平成25年度の研究概要について 本校は、平成24・25・26年度の3年間

平成25年度の研究概要について
本校は、平成24・25・26年度の3年間の新
座市教育委員会委嘱を受け、今年度は2年目の研究
に取り組んできた。
研究1年目の昨年度は、それまでの研究の成果と
課題から、国語科の系統性の明確化、多様な評価方
法の工夫、言語活動のさらなる充実、話し合いの質
の向上をねらいとして、「言語活動を効果的に採り
入れた国語科授業の創造」を研究主題とし、サブテ
ーマに「読み合い、話し合い、考え合う授業を目指
して」を設定して研究を進めてきた。具体的には、
読むことの教材を中心に、話し合いを通して読みを
深められる力の育成、話し合いカードを有効活用し
たコミュニケーション力の育成、聴いて話して考えて伝える力の育成、書くことを通して読みを深めら
れる力の育成に取り組んできた。研究を進めるにあたっては、①単元を貫く言語活動を意識すること②
読みを深めるための読み合い、話し合い、考え合う授業を意識すること の2つを研究の視点とし、教
師による確かな教材分析、読み取り診断シートの活用、多様な言語活動の設定を柱に、大和田小スタイ
ルの授業を創造してきた。
研究2年目となった今年度は「単元を貫く言語活
動を意識すること」により重点を置き、サブテーマ
を「単元を貫く言語活動を意識した授業を目指して」
に設定した。このテーマの元、単元を貫く言語活動
を位置づける意義として、指導事項の確実な定着、
主体的な思考・判断を伴う学びの実現、学習活動の
精選、課題解決の過程の実現の4つを掲げ、それら
が達成される授業づくりに取り組んできた。
具体的には、単元を貫く言語活動を意識した「単
元構想」
「授業展開」
「指導案の作成」を研究の3本
柱とし、単元構想では、その単元で児童に身につけ
させたい力を明確にすること、授業展開では、その
力をつけるために最適な言語活動を選定すること、
指導案の作成では、「単元を貫く言語活動」の位置
付けが見える指導案の形式を開発することを、授業実践を通して研究してきた。
【研究授業① 6学年 生きているということについて意見文を書き、読み合おう】
6月には、研究のスタートとして6年生の研究授
業を行った。ここで身につけさせたい力は、要旨や、
構成・叙述等の読み手を説得するための表現方法を
とらえ、自分の考えを明確にしながら読む力、互い
の共通点や相違点を明らかにしながら、自分の考え
を広げたり深めたりする力とし、そのために「生き
ているということについて意見文を書き、読み合お
う」という言語活動を設定した。具体的には、児童
の実態把握や授業の構成に役立てる、チャレンジシ
ート(昨年度の読み取り診断シートにあたる資料)
の活用、「生きている」というテーマと関連するブ
ックトークによる導入、対話シート(教科書本文を
B4縦長3枚に印刷し直し、書き込みをしたり付箋
を貼ったりできるようにしたワークシート)と色分
けされた付箋紙を活用した読み取り、グループでの意見交流を手立てとし、導入時から「意見文を書き、
読み合う」という学習のめあてをはっきりさせ、毎時間の活動が意見文を書く力にどうつながっている
のかを確認しながら授業を展開させた。モデル学習となった「感情」の対話シート読み、またグループ
の意見をまとめる活動は、付箋紙活用のスキルアップにつながり、他教科の学習でもその活用と効果が
見られた。最終的に書かれた意見文では、中村桂子さんに共感できる部分だけでなく、中村さんとは異
なる考え方についても、根拠をはっきりさせて自分の考えを綴ることができており、意見文の交流を通
して「生きている」ことについて考えを深めることができた。指導案では、単元を貫く言語活動の位置
づけが一目で分かる単元構想図を提案し、どの時間のどの活動でどんな力をつけるのか、それが意見文
を書く力にどう関係していくのかが見えるようにした。
【研究授業② 5学年 本のショーウィンドウで伝記の小径を作ろう】
10月には、5年生の研究授業を行った。ここで
身につけさせたい力は、人物像をとらえることを通
して、自分の考えを広げたり深めたりする力とし、
そのために単元を貫く言語活動として「本のショー
ウィンドウで伝記の小径を作ろう」を設定した。自
分で選んだ伝記でショーウィンドウ作りを行うこと
を目標とし、
「百年後のふるさとを守る」と並行して、
自分で選んだ伝記の学習に取り組ませた。授業の前
半で、教科書を使って登場人物がしたこと、行動を
した理由、どういう人物か、人物像がわかる行動や
言葉、自分の生き方と比べて、といった内容の書き
方を1時間にひとつずつ指導し、授業の後半では、
その時間に学習した内容を自分が選んだ伝記に拡張
し、ショーウィンドウ作りの下書きを行わせた。手立てとしては、夏休みの課題としての取組の他、本
のショーウィンドウ作りにそのまま生かすことのできる「まるわかりシート(伝記の人物がしたことと
その理由を横並びに書き、そこから人物像を考えたり自分の生き方と比べたりできるようレイアウトし
たワークシート)」の活用、読みの深さを判断して構成した意図的3人グループでの交流、発表による
理由付けの確認や考えの深化に取り組ませた。6月の研究を踏まえ、単元の流れと単元を貫く言語活動
の位置づけがよりわかりやすい単元構想図の形が見えてきた。やはり、導入の段階で本のショーウィン
ドウを作るという目標をはっきりと示すことにより、また、毎時間の活動が目標にどう関係しているの
かを意識しながら言語活動をさせることにより、児童はより目的意識を持って主体的に学習に取り組む
ことができた。完成したショーウィンドウは図書室前の廊下に掲示することから、全校児童が目にする
という相手意識をもって丁寧に書かれており、簡潔でわかりやすい文章となった。
【研究授業③ 2学年 1年生におもちゃフェスティバルでプレゼントする説明書を作ろう】
11月には、2年生の研究授業を行った。ここで
身につけさせたい力は、おもちゃ作りの順序に沿っ
て説明書の構成を考えて書く力とし、そのために
「1年生におもちゃフェスティバルでプレゼント
する説明書を作ろう」という言語活動を設定した。
具体的な手立てとしては、チャレンジシートの活用
のほか、発見した“書き技”を書きこむ短冊カード
を使用した。これは、高学年の付箋紙の活用につな
がるものとなった。 また、教師が意図する書き技
を発見させるためのヒントカードを色別にして用
意し、児童が自力で考える手がかりとした。見つけ
た書き技はペアで交流し、短冊カードを並べたり、
同じ物は重ねたりして比較した。これも、付箋紙の
活用につながる活動となった。前の時間までの学習
内容をふり返ったり、今後の見通しをもったりすることができる掲示、教材提示装置を使って実際に説
明文を書いている様子を見せたことも、確かな理解につながった。はじめに教師が作ったおもちゃを見
せ、その作り方について毎時間1つずつ説明書の部分を完成させていくスタイルで授業を展開し、実際
に書かれた説明書を見ると、学習した書き技を見事に生かしながら、
「1年生にもわかりやすいように」
という明確な目的意識をもっていることが伝わってくる言葉の選び方や丁寧な字で、最後まで意欲的に
学習を進めることができたことが分かる。おもちゃフェスティバルは生活科と関連させて開催し、実物
のおもちゃで遊びながら説明書をプレゼントすることができた。実際に1年生と楽しく交流することで、
相手意識を持って取り組んできた学習がはっきりとした成果として現れ、2年生は達成感を得ることが
できた。
【研究授業④ 3学年 2年生に昔話・民話の読み聞かせ発表会をしよう】
続いて、3年生の研究授業を行った。ここで身に
つけさせたい力は、民話や物語が4つの組み立てに
よって構成されていることを理解し、音読に生かす
ことができる力とし、そのために「2年生に昔話・
民話の読み聞かせ発表会をしよう」という言語活動
を設定した。具体的な手立てとしては、夏休み中の
昔話・民話の先行読書、チャレンジシートの活用の
他、学習内容の視点(
「出来事が変化する」場面)
に沿ったワークシートの工夫、前の時間までの学習
内容が整理され、今後の学習の見通しがもてる掲示
の活用、人数や机の並びによる効果を意識して設定
したグループ活動(同じ昔話を選択した意図的3人
グループ・全員が中央を向き、真ん中に教材を置く
ことができるよう板を設置)、そして全体への発表
とまとめにより、大事なポイントの確実な定着を図った。児童が選ぶ昔話については、起承転結がはっ
きりしているもの(さるかに合戦・赤ずきん・一休さん・白雪姫)を選択肢として用意し、さらに、音
読の工夫のポイントとなる「転」の場面をわかりやすくするために一部文章を修正し、教材開発をした
ことも効果的であった。実際に行われた2年生への読み聞かせでは、出来事が変化する「転」の場面を
意識して工夫した音読をすることができ、2年生からは、読み方の工夫や面白かったところが具体的に
書かれたお礼の手紙が届けられた。2年生の研究同様、ひとつ下の学年に向けて、という異学年交流の
活動にすることで、明確な相手意識、目的意識をもって最後まで意欲的に学習に取り組むことができた。
【研究授業⑤ 4学年 取材をし、写真と文章を工夫して組み合わせて3年生に向けたクラブリーフレットを作成しよう】
12月には、文部科学省水戸部修治先生を招聘し、
また市内外の参観希望者を受け入れて4年生の研
究授業を行った。ここで身につけさせたい力は、書
こうとすることの中心を明確にして、写真と文章を
対応させながら段落相互の関係に注意して文章を
書く力とし、そのために「取材をし、写真と文章を
工夫して組み合わせて3年生に向けたクラブリー
フレットを作成しよう」という言語活動を設定した。
具体的な手立てとしては、チャレンジシートの活用
の他、取材時に作り、書きたい内容を検討するとき
に活用する付箋紙のメモ、“分かりやすい説明の秘
密”をふり返ることのできる掲示、3年生を引きつ
ける“裏技”を確認できる掲示の活用、単元を貫く
言語活動と本時の活動との関連を確認し、今後の見
通しをもつことができる掲示、付箋紙や取材した写真を使って詳しく臨場感のある表現を引き出すこと
ができるワークシートの工夫、横並びの意図的3人グループでの読み合いとアドバイスにより、アップ
の視点で細かい部分の様子がよく分かる、自分にしか書けない文章を書くことができた。取材活動につ
いては、クラスの壁を取り払って取材グループを編成し、特別活動と関連させてクラブ活動の時間に取
材を行った。リーフレットの後半、ルーズの視点では、前半のアップの視点と内容を選別してクラブ活
動全体の紹介を書くことができ、いずれも「来年度からクラブ活動が始まる3年生に向けて」という相
手意識、目的意識を明確にもって「3年生が入りたくなるようなクラブリーフレットを作成すること」
をテーマに意欲的に言語活動に取り組むことができた。実際に3年生にリーフレットを読んでもらう交
流の場では、児童は達成感を味わうことができた。
【研究授業⑥ 1学年 もののとくちょうをつかってクイズをつくり、ほかのクラスとインタビュークイズ大かいをしよう】
2月には、今年度最後の研究授業として1年生の
研究授業を行った。ここで身につけさせたい力は、
身近なことや経験したことから必要な事柄を集める
ことができる力、分からないことや詳しく聞きたい
ことを尋ねたり、それに答えたりすることができる
力とし、そのために「もののとくちょうをつかって
クイズをつくり、ほかのクラスとインタビュークイ
ズ大かいをしよう」という言語活動を設定した。具
体的には、単元を貫く言語活動に係る診断項目に絞
ったチャレンジシートの作成と活用、話し方・聞き
方の掲示、お試しクイズの際にクイズマンに質問す
る内容のヒントとなる掲示、本時の活動と単元を貫
く言語活動との関わりが確認できる掲示、貼っては
がせる短冊で選んだヒントの並べ替えができるワー
クシートの工夫、教師のモデリングを参考にしたペアでのクイズの出し合い、ヒントの難易度や順番を
練り直す活動を手立てとして、クイズマン、アンサーマンともにわくわくするクイズ作りに取り組むこ
とができた。お試しクイズのペアは実態に合わせた意図的な組み合わせで、2回行われる実践(ペア交
流)がいずれもにスムーズに行われるよう配慮した。授業の流れについては、先行授業のたびに検討を
重ねて様々なパターンを試し、研究授業の展開が決定した。ワークシートの形式についてもいくつかの
パターンを試す中で、中学年・高学年の付箋紙の活用につながる短冊の形となった。最終的にクイズ大
会をクラス間で実施させることで明確な相手意識・目的意識をもたせ、児童同士の活発な交流を生み出
すことができ、児童の「話したい」
「聞きたい」という気持ちに基づいた意欲的な活動となった。
以上、今年度6回の研究授業と研究協議を通して、
単元を貫く言語活動全体についての見通しをもた
せること、目的をもって教科書教材を読ませること、
学習活動は常に単元を貫く言語活動と結び付いて
いること、一貫した課題解決の過程を構想すること
の4つを共通理解することができた。また、各学年
の単元を貫く言語活動において、付箋紙(またはそ
れにかわるもの・つながるもの)を活用した思考の
深化という大和田小スタイルが見えてきた。チャレ
ンジシートについては、教材文の読み取りを診断す
る目的から、言語活動そのものに関わる実態の診断
という目的に、とらえ方が変わっていった。指導案
形式の開発については、研究授業を重ねる毎に単元
を貫く言語活動の位置付けが明確となる単元構想
図の形がつくられてきた。
今後は、今年度の研究の成果と課題を踏まえ、研究主題によりせまっていくための手立てについて検
討を重ねていくとともに、児童の自己有用感を高めることができる単元を貫く言語活動について、チー
ム大和田として全職員が一丸となり、研究を重ねていきたい。
(参考)
単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド(水戸部修治著・明治図書)
イラスト図解でひと目でわかる!小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド1・2年(水戸部修治編著・明治図書)
イラスト図解でひと目でわかる!小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド3・4年(水戸部修治編著・明治図書)
イラスト図解でひと目でわかる!小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド5・6年(水戸部修治編著・明治図書)
教育科学 国語教育 2013 年 7 月号臨時増刊 No.763「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24(水戸部修治編・明治図書)