豊 かな体験活動推進事業中部ブロック交 流 会 分科会(高等学校)発表資料 ころもだい 愛知県立衣 台高等学校 1 本校の概要 本 校は 、「さ と く、明 るく、 頼も し く」という校 訓のもとに「社 会の役 に立つ 人間を 育てる」を教 育 目 標とする、創立29 年目の全日制普通科高校である。 本校のある 豊田市は、全国一の製造品出荷額等を誇る 愛知県の中でも 、産業のけん引 的役割を果たしている。昭 和13年に大手自動車会社の 工場を誘致以来 、日本を代表す る「車の町」 として発展し 、自動車関連を 中心に「モノ づくり」産業が 集積している。 一方、市の総面積の50% 以上が山林や田 畑で、緑豊か な自然環境にも 恵まれている。 現在本校は 各学年8ク ラ スの計24ク ラ ス、900名 を超える生徒数 である。約80 %が豊田市内 から、約20 %が隣接する市町村から通学 している。進路状況は約45% が大学進学、 約25%が専門学校進学、約 25%が就職 している。就職 に関しては、厳 しい状況の中、毎年希望者の85%以 上が第一希望の企 業に内定している 。 また、平成 6年度卒業生 が阪神淡路大震災の被災者へ 、卒業記念品代 を義援金として 贈った。そ れ を聞いた岐阜県荘川村の役場 から、卒業記念品がなくてはかわいそうだと いうことで「 思いやりの荘川桜」の苗5本 が本校に贈られてきた。その 縁で、1年生は オリエンテーション合宿で荘川村へ、 2年生は修学旅行 で神戸へ行くことにした。 ともすれば 個人主義が進 む社会風潮の中 で、本校では 荘川桜とともに 人のきずなを大 切にする心(本校ではこの心 を Korodai Spirit という)を 育て、人間と し て の基礎・基本を 育成することを具体的な目標と し て い る。 2 研究のねらい( 第1学年を中心に し て) 本校に お け る豊かな体験活動のねらいは 、本校の教育目標にあるように、各自が社会 の役に立つ存在として豊かな人間性や 社会性をはぐくむことにある。 このねらいを実 現するため 、体験活動の在り方 について「 豊 かな体験活動推進委員会 」 で討議した。 その結果、地 域の人や保護者 を講師とする 体験活動に主眼 を置くこと、一 人一人が主 体 的に考え行動 することを目標 とするが、最 初は学年やク ラ ス単位での体験 を通して自己 を発見する活 動から始め る こ と、また、平 成14年度から 全校一斉実施の 「総合的な 学習の 時間」 のテ ー マで あ る「きずな( 人と人 とのつながり )」とも 関連さ せること、という 3つの方針を立てた 。 この方針に 基づき、自分 は将来どの道に 進み、き ず な を広げたいのかを発見するため の活動を第1 学年の計画に 盛り込むことにした。自分の 将来を具体的に 考えるために、 豊田市という 産業都市の中 で地域社会や地元産業を学ぶ 活動、あるいは 都市部から農山 村に目を向け 、交流や自然 に触れあう活動 、伝統文化を 学んだり未来の 都市を考える活 動、さらに、 人に喜んでもらうことを喜びとする活動などを体験する計 画を立てた。そ して12月の 文化体験に よ り、自分に あ っ た進路、広げてみたいきずなを確認していく こととした。 また、学校支援委員と し て、地元産業界 の代表者、大 学・専門学校の 代表者に依頼を し、施設見学や講演会の実施について 具体的に協力支援 を得ながら進めた 。 - 141 - 3 活動内容 (1 ) ① 思 いやりの心( KorodaiSpirit )を育てる 活動 ボランティア体験(5月∼) 1年 生がホームルーム単位で毎月 1回LTの時 間 に通学路清掃を行う 。ホームルーム を数グループ に 分け、学校周辺の通学路の清掃とバ ス停のゴミ箱 の 片づけを ホームルーム担任・副担任 、環境美化部 の 教員等と一緒 に実施した。 通学路清掃 この活 動は、平成 8年度から毎 年 行われ、全 校 生 徒が体験 しているもので、捨てた人 の心を映すゴ ミ を自らの 手で拾うことで、ポイ捨てしない心や環 境 問題を考 える意識を 育てること、清掃活動を行う 人 の 立 場 を理 解 さ せ る こ と を ね ら い と し た も の で あ る。 また、 学校近くの 河川の清掃活動 も地域の方々 と ともに行った 。 ② 逢妻女川クリーン活動 荘川村での 交流体験(4月) 1年生 のオリエンテーション 合宿において 、荘川村村 長と樹齢 450年につながる荘川桜の種子を 育てている 方の講話 を聞いた。 人口約2, 000人の荘川村に約3 00人の 若者が訪れることの意 義やダム建設 のために沈 んだ村人 の心を受け 継ぐ荘川桜 のいわれについて話を聞 き 、「思 いやりの 心」 のつながりを 学習し た。 本 年 度さ らに5本 の荘川桜が 贈呈され、 従来の活動が 広がった。 荘川村村長の講話 ③ 荘川村での 自然体験(4月) 1年 生のオリエンテーション合宿 にて、地元の 方の協力を得て荘川村での宿舎周 辺の森林散策 を行い 、その 後 、散策の 時に拾い集めた木の 枝で写真立てを製 作した 。 ④ きずなに関 する講演会(12月 ) 臨床心理士の方に 、人と人との結 びつきの難し さ、また、き ず な を作り上げてい く大切さについての講 演をいただいた 。価値観が相対化している社 会の中で、他の 人と い か に共通点を見 つけ、あるいは 自分と違う価 値をいかに受け 入れていくのか が、これからのきずなづくりには 大切であることを 学習した。 ( 2) 地域社会 や伝統 を学び 、人と 人とのつながりであるきずなを 大切に し、未 来を考 える活動 ① トヨタ博 物 館と愛知県陶磁資料館での文化体験( 6月) トヨタ博物館は 、「自動車の歴 史を学 び、人 と車の 豊かな社 会を考 える」 ことを テーマにした博物館である。豊田市の 中心産業で あ る自動車の発達 の歴史を、グル ープ単位で研究課題を持って見学 し、未来を考えるきっかけとした。 愛知県陶磁資料館 は、陶磁器に関 わる歴史的・ 産業的に貴重な文化遺産を収集・ 保存した資 料 館である 。豊田市から北に隣接 する瀬戸市一帯は古 代より「 やきもの 」 - 142 - の生産 が盛んであり、 この地域の産 業と文化は「やきもの」と深いつながりをもっ て発展し て い る。伝統産業と し て の陶磁器を学び、 絵付けの体験を行 った。 ② 「未来都市 づくり」講演会(1 1月) 地域社会を 研究する大学の先生 に未来都市についての講話をいただいた 。 「豊 田」 はこれまでは「モノを 作る町」であったが、これからは「一緒に暮 らす町」として 発展することが大切である。し た が っ て「周りのことを考える人」 になる必要があ ること 、「未来都市 づくり 」とは 「人間 づくり 」に ほ か な ら な い こ と を学習 した。 ③ 文化体験の 日(12月) 地域 の方々、PTA、本校の生徒 、教員を講師 に依頼して、26 の体験講座を開 講した。 この文化体験 は、これまでの 総合的な学習 の時間や体 験 活 動で学んできた ことをもとに 、自分をどの方向 に広げていくのかを 確認する活動と し て位置付けた 。 1年間の集 大 成として、生徒が2 つの講座を選択し 、文化体験をした 。 2 6の講座は次のとおりである。 琴・茶道・棒 の手・行者祭太鼓・ 和紙作り・日 本 舞 踊・トランペット ・折り紙建 築・パソコン ・ビーズ細工・折り 紙・囲碁・手品・ 腹話術・紙飛行機 ・演劇・ジ ャズダンス・ 太極拳・琉球舞踊・ 護身術・空手・手 話・点字・外 国 文 化・救急救 命法・小物作 り。 救急救命法 腹話術 和紙作 り ④ 手話 体験活動発表会(9月・11月 ・2月) 9月 は文化体験に 向けてのクラス 発表、11月 は地域社会研究についての発表、 2月は全生徒の体 験 発 表をした。発表方法は、ビ デ オやパソコンの プレゼンテーシ ョンソ フ トを使った舞台発表、パネル による掲 示 発 表、冊子による 紙上発表の3種 類とした。 - 143 - 4 今後の計画 基本的には 本年度の内容 を来年度も継続 して行う予定 であるが、新た な計画として次 のようなものを考 えている。 (1 ) 未来都市づくりの継続 「思いやりのコミュニティづくり」について調査・ 研究をし、ミニチュア都市の制 作体験を 通して 、「自 分は こ の社会 に必要 な人間 である 」という 自信を 生徒がもつこ とができるような実践をさせる予定 である。 (2 ) 国際交流のプログラム 本校 は 、「 外国人生徒にかかる入 学 者 選 抜」を 行っている。愛知県内 では3 校で平 成14年度 から導入されたが、本校にはこの制度に よ り5名の外国人生徒が入学して きた。豊 田 市は外国人が 多く居住し、外国人とともに 生きるための知 識や交流が必要 になる。 日本の 伝統・ 文化を 学ぶとともに 外国人 との交 流プログラムを 増やし 、「外 国人と一緒に暮 らす思いやりのある 人」の育成を目指 す予定である。 (3 ) 各種発表プログラム 自分た ち の学んだこと 、体験したことを「人に伝え る」力をより高 めるために、発 表を体験させるプ ロ グ ラ ムをもっと増や し、さらに、 発表に対しての 質問や議論の体 験に発展させる 予定である。 5 まとめ (1 ) 成果 本年度の 豊かな体 験 活 動は、大きな成 果をあげることができた。自 分の将来像をも てないでいる生徒たちが 、様々な角度からの活動を行 うことで、具 体 的に自分の進み たい進路、 自分が広げたいきずなの方 向 性を見出しはじめた。自然と 触れあう道がよ いのか、モ ノを作り出す 道がよいのか、 人々を助ける 道がよいのか、 人々を楽しませ る道がよいのか、文 化 体 験で生徒たちは 、自分の向き 不向き、好き嫌 いを含め「自分 自身」を発 見し、生き生 きとした姿を見 せてくれた。 最初は「どんなことをしてみた いのかわからない 」という声が多かったのに対して 、 「 今度は こ ん な事がしてみたい 」 「あれはどんなふうになっているのか調 べたい」な ど と前向きな意見 が具体的に出て くるようになった。 また、どのような道に 進むにせよ人 と人とのきずなは大切であり、 思いやりの心が なくてはならないものだと実感で き た と の声が上が っ た。さらに、未 来の都市を考え る活動の中 で、ただ単に ハード面だ け で は理想の都市 はできず、結局 そこに住む人の 生き方を考えざるを得ないことに気 付かせることができた。 (2 ) 課題 本年度の 第1学年の生 徒たちは、自分 の進みたい方 向が見えはじめ 、自己を発見す る活動ができたといえる 。今後は発見し た自己を磨き 、自らの思いを 実現する活動へ と発展させ 、自己実現へ と導いていかなければならない。そのためには、各自がさら に主体的に考え 、行動する能力と資 質を養う必要が あ る。 また、自己発見から自己実現に向けての活動を行う 時、未来都市の 一員として決し て自己中 心 的にならず、 思いやりの心( Korodai が大きな課題である。 - 144 - Spirit)を基盤に置いて 活動させること
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