塩分濃度を加味した薬剤散布作業について

塩分濃度を加味した薬剤散布作業について
高田河川国道事務所 機械課長 水沢 和久
業務係長 前原 正之
業務係 ○佐藤 正樹
1.はじめに
冬期道路管理における路面凍結対策として交通障害の防止を図るため、従来よウ凍結防’
止剤散布作業を「凍結防止剤散布要領(案)」,に基づき実施している。現行の散布要領で
は気温(予想最低気温)と散布量の関係みみが示されており、散布間隔(持続性)の関係
についての記載はなく、散布回数及び散布時期は現場代理人やオペレータの経験により行
っているのが現状である。‘
そこで、路面塩分濃度の減衰状況及び塩分濃度と凍結開始温度の相関を:調査し、塩分濃
度を加味した薬剤散布作業あシミュレーシヨ≧によりく散布間隔についての検討を行った
ので報告する。 , ,
2,調査概要 ・ ’
2.1路面塩分濃度の減衰状況
一般に路面に散布された凍結防止剤の塩分濃度は、’時間の経過と共に減衰していく。そ
こで、路面凍結防止効果の持続時間を把握するため、一般国道8号新潟県中頸城郡大潟町
に塩分濃度センサー一を設置し、凍結防止剤を309/㎡散布した場合の経過時間における塩分
濃度の推移を測定した。
2.2 塩分濃度と凍結開始温度の相関
路面に散布された塩分濃度と路面凍結開始温度の相関性(凍結開始の判別式の作成)を髄
確認するため、新潟県中頸城郡妙高高原町において気温が低下する夜間に観測を行った。
層観測方法.は図一1に示すとおりイミレラトに塩分濃度の異なる塩水を入れ、各濃度で凍結開
始、表面凍結、半凍結、完全凍結時の4種類の温度を赤外線放射温度計で測定したる(写
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.と各。.5輸濃度の塩水イ二成
1アルミ製のパレソト内に各濃度の塩水を
みれ.雪面に設置
観測開始
パレット内の塩水に氷が騒生する‘医事を
計測
パレヅト内の塩水表面に薄く氷が張った
犠態を計測
半凍結(シャーベット)温度確認 パレソト内の塩水がシャーベノト状にな
’り,水分湛少ない状態を計測
.バレノト内の塩水が、完全に凍結し、水分
が無い状態を計測
観測終了
写真一1 観測状況
三一1 路面観測フロー
一337一
3.調査結果
3.ゴ路面塩分濃度め減衰状況
5642¢36q20
塩分濃度センサごによる計測結果を
1
”塩旧離朧
@塩分濃戻減翼曲碍
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取りまとめたものを二一2に示す。
凍結防止剤(原塩)は路面水分に融
解し、水溶液となることはり初めて1
㌧
凍結防止効果を発揮するため、散布直
y=↑3Pゼa。07裕O」
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後から効果を発揮するまでにも多少の
時間を要する、よって、路面の塩分濃
度は散布前の路面状況(乾燥、湿潤、
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積雪等)や路面上の水分:量等の各種要
因によって大きく異なる。
本調査で使用した塩分濃度センサーも、
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三一2 塩分濃度減衰式
凍結防止剤が水溶液となってからでなくては計測ができない。そこで、本減衰式.の算定に
あっては、塩分濃度がピーク値を示した段階から求めるものとした。
この結果得られた塩分濃度減衰式は以下のとおりである。
塩分濃度減衰式 y=13.Oe伽7x一.0.7
x:経過時間(分)・
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相関式を求める上で、凍結開始式は揚止&
観測結果の下限値を通るような曲線と 4
した。つまり、二二凍結開始式曲線よ ・
りも下の部分では凍結は見られず、曲 な
線を境に凍結が始まる。 。
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図一3に示す。
⑭
◆
凍結開始の境界を取りまとめたものを
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路面観測結果を用いて、塩分濃度と
雪9
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3.2塩分濃度と凍結開始温度の相関
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図一3 凍結開始式
例えば、塩分濃度5%の時、路面温度
一21 獅ナ凍結が始まることを示している。
これら観測から得られた凍結開始式は以下のとおりとなる。
凍結開始式
y「一(LOeα鋤‘一1.0)
x=塩分濃度(%)
y:凍結温度(℃)
本凍結開始式を用いて路面管理を行うことにより、安全側の管理を行うことができる、
一338一
3.3 塩分濃度の把握結果
33」 塩分濃度を加味した薬剤散布シミュレージョン層
今回の調査結果より、凍結開始式では塩分濃度による凍結温度の判定が行え、塩分濃度
減衰式では路面に散布した薬剤の凍結防止効果がいつ無くなるのか推定することが可能と
なった。
推定状況(現況30g/㎡、2回)
一路面温度 一一H14塩分濃度減衰曲線 一一田4凍結国国限界式
1
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時刻
図一4 現況推定状況
これらの式を用、いて現況の実作業(一晩309/㎡×2回散布)に当てはめた結果を図一4
に示す.20時50分頃に凍結防止剤を
衷一1 残留塩分濃度管理シミュレーション
が上昇し、路面凍結温度は低下する。’
・1回目
結の恐れがある結果となった。
4回散布
に2回目の散布後も朝方7時以降に凍
3回散布
は路面温度が路面凍結開始温度を下回
り、路面が凍結する恐れがある。同様
散布方法
しかしその後の路面塩分濃度の低下に
伴い、路面凍結温度は上昇し、0時か
ら次回散布する3時50.分までの時間帯
2回散布
30g/㎡散布すると、急激に路面塩分濃度
2回目 3回目 4回目
合計 旦
評価
コメント
30
30・
60
x
(現況)
40
40
80
x
朝方凍結
一60
x
朝方凍結
20
20
20
30
20
20
フO x
朝方凍結
40
15
15
フ。 x
朝方凍結、夜中一時凍結
30
30
30
30
30
20
90 0
80 0
15
15’
15
15
60 x
夜中及び朝方凍結
20
20
15
15
70 x
朝方一部凍結
30
15
15
15
20
20
20
15
75 0
75 0
そこで、路面の残留塩分濃度を管理
するという方法で、散布間隔、散布量、散布回数を変えてシミュレーションを行った。シ
ミゴレーション結果を表一1に示す。
この結果・2回散布では散布間願・散布量を変えても夜中から朝方に凍結の恐れがある
こととなり、調査実施時の気象パターンでは、現況の一晩2回の散布では路面凍結の危険
性は無くならないこととなる。. . ,
一339一
一晩3向散布(30・30・209/㎡)では、二一5に示すとおりに路面温度が路面凍結温度
を下回わらず、路面凍結の恐れも無いことが判る。
また4回散布でも同様に路面凍結の危険性は無くなる(三一6)。’
流糖防止削散布シミュレーショレヶ散布壼3σg溺qg雛9/㎡$回散布
薫結防止剤徹薙シミュレーショ⊃一散布量2092〔底20g.20g!㎡4回口布
一路面温厘幽二胡塩翁纏践表遺糞一一凍繕開始境境鉾式
一路面温度 轟■壌公濃度減段紛 一一凍結開始境購堺式
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三一6 4回散布シミュレーション結果
図一5、3回散布シミュレーション結果
シミュレーションで得られた散布パター
ンについて、大潟工区における平成14年
度単価による散布費の試算を行い比較した
ものを図一7に示す。
自由化により凍結防止剤の単価が大幅に安,
価となったことにより、今回のケースでは
散布費用は散布量よりも散布回数に左右さ
墨、薔・寂・繍亀霧
平成14年度から凍結防止剤(原塩)の
N飴242229醤筍褥稔粉
3印
O O O nU σ 0 0 ︵︶ 心 nV 3
︵窪聾︶陛鰍撫懸
3。3、2 コスト比較
β駆融布 a{重豫療 4両吟峯
散布パターン
れた。
図一7 散布費用比較
4.まとめ
今回のケースでは、現況のガ晩2回の散布では路面温度が路面凍結温度を下回り、路面
凍結の危険性がある時間帯が生じる。そこで・路面の残留塩分濃度塗加味して一晩3回散
布を行うことにより、路面凍結の危険性は少なくなり、冬期路面の適切な管理レベルを保
つことができ乙。また、同じ3回散布でも適正な散布量が把握できるため過度な凍結防止
剤散布も抑制することができる。
5.おわりに’
本調査から求めた塩分濃度減衰式及び凍結開始式により、散布間隔を定量的なものとす
ることができた。
大潟工区では気象パターンあ変化『(気温変化)があったとしても、これらの式を用いて
適切な散布作業を繰り返すごどにより、路面凍結を抑制し、冬季の路面管理レベルを保つ
ことができると考えちれる。しかじ、本調査ではデータ数が少ないこと及び、As舗装平
坦部のみの調査結果であることから、今後もデータ数の拡充を図り信頼性を高めることと、
様々な条件(排水性舗装区間等)での調査を実施することが必要である。
一340一.