メキシコ:原油価格下落の既存油田の生産 - JOGMEC 石油・天然ガス

作成日: 2015/3/16
調査部: 伊原 賢
メキシコ:原油価格下落の既存油田の生産、鉱区公開方針等の石油政策に対する影響
(メキシコ石油公社ペメックス、メキシコ・エネルギー省SENER、メキシコ国家炭化水素委員会 CNH、JOGMEC ワシントン・ヒューストン・メキシコ事務所ほか)
近年のメキシコにとって最大の課題であったエネルギー改革に向けた憲法の部分改正(エネルギー
改革法)は、2013年12月20日にペーニャ・ニエト大統領によって公布され、メキシコでの石油開発事業へ
の外資の参入機会が開かれることとなった。外資を導入するための具体策として、石油法やペメックス法
を含む2次法制は、2014年8月11日にほぼ原案通り成立した。8月13日には、ペメックスが引き続き開発を
行う鉱区(ラウンドゼロ)と一般入札(ラウンドワン)の対象鉱区が明らかになった。
2014年11月からペメックスとのジョイントベンチャーのパートナー入札を皮切りに2015年11月まで実施
予定のラウンドワンに、外資の参入機会が具体化する。特に2014年半ばからの原油価格下落傾向の中
で、メキシコ政府がどのような対応を取るのかに注目が集まる。本資料のポイントは以下の7点。
① メキシコ合衆国にとって、石油は外貨獲得の重要な手段であり、1938年以来、資源ナショナリズムの
もと、国営石油会社ペメックスのみが石油の採掘を行ってきた。しかしながら、ペメックスの収益の大
半はメキシコ政府の財源にあてられているため、石油の新規採掘のための投資が完全に不足して
いる。
② メキシコではシェール資源や水深500m以深の大水深油ガス田の存在が確認されているが、ペメック
スの資金と技術力だけでは採掘が困難であり、今後新規に油ガス田が開発されなければ、石油生
産量は2020年に向けて13%減少すると予想されている。この状況を打開するべく、ペーニャ・ニエト
大統領は、2013年12月20日にメキシコ憲法を改正して、エネルギー政策として外資への開放に大き
く舵をきった。
③ 油ガス田の採掘技術や資金の流れを向上させるために、技術力や資金力に長けた外資と手を組む
ことは世界中で行われているが、メキシコ政府は、長年に亘り、一部のサービス契約を除き、ペメック
スが第三者と共同事業を行うことを禁じてきた。シェール資源の採掘や大水深での探鉱活動に伴う
コストやリスクを考えると、資金や知見に富む企業とパートナーシップを組むことがペメックスにとっ
て喫緊の課題となった。メキシコ政府はこれから外資導入を進める一方で、地下に賦存する石油や
天然ガスといった炭化水素資源の国家所有堅持を変えていない。しかし、これらの資源は一旦地表
まで採取されれば、外資にもその取り扱いが認められる。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
④ 過去5年石油換算で年10億バレルを発見した。短期では日量240万バレルキープが、中期では日量
280~300万バレルキープが目標となる。
⑤ エネルギー改革法には潜在的なリスクもあろう。例えば、ペメックスの下流部門とCFE(電力会社)の
棲み分けがはっきりしない。どちらも発電をしようとしている。また、国営会社に対するメキシコ政府
の関与が薄まりすぎるのではないかとの懸念がある。各社の格付けは、キャッシュを政府に吸い上
げられている代わりに政府の後楯がある、という見立てで付けられている。国内の燃料価格政策(例
えば、ガソリン価格への補助金:資源への競争が働かないと補助金削除はメキシコ国民にとってガソ
リン価格の上昇となる。)、生産物分与契約(PSC)、ほかの国の契約条件との比較、政府の意向(ペ
メックスとCFEのトップは政府が任命)にリスクがあろう。ペメックスの役員会議長はエネルギー大臣
が務める。人材の不足もあろう。
⑥ 国民の改革に対する支持はミックスであり、改革の成功は石油収入の増加を教育、社会的ニーズ、
インフラなどへと転換する政府の能力にかかっている。改革の推進には、安全性、透明性、不正防
止、社会倫理の担保が重要だ。しかし、エネルギー改革を巡る政治的闘争は、国際石油企業に、特
に大水深に対する大きな関心を抱かせるのを思い留まらせるまでには至っていない。投資家達はメ
キシコの石油・天然ガスセクターに対して長期的な視点をとっているようにも見える。最近の原油価
格の下降は投資家の関心にはネガティブに作用していないと見る。
⑦ 総じて、潜在的な投資家達は、関心を表明しつつも政治的、社会的、技術的障害を認識し、注意深
く、しかし楽観的にメキシコでの機会を見据えている。
1. 油田開発の現状と課題
メキシコは膨大な炭化水素資源を有し、石油と天然ガスの確認可採埋蔵量は 139 億バレルと世界 17 位
を誇る(メキシコ石油公社ペメックス[Petroleos Mexicanos, Pemex 以下ペメックスと呼ぶ]、2014 年初 図
1)。
2014 年 3 月 21 日にペメックスはペメックスが引き続き開発を行う鉱区をラウンドゼロとして、エネルギー
省(Secretaría de Energía, SENER 以下 SENER と呼ぶ)に申請した。同国の 2P(確認+推定)埋蔵量の
83%に当たる 217 億バレルと想定資源量の 31%である 355 億バレルが申請対象であった。技術力や資
金力の不足が見込まれる大水深油ガス資源(水深 500m 以深)やシェール資源については、外資との共
同操業を前提として申請した。
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
図 1 メキシコの石油天然ガス資源と埋蔵量の分布
メキシコでは油田の国有化が始まった 1938 年 3 月 18 日から 70 年代までは陸上油田からの生産が主
であったが、80 年代から現在までの原油生産は洋上油田が主となり、生産量を伸ばし、累計原油生産量
は 400 億バレルに到達している(天然ガスも含む原油換算では 550 億バレル)。しかし、原油生産レート
は 2003 年のピーク日量 340 万バレルから 2008 年には日量 250 万バレルにまで落ち込み、2014 年には
日量 240 万バレル程度で下げ留まっている(図 2、図 3)。主力カンタレル油田の減退が主因である
(2003 年日量 210 万バレル b/d -> 2013 年日量 40 万バレル <付録>参照)。
PEP: ペメックスの石油開発部門
図 2 メキシコの原油生産プロファイル(1960 年から 2011 年)
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所: ペメックス
図 3 メキシコの原油生産プロファイル(2000 年から 2014 年)
SENER が 2015 年初に公表した原油の生産予測からは、既存油田からの生産量は 2020 年までに 13%
減少する見通しとなっている(原油生産量【除 NGL/天然ガス液】:2015 年日量 240 万バレル → 2020 年
日量 210 万バレル)。日量 240 万バレルと現状維持するとしても、今から僅か 5 年で、新規油田開発の成
果を上げる必要がある。2028 年の生産目標を日量 350 万バレルとすれば、既存油田からの生産とのギャ
ップは日量 200 万バレルにもなる(図 4)。
出所: SENER
図 4 メキシコの原油生産予測(2015 年から 2028 年)
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減退してきた確認可採埋蔵量もようやく 2011 年から 100%(1 年間に追加された確認可採埋蔵量=1 年
間の生産量)を上回る回復を見せてきたが、新規の油田発見よりも既発見の 3P 埋蔵量(確認+推定+予
想)から 1P 埋蔵量(確認)への組み換えに過ぎないという厳しい指摘もある。
また、表1 に示すように、原油生産量の減少のみならず、天然ガス、ガソリン、石油化学製品の輸入量増
大という課題も抱える。
表1 メキシコ・エネルギー産業の変遷データ
出所: CNH, SENER
原油生産量(万バレル/日)
探鉱開発投資(億ドル/年)
輸出原油価格(ドル/バレル)
天然ガス消費量(百万立方フィート/日)
天然ガス生産量(百万立方フィート/日)
天然ガス輸入量(百万立方フィート/日)
ガソリン消費量(万バレル/日)
ガソリン生産量(万バレル/日)
ガソリン輸入量(万バレル/日、米国から)
石油化学製品消費(億ドル/年)
石油化学製品生産(億ドル/年)
石油化学製品輸入(億ドル/年)
1997 年
300
47
13
4576
4467
109(2.4%)
50.3
37.6
12.7(25.2%)
60.9
36.2
24.7(40.6%)
2004 年
340
117
31
5667
4524
1143(20.2%)
54.2
44.2
10.0(18.5%)
124.8
30.2
94.6(75.8%)
2012 年
250
207
103
7905
5762
2143(27.1%)
81.1
41.6
39.5(48.7%)
220.9
76.2
144.7(65.5%)
メキシコの電気料金(2013 年第 1 四半期)は、家庭用と産業用の平均で 1.5 ペソ/kWh(補助金有り)、2.1/kWh(補助金なし)。米国の同時期の電気料金の約 10 セ
ントの各々25%、75%増し(1米ドル=12 メキシコペソ)。
しかしながら、メキシコの油田開発を一手に引き受けてきたペメックスには重い税負担がのしかかる。生
産油ガスの売上総額の 71.5%から、探鉱投資額の一部、採掘コスト、ほかの税や負債の合計を引いた額が
メキシコ政府に召し上げられるのだ。EBITDA(税引き前利益に支払利息と減価償却費を加算。他人資本
を含む資本に対してどの程度のキャッシュフローを産みだしたかの利益概念)は非常に良く、他の巨大企
業と比べても高い。しかし、手元に残るお金は収入に対して極わずかとペメックスは経済的にパラドックス
な存在となっている。これを石油産業関係者は、「メキシコ政府は金持ちなのに、ペメックスは貧しい男」と
皮肉を込めて呼ぶ。
新規油田開発の成果を上げる切り札とされるのが、大水深の油田開発とシェール資源の開発だと言わ
れる。図 1 に示したように、2011 年、ペメックスはアメリカ合衆国に接する海上の国境の近くのペルディト
(Perdido)エリアにおいて油を発見した。第 1 の発見井トライオン(Trion)1 号井において 2.5 億~5 億バレ
ルの軽質油が賦存する可能性があると、2012 年半ばに発表した。カルデロン前政権に対して、堆積盆地
全体では 100 億バレルの賦存可能性を進言するニュースにつながった。ペルディトエリアに対する期待
は 2012 年末シュープリムス(Supremus)1 号井にて 1 億 2500 万バレルの埋蔵量が見つかったという発表
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により、更に強められた。次の井戸マキシミノ(Maximino)1 号井の結果は「冠の中の宝石」と評価した。ペメ
ックスは 2013 年から 2017 年にかけて、メキシコ湾の大水深に計 32 坑の探鉱井を掘削中である。しかし、
大水深では探鉱に伴うコスト・リスク・複雑性を考えれば、大水深開発に十分な知見を持つ会社とのパート
ナーシップが、ペメックスの大水深開発の鍵となろう。シェール資源に目を転じると、ペメックスはメキシコ
のシェール資源を原油換算で 602 億バレル(オイル 53%、ガス 47%)と推定している。
2. エネルギー改革法
メキシコは 1938 年の油田国有化宣言以降、ペメックスが国内で民間企業と共同で事業を行うことを禁じ
てきた。採掘技術や資金メカニズムを向上させるために民間企業と手を組むことは世界的に行われており、
ペメックスはそれができない唯一の石油公社であった。
2013 年 12 月に公布されたエネルギー改革法のポイントは次の 4 点である。
• エネルギー改革により、ペメックス単独では採算が見込めず、行われてこなかった大水深油田やシ
ェールオイル・ガスの開発が進むと期待。
• 国家債務を増加させることなく投資資金や最先端技術を調達することで、埋蔵量の増加や、国際的
経済競争力の引き上げに貢献。
• 大統領は炭化水素の所有権は国有のまま維持し、国家主権を強化すること、透明性を保証すること
を強調。ライセンス契約や生産物分与契約(PSC)が想定(<付録>に用語説明)。
• 石油・ガスの探査・採掘において国が民間企業と契約を締結する際は、住民との協議・監査の下で
実施。石油基金の創設とペメックス取締役会からの石油労組排除も特筆。
2 次法制の整備が必要となり、国会審議を経て、2014 年 8 月 11 日に成立した。但し、法整備や外国企
業の体制準備も考えると、メキシコ政府は、外国企業がエネルギー分野へ参入できるのは 2015 年以降と
考えた。
原油生産の減退やペメックスの責任の大きさ、ペメックスの財政的・技術的な課題に対処するためには
外国企業の技術導入やリスクの共有が必要であり、外国企業を惹きつける PSC の導入が期待される。石
油契約上の経済条件(原油価格リンクの期待報酬)や埋蔵量の財務諸表への資産計上が可能となるから
だ。また、ペメックスの操業や財務能力の向上を前提とした一層の独立性を確保するための措置が取られ、
ペメックスの生産減少に伴い政府収入(政府歳入の 30%程度)も減少しているため税制改革も行われるだ
ろう。ペメックスの投資の判断も政府の意向に左右されるような構造であったが、改革によりペメックスは海
外の石油会社と同様な会社(例えば南米のブラジルのペトロブラス、コロンビアのエコペトロール)への移
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
行が期待される。新しい体制の下ではペメックスは政府から独立した形となり、必要に応じて子会社を設
立し、民間の石油会社とパートナーを組む形になる。その場合の政府との契約主体はペメックスが行うこ
ともあれば、民間石油会社が行うこともある。
メキシコ湾の大水深油田では、米国側の海域では既に 80 社以上の国際企業が採掘活動を実施し日量
100 万バレル以上を生産しているが、メキシコ側では 1 バレルも生産されていない。米・メキシコ沖合開発
協定が 2013 年 12 月 19 日に批准され発効の準備が整った。大水深油田の開発にはジョイントベンチャー
(JV)組成も含め 5-8 年の期間を要する。
また、陸上では米国テキサス州南部のイーグルフォード・シェールエリアと同じ埋蔵地帯がメキシコ北東
部まで続くと期待されているにもかかわらず、メキシコ側では炭化水素生産は行われていない。イーグル
フォードでは日量 200 万バレル以上が生産されている。大水深油田、シェールオイル・ガスの分野に精通
した企業によって開発を行うことで、メキシコの原油生産レート(現在は日産 240 万バレル)を押し上げるこ
とが可能というわけだ。
石油開発の会計制度も変更となる予定であり、これまで政府が石油収入の約 70%を徴収していたのに
対して、新制度の下では、ロイヤリティや法人税といった費目で国際的な慣習に沿った、政府への税納付
が行われる予定である。生産原油の所有については、サービス・利益分与契約が国家へ帰属、生産分
与・ライセンス契約においては、契約の内容により石油会社への帰属となるが、埋蔵原油の所有について
はメキシコへの帰属は変わらない。新しい組織体制の下では、新しい組織の設立、新しい役割の付与が
行われる。
SENER は、案件ごとにサービス契約や PSC といった外資導入形態のデザインを行う。国家炭化水素委
員会(Comisión Nacional de Hidrocarburos, CNH
以下CNHと呼ぶ)は地質情報等の技術情報の取りまと
め、入札の実施や契約の署名、契約の管理を行う。財務省(Hacienda)は会計条件を設計し、サービス契
約や利益分与契約の場合には国が市場のマーケティングをサポートする。石油開発による政府の収入、
契約への対価支払い等は石油基金が執り行う。
この改革で重要な点は、今後、ペメックスはメキシコ政府の収入源の確保に責任を負わなくなることにあ
る。政府が必要とする財源は、政府自らが契約を用意、管理、運営して確保する。短期的には政府の財源
は引き続きペメックスの生産分からの収入に依存することになるが、長期的には他の石油会社が行う生産
からの財源が増えていくことを期待している。
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3. 天然ガス
3.1 ガスの需給
メキシコ中東部のブルゴスガス田の天然ガス埋蔵量は膨大であるが、生産コスト高が難点である。ペ
メックス自体が、製油所の加熱用や油田への EOR により、相当量の天然ガスを消費している。
メキシコは冬季の気温がそれ程下がらないため、天然ガスに対する需要が本来強くない。従って、天
然ガスに対する支払が多くない。ペメックスは、天然ガス価格が低迷してきたので、ガス生産を減少さ
せてきた。他方、メキシコの産業は、燃料油から安価な天然ガスへと燃料転換してきたので、メキシコ国
内で天然ガスの供給と需要のミスマッチが大きくなってきた。現在では、天然ガス供給が危機的状況に
なりつつある。このまま事態が推移すれば、ペメックスが国内での天然ガス必要量を供給できなくなり、
ガス供給途絶する可能性がある。かかる問題点が、大統領のエネルギー改革の大きなモチベーション
の一つとなった。
ペメックスと連邦エネルギー委員会(CFE:メキシコ電力公社)の関係は、問題が多い。ペメックスから
CFE に対して供給される天然ガスは、①発電所の必要量には十分ではない、②ガスの品質が良くない。
CFE のプログラムは良く出来ているが、実行段階で支障が生じることが多く、目標が達成できなかった。
ペメックスは、CFE と天然ガス供給の長期契約を締結できていない。1996 年以降、ペメックスと CFE の
関係が改善してから、CFE はコンバインドサイクル発電の導入を促進してきた。
CFE は、メキシコ国内に 22 本の幹線ガスパイプラインを保有しているが、パイプラインの輸送容量が
大きく、コストが高い。米国からメキシコ中央部まで天然ガスを輸送するコストは高いが、メキシコは現在
より多くの天然ガスを輸入する必要性に迫られている。メキシコ国内のガス需要は、2028 年までに 54%
増加するが、ガス生産は年5.4%増加。米国からの天然ガス輸入は、2028 年まで年4.7%増加し、3 ドル/
MMBtu 換算で 8,500 億ドルの赤字要因。メキシコのガス需給は行き詰っている状況である。
<米国の安価なガスがメキシコ国内でのガス開発に圧力>
メキシコ国内の天然ガス生産の減退(2010年にピーク1.9兆立方フィート)に伴い、産業・家庭用の電力確保の
ため(2010 年需要 2.3 兆立方フィート)、天然ガス輸入を増やす必要に迫られている。天然ガスは米国(Eagle
Ford, Permian Basin)からシェールガス(シェールオイルの随伴ガス)を中心とする安価なガスが輸入(2013 年日
量19 億立方フィート、2018年38 億立方フィート)できるため、メキシコ国内での天然ガス開発にインセンティブが
働かない。メキシコのガス価格はヘンリーハブ価格の 1.3 倍程度(2012 年)
ラウンドワンの 169 鉱区の内、89 鉱区はガス主体(陸上 81、洋上 8)。ガス輸入は、メキシコのガス需要の
40%を占める。
2016 年半ばの米国からのガスパイプライン整備(NET Mexico, Los Ramones):日量 21 億立方フィートを 700 マ
イル離れたメキシコ第3 の都市 Monterrey まで運ぶ。メキシコによって輸入 LNG 価格はパイプラインガスの約3
倍。
洋上の Lakach ガス田開発:昨年 10 月にガス井 7 坑の海底生産システム工事を 2.7 億ドルで OneSubsea 社
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(Cameron と Schlumberger の合弁)に発注。
メキシコにおけるガス開発促進には、ガス価格が 5 ドル/千立方フィート未満の時は、ロイヤルティを徴収しな
い措置がとられるかもしれない。
<ガスパイプライン整備計画>
 中国と 24 億ドルの投資基金を設立
ペーニャ・ニエト大統領と中国の習近平国家主席が2014年13日に北京で首脳会談を行い、14の分野で合意に
至った。特筆すべき合意のひとつは、24 億ドル規模の二国間投資基金の設立で、ペーニャ・ニエトによると、両
国の企業がエネルギー、鉱業、インフラ、観光業、そしてハイテクノロジー産業へ投資するのに役立つ。その他
には、Pemex が、中国の国営会社 3 社(中国開発銀行、中国工商銀行、中国海洋石油総公司)と共に行う中墨エ
ネルギー基金の創設がある。同基金は、50 億ドルを限度額として Pemex の事業に融資する。その中には、中部
San Luis Potosí 州で進行中の“Los Ramones”ガスパイプライン第二期工事が含まれる。このガスパイプライン
は、米国の Texas 州からメキシコの Guanajato 州まで建設され、メキシコ中部へのガス供給増加を狙う。
 パイプラインの完成でガス輸入が 45%増
ペーニャ・ニエト大統領が 2014 年 12 月 2 日、北東部 Nuevo León 州 Los Ramones で、“Los Ramones”ガスパ
イプライン第一期工事の着工式に参列し、完成の暁には米国からの天然ガスの輸入が 45%増加すると述べた。
同事業は、ここ 40 年間の炭化水素輸送プロジェクトで最大のものだ。ペーニャ・ニエト大統領は、今回の事業は
政府が推し進めるガスパイプライン 8500km 建設プロジェクトの一部で、全てのプロジェクトが完了する際には、
現在より総延長で 75%増、輸送量で 2 倍になると強調した。ペメックスのエミリオ・ロソーヤ総裁も、第一期終了後、
メキシコは世界でも高度な天然ガス輸送インフラを獲得すると述べた。
Los Ramonesガスパイプラインは米国Agua Dulce からメキシコ中部Guanajuato州Apaseo el Alto までを繋ぎ、
総延長は 1021km、総事業費は 25 億ドル。第一期工事は米国との国境を接する Tamaulipas 州から Nuevo León
州までの 116km。Agua Dulce から日量 2 兆 1000 億立方メートルの天然ガスを輸入できる能力を有する。それは、
メキシコの消費量のおよそ 3 分の 1 に匹敵する規模で、主に中部及び東部の電力需要に応じる。
 天然ガスパイプライン事業の入札結果
メキシコの CFE(メキシコ電力公社)が 2015 年 1 月 8 日発表したところによると、米国テキサス州内 Waha-
Presidio 市を結ぶ天然ガスパイプライン事業の入札の結果、米国の Energy Transfer Partners と Mastec、そしてメ
キシコの Carso Energy によるコンソーシアムが落札した。建設事業には、設計・建設・操業・維持管理が含まれる。
CFEのコミュニケによると、応札したのは6つのコンソーシアムで、Energy Transfer Partners らのコンソーシアムは
7 億 6706 万 6497 ドルを提示したが、応札した中で最低額だっただけでなく、想定入札額の 13 億 6500 万ドルを大
きく下回った。
今回のガスパイプラインは全長 230km で、輸送能力は日量 13 億 5000 万平方フィート。国境の Presidio 市から
天然ガスをメキシコ国内北部、中部及び東部に運び、北西部Chihuahua州のOjinaga‐El Encinoパイプラインに連結
させる。操業開始は、2017 年 3 月を予定している。
 ガス・電気の 12 プロジェクト入札発表
2015 年 1 月29 日にメキシコ政府が、電気及び天然ガスのインフラ関連12 プロジェクトの入札手続き開始を発表
した。CFE のエンリケ・オチョア総裁によると、パイプライン接続、天然ガス輸送、発電所、送配電システムに関連し
た事業である。これらの実施により、国内のパイプラインは 1015km 延長され、設備容量は 666MW 増加、また送電
網は約 1000km 拡張されることとなる。
プロジェクトには、Chihuahua 州 Samalayuca と Sonora 州 Sásabe 間のパイプラインを、Chihuahua 州 San
Isidro-Samalayuca 間(入札中)及び Sonora 州 Sásabe-Guaymas 間(建設中)の各パイプラインと繋いで米国テキサ
ス州Waha 地区の天然ガスを輸送する事業や、海上輸送により Baja California Sur 州に19-170MMscfd(百万立方フ
ィート/日)の天然ガスを運ぶ計画、天然ガスを使用して発電を行うコンバインドサイクル発電所“Topolobampo III”
建設(Sinaloa 州 Ahome 市)などが含まれる。投資額は総額 33 億ドル。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
3.2 LNG 輸出の可能性
メキシコ国内には、アルタミラ他合計3 地点の港湾ターミナルが LNG 輸出ターミナルの候補地となっ
ている。
メキシコ国内で天然ガスの完全自給が達成されてからでなければ、メキシコは LNG を輸出できない
かという疑問に関しては、コロンビアは原油生産の随伴ガスを生産しながら、天然ガスや LNG を輸入し
ている。近い将来ではないが、コロンビアは LNG 輸出を視野に入れている。メキシコも、決して近い将
来ではないが、LNG を輸出できる可能性があり、その時期は特に米国からの天然ガス輸入が本格化す
れば、可能性が高まる。
<LNG プラント建設計画>
 ペメックス、太平洋岸に LNG プラント建設
投資総額は 60 億 US$。ペメックスは 2020 年に操業開始予定。ペメックスは 11 月 5 日、太平洋岸にメキシコで初
となる LNG プラントを建設するプロジェクト(投資総額60 億US$)を発表。PGPB の Alejandro Martínez Sibaja 社長に
よると、本プロジェクトの実施には LNG に関連する大手企業とのコンソーシアムを形成することとなる。本プロジェ
クトは、Veracruz 州 Pajaritos のターミナルと Oaxaca 州 Salina Curz の精油所とを繋ぐパイプライン建設プロジェクト
の第 2 段階に当たる。同社の発表によると、2020 年に操業を開始する見通しである。
 ペメックスが天然ガス液化プラントに、60 億ドル投資
ペメックスが 2014 年11 月5 日、60 億ドルを投じて、同国初となる LNG プラントの開発事業を実施すると明らかに
した。ペメックス系列の石油化学・ガス会社 PGPB の社長が、アメリカのヒューストンでエネルギーセクターの投資
家及び企業家を前に新規事業について説明したところによると、南東部 Veracruz 州 Pajaritos の湾岸天然ガス施設
から南西部 Oaxaca 州の“Salina Cruz”精製所を繋ぐ両太平洋ベルト計画の第二段階がそれである。
事業目的は、メキシコの地理的優位を活かし、メキシコ湾で生産される天然ガスを輸送・精製した上でアジア太平
洋地域に輸出すること、それによりビジネスチャンスを拡大することである。事業開始は 2020 年とし、2014 年 11 月
に Salina Cruz 市近辺での建設地選定を含めた調査を開始した。
4. ラウンドゼロとラウンドワンの動き
2014 年8 月13 日、メキシコのペーニャ・ニエト大統領の 2 次法制の署名式での演説のとおり、メキシコ・
エネルギー省(SENER)、炭化水素委員会(CNH)及びペメックスは、ラウンドゼロの結果、ラウンドワンの
対象鉱区を公表した(図 5)。
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
出所: SPE (The Society of Petroleum Engineers)
図 5 エネルギー省 SENER 公表のラウンドゼロ及びラウンドワン鉱区
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ローカルコンテンツ(機材・部品等の現地調達率)のルールについても整備されていくであろう。外資勢
にとっては早期に参入すればリスクは高いが、それなりの対価は得られる。逆にリスクを見極めて遅く参
入すれば、当然ながらその対価は低くなる。
<メキシコ政府関係者の見解>
 メキシコ・エネルギー改革:墨エネルギー省次官
2014 年 11 月 14 日、「メキシコ・エネルギー改革」セミナー(シンクタンク大西洋協議会主催。@Wilson Center)が
開催され、メルガール(Maria de Lourdes Melgar Palacios)メキシコ・エネルギー省(SENER)炭化水素次官がスピー
チした。
スピーチ概要
• メキシコのエネルギー改革の重要な要素は、完全に包括的かつ歴史的な改革として、2013 年 12 月に議会で
可決された憲法改正に具体化されている。
• メキシコのエネルギー改革の基本原則は、①憲法で保障された資源の国家帰属、②自由な市場アクセス、③
強力な規制当局、④透明性及び説明責任、⑤持続性及び環境保護、⑥政府財政収入の最大化の 6 点からな
る。
• これら 6 つの基本原則を実行するため、連邦政府には、①上流権益の入札を実施する炭化水素委員会 CNH
の他、②エネルギーの中流・下流部門を規制する機関、③安全及び環境を規制する機関の3段階の規制機関
を設置する。
• ペメックスでは従前通り、石油系炭化水素の探鉱開発は、極めて戦略的な活動である。探鉱開発は通常、3 種
類の異なるタイプの契約に基づいて実行されている。3 種類の契約とは、①ライセンス契約、②生産物分与契
約、③利益分与契約である。
• CNH が今後実施する国際入札は、全ての参加者に対して開かれており、エネルギー省SENER が、CNH の技
術的支援を得ながら、入札対象鉱区を選定する。CNH は、落札された鉱区に関する契約全てに署名して、契
約の履行状況をフォローする。
• 6 つの基本原則の中で特筆される点は、「透明性及び説明責任」である。これがメキシコ・エネルギー改革の
鍵となる。CNH は、公平性をもってチェックする原則に基づき、一件ずつの契約に対処する。
• ペメックスは今後、国家生産企業(productive state company)として位置付けられるが、これは単なる名称変更
ではない。ペメックスは、独立委員 5 名からなる経営委員会の手に経営が委ねられる。
質疑応答
(1)原油価格低下の影響
• 現在の原油市場の動向を注視している。外国企業は大水深に関心が高いと考えるが、浅海には生産コストの
競争力がある。2014 年 11 月時点では、原油価格低下の悪影響は見られない。
• メキシコ経済は、原油依存経済ではない。政府収入は石油収入 3 割ほどに依存しているが、民間経済は製造
業やサービスの比率が高い。
(2)シェールガス・シェールオイル開発
• メキシコ北部には、膨大な埋蔵量のシェールガス及びシェールオイルの存在が期待される。メキシコは将来
的には「エネルギーのハブ」として、エネルギーを輸出できるようにならなければならない。現在ではガスパイ
プライン入札が実施されているが、米国と接続するガスガスパイプラインが開通した後、最初は国内需要を満
たす必要があるが、次にはエネルギー輸出を目指す。
(3)開発地域
• メキシコの原油生産量は 2004 年から日量 100 万バレルも減少した。浅海には埋蔵量の豊富な多数の有望な
鉱区が存在する。他方、大水深のペルディト褶曲帯も有望である。メキシコには成熟油田が多いと言われる
が、成熟油田であっても、水平坑井や多段階水圧破砕といった最新技術を適用すれば、生産量を伸ばす事が
可能である。非在来型鉱区では、天然ガスの比率が高いであろう。将来的には、十分に輸出可能な資源量が
存在すると見る。
• 法的枠組の整備に加えて、ガスパイプライン等のインフラ整備が急務である。
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
 メキシコ・エネルギー改革:CFE 社長
2014 年 11 月 14 日、「メキシコ・エネルギー改革」セミナー(シンクタンク大西洋協議会主催。@Wilson Center)が
開催され、エンリケ・オチョア連邦エネルギー委員会(CFE:メキシコ電力公社)CEO がスピーチした。
• 今般のエネルギー改革により、外国投資家に対して門戸開放するが、既存の長期契約はそのまま尊重する。
CFE は、長年メキシコ発電部門の心臓部として存在してきた。重要な事は、発電し、電力市場が機能し、送配
電が滞りなく実行され、産業や家庭の消費者に電力を届けることである。
• 電力規制委員会が電力料金を設定する。CFE は、①発電、②送電、③配電、④商業化の 4 つの機能を担って
いる。
• 2014 年 1 月 12 日、メキシコの歴史上最大の電力需要 39,996MW を記録した。メキシコでは中間層が拡大し、
産業化が進展し、将来的に電力需要は一層増加していく。しかし、メキシコの電力料金は高い。2012 年時点で、
メキシコの電力料金は米国より 25%高いが、仮に補助金を除けば、73%高いことになる。
• メキシコの電力コストの 80%は燃料費で占められている。メキシコは世界第 6 位の天然ガス埋蔵量を誇る国な
ので、発電に天然ガスを一層使用するべきである。発電部門のガス消費量の 1/3 は輸入に依存しているので、
不利に作用している。
• 2012年、ニエト大統領は、メキシコの産業・電力・消費者にとって天然ガスが必要であるにもかかわらず、不足
している旨演説した。CFE は、LNG を輸入する権限を有している。LNG は、天然ガスのパイプライン輸入よりコ
ストが高くつくが、石油より安価で済む。CFE は、米国産天然ガスをパイプライン輸入することを最優先課題と
している。現状では、ガスパイプラインには天然ガスを輸入できるだけの十分な容量が無い。
• メキシコ国内のガスパイプライン網は、2013年時点で全長11,342kmに及んだ。しかし、全貌を俯瞰すれば、重
複があり、システムを成しているとは言い難い。パイプライン輸送能力が限定的になっている。隣接している
米国テキサス州と比較すると、テキサス州ではメキシコの 9 倍の長さのガスパイプラインネットワークが整備
されている。
• 新規ガスパイプライン計画は全長 15,160km に及び、投資総額は 74 億 5400 万ドルに上る。直近の北部・北西
部の 5 本のガスパイプライン建設事業だけで 51 億ドルを要する。
• 天然ガスを輸入した上で、燃料油から天然ガスへと発電所の燃料を転換する必要がある。更に、コンバインド
サイクル発電を導入する必要がある。かかる転換事業には総額 77 億ドルを要する。
• まとめると、CFE の戦略は、第 1 段階でガスパイプラインを建設し、第 2 段階で燃料油から天然ガスへ燃料転
換し、第 3 段階で新規のガス火力発電所を建設する、3 段階の計画である。かかる 3 段階計画を着実に実行
することにより、産業・商業・住宅向け電力料金を引き下げていく。
• CFE は、2012 年に 19 万 4000 バレルの燃料油を焚いているが、2017 年までに 94%削減する目標である。
• CNH が入札を実施するラウンドワンでは、外国投資家を集め、ガス生産量を増加させることも期待されている。
ペメックスが現在所有するガスパイプラインの所有権は、今後 CENAGAS へ移転される。CFE はガスパイプラ
インを独占しない。
4.1 ラウンドゼロの結果
2014 年 8 月、ペメックスはメキシコ全体の 2P(確認+推定)埋蔵量の 83%(申請の 100%)、想定資源量の
21%(申請 31%、結果として申請の 67%が認められた)の保持を認められ、面積 9 万 km2、石油換算で 2P 埋
蔵量 206 億バレル、想定資源量 221 億バレルを保持することとなった(表 2、図 6)。ラウンドゼロではぺメ
ックスが今後 20 年以上、石油換算で日産 250 万バレルを維持するために、保持したい鉱区は、ほとんど
認められた格好である。
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表 2 認可された 2P(確認+推定)埋蔵量と想定資源量の内訳
出所: CNH, SENER
2 P 埋蔵量
想定資源量
在来型
非在来型
認可量
(石油換算 100 万バレル)
20,589
22,126
(18,222)
(3,904)
タイプ / エリア
在来型
浅海
南東部
北部
陸上
南部
チコンテペック
(Chicontepec)
ブルゴス(Burgos)
北部
大水深
ペ ル デ ィ ト
(Perdido)
ホ ロ ッ ク ハ ン
(Holok-Han)
非在来型
計
認可 / 申請
(%)
100
67
70.9
51.6
2P 埋蔵量
(石油換算 100 万バレル)
20,589
11,374
11,238
136
8,818
4,379
3,556
面積(km2)
17,010
72,897
(64,489)
(8,408)
埋蔵量 / 生産量
(年)
15.5
想定資源量
(石油換算 100 万バレル)
18,222
7,472
7,472
5,913
5,371
-
425
459
397
-
542
4,837
3,013
397
1,824
20,589
3,904
22,126
図 6 エネルギー省 SENER 公表のラウンドゼロ鉱区
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4.2 ラウンドゼロの取り扱い
表 3 に示す南部地域 Poza Rica Altamira や北部地域 Burgos をカバーする 22 の既存契約(CIEP:
Integrated Exploration and Production Contract と COPF: Financed Public Works Contract)について改革
を反映した内容の新契約へと変更される。この変更は 2015 年 2 月から 2015 年 8 月にかけて行われる予
定。これら新契約への移行は、入札に付されない。
表 3 新契約へ変更される既存契約(COPF、CIEP)第一弾 - 2014 年
出所: CNH, SENER
Boe = 石油換算バレル、M = 千、 MM = 百万
Asset
Area
Contract
Area
Operating
Years Km2
#
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
Cinco Pres
Bellota Jujo
APRA
APRA
APRA
APRA
APRA
Burgos
Burgos
Burgos
APRA
Magallanes
Santuario
Altamira
Arenque
Panuco
San Andres
Tierra Blanca
Nejo
Olmos
Mision
Ebano
TOTAL
2.7
2.7
1.8
1.6
1.8
1.8
1.8
7.3
10.5
10.6
10.9
169
130
1,625
2,035
1,839
209
358
1,165
358
1,972
1,584
11,444
2P
3P
P2
P3
Resources
Production
Reserves
Reserves
Reserves
Reserves
To May 2014
MMBoe
MMBoe
MMBoe
Oil
Gas
MMCFD
MBD
MMPCD
36
93 7.4
10
41
41 8.0
4
6
13
13
2.1
0
66
82
994
5.4
0
29
37
132
1.6
8
202
531
100
3.2
0
36
60
37
1.4
0
32
44 9.9
210
13
45 0.0
3
68
81 0.0
110
40
56 0.3
0
569
1,083
1,276
39
345
Investment
MMUSD
2013
20142015
138
133
200
133
50
72
241
215
155
331
86
177
137
103
450
602
20
108
110
179
249
575
1,836
2,628
新契約へ変更される既存契約(COPF、CIEP)第二弾 - 2015 年
Boe = 石油換算バレル、M = 千、 MM = 百万
Asset
Area
#
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
Burgos
Burgos
Burgos
Burgos
ATG
ATG
ATG
ATG
ATG
ATG
Samaria
Pirineo*
Cuervito*
Fronterizo*
Monclova*
Amatitlan
Miahuapan
Miquetla
Pitepec
Humapa
Soledad
Carrizo**
TOTAL
Contract
Operating
Years
9.3
10.6
10.6
7.3
0
0
0.7
0.1
0
0.7
2.4
Area
Km2
3,840
231
231
3,358
230
128
112
230
128
125
13
8,626
P2
P3
Resources
2P
3P
Reserves
Reserves
Reserves
Reserves
MMBoe
MMBoe
MMBoe
11
58
31
3
368
88
195
440
260
179
6
1,639
16
68
35
4
929
279
224
1,049
503
291
51
3,439
-
-
出所: CNH, SENER
Production
To May 2014
Oil
Gas
MMCFD
MBD
MMPCD
0
24.3
0.65
30.6
0.41
26.6
0
17.9
252
0.1
0.1
101
0.3
0.4
86
0.9
2.5
252
0.1
0.1
157
1.1
2.1
128
3.4
8.1
976
7
113
Investment
History
MMUSD
525.5
311.1
270.4
490.6
1,598
*Oil production is referred to the production of condensed
**Suspended
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ラウンドゼロによってペメックスが取り置いた資産に関しては、10 プロジェクト(表 4: 陸上 Rodador,
Ogarrio, Cardenas-Mora、洋上 Bolontiku, Sinan, Ek、超重質油 Ayatsil-Tekel-Utsil(API 度 10 未満)、大水
深ガス Kunah-Piklis、大水深油 Exploratus, Trion)について、ペメックスがファームアウトすることによって
民間企業とのパートナーシップを形成して開発を行う。このファームアウト 10 契約は、成熟油田、洋上重
質油田、大水深ガス田、ペルディトエリアの新規発見の 4 種類に大別される。これらの鉱区は早期に成果
が現れるよう特に重視されており、ラウンド 0.5 と呼ばれた。この通称ラウンド 0.5 と呼ばれていたものは、
2014 年 9 月にラウンドワンの中でファームアウト案件として取り扱われることが明らかになった。
新契約へ変更される既存契約(COPF、CIEP)とファームアウト案件のタイムテーブルを図 7 に示
した。
表 4 ラウンド 0.5 の対象鉱区(2014 年 8 月時点)
出所: CNH, SENER
Field / Group
Mature field
Field of extra-heavy
offshore oil
Giants deepwater gas
(Kunah-Piklis)
Discoveries in Perdido
Area (AP-Oil)
Onshore (Rodador, Ogarrio,
Cardenas-Mora)
Offshore (Bolontiku, Sinan
and Ek (Jsk))
Ayatsil-Tekel-Utsil
Kunah-Piklis
Trion
Exploratus*
TOTAL
*Its reserves will increase by the end of 2014
Area
P2
P3
Investment
3P Reserves
Reserves
2P Reserves
Reserves
Km2
MMBoe
MMBoe
MMUSD
312.8
247.9
263.6
1,701
Years to
engage
5
119.4
350.1
497.3
6,330
6
88.8
746.6
862.5
6,233
10
55.3
211.9
501.6
6,793
10
8,075
3,165
32,295
8
8
1,556.5
304.6
234.4
2,664.0
22.6 12.9 611.7
(JV)
出所: ペメックス
図 7 ラウンドゼロのタイムテーブル
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 CNH の代表 JV(ファームアウト)を発言(2015.2.27)。
モデレーター(テキサス大 Jorge Pinon):
Pemex の改革には技術移転やプロセスの移転が重要だ。Ecopetrol は、US Gulf of Mexico で Shell と共同(JV)し、
技術をシェアした。Pemex の場合はチャレンジングだが、ステップアウトして、メキシコに投資が出来るようになる
だろうか?
CNH(Edgar Rangel-German, Commissioner):
ショートアンサーとしては、もちろんである。これらから数年の間に、色々なオファーが出る。ファームアウト
(JV)は、ファイナンスや技術にアクセスする上での良い第一歩になる。SENER の代表は同じパネルに含まれて
いたが、SHCP の代表はセミナー全体を見ても、パネリストにはいなかった。
他方、JV 情報については、ペメックスがラウンドワンに付随して行うものも、サービス契約の移行の一環として行
うものも、まだ何の情報も得られていない。前者は入札公示の遅れ、後者は第一陣の契約変更が終わるまで開示
しないという方針かと思料する。
4.3 ラウンドワン
SENER の当初案では 169 鉱区が入札の対象となる。うち 109 鉱区が探鉱、60 鉱区が生産段階。対象鉱
区には浅海、重質油、チコンテペック/非在来型資源、陸上成熟油田、大水深を含む。CNH は今回発表
の対象鉱区に対するコメントを受け取り、11 月の第 4 週に最終入札対象鉱区を決定する。SENER はその
ホームページに特設サイトを創設し、対象となる 169 エリアを発表している(表 5、図 8)。
表 5 ラウンドワン対象鉱区の 2P(確認+推定)埋蔵量と想定資源量の内訳
出所: CNH, SENER
大水深ペルディト
大水深南部
チコンテペック、非在来型
陸上、浅海、重質油
非在来型
想定資源量
想定資源量
2P 埋蔵量
想定資源量
2P 埋蔵量
想定資源量
想定資源量
石油換算
100 万バレル
1,591
3,222
2,678
8,927
1,204
724
142
鉱区数
11
17
28
62
32
11
8
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
ラウンドワン対象鉱区の 2P 埋蔵量と想定資源量の内訳:探鉱/開発、在来型/非在来型
出所: CNH, SENER
鉱区のタイプ
在来型
陸上
チコンテペック
浅海
重質油
大水深
非在来型
TOTAL
開発
2P 埋蔵量
石油換算 100 万バ
レル
3,782
61
2,671
293
757
3,782
%
15.2
0.2
10.8
1.2
3.0
15
探鉱
想定資源量
石油換算 100 万バ
レル
5,537
724
4,813
9,069
14,606
%
11
7.0
21.0
15.0
13
図 8 エネルギー省 SENER 公表のラウンドワン鉱区
SENER は9月 26 日より、パブリックコメントを得ている。入札実施機関である CNH は 2014 年 11 月の第
4 週に入札条件を発表して最終的な対象エリアを決定した。
石油開発に係る契約形態および経済条件は、SENER が各対象の特性を踏まえて決定し、ライセンス、
生産物分与、利益分与、サービスのいずれかが適用される。ただし、ラウンドワンではライセンスおよび生
産物分与の2形態がほとんどとなる見込みである。
前述したように、巷間で囁かれた「ラウンド0.5」というのは存在せず、ラウンドワンのファームアウト案件と
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
して同時に実施する。ラウンドワンは、表6に示すように、2014年9月時点では11月に浅海を対象に実施し
た後に、重質油、チコンテペックおよび非在来、陸上(成熟油田)、大水深という計5グループの順で順次
実施予定であった。
表6 ラウンドワンのタイムテーブル(2014年9月26日)
出所: CNH, SENER(World NOCs Congress Americas @メキシコ・カンクン 2014.9.26 当時)
Sinan, Bolontiku, Ek
Utsil-Tekel-Ayatsil
4
Radador,
Ogarrio,
Mora-Cardenas
Trion, Exploratus(北部)
Kunah-Piklis(南部)
• ラウンドワンのような入札のプロセスにおいて、大事なデータの一つに、政府(CNH)がペメックスより移管された地質データがある。
• ラウンドワンの対象となる 169 鉱区の 2D/3D 地震探査データ。
• 浅海域のデータ36万ドル。ペメックス本社に行かなくとも、遠隔地からデータルームにアクセスして、各社独自のデータ解釈ができる。
データルームは毎月開設され、5 月中旬の大水深データルームまで続く。
• 例えば浅海域のデータルームは 1 月 15 日に開設され、7 月に落札者が決まる。
各グループともに入札公開の2ヶ月後にデータルームをオープンする。同時にデータパッケージも販売
される。現状ではデータはすべてペメックスの手元にあり、今後CNHへの移管がなされる(CNHはすべて
のデータを完全に把握している訳ではなく、移管されるデータの量・質が参入各社に共通する懸案であ
る)。データルーム開示から4-5 ヵ月後に落札者を決定する。入札及びその評価はCNHが実施する。
民間は、相対交渉によりペメックスとのパートナーリングが可能となるが、その権益取得には入札プロセ
スを経る必要がある。ペメックスとの MOU により便宜は図られない。パートナーリングに当たっては、メキ
シコでの操業主体であるペメックスとの関係を進化させるとともに、権益付与の面で今後機能が拡充され
る SENER/CNH との協力体制を構築する必要もある。そのための手段として、技術協力や人的交流が必
要であろう。ペメックスとのJVのパートナー選定は、ペメックス役員会とCNHのどちらが主導権を握るのか
についても注視する必要があろう。
********************************************
MOU:2014 年 4 月 GDF Suez, Total、2014 年 9 月 BHP Billiton, ONGC Videsh, Petronas、2014 年 10 月 ExxonMobil,
Keppel, Pacific Rubiales, Chevron, Eni、2014 年 11 月 Kuwait Foreign Petroleum Exploration Company (KUFPEC),
CNOOC。
契約:2014 年 1 月 FMC、2014 年 6 月 GE、2014 年 10 月 Saipem, OneSubsea, Foster Wheeler。
********************************************
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 メキシコ・ラウンドワン(R1)情報
資料のリンク先:http://www.ronda1.gob.mx/presentaciones.html
1.R1 の入札スケジュール: 入札締切日は記載無し
入札公示日
データルーム開設日
浅海
2015 年 1 月
2月
陸上
2015 年 2 月
3月
チコンテペック、非在来型
2015 年 3 月
4月
大水深
2015 年 4 月
5月
大企業(生産量日量 160 万バレル以上)同士のコンソーシアムを禁止する規制が、大水深・重質油・非在来には適
用されない旨が明記。権益譲渡には CNH による承認が必要な旨が明記。コンソーシアム内の全企業が連帯責任
を負うとされている。
2.浅海鉱区の試掘義務: 探鉱 14 鉱区で、3 年間に計 26 坑(3 年間に試掘を 2 坑行う)
3.入札判定: V= 0.90* State Share + 0.10 * Additional Investment(政府取り分の%が、入札条件の大宗を占める)
4.コスト回収: 各年の売り上げの 60%まで。
鉱区ごとの義務井の数は、鉱区 8 と 9 は各 1 坑、他鉱区は各 2 坑。
 Mexico rushed to open oil sector in 2014, can it maintain the pace in 2015? (Journal of Petroleum
Technology :JPT、2015.1)。
今まで変化が履行されていない経緯を見てきたものにとって、2014 年は驚きの年であった。
ラウンドワンにおいて、ペメックスは外資と同じ条件で望む。
CNH は昨年 12 月に浅海の 16 鉱区を公開。チコンテペックや採算コストの高いプレイの入札は、油価下落に伴
い延期か?
エネルギー省は入札契約案を作り政府になりかわり、契約に調印する。参加した外資は埋蔵量を帳簿につける
ことが出来る。公開鉱区はペメックスの技術や人的資源の限界を超えるものが対象(例えば、大水深、浅海域の
重質油、陸上の非在来型資源)。中でも関心が高いのが、大水深のペルディド褶曲帯鉱区(米国側では生産開始、
日量 10 万バレル)。シェブロンやエクソンモービルもペメックスと大水深ポテンシャルについて。スタディ協定を締
結。
メキシコの原油生産の 74%は洋上から。海からの生産には、現状の日量 240 万バレルを 2018 年までに日量
300 万バレルにする力はない。ペメックスに 2P 埋蔵量の 83%が与えられたが、その殆どは在来型であった。成熟
油田への EOR に経験を有するオキシデンタル石油とパシフィック・ルビアレス(Pacific Rubiales)メキシコ成熟油田
にビジネスチャンスを見ている(CO2-EOR)。
累計生産量(石油換算)の 82.5%:南東堆積盆地の浅海域。
残存埋蔵量(石油換算)の 55.8%南東堆積盆地の浅海域、39%タンピコ・ミサントラ。
シェール井 23 坑(ブルゴス、サビナス盆地):油 1 坑、コンデンセート 4 坑、ほかドライガスないし」空井戸、安全
性の問題、米国産ガス価とメキシコでのシェールガス採掘コスト、水圧破砕用の水確保、道路、移送インフラ(パイ
プライン)。
チュコンテペックへの投資:30 億ドルの投資に反して日量 4.5 万バレル(回収率 4%)。
現状の生産量:油日量 240 万バレル、天然ガス日量 100 万バレル(原油換算)。
 Anticipating success(JPT、2015.1)。
エネルギー省次官 Maria de Lourdes Melgar Palacios と国家炭化水素委員会 CNH 委員長 Edgar Rangel German
がエネルギー改革と鉱区入札プロセスを説明。
CNH2008年設立(上流)。CRE(中下流、電力)。イーグルフォードシェールのCoahuila州へのつながり? タンピ
コ・ミサントラ、チコンテペック、プエブラ。
予想資源量(Prospective Resources)は石油換算 1120 億バレル(内非在来型 600 億バレル、大水深 250 億バレ
ル、在来型 250 億バレル)の半分強が液体分。
ラウンドワンでイーグルフォードシェール近くにガス鉱区が少ない理由は、Coahuila 州で道路・パイプライン・居
住施設等のインフラ整備中なため。次回以降のラウンド(ラウンドツー以降)まで待って欲しい。水圧破砕用の水
は、飲料水に向かない高塩分濃度の地下水(brackish)を想定。
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1 月にデータルーム開設、数ヵ月後に入札手続き、10~11 月に契約予定。
鉱区入札設計には、ブラジルやコロンビアを参考に。Mexican Petroleum Fund はノルウェーを参考に。
2008 年の改革は成功とはいえないが、2013 年のそれは電力分野も含み、透明性と責任の所在から成功と言え
よう。
昨年半ばからの油価の下落については、過去の経験も踏まえ、長期的視点で対処する。
ローカルコンテンツ:2015 年(投資の)25%→2025 年 35%(除く大水深)。
超重質油には 5 社ほどの参加で成功か?
ラウンドワンがメキシコの油生産増に結び付くには、10 年ほどかかろう。
 Biggest onshore opportunity presents equally large puzzle to solve(JPT、2015.1)。
ラウンドワンの入札にかかる陸上鉱区の90%以上がチコンテペックに関するもの。膨大な埋蔵量ポテンシャル
(出所: SENER によれば 400 億バレルの原始埋蔵量、メキシコ全体の 40%)も、30 億ドルの投資にもかかわら
ず、4 万バレル/日程度の回収率の低さは開発を失望させる結果に。2008 年より外資掘削コントラクターを入れて
掘削(しかし、2800 坑掘削されて石油換算 8600 万バレルの回収。1 坑当たりたった 3.1 万バレル)。
タンピコ・ミサントラ盆地のオイルリッチな根源岩:62 鉱区、石油換算 90 億バレル、層厚 200 メートル、チコンテ
ペック(タイトで低圧の砂岩と炭酸塩岩)よりも有望? Tithonian シェール。米国側に比べ、複雑な断層(Sierra
Madre 山脈の影響)。チコンテペックでは低圧なため、溶解ガス押しが排油機構として、きかない。初期レート日量
500 バレル → 日量 20 バレル。水平坑井と多段階水圧破砕の試み。
 Briefing enhanced oil recovery to Mexican fields(JPT、2015.1)。
メキシコの原油生産の回復には、成熟油田のリハビリに有効な採油増進の経験に富む外資(例えば、
Occidental Petroleum, Pacific Rubiales Energy)を呼び込む必要がある。メキシコの採油増進の経験は少ない。
CO2-EOR 技術と人材に課題。
Occidental Petroleum の液体日産量 1200 万バレル(内、油はたった 75 万バレル)。
Pacific Rubiales Energyは 2003 年の誕生ながら、日量33 万バレルの生産を達成。メキシコに 130名のスタッフ。
Rubiales 油田は日産量 1.4 万バレルが 4 年で 21 万バレルに拡大(EOR、水平坑井、ポンピング)。課題は水日産
量 400 万バレルの処理(農業に再利用)。
4.3.1 浅海
(1)探鉱
 ラウンド 1、第 1 回浅海域ブロックの入札に関する SENER 説明会(JOGMEC メキシコ、
2014.12.11)。
12 月 11 日、ラウンド 1 の第 1 回浅海域ブロックの入札に関する説明が SENER の主催で行われた
(図 9)。
① Pedro Joaquin エネルギー大臣から最初の挨拶
② Zepeda CNH 委員長からラウンドワンの第 1 入札に関する説明
〇大水深、非在来、超重質油、成熟油田、浅海水等のブロックのそれぞれの入札まとめて「ラウ
ンドワン」と称するため、今回の浅海域の入札はラウンドワンの最初の入札(Primera licitacion de
Ronda Uno)と呼称する。
〇入札のベース(Base de licitcion)とは、「必要条件・プロセス・期間」を調整するものである。
〇オペレーター会社としての入札参加条件:
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
1- 2010~2014年の間に少なくとも3件の探鉱開発プロジェクトに参加したことがある。もしくは、
1~2 件の 1,000 百万 USD 規模の大型プロジェクトに参加した経験がある。
2- 浅海に関する具体的な知識の提示。
3- 10 年以上の専門知識のある従業員を雇っていること。
4- 5 年以上の安全・環境保護に関する知識があること。
5- 経済面では 2 オプションが提示された。
1)1 社につき 10 億米ドルの資金を有していること。また、コンソーシアムを組む場合、合計で金
額に達していれば良いが 3 社を超えないこと。
2)もしくは、6 億米ドルの資金を有するオペレーターが参加していること。また、100 億ドルを超
える全活動があること。
6- オペレーター会社は、コンソーシアム内に 3 社のうち 1 社として経済的参加の会社を含めな
ければならない。
7- 14 ブロックのうち、入札できるのは 5 ブロックまで。
〇コンソーシアム
1- 1 社は 2 つ以上のコンソーシアムに参加することはできない。
2- 大規模企業(石油換算160 万バレル)に関する規定として、浅海の入札にはコンソーシアム
を組んでの参加は不可。1 社として入札で競合すること。ただし、浅海以外での入札ではこの
限りではない。
〇スケジュール(図 10)
3 回の明確化ステップを挟み、その間、PQ や契約書に関する様々な調整等を行う。
第 1 回目:12/15~2/25、データ室に関する明確化
データ室の開設:1/15~7/14 の 6 か月 (アクセス申請は 12/15~2/25)。2014 年 12/15 から
申請を受け付ける。
第 2 回目:12/15~3/15、PQ に関する明確化
PQ の書類の受付期間は、12/15~3/31。内容の確認は 12/15~4/23。
第 3 回目:1/15~6/15、提出、入札、落札と契約に関する明確化
入札に関する情報(必要条件、スケジュール、PQ、契約書など)は、全てwww.ronda1.gob.mxで
公示され、今後、CNH のコミッショナーは、企業との直接の連絡、面談等を一切禁止とする。
③ Melgar 次官から浅海ブロックに関する説明
1- 浅海の 14 ブロック、116~500 ㎢ (合計 4,222 ㎢)を入札。
2- ナショナルコンテンツの割合は今後決定する
3- 契約期間は 25 年、認められた場合にのみ 5 年+5 年、最大で 10 年の延長が可能。
・探鉱段階→初期段階で 3 年、2 年延長して最大で 5 年。
・開発段階→~22 年。探鉱段階で商業レベルの発見があった場合、開発プランを提出する。
その際、EOR の必要が認められれば最大で 10 年の延長が可能。
4- 14 ブロックで 36 か月以内に 26 探査井の掘削を約束。
5- 3 年で未開発エリアを 50%に、4 年目で残りの 50%、5 年目には 100%へ。
6- 今後の予定は、浅海域(生産):1 月公示、同月データ室開設。陸上油田:2 月公示、3 月デ
ータ室開設。チコンテペック&非在来:3 月公示、4 月データ室開設。大水深:4 月公示、5 月デ
ータ室開設。
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炭化水素探査及び採掘の監督調整機関である CNH(国家炭化水素委員会)の Juan Carlos
Zepeda 委員長は、“ラウンドワン”に含まれる全 169 鉱区のうち昨年 12 月に公表された最初の 14 鉱
区に企業が関心を有していると述べた。
出所: CNH
図 9 CNH 公表のラウンドゼロ及びラウンドワン鉱区
関心を示す 30 企業のうち、これまでに 16 社が入札に際して該当区域の技術的情報を得るべく、
委員会のデータベースへのアクセスを申請した。その後、探査や採掘活動への参加もしくは出資メ
ンバーとなる意図を証明するために企業が提出した書類のチェックがなされ、7 社(ExxonMobil,
Chevron, Ecopetrol, BG Group, Shell, Hunt Oil, BHP Billiton)が総額 530 万ペソ(36 万 2000 ドル)を
支払い、データベースへのアクセスが許可された。このうち 3 社は、すでに出資を履行し、1 社は 1
月 15 日に、Veracruz, Tabasco, Campeche 各州沿岸に面した浅海地帯の地質(Pliocene, Miocene
and fractured Cretaceous sections)など詳細な情報を得ている。
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出所: CNH
図 10 ラウンドワンの浅海探鉱スケジュール
 メキシコ湾浅海域における探鉱入札の説明(2014.12.10)。
CNH のホームページ上で行われた。セッションには 7 名の CNH コミッショナーが参加し、ライブ放送の形式(スペ
イン語のみ)で行われた。拾えた範囲で箇条書きにて第一報。後に CNH のホームページ上に同情報が掲載される
ことになっているので、追って修正・追加予定。
・浅海域(探鉱 5 ヵ年)の 14 エリアの入札。契約書は 1 エリアにつき 1 つ、合計 14 契約書。
・契約形態は、生産物分与契約である。水深 40~80m、採算コスト(プロジェクト収支均衡点)20 ドル/バレル。
・データ室へのアクセスは(280,000 ペソ?)、2015/1/15~2015/6/15(7 か月)まで。情報が入っているハードディスク
を受理。
・クラリフィケーション 3 ステップ:データへのアクセス→事前資格審査(PQ)の必要条件の発表→質疑応答。
・PQ の 2 ステップ:1 書類の受け取り、2 内容のチェック(経験、財政キャパシティー)、不足情報があれば、期間内に
再提出可。
※今後のスケジュール
1. データ―室の開設
1/15~7/15
2. 最終的な入札ベースの公表
3/13
3. PQ
4/23
4. 契約書の最終版の決定
6/15
5. 入札(生放送)
7/15
6. 落札の発表
7/17
7. 契約
8/17
入札ベース:応札期限、鉱区範囲、PQ 基準、経済条件、落札者決定の変数、契約書ドラフト、契約期限、最低義務
作業等。
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 エネルギー改革後、初の入札鉱区を発表(2014.12.15)。
メキシコ政府が 11 日、石油産業の民間開放政策の第一弾となる一般入札の“ラウンドワン”に関して、最初の入
札鉱区を発表した。対象は、メキシコ湾に面する南部Veracruz、Tabasco、Campecheの各州沿岸の浅海14鉱区で、
総面積は 4222 平方 km に及ぶ。応募期間は、2015 年 1 月 15 日から 7 月 15 日までの 6 ヶ月。SENER によると、入
札参加の条件として、企業もしくはコンソーシアムは 10 億ドルの資金を有し、石油産業における事業経験が求めら
れる。財務省の UIF(金融インテリジェンス部)及び CNH が、応札書類の真偽性を精査する。
ラウンドワンは、2013 年のエネルギー改革に伴うもので、全体は 169 鉱区が対象となり、その内109 鉱区が探鉱、
60 鉱区が生産段階となる。政府は、民間企業による年間総投資額を 126 億ドル、4 年間では 504 億ドルを見込む。
また、対象鉱区は、浅海、成熟油田、非従来型資源を含む。なお、内外の民間企業に開放するラウンドワンに対し、
“ラウンドゼロ”は Pemex が引き続き開発を行う鉱区のことを指し、推定埋蔵量は 340 億バレルに達する。しかし生
産には多額の投資が必要とされ、2014 年については 277 億ドルが計上された。
入札発表会に出席した Pedro Joaquín Coldwell エネルギー相は、メキシコにとって前代未聞の出来事であると前
置きをしたうえで、今回の入札は、国営企業と外資系企業にとって 25 年間の生産物分与契約というスキームのもと
で原油を探掘する初の入札であり、契約期間は 5 年単位で 2 度の延長ができると明らかにした。また、民間企業が
参入できる今回の開放政策により、新たな資本と技術がメキシコ炭化水素の採掘にもたらされると強調した。原油
価格が低迷する中での入札に関し、エネルギー相は、企業に、どの国そしてどの鉱区に投資すべきか、より選択を
強いると発言した。更に、現在行われているエネルギー改革により、メキシコは石油とガスの埋蔵量減少に歯止め
をかけ、世界のエネルギー市場にこれまでになく確実にかつ安定して参入できると述べた。
他方で、エネルギー産業の専門家である David Shields が EFE 通信社に語ったところによると、メキシコ政府は、
中国国営企業との高速鉄道事業の入札を取り消したこともあって非常に慎重に入札を進めている。今回の入札発
表は、事前に公表された通りに実施された。生産及びコスト面において最も魅力的な油田が対象鉱区とされたが、
それは民間企業に関心を持ってもらうためであると分析している。片や CCE(企業調整会議)は、今後の炭化水素
部門の投資見通しに関し、原油価格の低迷で利益が減少する一方で、大規模な投資が必要となることから、投資環
境が悪化するだろうと警鐘を鳴らしている。
(2)生産
2 月 27 日にメキシコ政府が、浅海油田に関する新たな入札を実施すると発表した。全部で 169 区
画を対象とするいわゆる「ラウンドワン」の第2フェーズの枠組みにおけるもので、石油採掘に関する
5 件の入札が行われる。昨年 12 月 11 日に続く今次入札を通じて、今後 3 年間に 44 億 7800 万ドル
の投資が実行されると見込まれる。今回の入札対象は、メキシコ南東部 Tabasco, Campeche 両州沖
浅海の 281 平方 km の油床で、原油換算 6 億 7100 万バレル相当の炭化水素資源が埋蔵されてい
ると試算される(表 7)。タイムスケジュールを図 11 に示す。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
表7 ラウンドワンの浅海生産鉱区の埋蔵量
出所: CNH
注) 上の 5 フィードには生産履歴なし。ラウンドゼロでペメックスが保持しなかった 2P 埋蔵量の 17%のカテゴリーに入る。
注) 1 社あたりの最大入札鉱区数 5 の制限は外された。
出所: CNH
図 11 ラウンドワンの浅海生産スケジュール
エネルギー省の Pedro Joaquín Coldwell大臣名義のコミュニケによると、5 件の新規契約によってメ
キシコにおける原油生産量は日量平均 12 万 4000 バレル増大するだろう。5 鉱区総てについて、埋
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蔵量に関する認証が済んでいる上に、既に「開発段階にあって予備探鉱が必要ない」ことから、地
質的リスクが著しく低いとされる。これらの「新鉱区すべてが極めて魅力的である。メキシコで最も豊
かな南東部の海底盆地にあるからだ」と、コミュニケは謳っている。今次入札によって政府は石油増
産を図るが、同時に、エネルギー省言うところの「スーパージャイアント鉱床」カンタレルなどに 100
万ドル投資されるごとに 2.7 件の直接雇用が創出される効果がある。従って、2018 年までに直接雇
用 1 万 2000 件と間接雇用 3 万 2000 件の発生が期待される。
国際原油価格は 2014 年に 100 ドルから 50 ドルに下落したが、そのような環境の中でも、メキシコ
のエネルギー改革は勢いを失わないと、Coldwell は力説している。政府は昨年 12 月に「ラウンドワ
ン」の枠組みにおける第一回入札を発表した。Veracruz, Tabasco, Campeche 各州沖浅海の合計
4222 平方 km に及ぶ 14 ブロックが対象で、関心企業 43 社のうち 26 社が入札図書を購入し、これま
でに 16 社が資格審査プロセスを申請した。“国家炭化水素委員会”の Carlos Zepeda 委員長は、当
初3 月16 日とされた申請締切日を延長すると述べており、恐らく同月31 日までとなるだろう。各社の
資料提出締切日は 5 月29 日。これらの入札はペーニャ・ニエト現政権が推進しているエネルギー改
革の産物で、70 年間続いてきたエネルギー分野の国家独占に終止符が打たれ、民間資本の参入
に門戸が開かれた。この改革を通じて政府は巨額の民間投資を誘致し、石油生産低下を逆転させ
る皮算用である。
メキシコにおける原油生産は 2004 年に日量 338 万バレルを記録したことをピークに、現在の 243
万バレルまで低下を続けている。だが改革が始まると同時に、メキシコ財政は国際価格の劇的低下
という波に晒された。そのため政府は 1 月に GDP の 0.7%に相当する 85 億 7200 万ドルの歳出削減
を実施した。この中には石油公社 PEMEX 向けの予算 41 億 5300 万ドルも含まれていることから、ま
だ始動していない複数のプロジェクトが影響を受けると予想される。特にリスク度が高い、大深海鉱
床の開発が遅れるだろう。
 メキシコ当局、浅海鉱区5カ所(成熟油田の生産入札)の契約条件を認可=ラウンドワン入札のセカンドコール
2/27(金)に公示、入札は 9/30(水)。入札ガイドライン、PQ 要件、モデル契約(PSC)が公開。
5 鉱区(油田は 9 個):各油田の面積 15~59km2、各油田の 2P 埋蔵量 2800~7000 万バレル、各鉱区の最低義務
作業 6500~19500 万米ドル。
データアクセス費 530 万ペソ(≒4~5 千万円)、会社登録料 28 万ペソ(≒2~3 百万円)。いずれも浅海探鉱と同
額。アクセス申請期限は 6/1(月)。
入札資格は、過去 5 年の平均生産量が 10,000 バレル/日以上。
CNH は合計 284 件の質問を受け付け。来週 Q&A を公開。
***************************************************
当初は 5 分野(浅海、重質油、チコンテペックと非在来、陸上、深海)が予定されていたが、4 分野(浅海、南陸上、
北陸上、深海)に再編。将来の入札に関する具体的な対象鉱区は不明。分野毎に探鉱と生産に分かれ、うち南テ
ラス探鉱と深海生産は入札が無く、結果として 6 分野の入札予定。
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4.3.2 シェール
メキシコで最初となる民間企業の石油鉱区への入札は、国際的な石油価格の低下に関わらず、
順調に進んでいる。しかし、政府は原油価格が下落した現状でシェール鉱床を入札対象として提供
するかどうかについては見直す考えだ。
2014 年12 月、CNH の Zepeda 委員長は、現在の原油価格低下は、採掘に莫大なコストがかかり、
その償却のために短期間で生産を開始する必要のあるシェール油ガス田でのフィージビリティに影
響を及ぼすと述べ、これらシェール油ガス田が“ラウンドワン”で提供される鉱区に含まれることにつ
いて、再検討する必要があると語った。メキシコ政府は油価下落を受けて、2014 年12 月に入札の延
期を示唆したことになる。北部にシェールのポテンシャルがあるが、安全の確保から、ラウンドワンで
の入札は実現しないかもしれない。水圧破砕につかう水の使用権は国にある。シェール油ガス田を
入札に含めるかどうかについては、エネルギー省が2015年春頃には決定を下すことになっている。
 Mexico Shale Summit 2015 報告(2015.2.25)。
1. 本セミナーは今回が初の開催で、参加者は 200 名を超える盛況。しかしながら、参加者にオペレーターは少なく、
サプライヤーや銀行の姿が目立った。彼らは、ネットワーク作りを期待して集まったと思われる。
2. WoodMac の代表が、①チコンテペックもタンピコ・ミサントラも、ジュラ系~白亜系のシェールにポテンシャルがあ
るが、技術的な課題は多い。②Eagle Ford の延長部はチャレンジングである。治安、水、政治、およびインフラの
問題に加えて、北米からの安いガスとの競争がある。③鉱業権は、米国では売買が自由であるが、メキシコは現
時点ではそうではないので、早い時期から安価に仕込む事が可能かどうか分からない、という重要な指摘を行っ
た。①と②は、過去のセミナー等でも指摘されている。③はラウンドワンおよびサービス契約の移行に伴って、本
当の姿が明らかになると思われる。
3. 他方、サービス契約で操業を行っている会社から、JVのパートナーを探しているという発言もあった。これらの鉱
区が、CNHを通じてファームアウトされる可能性にも注目したい。
4. CNH の代表は、非在来は現在の油価(50 ドル/バレル)ではどこも経済的ではないと発言した。CNH がラウンドワ
ンの鉱区をどのように公示するかが注目される。
5. ペメックスの上流部門に関しては、ラウンドゼロで承継した油ガス田の政府取り分がどうなるか(これらには、サ
ービス契約を伴って承継した鉱区が含まれる)が、まだ議論とならなかった。引き続き、情報の収集に努める。
6. 中流部門で、パイプラインを管理する CENAGAS と、利用する会社(ペメックス、CFE)との関係に課題が指摘。
4.3.3 大水深
洋上で開発井を掘削するための規制は存在しているが、2010 年 4 月の BP マコンド事故の経験を
踏まえて、規制・安全基準をアップデートする必要があるのではないかと考えている。
米国メキシコ湾では、地質データや経験が豊富にあるので、それらを適切に反映させれば良い。
米国メキシコ湾とメキシコ側のメキシコ湾の地質構造は、類似しているが、全く同じではない。メキシコ
湾の北部で米国国境に近い海域が取り組み易いのではないか。
ペルディト褶曲帯は非常に膨大な埋蔵量を有する代わりに、極めて複雑な構造である。ペルディト
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等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
褶曲帯をハンドリングできる企業は限定されている。ペルディト褶曲帯は、ブラジルやアンゴラに類似
した構造が存在している。ペメックスの力量だけではハンドリングできないので、外国企業数社と組ま
なければならない。幾つかの探査井を掘削済みであり、地質データはある程度ある。ペルディト褶曲
帯の開発・生産には、高い技術力及び数十億ドルの投資が必要とされる。日本企業がメジャーと組む
のであれば、候補になり得るのかも知れない。
メキシコ湾深海における採掘の可能性のある油田についてはラウンドワンに含めることが保持され
る。というのも、これらの鉱床では、探査を始めてから生産開始までにおよそ 8 年の年月を要し、現在
起きている原油価格下落がフィージビリティへ影響しないと判断されるからである。

Deepwater results will not come quickly(JPT、2015.1)。
エネルギー改革の触媒となった大水深の結果は、技術課題と新しい海洋掘削規制から、少なくとも 10 年ほどは表れな
いだろう。
シェル社のペルディト油田におけるスパー型浮遊式プラットフォーム:日量 10 万バレル@メキシコの海域境界の北 8
マイルにおいて、水深 8000 フィートの海底とプラットフォームは係留されている。2010 年 3 月生産開始。
CNH は規制機関として(2008 年と歴史が浅く人材(120 名)・予算に不安があるが)、政治的圧力と経済的な課題(高採
掘コスト)を克服し、独立性を確保出来るかが問われている。開発プロジェクトの進捗が遅れるとコストアップ、利益率低
下に繋がる。メキシコにとって大水深開発はまだ実績がない。
メキシコ側ペルディト褶曲帯の 11 鉱区は油発見により開発されれば、油はパイプラインで米国のテキサス州境界まで
移送されよう(30 マイルほど:Tamaulipas 州の Matamoros 港?)。石油換算で 320 億バレルの軽質・超軽質油が期待。18
のプロスペクトが期待。1 鉱区当たりの面積は 115 平方マイルで、各々石油換算で 1.5 億バレルが期待。CNH の
President コミッショナーJuan Carlos Zepada は探鉱成功率 35%と言う(大水深探鉱の成功率:BP40%以上@2013 年、
Anadarko67%@2013 年)。ペルディト褶曲帯の水深は 8000~9600 フィート。貯留層は Subsalt Lower Tertiary。
一方、南側の大水深の 17 鉱区では、Mexican Ridges はガス、Salina 盆地はコンデンセート・軽質油・重質油の発見が期
待されている(石油換算で 32 億バレル)。38 のプロスペクトが期待。1 鉱区当たり、石油換算で 2 億バレルが期待。
Campeche Escarpment(急斜面)。
大水深のデータルームは 5 月開設予定。
2014 年 8 月の米国側メキシコ湾西部の探鉱入札は 1.1 億ドル。
商業的発見があれば 6 ヶ月以内に開発計画が提出され、25 年~30 年ほどの油田操業契約が想定。
ノルウェー大陸棚解放後 40 年の歴史を手本:1965 年当時ノルウェーの石油会社なし。すぐさま外資導入(技術・経験)
→ビジネス化。投資家の保護(油田開発には発見から 10 年、10 億ドル規模の投資)。リスク・投資・報酬の透明性。探鉱
や研究開発へのインセンティブ。国営石油会社スタトイルの 2001 年上場。
4.4 タイムライン
油価の下落を受けて、表 6 で示したスケジュールが後ろにずれた。
浅海探鉱の入札
2014 年 12 月 11 日(情報公開)~2015 年 7 月 15 日(入札日)
浅海生産の入札
2015 年 2 月 27 日(情報公開)~2015 年 9 月 30 日(入札日)
<日程は後日発表>
陸上成熟油田の入札(生産のみ)
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るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
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大水深と重質油の入札(探鉱と生産)
チコンテペックと非在来型資源の入札(探鉱のみ)
ペメックスとの JV(浅海、陸上成熟油田、チコンテペックと非在来型資源。大水深と重質油はなし。)
新ペメックス発足(石油開発事業を主体に再編)
2015 年 12 月 20 日
4.5 油価の影響
原油は投機商品でもある。昨年6月からの油価の下落は、先物のロングを投げ売りしたために売りが
売りを呼んだ結果だろう。油価 80 ドル/バレル付近には先物のプットの建て玉がたくさんあるので、この
価格帯を抜けるのは難しいだろう。70 ドル/バレル前後を落ち着き先と見る。
今年2 月に入ってから、原油価格の下落と競争激化で、ペメックスが資本支出を削減した。製油所改
修など設備投資計画を延期した。さらにメキシコ湾の大水深域での探鉱プロジェクトの延期を決定した。
<油価下落を受けたメキシコ政府の動き>
 2015 年予算案が議会を通過
2014年10月30日に連邦下院で、2015年予算案に相当する「連邦歳入法」が賛成375票、反対33票、棄権4の賛成
多数で可決された。注目点は石油の平均想定価格で、政府が提出した法案では、当初1バレル82ドルであったの
が、国際価格の低下を受け、上院では81ドル、今回の下院では79ドルまで下げられた。この可決を受け、議会で
の審議は終わり、歳入法は行政府に送付された。可決された歳入法では、国庫収入は政府案より184億4000万ペ
ソ(13億7200万ドル)多 い、4兆6900億ペソ(3493億600万ドル)となった。そのうち石油収入は1兆2000億ペソ(907
億1800万ドル)を占める。
更には、2015年GDP成長率を3.7%、インフレ率を3%、予算赤字を1%、中銀平均金利を3.5%、そして為替は年間平
均1ドル=13.4ペソと予想。純国内債務限度額は5950億ペソ(442億7000万ドル)とし、他方で対外債務は、60億ドル
までと定めた。
FMPED(安定と発展のためのメキシコ石油基金)の運用基準も定めた。FMPEDは、Pemexをはじめ石油・天然ガ
ス産業に関わる企業により納められた石油収益を管理し、資金を運用するほか、技術開発などに投資する。
またペメックス関連の数字が発表された。10月31日にペメックスは、2014年1-9月期の貿易黒字額が118億5500
ドルに留まり、前年同期比24.2%減を記録したと公表した。10月30日には大蔵省が、2014年1-9月期の石油収入が、
前年同期比で2.2%減少し、総額は8972億ペソ(667億5500万ドル)と明らかにした。両数字とも低下したが、その要
因は石油価格の低下と輸出量の減少である。
 2015 年歳出法案が成立
2014 年 11 月 13 日、下院において 2015 年歳出法案が、賛成 343 票、反対 107 票の賛成多数で可決された。歳
出法案は下院の専決事項で、これにより法案は成立する。総歳出額は、4 兆 6900 億ペソ(3446 億 8900 万ドル)で、
2014 年の歳出予定額より 1.6%多く、過去最大額となる。審議において予算配分の見直しが行われ、政府機関関連
費が削減された一方、教育、福祉、農業及びインフラ分野に 47 億7200 万ドルが、治安、司法分野に 138 億300 万ド
ルが増額された。
法案に反対した左派 MC(市民運動)の Ricardo Monreal 下院議員は、「2015 年予算は、欠陥があり、かつ一貫性
がない。石油収入は急激に落ち込む中で、経常支出は増え、投資額は減る」と批判した。他方、与党 PRI(制度的革
命党)下院議員団幹部の Manuel Añorve 議員は、歳出法について、「既に制定された歳入法ならびに政府が実施し
ている構造改革との一貫性がある。というのは、歳出計画は社会政策を重視し、長期的プランになっているからだ」
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と述べた。また石油価格の低下に伴う減収に関して Luis Videgaray 大蔵相は 13 日、2015 年歳入法において石油の
想定価格は 1 バレル=79 ドルで、現時点の 74 ドルと開きがあるが、不足分は歳入安定化基金の一部から補填する
ため問題はないとの認識を示した。歳入減少時に同基金から使用可能な資金は、現時点では 79 億 4400 万ペソ(5
億 8840 万ドル)となっている。
 GDP 成長率を 2.1-2.6%と下方修正
2014 年 11 月 21 日にメキシコ政府が、2014 年 GDP 予想成長率を 2.1%から 2.6%の間と下方修正した。石油の国
際価格の低迷に伴う減収がその理由。2014 年予算では 3.9%と見込んでいたが、5 月に 2.7%へと変更していた。そ
のため今回の修正は今年2 度目となる。Fernando Aportela 大蔵副大臣は記者会見で、2015 年GDP 成長率も同様
に、当初の3.7%から3.2‐4.2%へと下方修正した。今回からGDP予想成長率に幅を持たせたことにつき、大蔵副大臣
は、米国の FRB(連邦準備制度理事会)をはじめ複数の国で採用されていると述べたうえで、ボラティリティの変動
に際して有益であると説明。
他方で INEGI(国家統計地理情報院)は 21 日、2014 年 1‐9 月期の GDP 成長率を前年同期比 1.9%と発表した。
Q3(第 3 四半期)では前年同期比で 2.2%。大蔵省は石油の減産について、予算では日量 252 万バレルを見込んで
いたが、現在は日量238 万バレルで推移し、年率GDP で 0.4 ポイント減の影響があると指摘した。この発表を受け
て Aportela 大蔵副大臣は、前記 21 日の会見で米国経済が引き続き好調を維持することに期待感を示した上で、
Q4 の GDP 成長率を 2.7%、そして輸出の大幅な増加を見込んで工業生産を 3.8%増と予想した。
 2014 年 1-9 月期の経常赤字が 24%増
2014 年 11 月 25 日に出されたメキシコ中央銀行のコミュニケによると、2014 年 1‐9 月期の国際収支の経常赤字
が、193 億 4500 万ドルに達し、前年同期比で 24%プラスを記録した。項目別では、所得収支(251 億 1900 万ドル)と
貿易・サービス収支(119 億 95 万ドル)が赤字で、経営移転収支(177 億 6900 万ドル)が黒字である。中でも第 3 四
半期の貿易収支、とりわけ石油輸出は、12.5%低下した。他方、自動車の輸出は 12.5%増加した。
 2014 年貿易赤字が 24 億ドル超
2015 年 1 月 27 日に INEGI(国立統計地理情報院)が報告したところによると、2014 年のメキシコの貿易収支は、
2013 年の 11 億 8400 万ドルのマイナス決算を更に 106%下回る 24 億 4100 万ドルの赤字となった。これは一昨年と
比べ、非石油製品の赤字こそ 98 億 900 万ドルから 39 億 3100 万ドルまで減ったものの、石油製品の黒字が 86 億
2500 万ドルから 14 億 9000 万ドルまで減少した結果によるものである。
メキシコの輸出総額は、昨年一年間で 3975 億 5370 万ドルに上り、前年比 4.6%増。輸入総額は 3999 億 7720 万ド
ルで 4.9%の増加であった。
2014 年のメキシコの石油売上高は 429 億 7930 万ドルで、2013 年実績と比較すると 13.2%減少した。その一方、
石油以外の売上げは 3545 億 5640 万ドルで前の年より 7.3%の増加を示した。
2014 年 12 月の輸出総額は、341 億 1470 万ドルで前年同月比 6.4%上がった。同月の輸入総額は 338 億 6070 万ド
ルで、11.2%プラスであり、この結果12月は2億5400万ドルの黒字となったものの、それでも前年同月の16億2600
万ドルの黒字と比べると、84.4%マイナスであった。
 中銀が石油価格低迷の長期化を予測
中央銀行に当たる Banco de México の Agustín Carstens 総裁が 2015 年 2 月 3 日に、原油価格の低迷は「数ヶ
月ではなく数年の問題」だとして、メキシコ国家は長期の収入低減に備えて調整するよう促した。メキシコでは、
「我々は 1 バレル=80‐100 ドルの原油価格の収入を使うことに慣れていた」と、保守系野党PAN(国民行動党)の国
会議員たちとの会合で、総裁は述べた。「この下落がかなり長く続くと見られる以上、このような収入はもう我々は
得られない」と断言。ここ数年間、同じテンポの支出を続けるために債務を増やしてきたが、今後は増税に訴える
ことになるという。要するに、低収入に即して調整しなければならない。既に政府も先週、1243 億ペソ(85 億 7200
万ドル)の歳出切り詰めを発表した。これについて総裁は、来年も原油価格低迷が続くと予想されることから、その
影響を和らげる効果があると見ている。
Carstens 総裁は石油を中心とする第一次資源価格の低下について、議員たちに、国際需要の脆弱化、供給側
のファクター、ドルの回復を要因として説明した。特にメキシコの場合は、原油価格低下とペソ安が悪影響をもたら
している。先日政府が発表した財政調整はGDPの0.7%に相当するが、中央政府だけでなく、ペメックスや電力公社
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いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
CFEの予算にも影響するものである。今回、首都とQuerétaro間の高速鉄道建設が無期限に延期され、Yucatánか
ら Quintana Roo への半島横断鉄道は完全に放棄された。
メキシコは世界 10 位の産油国で、国庫収入の多くを炭化水素資源販売に依存している。そのため原油価格の
低下は経済に直接的なインパクトを及ぼす。
 海外からの直接投資は今年 300 億ドルか
メキシコ政府は 2015 年 2 月 10 日、2015 年の対メキシコ直接投資額を 300 億ドルと予想した。2014 年の投資額
については、正式な数値の発表は数日後になるが、今のところ230億‐240億ドルと推計される。Ildefonso Guajardo
経済相は記者団に対し、「2015 年、メキシコの成長の原動力となるのは投資である」と語り、懸念されている
Guerrero, Michoacán, Oaxaca, Tamaulipas などの州における治安問題については、これらの地域に資金が集中す
ることはないので、投資全体に影響はないと強調した。更に、国が 70 年以上に亙って独占してきたエネルギー関
連分野に民間企業の参入を認めた改革は、国内投資の流れに重要な役割を果たすとの期待も示した。
一方、今年 1 月下旬、Luis Videgaray 大蔵公債相が GDP の 0.7%相当の歳出削減を実施すると発表した。ペメック
スや電力公社 CFE の活動に影響し、また新幹線改革など重要なインフラ計画を無期限延期にさせるものである。
経済相はこの削減により GDP が 0.3-0.5%収縮するだろうが、民間セクターの活性化を目的に実施するものだと述
べた。
2014 年9 月、議会に予算案を提出した際に政府は、投資と輸出の好調ぶりを反映して、2015 年の経済成長率は
3.7%となると予想した。また13日、CEPAL(ECLAC/国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会)は、同数値を3.2%と予想
し、メキシコ経済は回復基調にあるとした。CEPAL のバルセナ事務局長はメキシコの歳出削減策について、「一般
経費の切り詰めであれば、それはひとつの良策と言えるが、社会投資に影響を与えなければ良いのだが」との意
見を述べ、「その影響があり得ることを念頭においておくべきだ」と語った。
 2014 年 GDP は加速するも期待外れ
2014 年のメキシコ経済は若干加速したが、期待には遠く及ばなかった。GDP 成長率は 2013 年の 1.4%から 2014
年の 2.1%に上昇した。ペーニャ・ニエト現政権は構造改革を進めているが、複雑な国際環境のなかで期待外れの
低成長に終わった。11 月 21 日に発表された大蔵省見通しでは 2.1‐2.6%とされていたが、その最低値に留まった。
原因は主として石油生産の予想外の伸び悩みにある。2014年国家予算はGDPの 3.9%成長を前提に編成されてい
たが、その後 2 度の下方修正を経て、遂に 2.1%に終わった。
メキシコにおける Scotiabank のチーフ・エコノミスト Mario Correa が EFE 通信社に語るには、2014 年のメキシコ
はアナリストたちによる成長期待にそぐわなかった。年初の一連の財政措置と、石油生産低迷のせいであるという。
また国際環境の不安定に加えて、エネルギー分野を中心とする構造改革に伴う運用法整備を待つため、投資が
先送りされた影響もある。INEGI(国立統計地理院)の 2 月 17 日発表では、2014 年の GDP 成長は第一次産業(前
年比2.8%増)が牽引したもので、第二次産業は同1.9%、第三次産業は 2.2%となった。第三次産業のなかでは企業向
けサービス(6.4%)と商業活動(3.3%)の伸びが特筆される。
第二次産業においては製造業(3.7%)、建設業(1.9%)、発電・送電・給電とガス・水道供給(1.8%)がそれぞれ成長
した。この部門では鉱山活動(-2.3%)が下落し、特に国庫収入の 3 分の 1 を占める石油(-2.4%)の落ち込みが厳
しい。2014 年予算では原油生産が日量252 万バレルとされていたが、現実には 235 万バレルに止まった。2014 年
の四半期ごとの成長率は前年同期比で、Q1(第 1 四半期)が 0.9%、Q2 が 2.4%、Q3 が 2.8%と伸びた後で、Q4 には
2.6%に下がった。Q4をQ3と比較すると0.7%成長で、第二次産業(0.9%)と第三次産業(0.6%)はプラスだったが、第一
次産業は 2.2%の後退を来たした。総じて 2014 年のメキシコ経済は前年よりは改善されたものの、マクロ経済環境
のボラティリティが続き、内需の回復も弱かった。
2015 年成長率について、大蔵省は国家予算策定の過程で 3.7%成長を予測していたが、早くも 11 月に 3.2‐4.2%
の範囲と修正した。Luis Videgaray 蔵相が 20 日に語るには、2015 年予測を修正するかどうかは Q1 実績を見てか
らである。だが同相は 2014 年実績について、経済は成長速度を増したと主張しており、国際環境が不利とはいえ
今後の展望は良好と述べた。だがこのたった2日前に中央銀行が、2015年成長率予測を従来の3‐4%から2.5‐3.5%
に引き下げた。その理由について Agustín Carstens 総裁は、原油価格低下、国際金融市場のボラティリティ、消費
が回復の兆候を見せていないことを挙げている。
政府は 1 月 30 日に、歳出の 85 億 7200 万ドル(GDP の 0.7%相当)削減を発表した。この削減額はメキシコの政
府機関の削減額の 50%を占める。一時 1 バレル=100 ドルを超えていたメキシコ原油が 49 ドルにまで下がった事
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれ
るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
態を受けたものだ。Videgaray 蔵相は、歳出削減の経済成長への影響は限定されるとしているが、中銀総裁は、成
長率予測の下方修正はこれでも控えめな見方としている。歳出削減を受けて Scotiabank は、2015 年成長率予測を
従来の 3.3%から 2.8%に引き下げた。メキシコが持つポテンシャルは 3.7%であって、それよりかなり低いと評してい
る。片や政府は、現在行っている構造改革と大規模な公共投資の成果に期待をかけている。
 政府が1月の石油収入の減少を発表
2015 年 3 月 2 日に大蔵公債省が、2015 年 1 月におけるメキシコ公共部門の石油収入は 579 億 9500 万ペソ(38
億 6630 万ドル)であり、2014 年同月と比較して実質 43.5%の下落となった、と発表した。同省報告によると、石油収
入低下の主な要因は、原油・天然ガス生産量の減少(それぞれ-6.5%と-3.6%)及び輸出の際の原油平均価格の
低下(前年の 1 バレル=91.8 ドルに対し、今年は 52.4 バレルに下落)である。
また 2015 年 1 月の歳入総額は、3650 億 4900 万ペソ(243 億 3700 万ドル)となり、こちらは前年同月比で 3.4%減
少。石油収入は、2014 年においては歳入の 26.7%を占めたが、2015 年予算では 15.6%でしかない。
ペーニャ・ニエト大統領に随行し、イギリスを訪問中の Luis Videgaray 大蔵公債大臣は、4 日、メキシコ政府が石
油価格下落による歳入減少に対処するため、2016 年の歳出を削減する計画であることを確認した。
Videgaray 大蔵公債相は、既に今年 1 月、予防措置として 2015 年、GDP の 0.7%相当の歳出削減を実施すると発
表した。今回は具体的な数値について語らなかったものの、今後起こり得るいかなる状況にも対応できるよう国家
の財政状態の強化が重要であると強調した。
現在、来年の予算案が作成されている最中であり、9 月には下院に提出される。石油価格の下落に加え、「石油
生産量が GDP成長率を下げる要因となる危機的レベルにまで減少している」ため、来年の予算から歳出削減実施
に踏み切る。しかしその一方で将来の石油生産量については、「今後エネルギー改革実施の効果が現われ、増加
していくと楽観視している」と、蔵相は語る。
5. まとめ
メキシコ合衆国にとって、石油は外貨獲得の重要な手段であり、1938 年以来、資源ナショナリズムのもと、
国営石油会社ペメックスのみが石油の採掘を行ってきた。しかしながら、ペメックスの収益の大半はメキシ
コ政府の財源にあてられているため、石油の新規採掘のための投資が完全に不足している。メキシコで
はシェール資源や水深500m以深の大水深油ガス田の存在が確認されているが、ペメックスの資金と技術
力だけでは採掘が困難であり、今後新規に油ガス田が開発されなければ、石油生産量は 2020 年に向け
て 13%減少すると予想されている。この状況を打開するべく、ペーニャ・ニエト大統領は、2013 年12 月20
日にメキシコ憲法を改正して、エネルギー政策として外資への開放に大きく舵をきった。
油ガス田の採掘技術や資金の流れを向上させるために、技術力や資金力に長けた外資と手を組むこと
は世界中で行われているが、メキシコ政府は、長年に亘り、一部のサービス契約を除き、ペメックスが第三
者と共同事業を行うことを禁じてきた。シェール資源の採掘や大水深での探鉱活動に伴うコストやリスクを
考えると、資金や知見に富む企業とパートナーシップを組むことがペメックスにとって喫緊の課題となった。
メキシコ政府はこれから外資導入を進める一方で、地下に賦存する石油や天然ガスといった炭化水素資
源の国家所有堅持を変えていない。しかし、これらの資源は一旦地表まで採取されれば、外資にもその
取り扱いが認められる。
過去 5 年石油換算で年 10 億バレルを発見された。短期では日量 240 万バレルキープ、中期では日量
280~300 万バレルキープが目標である。
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るデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資
等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負
いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
エネルギー改革法には潜在的なリスクもあろう。例えば、ペメックスの下流部門と電力公社 CFE の棲み
分けがはっきりしない。どちらも発電をしようとしている。また、国営会社に対するメキシコ政府の関与が薄
まりすぎるのではないかとの懸念がある。各社の格付けは、キャッシュを政府に吸い上げられている代わ
りに政府の後楯がある、という見立てで付けられている。国内の燃料価格政策(例えば、ガソリン価格への
補助金:資源への競争が働かないと補助金削除はメキシコ国民にとってガソリン価格の上昇となる。)、生
産物分与契約(PSC)、ほかの国の契約条件との比較、政府の意向(ペメックスと CFE のトップは政府が任
命)にリスクがあろう。ペメックスの役員会議長はエネルギー大臣が務める。人材の不足もあろう。
JOGMEC は、10 年ほど前からペメックスに対して、探鉱プロジェクトの共同スタディである「海外地質構
造調査」や油田からの随伴水処理をコンパクトに行うシステムを提供してきた。このような活動を通してペメ
ックスとの信頼関係を築くとともに、メキシコの油ガス田開発の情報を先行的に収集することができた。これ
からは、JOGMEC は培ったペメックスとの友好関係や油ガス田情報を活用して、日本企業のメキシコ進出
に向けて、橋渡しのスピードアップを図る。
国民の改革に対する支持はミックスであり、改革の成功は石油収入の増加を教育、社会的ニーズ、イン
フラなどへと転換する政府の能力にかかっている。改革の推進には、安全性、透明性、不正防止、社会倫
理の担保が重要だ。しかし、エネルギー改革を巡る政治的闘争は、国際石油企業に、特に大水深に対す
る大きな関心を抱かせるのを思い留まらせるまでには至っていない。投資家達はメキシコの石油・天然ガ
スセクターに対して長期的な視点をとっているようにも見える。最近の原油価格の下降は投資家の関心に
はネガティブに作用していないと見る。
総じて、潜在的な投資家達は、関心を表明しつつも政治的、社会的、技術的障害を認識し、注意深くし
かし楽観的にメキシコでの機会を見据えている。
<参考資料>
・ JOGMEC 石油天然ガス資源情報「メキシコの石油開発の改革:ラウンドゼロとラウンドワンの動き」、2014 年 10 月 8 日、
伊原賢
以上
<付録>
●メキシコの石油・天然ガス概況(含む、主管省庁・政策)
<石油>
 生産量:日量287.5 万バレル(含む天然ガス液)(世界第10位)<2013年>。残存確認可採埋蔵量:111 億バレル(世
界第 18 位)<2013 年末>。消費量:日量 202.0 万バレル(世界第 11 位)<2013 年>。
 日量 133.5 万バレルを輸出 そのうち日量 91.9 万バレルが米国向け 日本への輸出は現在なし<2013 年>。2003
年~2006 年は日量約 210 万バレルの輸出量があったが、その後、減少傾向にある。メキシコの原油生産日量 236
万バレル@2014 年 10 月、月 2.7 万バレル/日の減退。同月輸出量日量 140 万バレル。最大の輸出先であった米国
でシェール革命が起こり、同国向け原油輸出量は2007年比で4割減。米国市場の喪失で総輸出量も同年比32%減
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(原油生産量は同年比 17%減)。アジア市場の開拓が急務。
 投資の失敗:カンタレルを含む生産回復に 2008 年~2012 年に 700 億ドル、チコンテペック 130 億ドル、大水深での
油発見には 23 回目で成功。
 2016 年からペメックス以外の石油製品販売開始、2018 年までにガソリン・軽油価格のメキシコ政府統制は終了予
定。
<天然ガス>
 生産量:年 566 億 m3(世界第 15 位)<2013 年>。残存確認可採埋蔵量:12.3 兆立方フィート(世界第 35 位)<2013
年末>。消費量:年 827 億 m3(世界第 9 位)<2013 年>。
 米国から年186 億m3 をパイプラインで輸入している。LNG でも年78 億m3 をペルー、カタール、ナイジェリア、イエメ
ン、インドネシア、トリニダード・トバゴ、ノルウェーほかから輸入<2013 年>。
 パイプライン網を拡充中(メキシコ国内で天然ガス需給のミスマッチ解消、メキシコ電力公社 CFE との関係)。
 シェール革命による北米の供給過剰感からアジアへの輸出解禁が進む。メキシコも地理的優位性を活かし、
LNG/LPG 輸出計画あり(2014 年 11 月 10 日 PEMEX DAY にてメキシコ石油公社ペメックスのロソーヤ総裁発言)。
<主管省庁>
SENER
 ぺメックスは、どう変貌をとげるか? 2014 年 11 月に組織変更を発表:4 部門(上流、精製、石化、ガス)から 2 部門
(上流、下流/Industrial Transformation)へ。5 ビジネスユニット:掘削、輸送、コジェネレーション、肥料、エチレン。公
僕から成果主義へ。調達システムの簡素化、税負担の軽減。
<石油開発政策>
 憲法に 1938 年から石油・天然ガス資源の国有化が明記されていた。ペメックス及びその子会社が炭化水素資源産
業を独占し、石油・天然ガス等の探鉱・開発、精製及び販売を行う権利を有している(石油利権を与えられた見返り
に、ペメックスは政府に対し、その利権収益の 10~35%のロイヤルティを支払う)。
 しかし、ペメックス自身の技術力・操業能力・財務力の不足等が課題であったため、生産拡大を目指し、ペメックス
は非随伴天然ガスの生産事業に限って、民間企業が既発見ガス田の生産事業を請負、ペメックスが対価を支払うと
いう MSC(Multiple Service Contract)を導入した(サービス契約のパッケージ化であり、上流権益自体は付与されな
い)。
 石油開発の会計制度も変更となる予定であり、これまで政府が石油収入の約 70%を徴収していたのに対して、新
制度の下では、ロイヤリティや法人税といった費目で国際的な慣習に沿った、政府への税納付が行われる予定で
ある。生産原油の所有については、サービス・利益分与契約が国家へ帰属、生産分与・ライセンス契約においては、
契約の内容により石油会社への帰属となるが、埋蔵原油の所有についてはメキシコへの帰属は変わらない。新し
い組織体制の下では、新しい組織の設立、新しい役割の付与が行われる。
 SENER は、案件ごとにサービス契約や PSC といった外資導入形態のデザインを行う。国家炭化水素委員会 CNH
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は地質情報等の技術情報の取りまとめ、入札の実施や契約の署名、契約の管理を行う。財務省(Hacienda)は会計
条件を設計し、サービス契約や利益分与契約の場合には国が市場のマーケティングをサポートする。石油開発に
よる政府の収入、契約への対価支払い等は石油基金が執り行う。
 エネルギー改革の最大の障害とされた資源ナショナリズムは 2014 年に既に克服(2014 年 8 月 6 日に 21 の関連法
可決)。ペーニャ・ニエト現政権は国民の支持を得ながら、段階的に本改革を前進させた。上下両院で過半数の議
席を下回る与党PRI(制度的革命党)は、2015 年6 月の中間選挙(下院全議席)、2018 年夏の大統領・上下院選挙に
向け、国民にエネルギー改革による経済効果を示すための財源確保に課題有り。
●生産物分与契約(PSC)
国家が原油・天然ガスの所有権と管理権を保有することを前提に、コントラクターである石油・ガス会社に、原油・天然
ガスを探鉱開発させ、採掘された原油・天然ガスの一部を、コントラクターのコスト回収と利益のためにコントラクターで
ある石油・ガス会社に分与する契約である。採掘された原油・天然ガスの所有権もまず国家に帰属する。コントラクター
である石油・ガス会社が操業のために拠出したコストの回収分として、採掘された原油・天然ガスが生産物分与契約に基
づきコントラクターである石油・ガス会社にシェアされる。また、コスト回収を上回る原油・天然ガスが採掘された場合に
は、その一部がコントラクターである石油・ガス会社にシェアされる。
即ち、ホスト国は石油・ガス会社に、「採掘された原油・天然ガスの一部の分与」を提供し、その見返りに、石油・ガス会
社はホスト国に、「原油・天然ガスの探鉱採掘役務の履行」を行う。
●ライセンス契約
地下に賦存する原油・天然ガスの所有権は国家に帰属しており、国家が許諾あるいは許可しない限り、それらを探鉱、
採掘することは認められないという前提に基づく。現地法制度に基づき、ホスト国政府から行政的な許諾または許可を取
得した石油・ガス会社は採掘した全ての原油・天然ガスの処分権を取得できる。ホスト国は、ライセンシーである石油・ガ
ス会社からロイヤルティあるいは租税の形で金銭あるいは採掘された原油・天然ガスの一部を徴収することにより、利
益を得る。
即ち、ホスト国は石油・ガス会社に、「原油・天然ガスの探鉱、採掘の許可」と「採掘された原油・ガスの取得権」を提供
し、その見返りに、石油・ガス会社はホスト国に、「最低探鉱事務の履行」と「一時金、ロイヤリティの支払い」を行う。
●カンタレル油田の盛衰
減退したカンタレル油田に、メキシコの石油産業を牽引するだけの力は残っていない(2004 年日量 210 万バレル、
2014 年日量 34 万バレル)。2017 年から油生産を安定させるために 60 億ドルの投資計画あり。
1961 年、漁師Rudesindo Cantarell Jimenez が海から引き上げた網に油が頻繁につくこと(海底からの油の染み出し)を
きっかけに発見された。
1976 年の探鉱井の成功を経て、1979 年より商業生産が始まり、81 年までに日量 116 万バレルに達した。1976 年メキ
シコは経済危機に直面していた(失業率青天井、通貨ペソの暴落)。当時の大統領Jose Lopez Portilloは経済危機からの
立ち直りを、カンタレル油田からの原油輸出による外貨獲得に期待し、それは実現された。
カンタレル油田群:Mesozoic 炭酸塩岩。Akal, Nohoch, Chac, Kutz の他に 10 ほどの小規模油田から成る。1979 年に
Nohoch 油田から生産が始まり、2 年後に主力の(可採埋蔵量の 90%を占める)Akal 油田から生産が始まった。Akal 油田
は 10km x 4km の広さながらも層厚 1200m を誇る巨大な油層構造(アラスカ州プルドーベイ油田の 1.5 倍)。1984 年原始
埋蔵量 350 億ドルの内 170~200 億バレルが回収可能と推定した(後に 180 億バレルと修正)。
1987 年油層圧の減退に打ち勝つべく、生産井にガスリフトが適用された。1991 年に Chac 油田からの生産が始まり、
1994 年まで日量 110 万バレルで推移してきた。その後、生産井に占めるガスリフトの割合は 90%に達した。1999 年に
Kutz 油田が生産に加わり、日量 140 万バレル体制に入った。2000 年 6 月には本格的な油層圧回復のため、油層頂部か
らの窒素圧入プロジェクトが始まった。4 年後に日量 200 万バレルを目指すことになった。窒素圧入(Linde グループ
/BOC)は、ほか水圧入、ガス圧入、CO2 圧入の中から、増油効果と操業面を考慮して選ばれた。増油効果はてきめんに
現れ、2004 年には日量 220 万バレルのピークに達した。その後減退が始まった(2006 年 13.1%減)。2007 年 7 月に日量
153 万バレル、2008 年 7 月には日量 97.4 万バレルまで減退した。ペメックスは 2012 年に日量 50 万バレルで落ち着くと
予想した。しかし、2009 年 9 月には日量 50 万バレルに下がり、その後、2012 年 4 月に日量 40.8 万バレル、2013 年 6 月
に日量 38.8 万バレルと落ち続け、2014 年 6 月には日量 34 万バレルとなった。
2014 年7 月にペメックスは日量34 万バレルを守るべく(主力Akal 油田の生産レートを日量18~20 万バレルに保つ)、
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2017 年から 60 億ドルの追加投資を発表した。例えば界面活性剤を含むフォーム(泡)圧入。(現在の回収率 42%から)
回収率60%を目指す。水の日産量22.5 万バレル、ガスの日産量11 億立方フィート。日量34 万バレルは微減で 5 年ほど
維持され、将来は日量 20 万バレルで安定すると見る。
●JOGMEC とメキシコの関係
 2007 年 12 月、JOGMEC は PEP(国営石油公社ペメックスの上流部門)と石油・天然ガスの探鉱・生産に関する研究
開発、技術開発、人材育成分野等において技術協力包括協定書(GCA)を締結。2013 年1 月に有効期間5 年間の次
期包括協定に署名した。
 GCA の下、「随伴水処理調査」に係る共同研究契約(SCA:Specific Collaboration Agreement)を締結し、「小型高性能
油水分離装置(FMS)」による随伴水処理実証実験等を実施。本研究は、メキシコの主要油田で増加している随伴水
の問題について、スペースが限られる洋上プラットフォーム上においても設置できる小型で高性能の油水分離装置
を開発(企業は、日立プラントテクノロジー(株)が参加)。2010年1月から4年間事業を実施。一方、米領側で大規模
ガス田が発見されている構造の南延長に位置するエリアにおいて、石油システムの共同評価の準備を進めていた
が、PEP 側から「他にプライオリティの高いプロジェクトがあるため今は実施できない」との連絡があり。
 2014 年 7 月の理事長出張時に締結した PEMEX との MOU に基づく技術協力(シェールガス開発、水処理技術)、ガ
ス事業への協力(ガス輸送インフラ、LNG 化等)、研修事業を推進しているところ。
 日本企業各社のパートナーリング、事業志向を勘案した上で、ラウンドワンにおけるメキシコ事業への参画機会獲
得をサポートしているところ。
 産油国技術者研修(平成 25 年度)「探鉱地質コース」及び「物理探鉱コース」にペメックスより各 1 名の研修生を受け
入れた。平成26年度においては、技術ソリューション研修Zero Emissionコースにペメックスより 1 名を受け入れた。
石油公団時代を含めたこれまでの累計招聘者数は 43 名。また、2015 年 1 月~3 月の油層工学コースに 2 名(CNH
とペメックス)を受入。2014 年 11 月 16 日~22 日に、PGPB に対して、LNG/LPG 研修を実施(将来の売買交渉を視
野に)。
●日本企業のメキシコ上流への進出
 2003 年 7 月に実施された MSC の第 1 次ラウンド入札において、帝国石油(当時)がペトロブラス等とブルゴス地域
の 2 鉱区(クエルビト鉱区及びフロンテリソ鉱区)が落札された。現在も INPEX が開発・生産操業事業に参画してい
る。
了
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