い~な 診療所 あまみ 中 中 央 事務局 研究所 しらさぎ つなぐの さくら 大阪+知的障害+地域+おもろい=創造 知の知の知の知 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所情報誌通算 2306 号 2015.1.31 発行 ============================================================================== 自分ってどんな人? 知的障害者のワークショップ 福祉新聞 2015 年 01 月 30 日 福祉新聞編集部 「知的障害は治る?」などの○×クイズも行われた 知的障害者の自己理解を促すワークショ ップがこのほど都内で開かれた。障害分野の 研究者や教諭などで構成する「オープンカレ ッジ東京」(代表=菅野敦・東京学芸大副学 長)の主催で、19~53 歳の知的障害者 44 人 が参加した。 ワークショップでは、かつて全日本手をつ なぐ育成会(解散)が作ったプログラムを使 用。講師は開発に携わった吉川かおり・明星大教授と、元同会職員の羽村龍氏が務めた。 「まずは自分が好きなコンビニごとに集まってみましょう」。 講師のかけ声で、参加者はグループを作った。そして、具体的にどんな点が好きか問わ れると、参加者からは「コーヒーが安い」「からあげがおいしい」「自分の家から近い」な どの意見が上がった。 羽村氏は「自分が好きなことを話すと気分が良くなり、相手と仲良くしたいと思いませ んか。初対面の人とは好きな季節を話すといいかもしれませんね」とアドバイスした。 続いて、自分と他人の考え方の違いを知るクイズを行った。「お酒を飲めるのは 20 歳か らである」という常識的な質問では、正解者が多く出た。ところが「元恋人に頻繁に電話 しても良いか」 「障害のある人は結婚できるか」といった質問は回答が分かれる結果となっ た。 また、 「仕事」 「友達」 「夢」などについて、一人ずつ語るグループワークや、障害とはど ういうものか紙に絵や文字で表現する課題もあった。 ワークショップ後、養護学校を卒業後 15 年にわたり工場で働いているという男性は「ち ゃんと働くには、人間関係がとても大事。今回自分の好き嫌いが改めて分かって良かった」 と感想を語った。 また、吉川氏は「キャリア教育は自分を理解することでもある。自分と他者の評価がか い離するとうまくいかなくなる。もっと自分の可能性を知ってもらえれば」と話した。 オープンカレッジ東京は、松矢勝宏・東京学芸大名誉教授が 20 年前に養護学校卒業生が 社会人として生活するために必要なスキルを学べる場をつくろうと立ち上げた。高等部教 育の延長ではなく、職場の人間関係や金銭管理、男女交際などをテーマに年4回開催して いるという。 こどもの城 2 月 1 に閉館 30 年の歴史に幕 福祉新聞 2015 年 01 月 29 日 福祉新聞編集部 「私たちが生まれたころに開館したんだ」——。子どもを抱いた母親たちがつぶやく。 眺めるのは、2月1日に閉館する「こどもの城」 (東京都渋谷区)のギャラリーに展示さ れている 30 年の歩みを紹介するパネルだ。 こどもの城では閉館を前に、スタッフ手作り の「こどもの城 30 年展」を2月1日まで開催し ている。 30 年の歩みをパネル展示で紹介 こどもの城は 1979 年の国際児童年を記念し て厚生省(当時)が 85 年に計画・建設した大型 児童館。公益財団法人児童育成協会が運営して きた、日本で唯一の国立総合児童センターだ。 新生児から高校生までを対象とした遊びのプログラムを開発し、全国に広げることや児 童館などのスタッフの育成、子育て支援などを担ってきた。 「接客はドキドキ」 堺市役所地階食堂が障害者の働く場に 「森のキッチン」2月2日 オープン 産経新聞 2015 年 1 月 30 日 障害者の働く場としてリニューアルオープンする堺市役所の地下 食堂。28日の内覧会では実際にメニューが提供された=堺市 堺市役所地下1階の食堂を社会福祉法人「コスモス」 (同市東区、河野直明理事長)が運営することになり、 竹山修身市長らが出席して内覧会が行われた。 「森のキッ チン」の名称で2月2日にオープン。食のプロたちの協 力を受けながら障害者がキッ チンやフロアに立ち、ランチ やカフェメニューを提供する。 「森のキッチン」では、障害者7人を含む14人が勤務し、障 害者は盛りつけや品出し、コーヒーの提供などを行う。営業時間 は平日午前10時~午後5時。席数は82席。メニューは日替わ り定食(650円)2種類や麺類、どんぶり物、カレーなど。ク ッキーを含む授産品の販売もある。内装は森のイメージに全面リ ニューアルし、窓際には子供が遊べるスペースも設けた。 また、食材などは地元農家でつくる「堺南いきいきファーム推 進協議会」が地元産野菜を提供し、上島珈琲貿易(堺市美原区) がコーヒーマシンを寄贈。大阪市立大学生活科学部の管理栄養士 がメニューを開発、人気菓子工房「T・YOKOGAWA」(和 泉市)のシェフパティシエが店内販売商品の開発に協力する。 河野理事長は「障害者の社会参加の機会を逃したくないとの声に押された。おいしかっ たと思っていただけるよう頑張りたい」とあいさつ。聴覚に障害がある松浦佐衣子さん(4 1)は「配膳(はいぜん)などは経験がありますが、接客は初めてでドキドキ。笑顔のお もてなしを心がけます」と話した。 堺市では、平成16年の現庁舎完成から食堂を運営してきた事業者が採算面を理由に昨 年11月末で撤退。市が障害者を雇用することを条件に、賃料を大幅に下げるなどして事 業者を公募していた。府内自治体では、松原市や河内長野市でも食堂を障害者雇用の場に している。一方、東大阪市では、屋上レストランの入居2業者が撤退するなど苦戦してい る。 「オモイガワザクラ」酵母であんパン 小山高専と「くわの実」が共同開発 下野新聞 2015 年 1 月 31 日 【小山】市花オモイガワザクラ (思川桜)を縁に、市内の教育者 らの思いが花開いた。知的障害者 の就労を支援する多機能型事業所 「くわの実」 (犬塚)と「第2くわの実」 (西黒田)は、 小山高専物質工学科の上田誠教授(54)らと共同で、 生地に思川桜の酵母を使った桜あんパンを開発した。 「障害者への理解が深まり、思川桜のように愛される パンになってほしい」と、来春の販売を前に名称を公募する。30 日には関係者が市役所を 訪問し、大久保寿夫市長に完成したばかりのパンをお披露目した。 上田教授は2年前に同校へ赴任。 「かれんな思川桜で地域に貢献したい」と、学生と一緒 に酵母の研究に取り組み、地酒の商品化に成功している。この研究を基に絹公民館の思川 桜から採取した酵母を使って製パンへ展開を図った。 名称の募集は2月2日~13 日。所定の用紙に記入し、第2くわの実や市役所に設置され た投票箱に応募する。パンは同月下旬~5月初旬の期間限定で販売する予定。問い合わせ はくわの実電話0285・25・8111。 信号ドーナツ 食べて約束 読売新聞 2015 年 01 月 31 日 上三川町で交通安全を呼びかける「信号機3色ドーナ ツ」が登場した=写真=。イチゴ、レモン、抹茶の3色 の玉をつなげたもので、2月に町が行う街頭啓発で60 0セットを配布する。 同町の福祉施設「上三川ふれあいの家ひまわり」の障 害者が作るもので、 「交通ルールを守りましょう 食べた ら約束だよ」と書いたメッセージを添える。 町と施設は、昨年末の交通安全運動で楕円形の「交通 安全ゼロドーナツ」を作っており、好評だったことから 町が第2弾として依頼した。町は「楽しく食べてもらいながら啓発できる」と期待し、施 設も「交通安全を考えるきっかけになってほしい」としている。 ナイスハートバザール:障害者が作った農産物や木工品 あすから鹿児島市の山形屋で展 示・販売 /鹿児島 毎日新聞 2015 年 1 月 30 日 県授産施設協議会は31日〜2月4日、鹿児島市金生町の山形屋1号館6階大催場と2 号館入り口前イベント広場で、働く障害者が心を込めて作った商品を展示・販売する「第 27回ナイスハートバザールin鹿児島」(かごしま障がい者共同受注センター協力、県・ 鹿児島市・毎日新聞社など後援)を開く。 協議会メンバーの26施設が出店。 成年後見制度 理解を深める 松戸で講演会 東京新聞 2015 年 1 月 31 日 講演会「今から考えよう!!成年後見制度ってなぁに?」が、松戸市健康福祉会館であ った。障害者の親や福祉施設関係者ら九十人が参加し、判断能力が不十分な障害者や高齢 者を守る同制度を学んだ。 障害者の親たちは高齢化し、認知症のお年寄りも増えており、市地域自立支援協議会権 利擁護部会が、まだ身近ではない同制度を知ってもらおうと企画した。 成年後見制度について解説する萩原弁護士=松戸市で 実際に後見人をしている萩原得誉(のりやす)弁護士が知的 障害者が高額な旅行代金を請求されたケースなど事例を挙げ ながら、「成年後見人は判断能力が不十分な方をサポートする だけでなく、トラブルが起きた時には前面に出て本人を守る」 などと話し、財産管理や契約手続きなどを本人に代わって行う 後見人の役割や制度を利用するための手続きを説明した。 NPO法人「成年後見センターしぐなるあいず」 (同市)の 泉幸江理事は、市から委託を受け毎週火曜日に相談会を開いて いることを紹介し、気軽な利用を呼びかけた。 (飯田克志) 福祉避難所、課題は認知度 7割超場所知らず 神戸 神戸新聞 2015 年 1 月 31 日 アンケートについて話す兵庫障害者センターの藤原精吾理事 長(左)と井上義治事務局長=神戸市中央区 災害時に障害者や介護が必要な高齢者らの優先避 難先になる「福祉避難所」の設置は進んできているも のの、障害者らの認知度は低く、約1割は避難そのも のをあきらめている実態が、NPO法人兵庫障害者セ ンター(神戸市中央区)の調査で分かった。(高田康 夫) 昨年10月10日から11月30日にアンケート を実施。兵庫県内の障害者団体や福祉施設の協力で、障害者やその家族294人から回答 を得た。県内41市町を対象にした調査も同時に行った。 福祉避難所は97・5%の市町で指定されているが、障害者やその家族で、住んでいる 地域の福祉避難所を知っているのは23・7%にとどまった。 災害直後にまず避難する1次避難所へ誰と移動するかの質問(複数回答)では、76・ 6%が「家族」とする一方、 「介護者が誰もいない」が1・7%、「避難所に行かない」が 10・7%あった。避難所で心配なこと(同)は「障害への配慮」「精神的安定」「バリア フリーかどうか」が、いずれも35%を超えた。 20年前の阪神・淡路大震災時、避難所で生活できず、壊れた自宅で過ごした障害者は 少なくない。だが、要援護者の個別支援計画を作成または作成中としている自治体はまだ 半数にとどまっており、同センターの井上義治事務局長(66)は「東日本大震災では障 害者の死亡率は、全体の2倍以上だった。悲劇を繰り返さないために、行政の施策に反映 してほしい」と話す。 アンケートの詳細は、2月1日午後1時から神戸市中央区の市勤労会館で開く「災害と 障害者のつどい」で、集計・分析をした神戸大大学院工学研究科の大西一嘉准教授が報告 する。資料代500円。同センターTEL078・341・9544 介護事業所の指定を取り消し 270万円を不正受給 大阪府東大阪市 産経新聞 2015 年 1 月 30 日 大阪府東大阪市は30日、虚偽の申告をし、介護報酬など約270万円を不正受給した として、同市の「介護センターふれあい広場」の事業者指定を31日付で取り消すと発表 した。 市福祉部によると、平成24年7月から26年10月まで、介護サービスを行っていな いにもかかわらず虚偽の申告をして、計5人分の介護報酬や補助金を不正に受給していた。 市の定期指導で発覚した。事業所は「制度を理解していなかった」としている。 文京区予算案 入居受け入れ家主に謝礼 高齢者と障害者 住まい確保など重点 東京新聞 2015 年 1 月 31 日 文京区は新年度、バリアフリー住宅に住み替えたい 高齢者・障害者や、子育て世帯に予算を重点配分する。 一般会計は八百十七億七千八百万円で、十六年ぶりに 八百億円を超え過去三番目の予算規模となった。 区内では、トラブルを恐れて不動産業者が高齢者や 障害者との契約を拒否する例があり、区に相談が寄せ られていた。そこで、高齢者や障害者の入居を拒まな い住宅を区に登録してもらい、実際に入居すれば最大 月額二万円の「謝礼」を家主に支払う「文京すまいる プロジェクト」事業を展開する。 事業費は千八百五十七万円。併せて見守りや助言を 担う相談員の拡充に千九十一万円を計上した。 子育て世帯向けには、現在ある五カ所の私立認証保 育所を認可保育所に移行し、これとは別に認可保育所 を四カ所新設。その運営補助に一億三千九十九万円を 計上した。九カ所合わせた定員は四百五十七人。 また、妊娠から産後までの相談・支援業務の拡充に 千六百四十五万円、発達障害児の支援などを担う「新教育センター」(湯島四)の整備費に 三億五千九百十二万円を盛り込んだ。センターには、音楽スタジオや運動スペースなど中 高生の自主活動の場も併設する。 介護で貢献、相続増も 民法改正検討 配偶者の優遇課題に 中日新聞 2015 年 1 月 30 日 法制審議会(法相の諮問機関)は2月下旬から、民法の相続分野の見直しに着手する。 家庭内の介護の貢献を認め、遺産相続を増やすことも取り上げる。法務省は29日、見直 しの論点をまとめた有識者の「相続法制検討ワーキングチーム」 (座長・大村敦志東大大学 院教授)の報告書を公表した。法律婚尊重の観点から、配偶者の優遇が課題に挙げられた。 配偶者の相続を拡大する法改正は、1980年に配偶者分が3分の1から2分の1に引 き上げられて以来、行われていない。法制審は少なくとも1年以上かけて、法改正に向け た議論を進める。報告書は、 (1)配偶者の貢献に応じた遺産分割(2)加算される「寄与 分」への介護負担の反映(3)最低限保障される相続割合に当たる遺留分制度の見直し(4) 配偶者の居住権保護−と論点を分類した。 現行相続法は、死去した人に「特別の寄与」があった場合に相続分が加算されるが、介 護の負担は通常の貢献とみなされることが多く、相続に反映されるとは限らない。有識者 チームは、介護に大きく貢献した相続人に「寄与分」を加算する方向で論議。すべての相 続人について貢献の程度を考慮しなければならず紛争が複雑で困難になるとの課題も指摘 された。 最高裁が2013年、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を定めた民法 規定を違憲とした決定に対し、自民党内に「家族制度が壊れる」との懸念が出たことを受 け、チームが設置された。大学教授や弁護士、法務省幹部らで構成され、配偶者らに配慮 した相続法制の在り方を検討してきた。 年金額伸び率、0・9%に抑制…実質的に目減り 読売新聞 2015 年 1 月 30 日 厚生労働省は30日、2015年度の公的年金の支給額が、原則として前年度比0・9% 増になると発表した。 年金抑制策「マクロ経済スライド」の初適用で伸び率が0・9%抑制され、本来の伸び の半分にとどまった。年金額は賃金や物価ほど伸びないことになり、4月分から額は増え ても、実質的には目減りする。 年金額は毎年度改定され、賃金・物価の変動率に応じて増減する。15年度の年金は、 過去の賃金上昇率が平均2・3%増だったことをそのまま反映させれば、2・3%増とな る。しかし、現在の年金額は0・5%分「払い過ぎ」の状態だ。払い過ぎ解消後の本来の 伸びは1・8%で、マクロ経済スライドの0・9%を差し引けば、全体で0・9%の伸び 率となる。 この結果、4月から、自営業者らの国民年金(満額)は月6万5008円(前年度比6 08円増) 、会社員らの厚生年金は、夫婦2人の標準的な世帯で月22万1507円(同2 441円増)となる。年金は4、5月の2か月分が、6月にまとめて支払われる。 社説:年金額の抑制―低所得者対策と一体で 朝日新聞 2015 年 1 月 31 日 年金額が16年ぶりに引き上げられることになった。 実施は新年度から。だが、物価の伸びほど年金額は増えない。理由は、保険料を払う若 い世代の減少を年金額に反映させる「マクロ経済スライド」が初めて適用されるからだ。 この仕組みは、2004年の法改正で導入された、年金額の抑制ルールだ。物価と賃金 のうち低いほうの上昇率を見て、それより下回る幅での引き上げにとどめる仕組みだ。 年金制度は「世代間の仕送り」でもある。少子高齢化が進むなか、仕送りする側・支え る側の保険料負担が重くなり続けることを避けるため、受けとる側の金額を実質目減りさ せて「入りと出」のバランスを取る。制度維持のために必要な仕組みといえよう。 しかし、これまで一度も適用されたことはなかった。物価がマイナスになるデフレが続 き、 「デフレ下では適用しない」という前提条件があったことなどが理由だ。このため徐々 に給付水準が目減りしていく見通しは外れ、現在の給付水準は想定より高い。 いまの高齢者への給付に将来分の原資を使っている格好で、その分、将来の水準は下が る。厚労省が昨年出した試算によると、インフレ時を想定したいまの抑制ルールを適用し ても30年後に厚生年金は2割、国民年金は3割下がる。今後再びデフレが起これば、将 来の給付水準はさらに低くなる。 こうした状況を踏まえ、厚生労働省の審議会は報告書で、この仕組みによる給付水準の 抑制が「極力先送りされないよう工夫することが重要」と指摘、デフレでも実施するよう な見直しをうながした。 若い世代が老後を迎えたときの「生活の安心」が底上げされれば、いま保険料を支払う 納得感にもつながる。 高齢者にとって厳しい見直しになるのは確かだが、制度の維持と若い世代のために検討 は必要だろう。その場合でも、低所得者への配慮は欠かせない。国民年金を実際に受け取 っている額は、平均で月5万円程度。こうした人たちにも、抑制は一律に適用される。影 響を少しでも和らげる手立てと一体でなければならない。 年金額が低い人に最大で月5千円支給する制度ができてはいるものの、消費税率の1 0%への引き上げ先送りによって支給開始も先送りになった。こうした手立てが確実に実 施されなければ、抑制ルールの見直しに対する納得は得られない。 社説:介護人材確保/外国人実習生頼みでいいか 河北新報 2015 年 01 月 31 日 介護分野の労働力確保を目指して、厚生労働省が早ければ2016年度中にも、外国人 技能実習制度の対象職種に介護労働を加える方針を決めた。 慢性的な労働力不足解消への苦心策と理解はするものの、途上国への技術移転を目的と する実習制度の趣旨からすれば、またもや拡大解釈になる。 事実上の現場労働力を実習制度によって外国から確保することには、根強い異論がある。 国家的課題と言える介護の窮地を、外国人実習生頼みで乗り切れるのか。ほかに必要と される対策の先送りにつながらないのか。議論すべき点は多い。 介護現場の労働力不足は深刻だ。団塊の世代が75歳になる25年度には介護職250 万人が必要になるが、対策を取らない場合は220万人しか確保できないと厚労省は試算 する。 約180万人が働く現時点でも、職員確保に苦労する施設は多く、訪問介護の拡大など 多様化するニーズに対応できないと現場からは悲鳴が上がる。 施設における基礎的作業を担う人材を確保できれば、より幅広いサービスが展開できる だろう。取り急ぎ、まとまった数の人手を集める仕組みが求められている事情は分かる。 ただ、活用される技能実習制度は、労働力確保のためにあるのではない。日本で技能の 習得を目指す外国人を期間を区切って受け入れるのが目的だ。 実際は、建設業や水産加工業などの下働き労働者を集めるシステムとして運用されてい る面がある。実習生は低コストの人手として組み込まれ、過去には長時間労働や劣悪な労 働環境が問題になってきた。 滞在期間を3年から5年に延ばすことが検討され、人手不足が顕著な建設業で先行導入 されるなど、都合よく枠が広げられてきた。介護職での活用も、そうしたなし崩し的とも 言える制度運用の流れの中にある。 対人サービスを行う職種での制度活用は初めてになる。一定のコミュニケーション能力 が求められるだけに、綿密な事前研修や現場指導が欠かせない。 試験に合格して介護福祉士となる正規の人材をインドネシアなどから受け入れる経済連 携協定(EPA)の仕組みも、日本語習得などが壁になって思い通りの成果を挙げていな い。 実習生の日本語能力はこれまでの規定よりも一段階低いレベルでも可とする方向のよう だが、中途半端な位置付けでは現場も実習生も混乱する。 何より、技能実習の拡大解釈という一時しのぎの手段で対応を重ねることで、介護職不 足の解決が本当に図られるのかどうかが、一番の論点になる。 低賃金できつい労働と敬遠される介護職の待遇やイメージの改善をどう進めるか。国内 労働力の確保を政策としてしっかり示すことが先決だろう。 外国人による補完が欠かせないのなら、きちんと育成して長期間継続して働けるように する仕組みが必要だ。実習生の活用でお茶を濁してはならない。 社説:外国人介護実習 低賃金固定化しないか 中日新聞 2015 年 1 月 31 日 厚生労働省は海外から「強制労働」とも批判される外国人技能実習制度の対象職種に介 護職を加える方針だ。日本人の介護職員全体の待遇引き下げや、サービスの低下につなが りかねず、問題だ。 外国人技能実習制度は、外国人に日本で働きながら技術を学んでもらい、その技術を途 上国に移転させることを目的として一九九三年に導入された。しかし、実態は安価な労働 力を供給する仕組みと指摘され、賃金未払いや低賃金の長時間労働といったトラブル、実 習生が逃げ出すのを防ぐためにパスポートを取り上げるなどの人権侵害も起きている。 現在、製造業や農業など六十九職種を対象に約十五万五千人受け入れている。期間は最 長三年。厚労省が二〇一三年に実施した調査では、実習生が働いている二千三百十八事業 所のうち、八割で労働関係法令の違反があった。賃金不払いが二割あった。「日本人と同等 額以上の報酬」と規定されているが、実習生の平均月収は十二万五千円。失踪者は増加傾 向にあり、法務省によると一三年は約三千五百人に上っている。 米国国務省は一三年の人身売買報告書で日本の実習制度は「強制労働」と批判し、パス ポートの取り上げや行動制限などを厳しく取り締まるよう勧告している。 問題の多い制度の対象に介護職を追加する狙いは人材確保だ。介護現場は人手不足が深 刻だ。厚労省は二五年度に介護職員が最大二百五十万人必要になると見込むが、三十万人 も不足するという。 厚労省の検討会がまとめた報告で、特別養護老人ホームなどの施設に限定する方針が示 された。受け入れの条件とする日本語能力は小学校低学年程度のレベルに相当する第四段 階。小学校高学年程度の第三段階で議論は進んでいたが、最終的に一段階落とされた。 介護は対人サービスであり、コミュニケーション能力は欠かせない。施設関係者は「日 本語がまともにできなくては、高齢者との交流はできない。また、一番怖いのは事故。介 護の事故は死に直結する」と不安を隠さない。 また、介護現場の人手不足の要因は低賃金だ。常勤の施設職員の平均月収は全産業平均 よりも約十万円低い。実習制度の対象になることで、介護職員全体の賃金引き上げが妨げ られる恐れがある。 厚労省は一五年度中に介護職を追加する方針だ。介護保険の将来に関わる問題であり、 国会での活発な議論を求める。 障害児教育の思い一冊に 帯広大谷短大・明神教授が出版 北海道新聞 2015 年 1 月 30 日 「命の尊厳について多くの人に考えてほしい」と話す明神もと子・帯広大谷 短大教授 【帯広】帯広大谷短大教授で、幼児・障害児教育が専門の明神 (みょうじん)もと子さん(74)が新著「どんなに障害が重く とも」を大月書店(東京)から出版した。日本初の重症心身障害 児施設「島田療育園」 (現島田療育センター、東京都多摩市)に1 965年から5年間務めた経験や同園の取り組み、現在の障害児 教育に対する提言をつづった。 表題は初代園長・小林提樹(ていじゅ)氏(故人)の座右の銘 「この子は、私である。あの子も、私である。どんなに障害が重 くとも、みんな、その福祉を堅く守ってあげなければと、深く心 に誓う」から引用した。 同園は1961年に開園。公的な学校教育から閉め出されていた重い障害がある子供た ちに対し、医療と福祉、教育を一体的に行った。明神さんは東北大大学院修了後、同園に 児童指導員として勤務。退職後は道教大釧路校教授などを経て、2013年から帯広大谷 短大教授を務める。 同書では小林氏と職員とのやりとり、日々の業務や苦悩を紹介。小林氏が子供の保護者 に行った療育指導の内容などを取り上げた。「勤務者の楽しい気分や感情が子どもたちに良 い影響をもたらすであろうと考えられていた」など施設の雰囲気についても記した。 一方、最近の障害児教育に対しては「効率を要求されて訓練至上主義、成果主義になっ ている印象を受ける」と指摘。小林氏の言葉を使って「療育とは『愛よりはじめる』こと だった」と振り返っている。 明神さんは「当時の職員たちが何を考え、子どもたちにどんな接し方 をしたのか書き残したかった。じっくり読んでもらい、命の尊厳につい て考えてほしい」と話す。初版1千部で、20日に発行。四六判、26 4ページ。1800円(税別)。帯広市内などの各書店で販売している。 (田口博久) 月刊情報誌「太陽の子」、隔月本人新聞「青空新聞」、社内誌「つなぐちゃんベクトル」、ネット情報「たまにブログ」も 大阪市天王寺区生玉前町 5-33 社会福祉法人大阪手をつなぐ育成会 社会政策研究所発行
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