い~な あまみ 中 央 しらさぎ さくら 大阪+知的障害+地域+おもろい=創造 知の知の知の知 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 707 号 2012.2.27 発行 ============================================================================== 社説:寄付と還付―社会の担い手育てよう 朝日新聞 2012 年 2 月 26 日 確定申告の季節だ。年末調整があるサラリーマンも、納めた税金の一部を取り戻す還付 申告ができる。寄付をした場合も、その対象となる。 東日本大震災では、被災した自治体と日本赤十字社、中央共同募金会あてだけで、5千 億円近い寄付が集まった。 自治体への寄付は、もともと「ふるさと寄付金」として還付が手厚い。日赤などへの義 援金も、特例として同じ仕組みが採り入れられた。適用下限額の2千円を引いた残りが丸々 戻ってくるケースも少なくない。 震災の特例だけでなく、還付を充実させる制度改正も、所得税(国)と住民税(自治体) の両方で実施された。 所得税では、還付の対象となる認定NPO法人を増やそうと、新しい基準を設けた。 還付の方法でも、税金から一定額を直接差し引く税額控除方式が加わった。寄付額から 2千円を引いた残りの4割が返ってくる。以前からの所得控除方式と比べ、大半の人にと って還付額が増える。 住民税では、自治体が条例で指定すれば、これまでは還付が認められなかったNPO法 人も対象となるようにした。戻ってくる金額は「寄付額マイナス2千円」の最大1割だ。 所得税での認定NPO法人を自治体が指定すれば、所得税と住民税の両方で還付が受け られる。寄付額マイナス2千円の5割が戻ることになる。 制度改正の大半は、昨年の年始にさかのぼって適用される。寄付をした人は、還付を受 けられるかどうか調べてみよう。あてはまるなら確定申告し、戻ってきたおカネを再び寄 付に回してはどうだろう。 その際、ぜひ還付の意味にも思いを寄せてほしい。 寄付額の5割近くが、税金を納めた国や自治体から戻ってくる――。寄付者の実質的な 負担は、寄付額の半分程度ということだ。残りは国や自治体が税金をあてる形になる。 つまり、自分の寄付に国や自治体を付き合わせているのだ。寄付を通じて、私たちが望 ましいと思う活動に、一部とはいえ自ら税金を配分していることを意味する。 福祉や環境保護、教育など社会に欠かせないサービスの提供者は「官」だけではない。 寄付税制の充実には、NPO法人などの「民」に、さらに力をつけてもらう狙いがある。 官に税金の無駄遣いはないか。民に何を期待するか。寄付と還付を通じ、社会の担い手 について改めて考えたい。 高齢・障害者救え 京都府、虐待保護体制を強化 京都新聞 2012 年 2 月 26 日 高齢者や障害者への虐待事案に対応する市町村支援や「成年後見制度」の利用促進のた め、京都府は今春から「府権利擁護支援センター」を京都市上京区の府庁内に設置する。 専門家の派遣や職員のレベルアップに向けた研修会開催などで府内の保護体制を強化する。 府によると虐待を把握した場合、市町村の対応になるが、介入の是非で悩むケースが多 いという。また、さらなる高齢化に伴い認知症のお年寄りらの財産管理や権利を守る成年 後見制度の普及が課題となっている。 10月施行の障害者虐待防止法で都道府県に権利擁護のセンター設置が義務付けられて おり、府は高齢者も対象に加え、両者の権利擁護の支援体制を整備することにした。 センターには社会福祉士など3人程度を配置。虐待を確認した場合、市町村に弁護士な ど専門家を派遣して法的なアドバイスをしたり、事例検討会や研修会を開催したりする。 成年後見制度に関する市町村からの相談も受け付ける。 さらに虐待を受けた高齢者、障害者が緊急避難できるシェルターも計2床確保し、被害 の拡大を防ぐ。センター設置費用1500万円を2012年度当初予算案に計上している。 高機能自閉症者を昼夜通じて支援 滋賀県が全国初 京都新聞 2012 年 02 月 26 日 滋賀県は2012年度、人とのコミュニケーションが苦手な高機能自閉症者が地域でス ムーズに生活するための準備として、昼夜一体型の支援を始める。発達障害の一種で、知 的障害を伴わない高機能自閉症の人は、近年まで障害者福祉サービスを受けられないまま、 社会において対人関係でつまずいてひきこもりに陥ることも多いという。 障害者自立支援法が2010年12月に改正されて、発達障害も障害者福祉サービスの 対象として明確に位置づけられた。県が今回行う発達障害者支援は、同サービスを活用し た昼夜一体型の事業で、全国初めて。県のこれまでの支援は成人期の発達障害者への相談 などにとどまっていた。 今回の取り組みは定員10人で2年間行う。高機能自閉症の人向けのグループホームを 運営するなど、支援のノウハウがある社会福祉法人「滋賀県社会福祉事業団」に委託する 形で、昼間は同法人の就労支援事業所で物づくりやパソコン作業、対人関係解決の訓練を 行い、夜は県が借り上げたアパートで寝起きしながら生活訓練を受ける。内容は個々の特 性に合わせて決めるが、将来的に地域で一人暮らしをしたり、企業や店で働くことも見据 える。 昼夜合わせて法人の職員5人が支援するが、県が2人分の人件費を負担する。また今回 の取り組みの成果をまとめて、他の社会福祉法人に伝えたり、同様の昼夜一体型の支援を できる法人を認証化する制度も検討する。新年度予算案に合わせて1千万円を確保した。 県障害者自立支援課は「障害者が地域で当たり前に暮らせるきっかけ作りの拠点にした い」とする。 再犯を防ぐ:/上 出所後の生活支える 孤立させぬ取り組み /秋田 毎日新聞 2012 年 2 月 24 日 「刑務所より外にいる方がいい」--。昨年2月21日、銃刀法違反の罪に問われ、秋 田地裁で開かれた初公判の場でこう訴えた男性(62)が、懲役10月の刑期を終え、今 春からアパート暮らしを始める。出所後に頼れる人も貯金もなく、刑務所に入るために犯 罪を繰り返してきたが、今回は福祉・司法関係者の支援を受けることができ、立ち直ろう としている。この男性のように刑務所に何度も入出所する「累犯者」は、高齢や知的障害 などの事情を抱えて孤立するケースが多いため、出所後の生活を支えることで再犯を防ぐ 取り組みが広がっている。 【小林洋子】 「本を読むのが好きなんですよね。大沢在昌とか西村京太郎とか」 。秋田保護観察所の面 談室に紺色の上着を着て現れた男性は、趣味の話になると笑顔を見せた。 出所後は秋田市内の更生保護施設で暮らしている。宿泊と食事は無料。8畳の相部屋で、 小さな机の上には図書館で借りた本が積み重ねられていた。 男性は北海道出身。中学卒業後、家業を手伝っていたが、刑務所に出入りするように。 いつしか「親に見放され」 、兄弟とも音信不通になり、頼れる人がいなくなった。 30歳ごろ上京し運送会社に就職。日当で7000~1万円ほどだった。だんだんパチ ンコにのめりこみ、昼食も食べずに朝から晩までパチンコ台に向き合った。「(収支が)プ ラスになるとはまってしまう」 。多いときは月40万円ほどもうけたが、金が底をついて盗 みをしたり、アパートの大家や住民と口論になって、けがをさせた。 前回出所したのは、年の瀬の10年12月30日の朝。いったん東京行きの新幹線に乗 ったが、出発前に降りて戻り、同日午後7時25分ごろ、秋田中央署で果物ナイフを差し 出し、銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された。 「どこも行くところがなく、寒くて自首しに行 った」と説明する。 懲役10月の判決を受けて、再び秋田刑務所に。 「楽と言ったらおかしいんですけど、過 ごしやすいんですよね」と打ち明ける。心臓病と腰痛が持病。ハローワークに行って面接 も受けたが、仕事はまだ見つからない。記者が「社会は生きづらいですか」と尋ねると、 何も言わずに首を縦に振った。 法務省の統計によると、10年の一般刑法犯の検挙人数32万2620人のうち、再犯 者は13万7614人。再犯者率は42・7%と統計を取り始めた89年以降、過去最悪 を更新した。刑務所に入るのが2回目以上となる「再入者」は1万5205人で、入所者 全体の56・2%を占める。 出所後に行き場のない受刑者を、福祉施設や地域社会につなぐのが地域生活定着支援セ ンターだ。今年度内に全都道府県で設置が完了する。男性の出所前、県センターの相談員 が今後の生活について尋ねると「仕事をしてお金をためて、アパートに入る。定年後は生 活保護を受けたい」と話したという。 「秋田も寒いが(出身地と違う所で)生活するのもいいかなと思った」と話す男性。「無 駄遣いしないで貯金をしたい。ものを買うのを控えて、本を読んで過ごそうと思います」 と静かに語った。 再犯を防ぐ:/下 司法と福祉が連携を 地域生活定着目指し /秋田 毎日新聞 2012 年 2 月 25 日 「住む場所も食べるものも仕事もない。福祉制度も申請の仕方がわからず、窃盗や詐欺 を繰り返してしまう」 。県地域生活定着支援センターの相談員、坂下美渉さんは、刑務所へ の入出所を繰り返す「累犯者」の実態についてこう訴えた。司法と福祉が連携することで、 罪を犯した高齢者や障害者の社会復帰と再犯防止を目指そうと、3日に秋田市内で開かれ たセミナー。社会福祉協議会職員や弁護士、保護司ら約200人が集まった。 満期出所後に頼れる人や行き先がなく、福祉サービスが必要な障害者や高齢者は年間1 000人に上るとされる。地域生活定着支援センターは、こうした人を地域社会や福祉施 設につなぐため、国が09年度から全都道府県の社会福祉法人などに委託して設置。県で は10年4月に発足した。 支援対象者は刑務所が選定。保護観察所などが出所前に面談し、本人の意思を確認する。 その後、センターが受け入れ先となる更生保護施設や福祉施設と調整したり、福祉医療制 度の申請を進める。 県センターが手がけたコーディネート(特別調整)件数は2月までに16件。10人が 高齢者で、5人が障害者だった。このうち3人が養護老人ホーム、6人が更生保護施設に 入所。病院や障害者福祉施設につなげたケースもある。 金沢憲雄センター長は「地域の一住民として生活できるようにするのが最終目標。1人 の人を二重、三重、四重に支援しなければ」と話す。自宅で暮らす出所者には、ヘルパー や民生委員、友人らを動員し、毎日誰かが訪れるようにしているケースもあるという。 ◇ 「犯罪を繰り返し、出所後も行く場所がない高齢者が、うちに来るケースが増えてきて いるように感じる」と話すのは、県内唯一の更生保護施設(秋田市)の秩父孝郎施設長。 同施設では、仮出所して保護観察中の人や、満期出所した人などに、宿泊場所と食事を提 供している。定員20人だが、現在22人と定員オーバー。平均年齢は45・5歳だ。 秩父施設長は「35歳を超すとなかなか仕事が見つからない。保証人の関係で、出所後 すぐにアパートで暮らすのは難しい」と話す。さらに、宿泊費と食費以外の生活費は本人 負担。 「支援が必要だ」と訴える。 秋田保護観察所も出所者の支援にあたる施設の一つ。出所前に受刑者との面接を重ね、 その人に必要な支援を探る。行徳伸一郎・統括保護観察官は「満期出所後、自立できない 人は助けないといけない。それが社会のためにも、本人の再犯予防にもつながる」と指摘 する。 しかし、支援を受けた元受刑者がすべてうまく社会復帰できるわけではない。 ある男性は県センターの協力で、出所後に年金を受給しながらアパートで生活していた。 だが、年金の受給に伴って生活保護が受けられなくなった。その後、県外で再犯し、現行 犯逮捕された。現在は服役中という。 金沢センター長は「福祉につなげるだけではなく、孤立させない工夫も必要。司法と福 祉の懸け橋をより太くて頑丈なものにして、ネットワークで見守る体制を作っていきたい」 と話す。 【小林洋子】 社説:障害者支援 「寄り添う司法」を本物に 西日本新聞 2012 年 2 月 27 日 知的障害者の刑事事件をめぐって、司法に変化の兆しがはっきり見えてきたようだ。こ の「芽」を大きく育て、確実に花開かせることが大切である。 知的障害者については、犯罪捜査で一般的に取り調べに迎合しやすく、捜査官の影響を 受けやすいといわれる。 加えてもう一つ、周囲の理解不足を背景に本来あるべき司法と福祉の支えを受けられず、 生活苦などから万引や無銭飲食などを繰り返す、いわゆる累犯障害者と呼ばれる知的障害 者も少なくない。 前者に関しては佐賀地裁が21日、画期的な判決を下した。衆院選に絡んだポスターを 破り公選法違反罪に問われた男性(59)の障害に理解を示し、責任能力なしと判断して 無罪を言い渡したのだ。 判断の根拠は、不規則発言など法廷での男性の様子を録画したDVDと、その録画など に基づいて男性の精神年齢を7―9歳程度とした鑑定結果だった。 判決は捜査段階の自白調書の信用性も否定した。 「言葉は断片的で、抽象的な話では返答 に困る」 (鑑定)といった知的障害者の特性に照らして考えると、理路整然すぎるというの である。 弁護側は「起訴前になぜ精神鑑定しなかったのか」と捜査を批判する。佐賀地検は「予 想外の判決」と言うが、判決を見る限り検察側の完敗ではないか。 累犯障害者については15日、窃盗罪などに問われた男性(41)をめぐる長崎地裁五 島支部の公判で、逆に検察側が英断をした。長崎地検が保護観察付き執行猶予を求刑した のだ。判決で執行猶予が付くのはよくあるが、求刑段階から実刑を求めない判断は極めて 異例である。 この男性は知的障害の療育手帳を持ち過去に盗みで実刑判決を受けていた。 今回、累犯障害者を支援する長崎県雲仙市の社会福祉法人「南高愛隣会(なんこうあい りんかい) 」の更生保護施設が男性の受け入れを確約したことが、検察側を動かしたという。 確かに南高愛隣会は全国に先駆けて、罪を犯した障害者や高齢者らの再犯防止と更生に 積極的に取り組んできた。その成果を踏まえたとはいえ、論告で「(愛隣会が)策定した更 生支援計画を受けることで再犯防止が期待できる」と言い切った検察の決断を評価したい。 裁判所も即決、猶予判決を出した。 この二つの出来事は象徴的だ。捜査であれ裁判であれ、これまで関係者は調書など形あ るものにこだわるあまり、正面から知的障害者と向き合おうという姿勢に欠けていたので はないか。その旧弊に風穴をあけたと言えるであろう。 佐賀地裁判決は、問答形式で調書を作る▽録音・録画する-など取り調べの配慮点まで 列挙した。すでに最高検は、一部で取り調べに福祉の専門家を立ち会わせるなど試行を始 めている。各地の弁護士会も支援団体や関係機関と連携するなど、弁護のあり方を模索し ている。 こうした動きを着実に広げ、 「寄り添う司法」を本物にする必要がある。 「障害者自立支援、新法を」 鹿児島市で学習会 南日本新聞 2012 年 2 月 26 日 障害者自立支援法の廃止と新法制定を訴えた学習会= 25日、鹿児島市のハートピアかごしま 政府が検討している障害者制度改革について 学ぶ学習会が25日、鹿児島市のハートピアか ごしまであった。内閣府障がい者制度改革推進 会議委員で脳性まひのある尾上浩二さんが、経 緯や審議内容について講演、障害者自立支援法 の廃止と新法制定をあらためて訴えた。 鹿児島市のNPO法人自立生活センターてく てくが企画、約180人が参加した。 現行法は、障害程度区分に基づきサービスを 決めており、本人の意向を反映させる仕組みがない。民主党は法廃止と新法制定を公約、 政府は昨年夏に推進会議から提言を受けた。しかし、今月示された改正案は「提言がほと んど反映されていない」との批判が強い。 尾上さんは「提言60項目のうち、48項目については触れられていない」と指摘。「鹿 児島からも、提言に基づく新法策定へ声を上げてほしい」と訴えた。 同日は同市の天文館で、麦の芽福祉会が新法制定を求める署名運動を実施。同会の久保 田清隆さんは「誰もが地域で安心して暮らせる社会のために、新法の必要性を知ってほし い」と話した。 新法制定求めて障害者署名活動 332人分、国会提出へ 読売新聞 2012 年 2 月 26 日 福祉サービスを利用する障害者に原則1割の自己負担を求めた障害者自立支援法の廃止 が見送られる見通しとなったことを受け、県内の障害者ら約30人が25日、鹿児島市・ 天文館で新法制定を求める署名活動を行った。集まった332人分の署名を国会に提出す る。 同法を巡っては、全国の障害者が2008年、生存権を保障した憲法に反するとして国 を相手取り提訴。原告団は10年1月、同法に代わる新たな総合的福祉制度を定めること で国と基本合意した。しかし、民主党の作業チームは今月、同法を廃止せずに法改正で対 応する方針を決めた。 署名活動は、同市の社会福祉法人「麦の芽福祉会」に通う障害者や家族、職員らが計画。 「支えがあれば当たり前に暮らせます」などと書いたプラカードを掲げ、協力を呼びかけ た。 同福祉会組織運動委員会の久保田清隆事務局長は「法改正では自己負担が残る。新法制 定を広く訴えていきたい」と話していた。 福祉作業所、パン屋で再起 田野畑村 朝日新聞 2012 年 02 月 27 日 田野畑村菅窪の福祉作業所、 「ハックの家」に新しいパン工房が完成した。カフェを併設 し、4月ごろオープンする。震災で働き場を失った障害者らが稼働を待っている。 震災前は弁当の総菜などをつくる水産加工場で10~20人が働いていた。ここで重機 免許を取り、一般企業就職を目指す人もいたが、加工場が流され、高台の漬けもの工場や、 5年前に始めた小規模なパン工房を手伝っていた。 難民を助ける会(東京)の支援でNPOジャパン・プラットホーム(同)から2800 万円の助成金を受け、全国からカンパを募って平屋木造のパン工房が完成した。従来の2 倍、約100平方メートルある。移動販売の車は2台に増やし、漬けもの工場も増設中だ。 工房では、使える右手でうちわを持ち、パンを乾燥させる隣で、黙々と製造月日のシー ルを貼る。 「就職したかったが工場が消え、やめるしかなかった」と話す障子上(しょうじ がみ)喜一さん(24)はパン職人の傍ら得意の暗算を生かし、レジ係をする。 連載3・11から 避難支援に個別計画 朝日新聞 2012 年 02 月 27 日 高齢者世帯の状況を詳しくピンで示した防災マップ。高齢者を守るには地区 や隣近所、家族の取り組みが重要になる=静岡市清水区由比北田地区 宮城の高齢者施設では 白いシーツにくるまれた47人の遺体が、宮城県気仙沼市の沿 岸部にある老人保健施設2階から次々と運び出された。3階へ逃 げ切れなかった高齢者が、津波に襲われた。警察庁によると、昨 年9月までに身元確認された東日本大震災の死者1万4623人 のうち、65歳以上の高齢者は55.68%と過半数を占めた。 「10メートルの津波が来たら、アウトだと思います」 県内の沿岸部にある特別養護老人ホームの関係者は、率直に明 かす。 施設の2階には、寝たきりの高齢者が数十人暮らす。1階には車いすの障害者やデイサ ービスの高齢者らが通ってくる。 津波が発生すれば、全員を2階に避難させる計画だ。昨年3月11日、東日本大地震で 駿河湾に大津波警報が出た時は、計画通りに避難できた。しかし、2階まで届く津波が来 たなら――。 「打つ手はない」という。 ■個々の施設任せ 県によると、県内には東海地震で津波の浸水が想定されるエリアに約100の高齢者施 設がある。だが、その対策は「施設が個々の実情を踏まえて決める」 。 自力避難が困難な高齢者や障害者らを、どうやって助けるのか。沿岸部にある別の特別 養護老人ホームの職員は「入所者を避難させるには、職員数が不足している」と心配する。 ただ、行政には、個別の事情に応じた対策を講じるだけの力はない。 そこで県内の市町が国の方針のもとで取り組んでいるのが、自力避難が難しい高齢者や 障害者ら「災害時要援護者」の一人ひとりについて、避難支援の「個別計画」を策定して おくというものだ。 ■地区の情報収集 要援護者がどこに住み、必要とする支援は何か。 支援を求める要援護者の情報を自主防災組織や民生委員で共有し、災害時に生かす。県 によると1月末の時点で、県内35市町のうち22市町で取り組んでいるという。 海岸沿いを走る東名高速のすぐ先に、太平洋が広がる静岡市清水区由比北田地区。自治 会長の望月正明さん(66)が掲げた住宅地図には、赤や黄色、青、緑などカラフルなピ ンが並ぶ。 緑は「寝たきりの高齢者」。青は「人工透析が必要な人」。赤は「70歳以上の一人暮ら し」 。数年前から独自に作成する「防災マップ」だ。避難支援を書面で届け出たのは18人 だが、既に多くの高齢者らの状況を把握し、公会堂には発電機を備えていた。避難経路の 周知にも余念がない。 それでも、望月さんは限界を感じている。 「行方不明者の把握や倒壊家屋からの救助なら対応出来る。だが、5分で来る津波は別。 家族とも別々で逃げろという時に『助けに行け』とは言えない」 「いざという時どう逃げるか。本人と家族、隣家で真剣に話し合ってほしい」 (上沢博之) ◇県内の65歳以上の高齢者は約89万人(昨年4月時点)で、県人口に占める割合(高 齢化率)は23%。10年前より約21万人増え、高齢化率は5.5ポイント増えた。6 5歳以上の一人暮らし世帯は約14万あり、10年前から倍増した。また、身体障害者手 帳は県内約12万人に交付されている。 餓死者、バブル崩壊後急増 セーフティーネット不備映す 産経新聞 2012 年 2 月 26 日 さいたま市で親子3人が餓死とみられる状態で見つかった問題で、全国の餓死者はバブ ル崩壊後の平成7年に前年の約2・8倍の58人に急増、それ以降、高水準で推移してい ることが25日、分かった。22年までの30年間の餓死者数は1331人で、うち7年 以降が8割以上を占めた。専門家はセーフティーネット(安全網)のあり方の見直しを呼 びかけている。 厚生労働省の「人口動態統計」によると、死因が「食料の不足(餓死) 」とされた死者は 昭和56年から平成6年まで12~25人だったが、7年に58人、8年には80人を突 破。それ以降、22年に36人となるまで毎年40人以上で推移し、過去30年間の最高 は15年の93人だった。 50代の死者が多いのも特徴だ。22年までの16年間で50代の死者数は348人、 60代が252人、40代が185人に上り、40~60代で全体(1084人)の72% を占めた。男女比は30年間で男性が女性の約4・5倍と圧倒的に多かった。 死亡場所は「家(庭) 」が多く、59~85%(7~22年)を占める。このため、行政 や地域社会のセーフティーネットから、何らかの理由でこぼれ落ちていた可能性も指摘さ れている。 貧困問題や生活保護に詳しい小久保哲郎弁護士は「餓死者の急増はバブル崩壊後、急速 に景気が悪化した時期と重なっている。当時、雇用状況の悪化に伴ってリストラなどで失 業者が増加した」と指摘する。 また、高齢者ではない「50代男性」の餓死者が多いことには、「稼働層といわれる働き 手世代のうち、年齢的に再就職が難しいことから50代が突出したのではないか」と分析 した。 女性よりも男性が多いことについては、 「男性は自立できるはずという強い社会規範があ る」とし、行政などから助けを受けることに心理的抵抗を感じている可能性があるとみて いる。 不況が続き、今後も餓死者が増える恐れがあることから、小久保弁護士は「労働と社会 保障の仕組み全体を改善する必要がある」と話している。 月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も 大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行
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