都として栄えた京都は、新しい文化・芸能が華やかに繰り広げられた舞台でも ありました。庶民の間で親しまれた文化がやがて優れた芸能や芸道に発展した 例もあります。 京都を訪れた機会に、世界に誇る豊かな文化と奥深い和の心にふれましょう。 DOU 道 茶道や華道、香道などは、長い年月をかけて日本を代表する文化と なりました。どれも芸術として楽しまれるだけでなく、作法を通し て精神を鍛え、心を豊かにすることも目的とされています。 また、そのような文化に親しんできた京都には、お茶やお香を扱う 老舗がたくさんあります。 こう き たき もの 平安時代、貴族の間で香料を選んで練り合わせ、その香気を楽しむ「薫物」 が主流になり、鎌倉時代には、武士の間で香木そのものの香りを楽しむ「聞 香」が盛んになりました。そして室町時代、東山文化が花開く中、香道が成 立します。香道とは一定の作法のもとに香木をたき、立ち上る香気に古典的 な詩歌や故事・情景を鑑賞する、文学性・精神性の高い芸道です。現代は、 いくつかの香木をたき、香りを組み分ける「組香」が主流です。 もん こう くみ こう 仏前に花を供えたことか ら、壷や瓶にさして鑑賞 するようになったとされ ています。室町時代中期、 京都六角堂(p28)の僧 侶により確立され、茶の 湯の発展とともにいくつ かの流派が生まれまし た 。 立 花 ・ 生 花 ・ 自由 花・投入花など6種類の型 に大別され、立花は供養 から室内を飾る花に変化 し、いけばなの基礎にな ったともいわれています。 また、それぞれの型に生 けるときの決まりごとが あります。 茶は平安時代から鎌倉時代にかけて、禅僧 により中国から伝わったといわれていま す。やがて戦国時代に町衆や大名の間で流 行し、茶人・千利休により、わびの美意識 を追求した茶の湯文化が完成しました。茶 道の精神を表す禅語として利休が唱えた 「和 敬 清 寂 」は、お互いに心を開いて仲良 くすること、敬いあうこと、心の中も清ら かであること、何事にも動じない心を表し ています。 わ り っ か か けい せい じゃく /-1 芸 四条大橋の東側には、歌舞伎の劇場として有名な「南座」(p29) があり、毎年12月に行われる「顔見世」は特に多くの観客を集め ています。鴨川の四条河原は、17世紀初めに出雲阿国が「かぶき 踊」を始めたところです。また、舞妓さんの舞で知られる京舞な ど、京都は多くの芸能が発達した地でもあります。 しょうか じ ゆう な げい れば な いずもの お くに 写真提供:ギオンコーナー 約600年の歴史を持ち、舞踊・劇・音楽・詩などの諸要素 が交りあった現存最古の舞台芸術です。民族芸能や猿楽な どが影響し合って発展し、現在の能の原型は観阿弥・世阿 弥父子により大成されました。艶やかな衣装と優雅な動き で人間の本質や情念を描き、人びとを幽玄の世界へ誘いま す。 さるがく かん 舞踊は踊りと舞の二つに大別さ れます。踊りは身振り手振りで 感情を表現し、舞は比較的省略 された動きの中で豊かな表現を 見せます。中でも「京舞」は、 京風の舞に宮廷文化を基盤とし た優雅なものです。毎年春に行 われる「都をどり」で祇園の芸 妓さん、舞妓さんによって演じ られます。 王朝時代の雅を今に伝える雅楽は、今から約1400年前に日本に伝 わったとされています。日本国内にも固有の音楽が存在していま したが、そこに外国から伝来した楽器や曲が加わりました。その 後平安時代に雅 楽器の編成が整理され、現在の形になったといわ れています。 が 6 がっ き み 能に対し、狂言は笑いの世界へと 誘います。対照的な二つの演劇は セットで演じられることも多く、 間の抜けた大名、物欲・金欲の亡 者である僧侶など、人間味あふれ たキャラクターが登場し、滑稽な 仕草や言葉で当時を描くセリフ劇 です。そのころの話し言葉を使っ ているので内容が分かりやすく、 洗練された「笑いの芸術」といわ れています。 こっけい あ み ぜ あ MATSURI 祭 京都のまちでは、一年を通してさまざまな祭事が行われていま す。それは長い歴史の中で受け継がれてきた京都の文化であり、 伝統的衣装をまとって繰り広げられる祭りは歴史絵巻さながら です。特に、京都三大祭と呼ばれる葵祭・祇園祭・時代祭は、毎 年全国から多くの人が見物に訪れます。 祇園祭は、毎年7月1日から31日まで、1カ月にわたって行われる八坂神社の祭礼です。 一般には、17日の山鉾 巡 行が広く知られていますが、他にも多彩な行事が催されます。 今から1100年ほど前、京の都をはじめ全国各地に疫 病が流行し、当時の人々はこれを 牛頭天王の祟りであると恐れました。そこで、二条城の南にある神泉苑(p30)に、当 時の国数にちなんで66本の鉾を立て、祇園の神をまつり、さらに神輿をかついで、疫病 退散を祈願して始められた「祇園御 霊 会」が起源とされています。1979年、文化財保 護法により、国の重要有形・無形文化財に指定されました。 やまぼこ じゅん こう えき びょう ご ず てんのう たた しんせんえん ほこ み こし ぎ お ん ご りょう え せん と 平安遷 都 1100年目にあたる明治28年、明 治維新で活気を失った京のまちを盛り立て るため、平安京を造営した桓武天皇をまつ るために平安神宮が建てられました。それ を祝して開催されたのが時代祭で、以降、 桓武天皇が都を移した10月22日(京都の 誕生日)に、平安京の誕生を祝う祭りとし て行われています。平安時代から明治時代 に至る各時代の衣装を身につけ、歴史上の 人物に扮した人たちが行列をつくって京都 の町を練り歩きます。祭りに使用される道 具や衣装は、当時の素材・技法で忠実に再 現されており、京都1200年の伝統文化の 推移を結集した時代風俗絵巻です。 かん む ふん あ たご その他の祭り・行事 毎年5月15日に行われる上賀茂神社と下鴨神社のお祭り で、祭りにかかわる人や牛車などに葵の葉をつけているこ とからその名がついたといわれています。今から1400年 前、悪天候が続き作物が実らない国内をしずめるための祭 礼が始まりといわれ、平安中期の貴族の間では、「祭り」 といえば、葵祭を指したといわれています。平安時代以来、 国家的な行事として行われたため、王朝風俗の優雅な伝統 をしのぶことができる数少ない祭りの一つです。 ぎっしゃ 1月15日に近 通し矢(三十三間堂 p16) い日曜日 せつぶんさい 2月2∼4日 節分祭(市内各神社) ばい か さい 2月25日 梅花祭(北野天満宮 p23) ね はん え 7月31日 千日詣り(愛宕神社) 8月16日 大文字・五山送り火(五山 p21) 大文字 五山送り火 せ ん にゅう じ 3月14∼16日 涅槃会(泉 涌 寺 p17ほか) からす ず も う 烏 相撲(上賀茂神社 p31) 4月第2日曜 やすらい祭(今宮神社 p23) 9月9日 10月1∼5日 ずいき祭(北野天満宮 p23) 4月13日 十三詣り(法輪寺 p15) まい 三船 祭(車 折神社、嵐山 p26) 11月第2日曜 嵐山もみじ祭(嵐山 p26) 12月21日 終い弘法(東寺 p15) 竹伐り会式(鞍馬寺 p31) み ふ ね まつり くるま ざ き 5月第3日曜 しま たけ き 6月20日 日本のさまざまな伝統文化・芸能が発祥した京都は、その長い歴史の 中で、朝廷や貴族、寺院・神社や幕府の庇護を受けながら、数々の工 芸品がつくられたところでもあります。その中で磨かれた技は、職人 さんの手により長年にわたって受け継がれています。これらの伝統文 化や伝統工芸にふれる体験学習プログラムも多く、修学旅行でも盛ん に取り組まれています。 え 京都で実施されている体験学習を分類別に案内した修学旅行生の ための体験学習ガイド。 京都ならではの体験ができる施設約340カ所の情報を集約した一 冊です。各体験学習の情報は『きょうと修学旅行ナビ』のサイト で見ることもできます。 西陣織体験 茶道・華道・香道、能・狂言、 西陣織、友禅染、京組紐、 京焼・清水焼、京扇子、 和菓子、京料理ほか 『体験京発見』お問い合せ先 京都市産業観光局観光部 TEL.075-222-4133 7
© Copyright 2024 ExpyDoc