当院回復期リハビリテーション病棟における FIM と日常生活機能の関係

当院回復期リハビリテーション病棟における
FIM と日常生活機能の関係
○泉樹(OT)田辺義信(OT)只石朋仁(PT)
久保進也(OT)伊藤隆(OT)横串算敏(MD)
【はじめに】
平成 20 年度の診療報酬改定により、回復期リハビリテーション病棟(以下、
回復期リハ病棟)に対し、成果主義が導入された。その内容は、自宅復帰率の
規定と「重症」患者の一定割合の受け入れ、さらにその改善度合いにより、加
算が付加されるようになった。その重症度の指標として重症度・看護必要度に
関わる評価表のうち B 項目(以下、日常生活機能評価)が用いられている。今
回は、当院回復期リハ病棟の成果の紹介と成果の指標として日常生活機能評価
は妥当かどうかの検証を行い、若干の知見を得たので、ここに報告する。
対象
平成 20 年 4 月 1 日から平成 21 年 3 月 31 日までに当院回復期リハ病棟に入院
していた患者 103 名(平均年齢 77.1±11.6 歳、男性 42 名、女性 61 名)とし
た。
【方法】
リハビリテーション実施計画書から年齢、性別、疾患、転帰先、入退院時
Functional Independence Measure(以下、FIM)、入退院時日常生活機能評
価の 6 項目について抽出した。
次に対象者を入院時日常生活機能 10 点未満(軽症群)と 10 点以上(重症群)
の 2 群に分類し比較検討した。調査項目は①基本属性(人数、性別、年齢、疾
患、転帰先)②入退院時 FIM、FIM 利得③入退院時日常生活機能及びその得
点差④FIM 利得と日常生活機能得点差の相関関係について検討した。
統計処理の方法は、SPSS 13.0J for windows
を用い、②、③に関しては、1 標本、2 標本 t 検定を、④に関しては、Pearson
積率相関係数を算出した。
【結果】
①基本属性は軽症群 76 名(年齢 75.5±12.2 歳、男性 26 名、女性 50 名)、疾
患は脳血管疾患 35 名・骨関節疾患 29 名・廃用症候群 12 名、転帰先は自宅 38
名、自宅以外 38 名であった。重症群は 27 名(年齢 81.7±8.4 歳、男性 16 名、
女性 11 名)、疾患は脳血管 12 名・骨関節疾患 7 名・廃用症候群 8 名、転帰先
は自宅 4 名、自宅以外 23 名であった。
②FIM 得点は、軽症群では、入院時 72.1±19.5 点、退院時 88.0±22.4 点で有
意に改善が認められた。重症群では、入院時 34.5±16.5 点、退院時 39.5±19.5
点で有意に改善が認められた(P<0.05)。また、FIM 利得は軽症群 15.8±11.9
点、重症群 4.9±7.7 点であり、軽症群のほうが有意に高得点であった(P<0.05)。
③日常生活機能評価得点は、軽症群では、入院時 4.4±2.5 点、退院時 3.3±2.8
点で有意に改善が認められた(P<0.05)。重症群では、入院時 14.2±2.2 点、
退院時 11.5±3.9 点で有意差は認められなかった。また、日常生活機能の得点
差は、軽症 1.1±2.1、重症 0.9±3.3 点であり、有意差は認められなかった。
④入院時、退院後の FIM と日常生活機能とは有意な相関(r=-0.785、-0.905 、
P<0.01)が見られた。軽症群では、FIM 利得と日常生活機能の得点差に相関が
認められた(r=0.562 P<0.05)。重症群では、2 変数間において相関は認められ
ず、また FIM は向上しているにも関わらず、日常生活機能評価で低下してい
るものが、27 例中 8 例も認められた。
【まとめと考察】
今回の診療報酬の改定により、回復期リハ病棟では成果主義が導入され、その
指標として日常生活機能評価が使用されるようになった。その内容として、在
宅復帰率が 60%以上、且つ「重症例」を日常生活機能評価 10 点以上と定義し、
その「重症例」が 15%以上入院していること、また、加算対象として、「重症
例」の日常生活機能評価の得点が 3 点以上向上しているものが、30%いること
とした。
FIM と日常生活機能評価との関係においては、最近の先行研究や回復期リハ
病棟連絡協議会などでは、両者には互換性あるとは言い難いとの報告がなされ
ている。今回の研究においても軽症群においては、2 変量間で相関が認められ
たが、重症群では、有意差は認められず、FIM 得点は向上しているものの、日
常生活機能評価では低下している症例が 3 割近くもあり、質の指標として特に
重症群に対して日常生活機能評価を使用することは、対象者の ADL 自立度を
反映しているとは言い難い。また、回復期リハ病棟の大きな役割として、社会
復帰、ADL の向上が挙げられるが、それに対して日常生活機能評価を ADL 評
価のように使用し、質の評価を行うことに対しても併せて疑問が残るところで
ある。
当院回復期リハ病棟は、入院対象者の高齢化・重症化・認知症合併が多いこと
により在宅復帰率が低いのが現状である。今後重症患者の改善度合いのエビデ
ンスを蓄積し、重症患者に対する質の評価をいかにしていくかが当院回復期リ
ハ病棟における課題と言える。