福田金属箔粉工業株式会社

変幻自在に金属箔粉技術を操り
未来を創るメタルスタイリスト
福 田 金 属 箔 粉工業 株 式 会 社
金属箔は銅、
アルミニウム、
ニッケル、
園田修三 社長
伝統産業から
ハイテク産業へ
国内初の
電解銅粉開発に成功
ーを支えていると同時に、まだまだ大い
するということです。そのうえで、現在
なるポテンシャルを秘めている機能材
の主力であるエレクトロニクスや自動車
料です。次世代の先進技術を切り開く
産業以外の分野にどんどん弊社の技術
不可欠な材料としてさかんに研究を行
や製品を活かしていきたいと思っていま
っています。
す。すでに医療分野でもチタンの金属粉
世界を市場に捉えて
強固な企業体質をつくる
が使われています。ほかにも NEDO(新
1908 年∼
エネルギー・産業技術総合開発機構)な
山科工場開設。水車による動力で真鍮
粉を量産化。手工業生産から機械生
産への転換を図る。09 年、伊勢神宮
の遷宮で金箔 10 万枚、金屏風を受注。
1989年イギリスに銅箔の合弁会社を、
どと共同での次世代燃料電池材料の研
究も実施しました。
1994 年には中国蘇州に銅箔の製造会社
金属粉はより微細に、金属箔はより
を設立しました。世界にマーケットを広
薄くというニーズは今後もとどまること
げると同時に、顧客への迅速な対応と
はないでしょう。金属粉はミクロン単位
為替に左右されない強固な体質づくり
からナノ単位での効率的な製造法を確
のためです。中国では需要が伸び続け、
立することが当面の目標。2012 年には
現在、現地系のプリント基板メーカーが
プリンテッド・エレクトロニクスの次世
顧客の 9 割を占めています。2013 年に
代インクと呼べる亜酸化銅のナノ粒子
は増産のための新工場も完成しました。
を使ったインクが完成しました。まだま
粉製造に成功。電解銅粉は当時輸入に
2005 年「第一回ものづくり日本大賞」
ニクスのイノベーションに材料面から貢
いられてきましたが、明治以降近代化が
依存していたところ初の国産品として金
で内閣総理大臣賞を受賞した電磁波シ
献していきます。
始まってからは電子部品の導電材料や自
属ブラシに使用されました。現在では
ールド材用銅粉にも象徴されているで
金属箔は現在の 6 μm より薄くすると
動車の部品などに使われる、ハイテク産
ブレーキ材やパンタグラフにも使用さ
しょう。電子機器から出る電磁波は、ほ
取り扱いがむずかしくなるので、厚みの
業になくてはならない材料となりました。
れています。
かの電子機器の誤作動や人体への悪影
ある銅箔をキャリアとして使い、表面に
ターニングポイントは、創業から約
1957 年には、搗砕、電解に次いで第
響を及ぼすため、導電性に優れた金属
2 ∼ 5 μ m の銅箔を形成させて複合銅
200 年後の明治時代中頃です。工業材
3 の金属粉製造法として大きな期待がか
粉の塗料がシールド材として使われま
箔とし、プレス成形後にキャリアを除去
料の真鍮粉の製造を開始し、1908(明
けられていたアトマイズ法(噴霧法)に
す。コンピュータ黎明期であった 80 年
することでより薄い銅箔をつくる技術を
洗練させていきます。
治 41)年、現本社所在地の山科に工場
よる金属粉設備が完成しました。アトマ
代のアメリカでは、シールド材にニッケ
を開設。それまで職人がとんとんと杵で
イズ法は水やガスなどで溶融金属を噴
ルを使っていましたが、さらに性能が良
打って粉末をつくっていたものを、水車
霧して金属粉を製造する方法で、酸化
くかつ安価な金属素材のシールド材が、
金属箔粉のコア技術をさらに追及し、
から動力を引いて機械化、量産体制を整
が少なく多様な形状の粉を製造できる
当時の米国コンピュータ業界のニーズ
新規分野への技術の拡大・伸長に尽力
でした。
していくことです。顧客が気づいていな
創業してから金属箔粉一筋、現在はエレ
我々の使命は、長年築き上げてきて
銅はニッケルよりもはるかに導電性
い潜在的なニーズを開拓・提案し、困っ
透していきました。金属粉といっても銅、
が良いのですが、さびやすく性能が持
たときには何でも相談していただける
それは職人の道具を大切にする心です。
銅ニッケル合金、レアメタルなど素材
続しないために使われてきませんでし
会社になりたいと願っています。
伝統産業を近代化し、杵という道具が
は多種あり、製法や用途よってその形
た。その欠点をクリアして完成した弊社
機械という設備に変わったとき、弊社は
状や大きさはさまざまです。現在弊社
の導電塗料用銅粉は、アメリカの大手
設備を外注せずに社内で設計をして組
では、電解、アトマイズ、粉砕、化学還
電機メーカーが相次いで採用。アメリカ
1954 年兵庫県生まれ。姫路工業大(現:兵
庫県立大)卒業後、1978 年に福田金属箔粉
工業株式会社入社。生産技術部に所属し、主
に銅箔工場の設備設計に従事する。海外初進
出の英国工場において設備設計を担当し、技
術者として駐在。中国・蘇州福田有限公司の
工場長、総経理を歴任後、取締役電解箔製造
部長などを経て、2011 年より常務生産本部
長。2013 年代表取締役社長に就任。
元、熱処理、プラズマ回転電極法など
で認められた製品を逆輸入という形で
人にとって命といわれる「道具」を大切
の製法を導入し、1,000 種類以上の金属
日本でも成功を収めました。
にするスピリットが、独自のノウハウの
粉末を製造しています。また、金属粉
流出を防ぎ、開発から設計、製造、販
末同士を混合したり、金属以外のもの
家訓は「身の程を知る」
売までを手掛ける弊社の原点になった
を混ぜて複合化したりすることで、新し
園田氏にお話をうかがった。
のだと思います。
い機能を付加することも可能です。
P ro f i l e
園田修三(そのだしゅうぞう)社長
み立てまで行うことを選択しました。職
な転身を遂げた同社の、6 代目社長・
02
あくまでも金属箔粉に絞った事業を展開
箔粉は長いあいだ仏具や美術品などに用
我々が伝統産業から継承したもの、
ク産業発展の陰なる先導役へと鮮やか
る先代たちの教えでもあります。
つまり、
います。金属箔粉は現在のテクノロジ
だ途上にあるプリンテッド・エレクトロ
伝統工芸品の金銀箔を扱う問屋として
Corporate
History
コンデンサー、建材などに使用されて
マーケットを世界に見据えた展開は、
江戸時代中期の1700(元禄 13)年、
を次々と成功させてきた。日本のハイテ
り、またひとつの技を追求する職人であ
ら粉をつくる画期的な電解法による銅
車工業を中核とする産業分野に広く浸
の追随を許さない金属箔粉の技術革新
配線板用銅箔をはじめリチウム電池や
して創業したことから始まります。金銀
ため、金属粉の可能性を拡大し、自動
となる電解銅粉の開発を筆頭に、他社
があります。京都の老舗らしい身上であ
1936 年には固体からではなく液体か
えました。製造した真鍮粉には、国内だ
で活躍する福田金属箔粉工業。日本初
錫などを原料とし、電子機器のプリント
弊社の歴史は 314 年前、金銀箔粉商と
けでなく海外からの注文も殺到しました。
クトロニクスを中心としたハイテク産業
の苗」には「身の程を知る」という言葉
創業家に代々受け継がれ、現代の弊
社会社方針にも通じる福田家の家訓「家
1700 年∼
京都市松原通室町で金属箔粉商「井
筒屋」を開業。75 年、家訓「家の苗」
を制定。
1881 年∼
屋号を「福田重商店」に改称。
1935 年∼
株式会社に改組。初代社長に 3 代目福
田重助が就任。36 年、国産初の電解
銅粉を開発。モータの摺動ブラシなど
の原材料として現役で活躍する。37 年、
電解銅箔を銅張り屋根材として生産開
始。40 年、現社名の福田金属箔粉工業
(株)に改称。
1956 年∼
プリント配線板用電解銅箔の生産開始。
57 年、アトマイズ法による金属粉を国
内で初めて生産開始。58 年、長尺電
解銅箔(ロール品)の製造を開始。金
色水彩絵具用として真鍮粉で当社特許
第 1 号を取得。60 年、導電材料用銀
粉の生産開始。
1975 年∼
高融点金属アトマイズ粉の量産開始。
1980 年∼
アトマイズ銅合金粉で日本粉末冶金工
業 会 賞 を受 賞。83 年、EMI 対 策・電
磁 波シ ールド用 銅 粉 を開 発。86 年、
金属粉専用工場として滋賀工場を開
設。89 年、英国銅箔工場(Cookson
Fukuda Ltd)を設立。
1991 年∼
導電塗料用銅粉で全国発明表彰を受
賞。93 年、プラズマ回転電極法によ
る金属粉製造装置を導入。
94 年、中国銅箔工場(蘇州福田有限
公司)を設立。98 年、高導電性金属
半導体パッ
フレークの生産開始。99 年、
ケージ用ボールを開発。人工関節用・
チタンビーズ(真球)粉の販売開始。
2003 年∼
中国金属粉工場(蘇州福田高新粉末
有限公司)を設立。05 年、超高圧旋
回水アトマイズ粉の量産開始。第一回
ものづくり日本大賞で内閣総理大臣賞
受賞。06 年、銅原料の南京東南銅業
有限公司を設立(中国)
。
2013 年∼
中国金属箔工場に新工場棟を建設。
03
福田金属箔粉工業株式会社
世界初・日本初
低粗度・高接着性極薄銅箔
ナンバーワン性能
トップシェア
技術等概要
プリンテッド・エレクトロニクスの
進化へ牽引する高性能インク
「銅の酸化物から銅の膜へ」という逆転の発想から独自に開
発した亜酸化銅ナノインクと導体化プロセスを組み合わせ
て、高導電性・高堅牢な導体膜を実現。
亜酸化銅ナノインク
プリンテッド・エレクロニクスに期待されている
「低コスト、
省エネルギーと省資源」のニーズに応えます。
【特徴 1】
アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔などといった金属箔は、
暮らしに密着した金属素材です。食品や薬の包装用など直接目にするものはほんの一部
で、特に携帯電話やパソコンなどといったエレクトロニクス関連の製品においては、銅箔
が隠れた主役として活躍しています。福田金属箔粉では加速し続けるエレクトロニクス製
品の小型化・軽量化、そして高周波化のニーズに応える電解銅箔を研究開発しています。
【特徴 2】
長期間にわたり高性能を維持
独自プロセスによる導体膜化
平均粒子径 50 ∼ 100nm、シャープな
半導体物性を生かした導体化プロセスで製造する導体膜
粒子径分布をもつ高結晶性亜酸化銅のナ
は、下記の特徴をもちます。
ノ 粒 子。 こ れ を 含 ん だ イ ン ク は 粘 度
1.任意の膜厚が可能(数 100nm ∼ 10 μ m)
10mPa・s 以 下(∼ 30wt%) で、 長 期
2.平滑な膜表面
間にわたり高安定・高分散性を保つほか、
3.バルク銅 (1.7 μΩ・cm)の 3 ∼ 4 倍以内の体積抵抗率
樹脂フィルム・ガラス・セラミック・
4.半田付け高密着 20kgf/cm2 以上
ITO・金属など幅広い基板に適応します。
高周波基材に対応した極薄電解銅箔
……V9W、FUTF(キャリア付極薄電解銅)
亜酸化銅
ナノインク
高周波基材用途で求められる低粗度化
高周波基材に使われる電解銅箔の接着表面は、低粗度が要求されま
すが、低粗度のため、基材との接着力が弱くはがれやすい問題があ
ります。弊社は、銅箔表面を均一微細に粗化処理することで、この
相反する問題を解決することに成功しました。
キャリア付き電解銅箔
25mm
25mm
描画後の乾燥膜
コーティングによる銅厚膜
端子間抵抗:∼ 50 Ω
銅膜への半田付け
インクジェット描画
による銅薄膜
亜酸化銅ナノ粒子
ニーズに最適な特性の電解銅箔の提供
電子回路基板用銅箔には、耐熱・対薬品性、接着性さらに強度や屈
曲性など様々な特性が要求されます。これらの要求を満たすために
銅箔表面にはめっき技術を応用した表面処理をおこないます。この
← 20μm →
めっきを制御することで顧客の求める特性に合致する表面処理銅箔
ここに
注目
を提供することが可能となります。
シャープな回路
背景
独自性
今後の事業展開
印刷技術を活用して電子回路や素子な
どを製造するプリンテッド・エレクトロ
ニクスにはいまだ課題が多い。回路形
成用の導体(接合)材料では微細パタ
ーンが印刷できること、基材の耐熱温
度以下で導体化できること、膜の抵抗
を小さくすることなどが求められてきま
した。
導体(接合)材料として銅ナノ粒子が注目
されていますが、酸化しやすいという実
用上の問題があります。京都大学との共
同研究で、
「銅の酸化物から銅の膜へ」と
いう逆転の発想で、インクの保管安定性、
印刷性と導体膜化を阻害しない世界初の
亜酸化銅ナノインクを開発しました。印刷
配線工法に適用でき、独自の酸化と還元
を組み合わせた導体化プログラムで、低
温度で高導電性膜にできます。
導電膜形成材料の開発者には材料ソー
スとしての「インク」を、デバイス開発
者には配線実装技術としての「インク
と導体化プロセス」を、提案します。
また性能のさらなる進化と低コスト化
に挑戦し、グローバルな技術競争がす
すむエレクトロニクス分野のイノベーシ
ョン創出に、材料面で貢献できるよう
挑戦を続けていきます。
“より薄く”を実現
また、電子機器の小型化・軽量化に伴い、薄さへのニーズにも対応
します。
銅箔単独で取り扱いが難しい 5 μ m 以下の厚さでは、厚さ 18 μ m
の銅箔などをキャリアとして使い、この表面に 2 ∼ 5 μ m の銅箔
を形成させた複合銅箔とし、基材へのプレス成形後にキャリアを除
去する事で対応可能です。
精細な回路パターン
会社概要・基本情報(2013 年 12 月現在)
業務概要
所在地 〒 607 -8305
従業員数 635 名
京都府京都市山科区西野山中臣町 20 番地 資 本 金 7 億円
U R L http://www.fukuda-kyoto.co.jp/
創 業 1700 年
非鉄金属箔粉の製造販売
T E L 075 -581 -2161(代表)
F A X 075 -581 -7271
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会社設立 1935 年
代表者名 代表取締役 園田 修三
今後は、上記のキャリア付極薄銅箔の拡大とあわせて、ノンキャリア銅箔の限界にも挑戦。また表面処
理電解銅箔の究極の目標とも言える無粗化高接着力銅箔の開発にも注力し、国内ハイエンド製品への採
用拡大をめざし展開していきます。
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