互いに学ぶ 国語科の授業における言語活動の位置付け

第 30 号
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国語科の授業における言語活動の位置付け
指導主事 北田 邦弘
11 月に東京で開催された研修会において、「授
業における言語活動の位置付け」をテーマに、各
自持ち寄った実践例の中で言語活動がどのように
授業に位置付けられているかを検討しました。私
が持参した、県西部で今年度1学期に行われた実
践例は、0から5まである評価の内、上から二番
目の「ステップ4」の高評価をいただきました。
ステップ4というのは、「言語活動が単元を貫い
ており、付けたい力に合っている」というもので
す。あらためて富山県の先生方のレベルの高さを
感じました。
各県から持ち寄られた実践例を見ると、言語活
動についていくつかの課題が見えてきました。
例えば、言語活動は位置付けているが、場面ご
とに読み進め、最後に付け足しのように「朗読発
表会」や、感想の交流をさせる授業があります。
生徒としては、「なぜここで朗読発表会をするの
だろう?」と思ってしまい、主体的な活動になる
とは言えません。言語活動は、生徒が主体的に学
習を進めるための原動力になることが求められま
す。
また、言語活動がマニュアル的である授業があ
ります。細かい言語活動のステップを用意するこ
とで、どの生徒も達成感を味わうことができます
が、小学校で行った言語活動を再度細かいステッ
プで行っても、中学校で付けるべき力が身に付く
とは言えません。当該学年でどのような力を付け
させるのかを明確にした上で、生徒が考え、試行
錯誤する機会を与えることが必要です。生徒の言
語活動に対する教師の適切な関与や評価により、
学習の質を更に高めることができます。
現行の学習指導要領が全面実施されて3年目に
なりました。各郡市、又は各学校で、「単元を貫
く言語活動」
を取り入れた授業が行われています。
今一度中教研国語科部会の先生方の高い専門性を
生かして研究を進めることで、より質の高い実践
が積み重ねられていくことを願っています。
(西部教育事務所)
平成27年3月
富山市千歳町1−5−1
富山県中学校教育研究会
桑嶌 一彦
金山 泰仁 先生
互いに学ぶ
部長 桑嶌 一彦
10 月 15 ・16 日に行われた研究大会に、4会
場全てに参加させていただきました。どの会場校
もきれいに環境整備がなされており、大会を受け
入れてくださった上に、先生方に学びの場を提供
してくださりました。
研究授業では、様々な取組が行われており、研
究主題の追究が確実になされていました。特に、
副題にもある「他者と交流して思考を深める言語
活動」については、多くの工夫がなされており、
生徒がまさしく主体的に学べる場の設定になって
いました。グループ等で話し合うことで、一人一
人の生徒が、自ら考え、その考えを適切な言葉で
表現し、互いに聞き合うことで、自分の考えを更
に深めていました。さらに、どの研究授業も、
「単
元を貫く言語活動」が明確に仕組まれており、生
徒は課題意識をもち意欲的に活動していました。
これらの取組は、研究大会だからできたのではな
く、日頃からの積み重ねがあるからこそできたこ
とで、日々の実践に対して頭の下がる思いでした。
そこで、今までの私自身の授業について考えて
みました。生徒は学習に見通しをもって取り組ん
でいたか、毎時間指導事項を意識し、付けたい力
を身に付けさせていたか、教材の特質・生徒の実
態を考えて課題を設定していたか、グループ学習
はただの報告会になっていなかったか等々、恥ず
かしい思いが次から次へと出てきました。
研究授業や互見授業等を、多忙と感じられるこ
ともあるかもしれませんが、私たちが他の教師か
ら学ぶ気持ちを日常的にもち、多くの仲間と切磋
琢磨しながら、自分自身を向上させることができ
れば、それは全て生徒に関わっていきます。そう
すれば、互いに今ままで以上の満足感・充実感が
味わえるはずです。今後も、生徒のために、部員
みんなで頑張りましょう。
― 国 ― 1 ―
(富・興南中)
第 58 回
新
川
地
区
(滑・滑川中)
富
山
地
区
研 究
(富・呉羽中)
(1)研究授業
(1)研究授業
岡田愛教諭による「君待つと」( 光村図書3年 )
上坂恭子教諭が「言葉を探検する(ポスター
の授業では「韓衣」の防人歌を題材に、作品に描
セッションをする)」の授業を第1学年で行った。
かれた情景や作者の心情を読み取る学習が行われ
上級生がポスターセッションの説明を実演してい
た。本時の実践は最終時に設定された単元を貫く
る動画を視聴し、分かりやすい話し方を考えると
言語活動「好きな和歌を一首選び、鑑賞文を書
こう」を意識したものであり、鑑賞の仕方を習得す
る目的で展開され
いう授業であった。生徒は、動画による話し方の
実例を見て、分かりやすい話し方のポイントをグ
ループで明らかにし、練習に取り入れた。
た。
また、伊橋亮教諭が「いにしえの心を訪ねる『扇
音読後に、生徒
の的』平家物語から」の授業を第2学年で行った。
のつぶやきを交え
群読における「あ、射たり」「情けなし」の読み
ながら古語の意味
方を、言葉に込められた気持ちを想像しながら考
や時代背景を丁寧
に説明し、その上で鑑賞活動に入るという導入の
工夫により、学習課題に対する生徒の意欲が喚起
された。さらに、①和歌に表れた情景や心情を読
み取る、②印象に残った言葉を一つ選ぶ、③和歌
に対して自分の考えや思いをもつ、というポイン
トの提示により、生徒たちは見通しをもって活動
した。そして、自分が読み取った内容や疑問に感
じたことについて、周囲の友達と相談し合った後
に全体で発表する流れの中で、段階的に他者との
交流を図ることができた。その際、岡田教諭は効
果的な切り返しや鑑賞文を書く活動に生きる構造
的な板書によって、生徒の思考の深まりを促した。
(2)研究協議(指導・助言)
部会協議では「読むこと、書くことにおける型
の提示」 「板書記録の必要性」 「生徒同士による交
流活動」に関する意見交換が行われた。
上島陽一郎主任指導主事からは、①生徒自身が
親しみをもって取り組める古典学習の工夫、②他
者との交流による思考の深まりを自覚できる振り
えた。12 人のグループで互いのノートを読み合
う「ノート交流」を通して工夫点を話し合い、群
読の練習に生かすことができた。
いずれの授業においても、他者との積極的な交
流を通した課題追究がなされており、研究主題で
ある「社会生活に生きて働く言語能力を身に付け
る」に迫ることのできる実践であった。
(2)研究発表(紙上発表)
成瀬美沙教諭(上滝中)が「他者と交流して思
考を深める言語活動はどうあればよいか」を主題
として、推敲の授業の実践発表を行った。俳句の
鑑賞文をお互いに推敲する実践や、説明文を実際
に書いてみる実践が発表された。文章を書くこと
への意欲を高める工夫がみられた。
(3)研究協議(指導助言)
第1学年部会では、砂土居良江指導主事から「根
拠を挙げて話し合うことの工夫」について指導助
言をいただいた。全体会では、水野昌之主任指導
主事から、推敲の授業について「書くこと」の目
返りの工夫、③生徒の発言を中心とする主体的な
的や意図を明確にした指導に関する講話をいただ
言語活動を仕組む工夫、④単元を貫く言語活動を
いた。また、小学校からの「目標及び内容の系統
意識した課題設定や提示の工夫、といった4点に
表」を資料に、指導段階を考えた目標設定につい
ついて、授業の成果と課題を踏まえた指導・助言
ての助言もいただいた。
をいただいた。
有山 博子(中・舟橋中)
― 国 ― 2 ―
石田 一(富・新庄中)
大会 を 終 え て
高
岡
地
区
(高・芳野中)
(1)研究授業
砺
波
地
区
(砺・出町中)
(1)研究授業
二俣紀子教諭による「君待つと-万葉・古今 ・
新古今」
(光村図書3年)の授業では、単元を貫
く言語活動として「和歌のショートストーリーを
書く」活動が設定された。ショートストーリーと
は、読み取った内容に、体験や想像を加えて、自
分の言葉で物語に書き直したものである。次時に
生徒が自分で選んだ和歌で書けるようになるため
に、本時では西行法師の和歌を取り上げて読みを
深めた後、モデルの文章にならって個々が文章を
書いた。
河﨑泰子教諭が「学校案内リーフレットをつく
ろう」(三省堂1年)という題材で授業を行った。
中学1年生が小学6年生に中学校生活を紹介する
ためのリーフレットをつくることで、読み手を意
識し、伝えたいことを明確に伝える文章を組み立
てる力を育てることをねらいとする学習である。
本時は「もっと効果的に中学校の魅力を伝えるた
めにはどのような工夫をすればよいか」という学
習課題のもと、表現の改善点について、生徒同士
が意見を交換して推敲する学習であった。
協 議 会 で は、
前時に表
「ショートス
現の工夫に
トーリー」の定
ついて学習
義が曖昧であっ
し、話合い
たこと、文章に
の観点が
書くべきポイン
はっきりと
トを具体的に示
した方が書きやすいこと、モデルの文章の示し方
していたことから、生徒はねらいから外れずに活
が大切であること等の意見が出された。
発に意見交換した。また、班での話合い活動の後
砂土居良江指導主事からは、言葉の効果的な使
い方等、表現上の工夫に注意して読むなど、指導
事項を意識して指導することや、古典の学習では、
小学校での学びを事前に捉えた上で、言語活動を
設定することについて助言を受けた。
に、各班で出されたアドバイスを学級全体に紹介
することで、学習の成果を共有することができた。
北田邦弘指導主事からは、「グループ学習にお
けるゴールを最初に示すことの大切さ」や「一年
間を見通した学習計画の重要性」等について、授
(2)研究発表
氷見市からは「読むこと」を効果的に指導する
ための言語活動の工夫や、自らの課題を解決して
いく過程を明確にした学習の在り方について、米
田香麗教諭が発表した。
授業研究、研究発表ともに「単元を貫く言語活
動」が課題として挙げられた。砂土居指導主事か
らは、
「単元を貫く言語活動」は課題解決的な活
動として位置付け、身に付けさせたい力を明確に
して設定すること、活動を設定する際の妥当性は
評価規準にあることについて指導を受けた。単元
業展開に沿って具体的に指導いただいた。
(2)授業力向上のための講義
富山大学人間発達科学部教授の米田猛先生によ
る「『読むこと』指導の再考」の講義が行われた。
「単
元を貫く言語活動」を通してどのように読みの力
を育てるかについて分かりやすく説明していただ
いた。「何のために読むのか」「どんな力を育成し
たいのか」この二つを必然的に結ぶのが言語活動
であることを改めて確認し、日頃の教育実践の中
で、「言語活動先にありき」に陥らないようにし
のゴールを示し、それに向かって本時では何をし
なければならないと感じた。
なければならないかを意識しながら授業を進める
ことの大切さを感じた。新保 智恵(高・国吉中)
― 国 ― 3 ―
下村 知絵(南・吉江中)
中新川郡中教研
氷見市中教研
「少数だからこそできる授業力向上を目指して」
「他者と交流して思考を深める言語活動」
少数の部会員で構成される中新川郡国語部会で
氷見市中教研国語部会では、平成 24 年度から
は、具体的な情報と意見を交換することで、個々
「他者と交流して思考を深める言語活動」につい
の授業力向上に努めている。
5月には、
「評価方法の実際と工夫」をテーマ
に「国語への関心・意欲・態度」や「話す・聞く
能力」の評価に関する悩みや効果的な方法につい
て相談し合った。8月には、高志の国文学館にて
「おわら風の盆」にまつわる作品に触れることが
できた。9月の研究主題に基づく授業実践では、
協議に付箋を活用することで、授業改善の視点を
絞り込み、部会員一人一人が今後に生かせるスキ
ルを考えることができた。今年度のまとめでは、
生徒のワークシートや作品等を持ち寄り、実践の
成果等を共有する。
て、研究授業を行い、教材分析と指導法研究を通
して研究主題の解明を図ってきた。
26 年度は長く教材に使われている「大人にな
れなかった弟たちに…」で、三つの読みの視点を
示し、その視点ごとの話合いから考えを深める展
開で研究授業を行った。
3年間の研究を通して、「単元を貫く言語活動」
の在り方について課題が残された。指導計画に位
置付けるだけではなく、何を学ぶのか、なぜ学ぶ
のかを明示し、毎時間の書く活動や話す・聞く活
動に見通しがもてる単元構成を考えていかなけれ
ばならない。今後も授業研究や情報交換を通して、
授業改善に取り組んでいきたい。
早瀬 勝(氷・北部中)
有山 博子(中・舟橋中)
富山市中教研
「国語の素養を深め視野を広げるために」
南砺市中教研
「他者と交流して思考を深める
〜「書く」授業の実践〜」
8月部会で、射水市大島絵本館事務局長の土田
井波中学校の津田教諭が「体験文」を題材とし
陽一先生に「心を育てる絵本の世界」という演題
て、自分の考えや気持ちを明確にして書く実践を
で講演をいただいた。優しい語り口の中にも絵本
行った。
体験文を書く活動を通して、自己の成長を実感
に対する熱い情熱が感じられ、絵本の読み聞かせ
を通した心の触れ合いこそ
させたいという教師の願いから、伝えたい思いを
が大切な家庭教育であるこ
表現するための根拠として、説得力のある体験を
と、絵本や童話が子供の心
吟味し、言葉や構成を考える活動がなされた。
色別の付箋に「伝えたい思い」「体験」を書か
に与えるよい影響等を、分
かりやすくお話しいただい
せたことで、ペア
た。 ま た、 中 学 校 の 教 科 書
で話し合い、付箋
に掲載されている題材と関
絵本表紙
を動かしながら
連のある絵本の紹介もしていただき、大変参考に
構成についての
なった。
考えを深めた。ま
土田先生は絵本の制作にも携わっておられ、大
た、教師が伝えた
伴家持が越中赴任中に詠んだ歌を中心にした万葉
い思いは同じでも、そこに至る体験が違うとどう
集の絵本『春の苑紅にほふ』の紹介もしていただ
なるかという作文例を二つ提示したことで、生徒
き、和歌の学習にもぜひ活用したい。
は学習活動に見通しをもつとともに、授業のねら
石田 一(富・新庄中)
いをしっかり理解し、意欲的に取り組んだ。
― 国 ― 4 ―
下村 知絵(南・吉江中)