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経営指導員
た当時、メーカーとして表に出てはな
らないルールがあり、
「産地が名前を
モノづくり職人による
お二人目の倉又清彦氏(新潟県(有)
倉又製作所)は、
「産業観光」による
「工場の祭典」の事例
う危機感から、
“作っている人間から
産地とユーザーの接点づくりを臨場感
無くしていた時代」だと振り返った。
直接使う人に伝える”という仕組みを
たっぷりに話してくれた。
「工場見学
繊維産地の新 山梨県富士工業技 ◆富士山テキスタイルプロジェ ★cocioroso(コシオロッソ)
しい取り組み 術センター
クト(繊維産地と造形大学の 座布団でもないクッションでも
繊維部技術支援課
学生が共同開発したテキスタ
ない“座る”ためのインテリア
主任研究員
イルの展示・販売)
田辺織物㈲
五十嵐哲也氏
◆ヤマナシハタオリトラベル
★1866シリーズ
(繊維産地のハタオリ職人が こだわりの生地とパーツによる
商品を持って全国のショップ
高級傘
に旅立つ取り組み)
㈱槙田商店
◆シケンジョテキ(公設試験研
究機関によるブログ)
3
このままでは産地が廃れてしまうとい
目指したという。
地域のモノづ ㈱ソーシャルデザ ◆廃校を利用して「台東デザイ ★さまざまな素材への箔押し(は
くおし)紙・皮・木など
くり産業の高 イン研究所
ナーズビレッジ」を立ち上げ
㈲田中箔押所
付加価値化
代表取締役
クリエーターを育成
鈴木淳氏
◆台東区のモノづくり企業とシ ★第4回の“モノマチ”(イベント)
は、参加事業所数 399
ョップによるイベント開催
来場者 3日間で延べ10万人
2014年 第5回 モノマチ
5月開催予定
といえば、ビール工場・ワイナリー・
つ甲斐絹をこのま
モノづくりが消費者を惹きつける~産地と小売りを近づける新しい動きとは~
脱OEMを目指して取り組んだ つ
の取り組み“富士
山テキスタイルプ
ロジェクト ”
(産
学連携で製品開
一人目の発表者、五十嵐哲也氏(山
梨県富士工業技術センター)が発表し
ま廃れさせるわけ
〈図表1〉章光たちが参加したセミナーの内容
山川章光
モノづくりと消費者を近づける取り組み
〜2014年ギフトショー セミナーに参加して
発)
“ シケンジョ
リトラベル ”
(ハ
布施 早苗
費者を惹きつける ~産地と小売りを
近づける新しい動きとは~」と銘打た
タオリ職人による
中小企業診断士
テキ ”
( 工業試験
「花子さん、本当によかったの? ここで」と僕が聞くと、支援員の花子
れた事例発表で つの事例が聞けるセ
直接販売)を分か
)
所 に よ る Blog
“ ヤマナシハタオ
さんは「もちろんです。青山や代官
ミナーだ(図表1)
。
れた。
りやすく話してく
山 っ て 柄 じ ゃ な い で す し、 ギ フ ト
脱OEM目指す
たのは、織物産地の取り組みだ。
「甲
にはいかない」と
織物産地の取り組み
催だから確かに贅沢だよね」と白幡指
斐絹」の歴史的背景からOEM時代の
いう熱い思いが伝
催予定
ショーとセミナーのセットなんて私に
は超贅沢です」と笑うと、
「
『中小企業
導員も微笑んだ。
産地の置かれた状況など、大変分かり
わってきた。
総合展』と『ニッポンいいもの再発
僕らは朝一のセミナーに一緒に参加
して、
その後は自由行動ということで、
やすく話してくれた。
五十嵐さんたち
の「長い歴史を持
話がまとまっていた。
歴史ある産地がOEM受諾をしてい
見!』
(全国商工会連合会)も同時開
僕らのお目当ては「モノづくりが消
★こだわりの表面研磨によるスプ
ーン・フォーク・ナイフ
山崎金属工業㈱
★サモワール “イィッツオ”ロシ
アの茶道具を燕で作り輸出
㈱玉虎堂製作所
※4年前から燕三条地域の工場
見学ツアーを準備
◆2013年 第1回 燕三条 工
場の祭典(工場開放)
◆2014年 第2回 燕三条 工
場の祭典(工場開放)10月開
金属加工集積 ㈲倉又製作所
の新しい取り 代表取締役
組み
倉又清彦氏
商品例
取り組み内容
発表者
発表テーマ
3
30
Shokokai 2014.4
(ペンチやスパナ)利器工匠具(大工
燕市は金属洋食器やハウスウェア
(鍋・フライパン)
、三条市は作業工具
たいと思ったんです」
。
取り組みが多いですよね。そこを変え
飛行機会社など大企業の社会貢献的な
ちも職人魂に火がつくのか、工場はき
出するという。そうなると職人さんた
つけられない」と言ってくれる人が続
け手間暇かけて作る製品に安い価格は
品に対する理解が深まると、
「これだ
ように分かるそうだ。工程を知り、製
た人たちの意識が変わるのが手に取る
めてもらう取り組みも始めたという。
で肉を切り豆腐を刺して使用感を確か
ケータリングでシェフを招き、その場
い比べのために、視察の一環として
倉又さんによれば、高級カトラリー
(スプーンやフォーク)と量産品の使
らえるという説明でしたよね」と僕が
の納得感が生まれ、高価でも買っても
「職人さん自らが、高度な加工や細
部のこだわりを説明することで価格へ
花子さんがカタログを広げながら言っ
道具)の産地として有名だが苦しい時
れいになり、説明も上達していく。
た。
やナイフが気になって思わず手に取っ
言うと、みな自分の前にあるフォーク
た。
代も経験したという。現場を見てほし
仕組みについて紹介
デザイナーたちを育成する
い、職人と触れ合ってほしいと切望し
「最近では、ただ見学するだけでな
く、ワークショップも取り入れていま
条 工場の祭典」を開催したのだ。初
めは「こんな工場見せてもしょうがな
デザイナーたちを育成する仕組みを提
加価値はデザインだ』との信念から、
ズビレッジ 村長)も自らの取り組み
を紹介してくれた。
『モノづくりの付
商品について作り手から直接聞く
深く理解をすれば価値を感じる 価値
ついた。
明、衝撃でした」と花子さんが溜息を
クで刺したお豆腐が落ちない』って説
フォークの先を指しながら「ここの
磨きが表面と同レベルなので、『フォー
い」とか「説明なんてうまくできない」
案し、実現させている。
を感じれば支払いへ許容範囲は広がる
(東京・台東区 デザイナー
鈴木淳氏
と二の足を踏んでいたモノづくりの職
“廃校を利用したクリエーター支援
施設の運営”や、
“モノづくりをテー
…という論法は僕らの心の中にしっか
⇒
⇒
※組織や登場人物は架空です。
※2014年ギフトショーのセミナー部分は
筆者の体験に基づき事実を記載しました。
!!
す」と話題は尽きない。
人さんたちが、実行委員たちの熱い思
マに町を明るくするイベント”につい
りと納まった。会員さんの中にも「下
何年も準備して、昨年「第 回 燕三
いに徐々に賛同して実現したという。
て紹介があった。イベントの期間は工
請けからの脱却」という課題を持って
価値を上げるための支援をしたい という思いがじわじわと湧いてきた。
10
工場見学や職人の話を聞くと参加し
場を開放し、工程を職人自ら紹介する
いる方は少なくない。
うんだ?」
(図表2)と白幡さんが切
まだまだ寒い冬の日、でも僕らの胸の
この経験を生かして、モノづくりの
り出した。
「こだわりを理解すればお
中に熱い何かが灯った日になった。
終了後、僕らはビル内のレストラン
に席を取った。
「3万円もする傘を買
金を惜しまない層がいるってことです
ね」と僕が返した。
「カトラリーも、
一般的なものに比べて高価です。量販
店の 倍の価格ですものね」(図表3)
。
Shokokai 2014.4
31
1
取り組みをしているという。
〈図表2〉ヤマナシハタオリトラベルの商品例
〈図表3〉燕・三条地域の商品例