公共財の理論[2] 政策

2007年度 公共経済学(原田)
第7回講義資料
公共財の理論[2] 政策
1.
公共財とは?(復習)
• 消費の排除不可能性 : non-rivalness
• 消費の非競合性 : non-excludability
• 純粋公共財、準公共財、地域公共財
• 公共財供給の問題点 : free-ride
公共財と私的財
公共財
私的財
消費の排除不可能性
消費の非競合性
外部性
財の分類
非競合性
映画館、図書館、
プール、高速道
路、橋、ケーブル
TV 、CS 放送
混雑を起こした状態の
公共財(公園や一般
道路など)
競合性
医療サービス、年金、食
料、介護サービス
排除可能
排除不可能
国防、警察、消防、伝
染病予防、一般道
路、知識・情報、アナ
ログTV ・ラジオ
2.
公共財と政府
• 公共財は市場メカニズムを通じて供給できるか
¾ 排除不能性=
x 誰かが料金を支払って公共財が供給されたとすると、それに「ただ乗り」することが合理的。
x いったん供給されたら、追加的消費者に限界費用=ゼロで供給できる(非競合性)。
x 公共財を市場を通じて供給することはできない(もしくは著しい過少供給に陥る)。
公共財供給とナッシュ均衡
• 公共財の供給に関して、個々の最適な選択が全体として最適な選択とはならない状況は、ゲーム
理論を用いて説明できる。
【ゲーム理論】
複数の主体の存在する状況下での意思決定について研究する、20世紀半ばに確立された数学
の一分野。
¾ 他のプレーヤーの戦略を所与とした場合、どのプレーヤーも自分の戦略を変更することによ
ってより高い利得を得ることができない戦略の組み合わせ。
¾ どのプレーヤーも戦略を変更する誘因を持たない状態。
¾ ナッシュ均衡は必ずしもパレート効率的ではない。
囚人のジレンマゲーム
B:自白
B:黙秘
A:自白
10、10
3、20
A:黙秘
20、3
5、5
公共財供給主体としての政府
• 消費の非競合性・排除不可能性により、公共財は自発的には供給されない。
¾ そこで、政府が供給主体となる。
x
公共財の最適供給理論
¾ 望ましい公共財の供給量はどのくらいか?
¾ 公共財供給の費用負担はどうあるべきか?
¾ 社会的にもっとも望ましい租税で費用を調達。
¾ 効率性と公平性のトレード・オフをいかに解消するか。
3.
•
リンダール方式
政府が公共財を提供するには、その費用を調達しなければならない。
¾ その方法のひとつとして、「リンダール 方式」が考えられた。
リンダール均衡
① 政府は各消費者に公共財の支払い比率を提示。
② 各消費者は提示された支払い比率で支払いたい公共財の負担金(公共財の需要)を報告。
③ すべての消費者の公共財需要水準が一致するよう、政府は調整を続ける。
の繰り返しの到達点である。
• リンダール均衡とパレート最適
x リンダール均衡は、パレート効率的な資源配分を達成する。
¾ 各個人の公共財の需要に応じた費用負担が実現するため。
• リンダール方式の問題点
¾ 消費者が 実際よりも過小な公共財需要を申告すると、低い負担によって公共財を消費す
ることができる。
このため、正しい支払い意思額を伝える誘因 (インセンティブ)をもたない。
x 果たして、正直に申告するか?
① 相手が正直に申告する場合
② 相手が過少申告する場合
¾ いずれをとっても、自分が過少申告したほうが良い結果となる。
4.
サミュエルソン条件
公共財の最適供給理論
• ポール・サミュエルソン(Paul A. Samuelson、1915年~、米)によって考案。
• 1970 年 に ノーベル経済学賞 受賞。
サミュエルソン条件・・・公共財の最適供給条件
•
•
リンダール均衡では、サミュエルソン条件が成立。
各個人の限界便益の合計=社会全体の公共財供給の限界的な便益。