後1週間で細胞シートの回収が可能で,HE,アザン染色で,シート内部に
脂肪を認めた.1結謝皮下脂肪組織より細胞シートを作成した.生きた
みてよい方法と考えた.ただ,通常量でもフィブリン糊は高価であり,
網胞からなる被覆材料として,今後,移櫃実験にて脂肪細胞シートを評
者に行うべきと考える.まだ3携のみの検討であり,症例を重ねて検討を
価していきたい.
要する.
P31−06
肺感染症に合併した難治性喀豆藍に対する
胸腔内動脈塞栓術の治療成績
またウィルス感染のリスクもあることから主として低肺機能症例や高齢
P31−07
術後肺痩を防ぐための葉問切離法一不全
分葉の切離について一
東北厚生年金病院呼吸器外科
JA三…三重厚生連鈴鹿中央総合病院呼吸器外科
贋橋直也,脂燗俊治,井上国彦,三友英紀,中川健一郎,
藤村重文
水野幸太郎,深井一郎,遠藤克彦
当施設における肺感染症に合併した難治惟喀血に対する胸腔内
動脈塞栓術の治療成績を供覧する.平成17年1鋸から平成19年
!1月までの2年問に当科で胸腔内動脈塞栓術を施行した症例13
例中,肺感染症に合併した難治性喀血症例は9例(男挫6例;女
性3例)であった.肺真菌症のうちアスペルギローマが5例,肺
結核症のうち非定型抗酸菌症が4例であった.年齢は48歳∼87
歳,平均66.5歳.使用したdetac丘abled collの本数は2∼22本
(平均12本),責任血管本数は1∼5本(平均3本).術中後合併症
は発熱2例,塞栓に伴う背部痛2例を認めた以外,重篤な合併症
は認、められなかった.成績は,⑳例中喀血の再発はま例.その
症例は施行後3ヶ月に喀血し2回目の胸腔内動脈塞栓術を施行.
それから4ヶ月に再々発を認、め3回目の胸腔内動脈塞栓術を行い,
その後半年以上再発は認められない.肺感染症に対する根治手
術を行った症例は4例.手術中の出麺且の抑制に効果が認、められ
た.胸腔内動脈塞栓術は.高価である反面,肺感染症に合併し
た難治性喀磁に対して有効な治療法であった.
【目的1肺葉切除術における葉間切離は衛後肺痩発症の危険因子と考
えられる.われわれは不全分葉の葉問切離法として,電気メスで肺実
質を切離する方法(電気メス法)ならびにステープルで肺実質を切離
する方法(ステープル法)のどちらかを選択している、これまでに経
験した術後肺痩症例から適切な葉間切離法を検討した.1対象12005
年1月から2007年10月までの不全分葉を伴う肺葉切除術72例(電気メ
ス法29例,ステープル法43例〉のうち,術後に肺痩を来たした5例、
1結果1術式は上葉切除衛が2例,下葉切除術が3例.葉間切離法は電
気メス法が3例,ステープル法が2例であった、衛後肺痩の原臨は電気
メス法3例とステープル法1例が残肺の過伸展による葉間切離部の裂傷
と考えられた.ステープル法の1例は残肺の癒着部分が伸展牽引され
胸膜裂傷を来たしていた、術後肺痩の治療は胸腔ドレナージが4例,
再手術が1例であった.5例中4例は気腫肺であった.1考察1不全分葉
の葉問切離では,残肺が自然な形で十分に伸展できるため電気メス法
を用いることがある、しかし,電気メス法は胸膜欠損部ができるため
肺痩を来たしやすい.今回の検討では電気メス法での術後肺痩発症率
は鎗、3%であり,ステープル法の4.6%に比して高率であった.電気メ
ス法を施行するに当たり肺痩の確認と確実な縫縮閉鎖,さらに適切な
被覆剤を用いた胸膜欠損部の完全な被覆が必要であろう.また,どち
らの方法も気腫肺において術後膝痩の発症頻度が寓いことから,摘出
後の死腔を灘能な限り減らし吸収性シートで残肺を覆うなど,過伸展
を防止する処置を講ずることも有効である、