国語科教育研究部

国語科教育研究部
【平成28年1月現在】
主任
髙渕 美千代
部員
松田 竜大,川村 由美,中川 昌子
研究主題
言葉の力を高める国語科授業の創造
目指す児童の姿
*1
対話 を通して,新たな考えを創り出す児童
研
対話を通して,新たな考えを創り出すことができる児童を育てるために,単元構成を工
究 夫すると共に,対話につながる主たる協働場面を設定した授業を構築し,それを積み重ね
目 ることが有効であることを実践的に明らかにする。
標
研
単元構成を工夫すると共に,対話につながる主たる協働場面を設定した授業を構築し,
究 積み重ねることにより,児童は対話を通して新たな考えを創り出すことができるようにな
仮 るであろう。
説
Ⅰ 研究主題,目指す児童の姿設定の理由
本研究部では,研究主題を「言葉の力を高める国語科授業の創造」と設定した。言葉の力
とは,『他者と関わりながら自分の考えを適切に表現できるように言葉を選ぶことができる
力』と捉えた。これは,学習指導要領解説「国語科改訂の趣旨」の中で,「言葉を通して的
確に理解し,論理的に思考し表現する能力,互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能
力を育成すること」を重視していることを受けている。
この具体の姿の一つとして,「対話を通して,新たな考えを創り出す児童」の育成を目指
す。「対話を通して,新たな考えを創り出す児童」とは,言葉や文と出会う中で感じた「な
ぜ だ ろ う」「 よ く分 か ら ない 」「 不 思議 だ 」と い う 思 いを 基 に 課題 を 自ら 発 見 し ,言 葉を 根
拠としながら課題に対する自分の考えを書いたり話したりする児童のことである。加えて,
対話を通して,「最初は○○だと思っていたけれど,~さんの意見を聞いて・・・だと思い
ま し た」「 話 合 いを 通 し て, △ △ とい う 新 しい 見 方 に気 付 き まし た」「 話合 い を 通し て, 自
分の考えは確かだなと思いました」等のように,対話を通して思考を深めたり広げたりする
姿のことである。
なぜ,上記のような姿に設定したのかは次の理由による。
1
国語科で求められている力
中教審による「論点整理」(2015.8)によると,言語活動を通じて課題を解決する能力や
情報活用能力の育成,他者と異なる新たな考えや価値を創出し表現する活動の充実などを
*1 「対話」とは,『広辞苑第4版』(新村出編,岩波書店,1993)によると,「向かい合って話す
こと。相対して話すこと」とあり,「会話」と同義として捉えられているが,本研究部では2つ
を 違 う も のと し て捉 え てい る 。そ れ は,『 国 語教 育 指導 用 語辞 典 第4 版 』(田 近 洵一 , 教育 出 版
,2009)に よる 。 会話 は 親しい 者同 士の おし ゃべり であ るの に対し て, 対話 は,「相 手との 意見 交
流を通して社会性が養われ,自己の考えを振り返り,捉え直し,創造的に価値や意味を見出すこ
と」という意義をもつ。
図っていくことが求められている。このことから,対話することを通して,新たな考えを
創り出すことができる児童を育成する必要がある。
2
昨年度の取組から
本研究部では,「根拠」と「理由」を共に示すことで「主張」の説得力を向上させるこ
とを目指すと共に,
「根拠」を基に「理由」を明確にして表現する活動を積み重ねてきた *2。
その結果,伝えたいことが吟味され,「主張」に説得力が増した。児童は,ただ漠然と考
えを 主 張す るの で は なく ,「 主 張」 す る 際に は ,「 根拠 」 と 「理 由 」を 共 に 示 すこ と が 有
効だということを学習した。そうすることで,「根拠」・「理由」・「主張」の3つの視点を
意識し主張するという方法が身に付いた。しかし,その考えを深めたり,広げたりという
点が不十分だという課題が残った。
以上に鑑みて,研究主題を「言葉の力を高める国語科授業の創造」,目指す児童の姿を,
「対話を通して,新たな考えを創り出す児童」と設定した。
Ⅱ
目指す児童の姿の具現化に向けて
上記のような児童の姿を実現するために,以下のような手立てを講じていく。
1 単元構成の工夫
言葉の力を高めるために,その単元でどのような力を児童に付けていきたいかを明確
にする。その後,児童自らが課題を発見し,主体的・協働的にその解決に取り組み,成
果を発信するというひとまとまりの過程を単元として設定する。
2
対話につながる主たる協働場面の設定
一単位時間の中でも身に付けたい力を明確にし,最適なタイミングと方法で協働させ
る。その際,自分がなぜそう考えたのかを説明するだけではなく,互いの考えの違いや
よさを認め合うことができるよう働きかける。対話を通して,自分の考えを見つめ直し,
新たな考えを創り出すことにつなげていく。
新たな考えを創り出した児童は,対話のよさにも気が付くと考える。
このような手立てを講じることで,与えられたことを指示通りにこなすにとどまらず,自
ら課題を発見し,その解決に向けて言葉と向き合ったり,言葉を用いて主体的に課題解決を
図ったりすることができるようになると考える。
Ⅲ
研究内容と方法
対話を通して新たな考えを創り出す児童を育てるために,Ⅱの1,2に留意した授業を行
う。
【参考文献】
水戸部修治『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド
1・2年』明治図書,2014
田近洵一『国語教育指導用語辞典第4版』教育出版,2009
鶴田清司『論理的思考力・表現力を育てる言語活動のデザイン小学校編』明治図書,2014
『教育科学国語教育9月号』明治図書,2015
*2 根拠・理由・主張の3点とは,鶴田清司がトゥルミン・モデルに基づいて提唱した論理的思
考力・表現力の育成のための一つの観点・方法である。鶴田清司『論理的思考力・表現力を育て
る言語活動のデザイン小学校編』明治図書,2014,p22