1 基本的な事項 - 対馬市

1
基本的な事項
(1)市 の 概 況
(ア)自然的、歴史的、社会的、経済的諸条件の概要
①
位
置
対馬は九州最北端、日本海の西側に位置する南北82km、東西18kmの細長い島で、
708.63k㎡の面積を持つ佐渡・奄美に次いで日本で3番目に大きな島である。
北は朝鮮海峡を隔てて朝鮮半島に面し、南は対馬海峡を隔てて壱岐島、九州本土に面
しており、博多までの海路138kmに対して韓国の釜山まではその半分以下の49.5km
の近さにある国境の島で、晴れた日には水平線に朝鮮半島を望むことができる。
このような地理的条件のため、大陸との交流において対馬は重要な役割を担ってきた。
②
自然資源
対馬は全島の89.21%が山林で占められ、厳原町の竜良山及び
美津島町の白嶽には原始林が残っており、国の天然記念物に指定
されている。島の地形は標高200m∼300mの山々が海岸まで迫り、
海岸では所により高さ100mに及ぶ断崖絶壁を呈している。
対馬中央部の浅茅湾は、リアス式海岸の特徴を顕著にあらわし
ており、大小無数の入江と島々からなるその姿は対馬の代表的な
景勝地の1つであり、これらの景勝地は壱岐対馬国定公園に指定
されている。
国の天然記念物であるツシマヤマネコをはじめ、対馬でしか
見ることのできない生物や、大陸の流れをくむ生物が数多く生息
する。また、渡り鳥の中継地であることなどから、世界でも有数
の野鳥観察地とされている。上県町には、これらの野生生物の保
護・研究を行う拠点として対馬野生生物保護センターが設置されている。
③
土地利用
対馬の面積は、708.63k㎡で県全体の面積(4,094.04k㎡)の17.3%を占めている。
平成15年度現在の土地利用の状況は、森林が632.16k㎡(89.21%)、原野が4.16k㎡
(0.59%)、畑が4.21k㎡(0.59%)、田が6.30k㎡(0.89%)、宅地が6.82k㎡(0.96%)、
採草放牧地が0.90k㎡(0.13%)、その他が54.08k㎡(7.63%)である。わずかな平地
に集落が分散しているため、効率的な土地利用が出来づらい。
④
気
候
対馬暖流の影響で、海洋性気候を示し、温和で雨量も多い。春はアジア大陸から
やってくる季節風の黄砂で始まり、三寒四温が顕著である。約ひと月の梅雨があるが、
夏は比較的涼しい。秋はしばしば台風の通過経路となり、雨量が多いが、10月ごろから
晴天の日が多くなる。冬は大陸からの北西の強い季節風に見舞われ、冷え込みが厳しい。
時折、降雪をみるが積雪はまれである。
-1 -
⑤
歴
史
古代より対馬は、大陸から石器文化、青銅器文化、稲作、仏教、漢字などを我が国に
伝える窓口としての役割を果たし、また朝鮮半島との間では人的、物的交流が盛んに
行われた。豊臣秀吉による文禄・慶長の役(1592・97年)という負の歴史もあったが、
江戸時代に入り、幕府は対馬藩十万石の藩主・宗家を介して朝鮮から通信使を迎え入れ、
さらには慶長条約(己酉約定)の締結によって朝鮮貿易が再開されることとなった。
宗家の城下町として栄えた厳原町には、日本三大墓地の一つである宗家の墓地万松院等、
当時を偲ばせる歴史的文化遺産が各地に点在している。20世紀に入り、日朝間はある種
の緊張感を有することになり、それまで活発に行われていた対馬と朝鮮半島との交流は
影を潜めてきたが、対馬にとって朝鮮半島はその歴史からみても身近で大きな存在で
あり、今後行政・民間を含め交流を促進し、関係を深めていくことが望まれる。
⑥
社会・経済
対馬市旧6町においては、長崎県の他の離島同様、昭和28年に離島振興法が制定され
て以来、道路、港湾、漁港をはじめとする産業基盤や生活基盤の整備が進み、又近年、
文化施設やレクリエーション施設等の都市施設の整備がなされ、住民の生活環境は向上
している。昭和46年の対馬縦貫道路の完成、昭和47年の大型フェリーの就航、昭和50年
の対馬空港の開設、平成3年の高速艇(ジェットフォイル)の就航は全島の社会経済条
件を大きく変貌させた。また、平成11年7月からの釜山∼厳原・比田勝港間の国際航路
が開設し、今後、韓国人観光客の大幅な増加が見込まれる。かたや国内航路においても、
比田勝港発着を含め福岡・厳原間では12年4月1日よりジェットフォイルの2便体制が
整い、流動人口の増加に対する受け入れ体制の早急な整備が望まれている。
本市は平成16年3月、厳原町・美津島町・豊玉町・峰町・上県町・上対馬町の6町
が合併したものであるが、厳原町市街地及び美津島町雞知地区を中心に商業が集積して
いるものの、全般的には農林漁業を主体とした地域形成となっている。
しかし、一方で若年層を中心とした島外への転出による人口減少や高齢化による地域
社会の活力低下がみられ、また教育や医療等社会福祉についてもまだまだ十分な状況と
はいえず、このことは、対馬市における社会的課題となっている。
-2 -
(イ)過 疎 の 状 況
①
人口等の動向
対馬の人口は、藩政期には3万人、明治末期で5万人、そして昭和15年で5万7千人、そ
の後昭和35年までは増えつづけ、ピーク時7万人近くまでにもなった。その後日本経済
の高度成長、第1次産業の長引く低迷や進学率の増加に伴う若者の島外流出等により、
人口は少しずつ減少し続けている。特に、昭和48年の東邦亜鉛株式会社対州鉱業所の閉
山の影響は大変大きかったといえる。
そのような状況下の中、対馬6町は、昭和45年からの過疎地域対策緊急措置法の適用
を受け、その後、一時期過疎地域を除外された町もあるが、概ね過疎地域指定を受け、
過疎地域振興特別措置法や過疎地域活性化特別措置法により、6町にとってそれぞれ
有効な施策を実施したが、平成12年国勢調査による人口が41,230人で、昭和40年対
比の人口減少率で36.72%となり過疎からの脱却ができていない状況である。
②
現在までの対策
対馬市旧6町は、過疎地域対策緊急措置法、過疎地域振興特別措置法、過疎地域活性
化特別措置法に加え、離島振興事業及び辺地総合整備対策事業により、農林水産業の
基盤整備・地場産業の振興や観光レクリエーション施設整備等による産業の振興施策、
町・農・林道整備や電気通信施設整備等による交通通信体系の整備施策、上下水道・
廃棄物処理施設・消防施設整備・各種公園整備等による生活環境の整備施策、高齢者・
児童福祉施設整備等による福祉の増進施策、学校教育施設、集会・体育・文化施設整備
等による教育文化の振興施策等を実施し、住民生活に必要な社会基盤整備の構築に努め、
一定の成果は得られている。
更に、各町ともに、歴史的文化遺産・自然等を活かした地域づくりを実施し、住みよ
いまち、誇りと愛着のもてるまちづくりを行ってきた。
また、地域間交流、国際交流への住民の積極的な取り組みを促すため、国際交流協会
を設立し、国内外との人的交流をすすめ、交流人口の増を図っている。
平成11年7月からの釜山∼厳原・比田勝港間の国際航路の開設により韓国人観光客の
流入が着実に見込まれるため、受け入れ体制の充実に向け旅館業施設の固定資産税減免
措置にも取り組んでいるところである。かたや国内航路においても、比田勝港発着を含
め福岡・厳原間では12年4月1日よりジェットフォイルの2便体制が整い、交流人口の
増加に対する受け入れ体制の早急な整備が望まれている。
住民を取り巻く生活環境は着実に改善はされてきているが、非過疎地域住民との生活
環境の格差は、未だ是正されていない状況である。
対馬地域の自立のためには、今後も引き続き、生活環境の整備等のインフラ整備、雇
用の場の拡大のための地場産業の育成・異業種の連携による新産業の創出、人材育成の
ための教育関連施設整備の拡充、21世紀に対応した高齢者・児童福祉の増進、医療の
拡充施策等を積極的に推進し、地域住民の定着化を図ると共に、地域に残る歴史的文化
遺産・美しく豊かな自然を生かした街づくりを行うことにより、交流人口の拡大につな
げ、住民が、真に、豊かさ・ゆとり・誇りを持てるまちづくりに努めなければならない。
-3 -
③
現在の課題
《人
○
口》
人口はピーク時(昭和35年)に対して約41%減少し4万1千人余り(平成12年)と
なっており、減少率は県平均の約13%を大きく上回っている。
○ 高齢化率も年々増大するなど、生産年齢の流出などによる定住人口の減少、高齢
化が顕著である。
《土地利用》
○ 対馬の約89%が山林で占められ、耕地率は1.5%と県内で最も低い。
○ わずかな平地に集落が分散しているため、効率的な土地利用が出来づらい。
○ 地区所有名義の広大な林野が各地区にあり、様々な土地利用が出来ない。
《生活環境》
(道路・交通)
○ 離島であるため、島外との交通手段は航路、空路となるが、本数や所要時間など
未だ十分とはいえず、更なる交通改善が望まれる。
○ 主要交通手段である道路は、幅員が狭く、急カーブ、坂が多い上、交通不能区間
を有し、整備が遅れている。
(防 災)
○ 集落の背後地は急峻な山岳や急流河川が多いため、水害や急傾斜地崩落など自然
災害に見舞われる恐れが高い箇所が多くあるが、その対策は十分ではない。
(福祉、保健・医療)
○ 急速な高齢化に対応した老人福祉施設、生きがいや健康のための施設の充実が必
要である。
○ 対馬の医療施設は、病院3、一般診療所31、歯科診療所20となっているが、
一般診療所31のうち医師が常駐しているのは、12施設にすぎない。
〇 中部地域には中対馬病院があるが、急患搬送または、患者の通院において時間と
費用がかかるため医療の地域格差を生じている。
〇 救急医療体制の充実が必要である。
○ 児童の減少に伴う保育所・幼稚園の統廃合を進める必要がある。
(教 育)
○ 小・中学校は小規模校が各地に散在しており、生徒数の減少に伴う統廃合を計画
的に進める必要がある。
-4 -
《産
業》
(水産業・林 業・農 業)
○ 水産業は対馬の基幹産業で、中心となるイカ釣漁等の沿岸漁業、沖合漁業、水産
加工業及び真珠等の養殖業からなるが、近年資源減少、漁場環境の悪化等により全
体的に生産額の減少がみられる。
○ 水産業各分野の共通課題として、組織の経営基盤の強化、漁業就業者の確保・育
成、漁場環境保全、漁業と海洋レジャーの調和、資源管理型漁業の推進、栽培漁業
の振興、水産物の流通・消費対策があげられる。
○ 面積の89%が森林(内91%が民有林、人工林率34%)からなる対馬の林業は第1
次産業の中で水産業に次いで第2位の生産額を占めている。今後の課題として、木
材の流通・加工施設の整備、作業員の技術の向上や機械化、主要林産物のしいたけ
の選別出荷の推進・系統共販事業の促進によるブランド化等があげられる。
また林道網の整備、ツシマジカによる林業被害対策、防災対策としての治山事業
の推進の必要もある。
○ 対馬は地形・地質などの要因により農業の立地条件には厳しいため、耕地面積は
1.5%と低く、米、野菜の島内需給率は4割程度である。今後は水稲、肉用牛、施
設園芸の推進やそばといった対馬の特産品の振興と活用を図る必要がある。
また、イノシシによる農産物被害が拡大しているため対策が急がれている。
○ 水産業、林業、農業に共通する課題として、後継者の育成・確保があげられる。
(商 業)
○ 卸売業、小売業ともに小規模なものが多い。
今後は商業地域をはじめとした中心市街地の活性化、一次産品を利用した地場産
業の育成、対馬焼、若田石硯といった特産品に続く商品開発・販路拡大・流通体制
の整備やブランド化が課題となっている。
(観 光)
○ 歴史・自然・文化など独自の観光資源を充分活かした体験型観光の創出など魅力
ある観光地づくりが課題である。
○ 地域間交流、国際交流への住民の積極的な取り組みを促すため、国際交流協会を
設立し、国内外との人的交流をすすめ、交流人口の増を図っている。
平成11年7月からの釜山∼厳原・比田勝港間の国際航路の開設により韓国人観光
客の流入が着実に見込まれる。
国内航路においても、比田勝港発着を含め福岡・厳原間では12年4月1日より
ジェットフォイルの2便体制が整い、流動人口の増加に対する受け入れ体制の早急
な整備が臨まれている。
-5 -
④
今後の見通し
前述した課題から計画の方向性・施策展開の今後の見通しをまとめると次のようにな
る。
Ø
◆
◆
◆
◆
◆
◆
◆
定住人口の減少、高齢化への対応
対馬の個性を活かした観光レクリエーション産業の振興
対馬の基幹産業である漁業、林業の活性化への対応
地理的、歴史的条件を活かした国際交流の拠点としての対応
生活環境の整備と安全性の確保
交流推進のための交通網・情報網の整備、充実
人材育成・郷土への愛着、誇りの醸成
-6 -
(ウ)対馬市の 社 会 経 済 的 発 展 の 方 向 の 概 要
上位計画等にみるまちづくりの方向
①
新しい全国総合開発計画 「21世紀の国土のグランドデザイン」
この計画は平成10年3月に策定され、2000∼2015年までの計画期間中に長期構想「21
世紀の国土のグランドデザイン」実現の基礎を築くことを目標としている。
21世紀に向けた国土計画の基本的な考え方は以下のようなものである。
従来 一極一軸型国土構造
価値観、生活様式の多様化
・成熟化
・自然の再認識
・自由な選択と自己責任の確立
・男女の共同参画
時 代 の 大 転 換
・地球時代
・人口減少、高齢化時代
・高度情報化時代
21世紀の国土づくりの考え方
●経済的豊かさとともに精神的豊かさを重視
●多軸型国土構造に転換
・中枢・依存関係からより水平な都市のネットワークの形成
・自然環境の保全、回復や新しい文化と生活様式の創造
・地球時代に相応しい国際交流機能の構築
●4つの国土軸の形成
「北東国土軸」 「日本海国土軸」 「太平洋新国土軸」 「西日本国土軸」
●国土軸相互に補完・連携することにより、
多様性に富んだ美しい国土空間(庭園の島)を形成
基
本
的
課
題
・自立と促進と誇りの持てる地域の創造
・国土の安全と暮らしの安心の確保
・恵み豊かな自然の享受と継承
・活力ある経済社会の構築
・世界に開かれた国土の形成
4つの戦略
・多自然居住地域の創造
・大都市のリノベーション
・地域連携軸の展開
・広域国際交流圏の形成
取 ・「参加と連携」による国土づくり
・国土基盤投資の計画的推進
組 ・制度・体制の整備
-7 -
「地域別整備の基本方向」の中で対馬に関連する「離島」の整備の基本方向と施策
の展開は以下のようになっている。
離島地域は、排他的経済水域を含む国土の保全・管理上の重要な拠点であり、その
役割及び多様な離島ごとの諸条件を充分に勘案しつつ、安全で安心できる生活環境の
整備や地域の活性化に向けた各種の基盤整備を促進するとともに、
離島地域の持つ多様で特色ある資源や文化を活用した産業振興を図る。
このような観点から、交流圏の拡大に向け、港湾、空港、道路や架橋等、交通施設
の整備、離島航路の高速化や航空機のジェット化、利便性の確保、離島と離島、本土、
海外とを結ぶ
①交通網の構築等を図る。
併せて、生活等の広範な情報の受発信に供する
②高度な情報通信基盤の整備を進める。
また、漁港、漁場、農地、農道、林道等の基盤整備、加工、流通体制の整備、関連
企業との連携等により、
③特色ある離島産品の生産を推進する。
特に地域の基幹産業である水産業の一層の振興を図る。さらに、海洋性気候等、恵
まれた自然環境を活用した保養・療養活動(アイランドテラピー)やブルー・ツーリ
ズム等魅力ある
④離島観光の振興を図る。
生活環境については、ダム等の整備、他地域からの導水、海水淡水化等の渇水対策
の推進、汚水処理施設、廃棄物処理施設、公園、救急医療を含めた
⑤医療・福祉体制等の整備を図る。
また、衛星通信等による教育・医療システムの導入等を推進し、
⑥教育・医療の機会の均等化を目指す。
さらに、治山、治水、海岸保全等の
⑦国土保全施設の整備や、
災害時の連絡体制を含めた総合的な防災対策を推進する。
このほか、
⑧自然環境の保全、集落景観の保全、
⑨伝統文化の継承と発展等を図る。
-8 -
②
長崎県長期総合計画
(計画期間:平成13年∼平成22年)
【対馬地域における生活創造圏づくりの方向性】
〔背
○
景〕
朝鮮通信使の応接や朝鮮との貿易・文化交流など、近世日本史のなかで重要な役
割を果たし、貴重な財産を有しています。現在、離島で唯一CIQ施設(税関、入管、
検疫)を持ち、韓国との交流が今も盛んに行われています。また、自然が豊かで我
が国で唯一、隣国を望むことができ、また、古代からの独特な歴史的文化遺産を有
しています。
○ 若年層の島外流出が進み、急速に少子高齢社会へと向かうなど、地域で支え合う
新しいコミュニティづくりが急務となっています。
○ 地域を支える地場産業としての水産業と林業の振興が課題となっています。
〔ねらい〕
● 韓国との交流を促進し、日韓交流の架け橋としての重要な役割を担います。
地域の素材を活かし新しい観光の開発により地域の活性化を図ります。
● 高齢者同士が支え合い活躍する、新しい離島型コミュニティを創出します。
● 地域の多様な資源を活用するために、新しい生産・経営システムを創出します。
〔将来像〕
◎ 日韓の交流拠点として賑わい、歴史と自然が息づく豊かな「しま」
◎ 地域住民が支え合う、誇りに満ちた「しま」
◎ 豊かな自然・固有の文化・海山の幸を育む「しま」
【振興戦略】
戦略1「誠信交隣」による韓国との交流等の促進による新しい「しま」づくり
(1)
観光の振興と交流の促進
①
朝鮮通信使行列やちんぐ音楽祭等のイベントの充実、韓国語観光パンフの作成
等 PR の促進や外国人相談窓口設置など受け入れ体制の強化等により、韓国人観
光客の誘致対策を推進します。
また、韓国語講座の開催、ホームステイ等を通じて、韓国との交流拡大を図り
ます。
② 金田城、万松院などの歴史的文化遺産や、希少野生動物であるツシマヤマネコ
の保護・増殖を行う対馬野生生物保護センター、日本一の清流である三根川など
の優れた観光資源ルート化を促進するとともに、対馬椎茸、アマダイ、イカなど
の新鮮な食材を活かした新しい郷土料理の開発等による観光商品の開発を促進し
ます。
③ 地域で一体となった集客対策を推進するため、地域内観光ルートの開発や交通
-9 -
アクセスの確保、体験観光インストラクターの育成等受け入れ体制の整備並びに
各市町村における観光案内所の普及等観光情報システムの構築等を推進します。
④ 島内での受け入れ体制の整備や修学旅行等の誘致に努めるほか、都市部及び韓
国との間の小中学校相互の体験留学制度や高校生の離島留学制度を創設し、子ど
もたちの幅広い交流を促進します。
⑤ 近世日韓交流史の第一級史料である「宗家文庫史料」の活用のため、維持補修
や調査研究を継続して実施し、対馬での保存・整備のための取り組みを推進しま
す。
⑥ 都市居住者等が「しま」(島民)と直接ふれあい、そのすばらしさや魅力を体感
できる多彩な体験・交流型事業を、年間を通じリレーイベントとして実施します。
(2)
総合交通ネットワークの充実
①
離島航空路の維持確保を図るため、運航費補助、機体購入費補助及び航空機燃
料税の減免措置の拡充や、これらを実施するための離島航空路整備法(仮称)の制
定について、国へ積極的に働きかけていきます。
② 本土間・離島間相互の航路について、運行による欠損額に対する補助、運行に
係る運転資金に対する貸付等を行い、航路の安定的な維持を図るとともに、船舶
の大型化・高速化のための建造費への補助や建造・改造費への貸付を行うなど、
地元の要望が活かされるような離島航路の利便性向上を図ります。
また、比田勝∼釜山航路の「ビートル2世 」
、厳原・比田勝∼釜山航路の「シ
ーフラワー」による韓国との航路の活用を図るため、CIQ(税関、入管、検疫)体
制の充実や乗船客の受け入れについての地元の積極的な取り組みを促進します。
③ 厳原港において効率性、安全性、快適性の高い港湾空間を創出するため貨物船
埠頭(-7.5m岸壁)、フェリー埠頭(-7.5m岸壁)、緑地の整備を推進し、比田勝港
においてフェリー埠頭(-7.5m岸壁、埠頭170m)の整備を推進します。
④ 一般国道382号の整備を推進します。
⑤ 地方バス路線の運行を維持するための助成事業を講じ、住民の日常生活の移動
手段を確保するとともに、バス事業者の経営基盤の強化を図ります。
戦略2
新しい地域コミュニティの創造や生活環境の整備による
活き活きとした「しま」づくり
(1)
①
新しい地域コミュニティの創造
誇りある地域社会を維持・発展させていくため、福祉や保健、環境、教育さら
には産業活動や消費生活等の多彩な地域活動を、地域住民が協力しあい協働して
支えていく新しい地域運営の仕組み作りを促進します。
特に、少子高齢化社会においては、高齢者の健康づくりの推進や社会活動への
参加促進、就労機会の創出等を促進するとともに、福祉などに関する互助組織の
設置など高齢者同士が支え合う地域福祉のシステムやコミュニティづくりを促進
します。併せて、主体的な社会参加活動であるボランティア活動を促進するため、
普及・啓発や指導者養成、ボランティア団体のネットワーク化や活動しやすい環
- 10 -
境づくりを促進します。
又、激増する消費生活に関わるトラブルに対応するため、消費生活センターを
設置し、苦情相談体制の整備を促進します。
② 児童厚生施設(児童館、児童センター)や学校施設を利用した放課後児童クラブ
の設置や、育児と仕事の両立を支援する体制づくり等、地域の実情に即した地域
での多様な子育て支援体制の整備を推進します。
③ 地域の多様な人材を学校教育の現場で積極的に活用するとともに、地域で活き
活き学社融合事業などにより地域のコミュニティ活動を通じた人づくりを積極的
に促進します。また、地域づくりリーダー等地域を支える人づくりを促進します。
④ 対馬地域らしい文化や地域特性を活かした学習活動を推進するとともに、郷土
の良さを再発見し、郷土に対する愛着と誇りを醸成するための体験型地域学習を
推進します。また、高齢者と子どもたちの体験交流活動により、伝統文化の継承
者の育成を図ります。
⑤ 住民参画による「しまの活性化プラン」推進会議からの提言を得て、広く対馬
全体に効果が及ぶような計画を策定し、事業化を図ります。
(2)
①
生活環境の整備
保険財政事務を含む広域的な介護保険事務運営を支援します。また、離島医療
圏組合病院等とも連携し、介護保険適用病床の確保、地理的特性や環境、サービ
スの現状を踏まえ、介護給付費等サービス量を確保するとともに、市町村とも連
携し、組織や人材の育成を図り、家族介護が提供できる体制づくりを支援します。
さらに、健康づくり・生きがいづくり等の介護保険給付対象外サービスの充実を
促進します。
② 対馬圏地域で、比較的専門性の高い領域を含めて、一般的な保健医療が概ね完
結できる体制づくりを行う他、高齢者の寝たきり予防のための健康教育や指導、
リハビリ機関の充実、無医地区での総合的な健康管理対策や医師確保対策、並び
に看護職員の養成・確保等を推進します。
③ 公共下水道、農業・漁業集落排水事業、合併処理浄化槽等により生活廃水処理
施設の整備を推進するとともに、公園、緑地や居住環境の整備を促進し、快適な
生活環境を創出します。
また、住民が手軽に生涯にわたって文化活動、スポーツ、余暇活動などを楽し
める環境づくりを推進するとともに、生涯学習に関する講座数や内容の充実を図
ります。
④ 高度情報通信システムを活用した医療・教育等の情報ネットワークシステムの
整備を促進するとともに、移動通信用鉄塔施設整備事業や、民放テレビ難視聴解
消事業などにより地域情報通信基盤の整備を推進する他、インターネット利用環
境の整備を図ります。また、県内の通信網幹線からの加入者系光ファイバー網に
ついて、平成17年度までに整備が完了するよう、国及び関係機関との連携によ
る整備を促進します。
⑤ 農村において、生涯現役として活躍できるよう支援し、高齢農業者の営農活動
支援システムの構築や高齢農業者の地域活動支援対策と併せ、高齢者に配慮した
生活環境の整備と福祉対策の充実を進めます。
- 11 -
⑥
省資源、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入、リサイクルの推進、大気
・水環境の保全など環境保全を積極的に推進するとともに、廃棄物の適正処理を
促進します。ごみ処理の広域化について、早急に広域処理施設1施設による広域
処理を図ります。
⑦ 給水施設の漏水防止等の推進を図るとともに、節水意識の高揚、雨水利用・雨
水浸透施設や再生水を利用する施設の設置を促進するなど、適正な水循環型社会
づくりを推進します。
⑧ 県産材を利用した木造公営住宅の供給により、若者の定住や高齢者の安心でき
る住宅整備を推進します。また、公共施設のバリアフリー化を推進します。
⑨ 農村の有する緑豊かな自然・伝統文化等の多面的機能を再評価し、計画的な土
地利用の下に地域の特性を活かした整備手法により都市との共生を図ることがで
きる快適で豊かな郷土づくりに資する田園空間の整備を推進します。
戦略3
対馬の立地条件を活かした産業の振興による活力ある「しま」づくり
(1)
農林業の振興
①
地産地消を促進するため高齢農業者等による園芸作物や加工品の少量多品目生
産と地域内流通の促進とともに、農業を支える生活基盤の整備を図ります。
② 地域の基幹作物であるシイタケ生産について、原木林の造成、作業道の開設、
人工ホダ場の導入等を推進するとともに、林業については、木材加工流通体制の
整備に取り組み、木材の安定供給を図ります。
③ イノシシによる農作物被害や、スギ・ヒノキ林でのツシマジカによる被害の防
止対策を促進します。
④ 消費者と直結した産地直売の推進と農業協同組合等を核とした地域内流通体制
の整備を推進します。
(2)
①
水産業の振興
ヒジキ、イカ、アマダイ、ブリ、ヨコワ、タチウオ等地域特産品のブランド化
の確立を推進するため、生産者、市場、物流、観光、漁協等地域が一体となった
販路拡大、知名度向上に取り組むとともに、消費者ニーズに対応した加工技術の
向上、加工品の高品質化を推進します。
《商標登録済みの魚種》
漁
協
名
上 対 馬 町 漁 協
美 津 島 町 漁 協
魚
種
名
ブ ラ ン ド 名
タチウオ
銀太(ギンタ)
ア ジ
てっぺん
アカアマダイ
紅王(ベニオウ)
クロマグロ(養殖マグロ)
トロの華
- 12 -
《商標登録準備中の魚種》
漁
協
名
魚
種
名
ブ ラ ン ド 名
上 県 町 漁 協
アカムツ
紅瞳(ベニヒトミ)
佐 須 奈 漁 協
マサバ
対馬サバ(シマサバ)
②
美津島漁港の整備により広大な静穏度の高い水域を確保するとともに、対馬地
域栽培漁業推進基金(10億円、H7∼ H11)を活用し、対馬栽培漁業センターを核
として、アワビ、ウニ等の種苗放流量増大を図るとともに、真珠養殖に用いる
アコヤ貝の人工種苗の安定確保・供給を図ります。
③ 新たな海洋秩序に対応した資源管理型漁業の推進と併せて沿岸漁場の整備開発
を行うとともに、魚類等の産卵・生育の場である藻場が消滅する磯焼け対策とし
て、藻場の造成による漁場の保全や鰐浦漁港等での藻場機能を持った漁港施設の
整備を推進します。
④ 浅茅湾地区における養殖密度・漁場配置の見直しや自然浄化機能の回復等を推
進し、高品質真珠の産地形成を図るとともに、高価格が期待される新しい魚種の
養殖技術開発に取り組み、新魚種養殖の定着化と複数魚種を養殖する複合型形態
への転換を推進します。
⑤ 大消費地から遠隔地にある条件を克服し、多様化する流通に対応するため、産
地と消費地を結ぶ情報ネットワークや効率的集出荷体制の整備を図るとともに、
活魚施設の充実と活魚流通体制の確立を図ります。
⑥ 新規就業者に対する着業支援を行うとともに、地域漁業の中核となる既存漁業
者に対する漁具・漁業機械等の融資助成など各種施策の重点化を進め、経営感覚
の優れた、たくましい担い手の育成を図ります。
(3)
地場産業の振興
①
地鶏・真珠・シイタケ等地域の優れた特産品や名産品について、産地ブランド
化の確立を推進するとともに、新しい特産品の開発を促進します。
② 農林水産と一体になった流通の振興を図るため、インターネット等を利用した
定期的・継続的な情報発信を促進するとともに、顧客のデータベースの構築等を
行い、通信販売の導入も含めた流通販売システムを再構築し、全国への販路拡大
等を促進します。
③ 地域の産業を担い、地域のリーダーとなる後継者等の人材養成並びに伝統産業
の保存継承等を推進します。
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【対馬地域を含んだ広域交流圏づくりの方向性】
日韓海峡広域交流圏(福岡地域∼壱岐地域∼対馬地域∼韓国南岸地域)
〔ねらい〕
○ 高次都市機能が集積していると試験と自然や歴史・文化が豊かな地域の連携に
よる多様な交流の促進
○ 日韓(特に長崎・佐賀・福岡の北部九州3県・山口県と韓国南岸地域)交流拠点
としての役割強化
〔基本方針〕
● 交通ネットワークの整備
① 福岡∼壱岐∼対馬∼韓国間の海上交通の充実
② 本土との航空路ネットワークの充実
●
歴史・文化交流の促進
① 古代以来の朝鮮半島や中国を結ぶ交通の要衝であった特性を活かし、歴史文化
施設の整備、歴史体験型観光ルート形成「しま」の魅力情報発信、学術交流など
による活性化
② 自然環境や農漁村生活体験型ツーリズムの推進
●
都市圏市場をターゲットとした農・水産業の食料供給基地化
① 市場ニーズの把握とブランド化の確立
② 鮮度保持と高速化による輸送体制の確立
③ 新しい生産システムの構築と効率的な経営による市場性の高い産地づくり
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