複素ロジスティック方程式 ll*

6
9
J
u
n
e2004
複素ロジスティック方程式 l
l
*
洲幸和賓
宏泰敏
田垣藤田
寺西伊和
~1.はじめに
我 々 は (1Jにおいて複素ロジスティック方程式を考え,その解は,無限個の極(発散する
点)を解の性格の lつとして持つことを示した。このとき我々は,
1つのアイデアを用いて解の
発散がどのようにして起こっているかを解析した。この論文では
このアイデアに基づいて次の
5つの場合にわけで解の振る舞いの複雑性を解明したい。
第 1は,ひとつの極を通り,かつ,すべての極を通る直線 l
(∞)に直交する直線上を時聞が動
く場合
第 2は,となりあう 2つの極の中心を通り l
(∞)に直交する直線上を時間が動く場合
第 3は,l
(∞)に平行な直線上を時聞が動く場合
第 4は,ある特別な点を通る折線上を時間が動く場合
第 5は,実軸または虚軸に平行な直線上を時聞が動く場合
~ 2
.準 備
この節では, ~ 3以降で使用する記号や復素時間 T平面を導入する。
T=s+t
;=Tを実数 s
,
tを用いて書き,定数 αを α=α +bj
工 I と実数 α
,bを
用いて書く。すると α・Tは次のように実数を用いて表示される。
複素時間
αT=(
α+b
;=I)(S+tj
ご了)=(
as-b
の+(bs+αt
)
j
三T
我々はここで, αs
-bt=u,b
s十 αt=vとおく
(
2
.
1
)
c
*本研究は,科学研究費補助金(萌芽研究 No.l侃 53021'の資金援助を得ている。ここに記して感謝
いたします。
Vo
.
l4
4N
o
.1
経済学論集
7
0
t
v
s
u
図 1 (T平面)
(1Jで定義した複素ロジスティック方程式
d互 =αz(l-z) の初期値 Zoキ 0,1をとる解は,
dT
Z
o
1-z
o
z=
(
2
.
2
)
e一α T+~
l -Z0
となる。さらに極(発散する点)は,
。
=
{T=- :
.(
lOge
I
二_
生
1
+
F
!(ar5g(
二
)
+
2
π
k
)
)
l
k
EZ}
e1
1
Z
o1
I'
V
¥1
-生
Zo/
.L ¥ U .
L
となっている。
ここで,ド主~I=
ド生I=uo,
r
g(二生)
=~o とおく。すると ,
1
1
-Zo1
-均一
,
u
, log
V5e1
1
-Zo1
一, a
5 ¥1
-ZO/.
L
U.
L
U=UO なる直線
叫
川
ω -一
bt= 一 1
O
0
上にすべての極がある O 我々はこの直線を,すべての極を通る直線 l
(∞)ということにする。図
2のA
k
(
kは整数)は極に対応する点である。
t
U
s
図2
複素ロジスティック方程式 E
J
u
n
e2
0
0
4
~
7
1
3
. 1つの極 Akを通り,かつ,すべての極を通る直線 l
(∞)に直交する
。
直線上を時聞が動く場合
この節では,我々は Tが直線
絶対値の
fラフ宇描く o
z
v
=-(~o+2πk)
l-z
o
上を動くときの,解 z=
、
、
,
e-α T+~ー
l-z
o
の
~2 で戸互Q__I
=r
o,a
r
g(二~)=~o
r
g(~)=~o+π
となる。そこで,
11-z
l
.v,
u.~E> ¥
l-z
-=-- .~.~ _
" a
u.~E> ¥
l-z/
/ '::>v と置いたから
o
o
o
T が直線 v= 一 (~o+2πk) 上を動くと,解 z は次のようになる,
z
=
イ亡
(
c
o
+
l
r
)
1
i
u
~ , ~U
e'1
ィ-Ho
-r
o
e
'
(
e
U
r
o
)
e
o
~ 'U
e
-U
+イ
ゴ(co+2π k)十 r
o
e
イゴ<eo+π)
。
e
- 一γ。
〆
寸
一
一γ
U
すなわち,
(
3
.
1
)
-
Izl=~
Uく Uoならば, Izl=~ーーとなるから
l
e
u
r
o
l となる。故に
,
,
e
-u
,,-
_.
-'V---'
一角
I
z
l
Uo
となる o
U>Uoならば,
1
0
U
図3
Izl=~ーより
ro-e-U
I
z
l
Uo
1
0
図4
u
7
2
Vo
.
l4
4No.1
経済学論集
となる。以上の議論をまとめると,図 5が得られる。
ι
1
図5
Ak+Ak
+l
を通り,すべての極を通る
2
直線 l
(∞)に直交する直線上を時聞が動く場合
~ 4
. 2つの極 AkとAk+l の中点
この節では,我々は Tが直線
v=-(~o+2πk)- π
上を動くときの,解 z=
e-α T+~
一
の絶対値比│のグラフを描くことにしたい。
l-z
o
t
l
(∞}
U
s
u
図6
T が直線 v= 一 (~o+2πk) 一 π 上を動くと,解は,
ィ
=
τ
(告。+π)
z γu
'
e
-u+、
ι1<en
+
2
π k+π
)十
_L
、
/
ご
了<
e
n
+
π
)
υ
r
o
e
'
4
, ~U
4
, ~U
。
γ
e
U
+
r
o
(
4
.
1
)
複素ロジスティッ夕方程式 H
J
u
n
e2
0
0
4
故に,
7
3
lz│=-LOよってグラフは下図のようになる。
e
帥十 r
o
I
z
l
一
ー
2
。
u
。
u
図7
~
5
. 全ての極を通る直線 l
(∞)に平行な直線上を時聞が動く場合
この節では,我々は
Tが直線
z
。
l-z
。
U=Ulキ u。上を動くときの,解 z=
の絶対値
A ーαT ム~
I
z
lのグラフを描くことにしたい o
e T1-zo
t
U
s
図8
Tが直線 U=Ul宇 u
。上を動くと解 zは
'
v-1
o
e
'
(
5
.
1
)
1ー
v
τ
ィ-1(~o+π)
V+r
o
e
U
1ーイゴu を複素平面に書くと原点を中心とした半径 e
U
1上を動く。こ
となる。ここで,まず e
U
1ー
〉
コ"+roeに 1<co+π) である。
o
e
ィ
コ(co+π)だけ平行移動したのが,e
れを r
z=
-
'
y
i
(~n+π)
・
0
7
4
Vo
.
l4
4N
o
.1
経済学論集
図9
I
z
lの最小値は v=-(~o+π)+2πm
I
z
l
= 向
をとる
で,
よって,
で
,
l
e
U
t
r
o
l
f
o
e
U
t
+
r
o
をとり,最大値は v=~o+2 πm
O
I
z
l
ー一一ーーーーー一一ーーーーーートー
Bo
ιそ
u,
1
0
!
'
_
o
_~ー
Bo+B-l
2
B-l
V
図1
0
~
6
. ある特別な Ql点を通る折線上を時聞が動く場合
この節では,我々は
こ
し
、
。
ことにし f
Tが下図の点 P1から Ql,P2への折線上を動くときの
I
z
lのグラフを描く
複素ロジスティック方程式 E
June 2
0
0
4
l
(∞)
7
5
U
A-2 - ~o+4π
P
2
ーさ。 +3π
A-l ーさ。 +2π
P
l
ーさ。 +π
U
l
U
o
。
A
-~。
h
U
図1
1
点P
lと Qlを通る直線の方程式は,
v=τ三
一 (U-U1)+(-co+π)
"
'
<
<
1
であるから , Tが P1 と Q
1を結ぶ直線上を動くとき
ィ-1(~o+π)
re
'
'
.
.
u
z
=
~
(
l
e- U1 ーにTId:(u 一向 )+(-~o+π)]
V
1
+
r
O
e
(
6
.
1
)
となる。この分母 e- U1ーイミ[官会7(U-Ul)+(-~O+ π)] +rOe イゴ(~O+π) を複素平面上に書くと下図のよう
になる。
P
l
Jι.
.
.
.
、.:;---・ .
ι"
P
2
ノ
f
2
図1
式の形より Q
1と P2 を結ぶ線上を Tが動けば対称図が書ける。よって ,I
z
lの最大値は分母が最
小になる点 Q
1でとり,その値は,
その値は
I
z
l
=e-九
十
l
<l
r
o
である。
I
z
l
=
r
O
eル 一 角
である。また,最小値は点 P
1と九でとり,
7
6
経済学論集
Vo
.
l4
4N
o
.1
:
I
z
l
Ql
Pl
図1
3
~
まず,実軸
7
. 実軸または虚軸に平行な直線上を時聞が動く場合
(
s軸)に平行な直線 t
=
t
。上を Tが動くときを考察する。
ィ-1(co+π)
z=
~ûe
υ
e
(ーαs-bto)ー〉立(bs河 内)
+
r
o
e
に 1(~o+π)
まず分母
(
7
.
1
)
e
(ーαs-bto)ーιl(bs+ato)+r
o
eイゴ(co+π) において sが+∞に行くときの振る舞いを複
ィ
コ(co+π) の周りを回転しながら r
o
〆
コ(co+π) に近づく。
o
e
素平面でかくと ,r
図1
4
よって ,zは 1の周りを回転しながら 1に近づく。つまり,
limz=l
S→+∞
一方, s
→-∞の時は,分母は回転しながら発散してゆくので ,zは回転しながら Oに近づく。
limz=O
J
u
n
e2
0
0
4
複素ロジスティック方程式 E
7
7
t軸)に平行な直線 s
=
s
o上を Tが動くときも全く同じ考察と結果である。
さらに,虚軸 (
すなわち,初期値 Z
oキ 0,1の解は ,Z=Oと z=lの解に近づく。
[参考文献]
[1] 寺田宏洲,西垣泰幸,伊藤敏和,
I
環境分析のための複素ロジスティック方程式J
,r
社会科学研究
4号
, 2
0
0
4年
, p
p
.1
1
2
1
1
7
.に掲載。
所年報.1, (龍谷大学社会科学研究所),第 3
(受付 2
0
0
4年 4月2
6日)