健康な高齢者に対する高たんぱく質摂取の機能面への影響 Walrand S et al. Am J Physiol Endocrinol Metab 295: E921-E928, 2008. 加齢に伴い、筋肉量、タンパク質合成、ミトコンドリアの機能の低下が起こること、アミノ酸は 筋タンパク質合成とミトコンドリアの機能を高めることが報告されている。食事のたんぱく質を 増加させることが、高齢者における吸収後状態の筋肉の変化を改善するかどうか明らかではな い。我々は、無作為化・クロスオーバー法で、健康な10人の若齢者(24 1歳)と9人の高齢者(70 2歳)について、10日間の高たんぱく質摂取[HP; 3.0 g protein · kg fat-free mass (FFM)-1 · day-1] が通常のたんぱく質摂取[UP; 1.5 g protein · kg FFM-1 · day-1]に対して、ミトコンドリ アの機能、タンパク質代謝、窒素出納に良い影響を及ぼすかどうか、またインスリン感受性や糸 球体濾過速度(GFR)に悪影響を及ぼすかどうか検討した。正味の窒素出納は若齢者と高齢者で同 様に増加したが、タンパク質合成の変化は伴わず、全身体タンパク質代謝回転やロイシン酸化の 増大が示すように、吸収後の異化も増大した。筋ミトコンドリアATP産生の最大速度は高齢者で 低く、食事による変化はなかった。GFRは高齢者で低く、HPに対する反応は二群間で有意に異 なり、若齢者のみで有意に増加したため、若齢者と高齢者のGFRの差は拡大した。結論として、 短期間の高たんぱく質食で正味の窒素出納は増加したが、吸収後状態のエネルギー源としてのタ ンパク質の利用が増加した。HPは若齢者でも高齢者でも、タンパク質合成またはミトコンドリア の機能を高めなかっただけでなく、若齢者と高齢者のGFRの差を拡大したことは、高齢者での HP食の利用の潜在的な懸念の理由である。 2008年10月22日 大学院博士後期課程三年 田井伸二 たんぱく質の多い食事には良いイメージがあると思う。しかし、必要量以上のたんぱく質はむし ろ良くないという研究が目につく。たんぱく質は炭水化物や脂肪と異なり窒素を含んでいるの で、必要量以上を摂ると窒素の処理が必要になる。窒素を処理する主要な臓器の一つが腎臓であ る。この論文では、高たんぱく食を摂った高齢者で腎臓機能の指標であるGFRが低下していた。 このため、高齢者が高たんぱく食を摂ることに懸念があると述べている(岡村浩嗣)。
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