カ ブ ト ガ ニ Ta chyp l eus t r i d ent a t us 飼 育 大 田 浩 史 ・武 良 貴 大 カ ブ ト ガ ニ Tac hy p le u s t ri de n t at u s は 2 億 年 以 上 も 姿 を 変 え ず 、 現 代 ま で 生 き 続 け て い る こ と か ら 、 「生 き て い る 化 石 」と よ ば れ る (西 条 市 立 東 予 郷 土 館 )。 か つ て 、 本 邦 で は 、 瀬 戸 内 海 か ら 九 州 北 部 の 沿 岸 に か け て 、数 多 く の カ ブ ト ガ ニ が 生 息 し て い た ( 西 条 市 立 東 予 郷 土 館 ) が 、海 岸 の 埋 め 立 て や 水 質 汚 染 に よ っ て 、絶 滅 寸 前 ま で 減 少 し た ( 西 条 市 立 東 予 郷 土 館 ) 。 カ ブ ト ガ ニ の 繁 殖 地 と し て 、 愛 媛 県 西 条 市 東 予 地 域 の 海 岸 は 有 名 で あ り 、 昭 和 24 年 に は 、 この地域に生息するカブトガニが県の天然記念物に指定され、行政と四国カブトガニを守 る 会 が 協 力 し て 、 幼 生 放 流 や 海 岸 清 掃 等 の 活 動 に 取 り 組 ん で い る (西 条 市 立 東 予 郷 土 館 ) 。 そ の 取 り 組 み の 一 つ で あ る 幼 生 飼 育 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に 200 5 年 ( 平 成 17 年 ) 参 加 し た の で 、 その結果についてまとめた。 材料および方法 飼 育 個 体 2005 年 12 月 4 日 、 愛 媛 県 西 条 市 立 東 予 郷 土 館 か ら 提 供 し て 頂 い た カ ブ ト ガ ニ 1 齢 幼 生 4 9 個 体 お よ び 2 齢 幼 生 20 個 体 を 飼 育 し た 。 飼 育 方 法 プ ラ ス チ ッ ク 容 器 ( 15 c m× 25 c m×13 c m) に 1 齢 幼 生 お よ び 2 齢 幼 生 を 1 つ の 水 槽 に 各 々 1 0 個 体 ず つ 収 容 (1 齢 幼 生 区 5 つ と 2 齢 幼 生 区 2 つ ) し 、 来 村 川 河 口 域 で 採 取 し た 泥 を 厚 さ 約 5 mm に な る よ う に 敷 い た 。飼 育 水 量 は 、容 器 の 水 深 が 約 7 ∼ 8 c m( 2 L) と な る よ うにした。エアーの供給法として、市販の醤油差を材料に、穴を数カ所開けてエアースト ーンの代替として用い、カブトガニが巻き上がらない程度のエアレーションを行った。水 温 の 調 整 に は ウ ォ ー タ ー バ ス 方 式 に よ り 各 水 槽 の 温 度 が 2 8 ℃ に な る よ う に 設 定 し た ( 図 1) 。 塩 分 濃 度 水 槽 設 置 時 、浄 水 と 海 水 を 混 合 し て 塩 分 濃 度 が 2 .0% に な る よ う に 設 定 し た 。塩 分 濃 度 は デ ジ タ ル 塩 分 計 ( 積 水 化 学 工 業 株 式 会 社 ) と 食 塩 濃 度 屈 折 計 ( AT AGO 株 式 会 社 ) を 用 い て 、 原 則 夕 方 (1 7: 00 ) に 測 定 し た 。 塩 分 濃 度 が 2 .0 % よ り 高 い 場 合 に は 、 飼 育 水 温 と 同 じ 温 度 の 浄 水 を 加 え 、塩 分 濃 度 が 2. 0 % に な る よ う に 調 整 し た 。換 水 は 原 則 、2 ヵ 月 に 1 度 行った。 給 餌 餌 と し て 、 孵 化 さ せ た ア ル テ ミ ア Ar te m ia Sa l in a 幼 生 を 、1 齢 幼 生 は 20 06 年 1 月 9 日 か ら 、 2 齢 幼 生 は 2 00 5 年 1 2 月 23 日 か ら 原 則 週 1 回 与 え た 。 飼 育 水 槽 に 直 接 ア ル テ ミ アを投与した場合、底生性のカブトガニが摂餌できないことから、給餌時、カブトガニを 取 り 出 し 、 深 さ 約 1cm の 風 呂 の 湯 ア カ 取 り 用 の ネ ッ ト (図 2)内 で 約 1 時 間 飼 育 を 行 い 、 摂 餌させた。カブトガニが餌を食べているかどうかの確認には、胃がある甲部先端が赤くな っているかどうかにより判断した。 測 定 カ ブ ト ガ ニ の 脱 皮 前 と 脱 皮 後 に 全 長 、 甲 長 お よ び 甲 幅 (図 3)を 測 定 し た 。 図 1. 飼 育 水 槽 図 2. ア カ 取 り 用 の ネ ッ ト 結 果 1 齢幼生および 2 齢幼生の飼育水温、塩分濃度、脱皮個体数および斃死個体数を表 1 に 示す。 表 2. カブト ガ ニ T ac hyp l eu s tr i den ta tu s 1 齢 お よび 2 齢 の 飼 育 個 体 数 、 脱 皮 個 体 数 お よ び 大 きさ 飼育 脱皮個体数 脱 皮 前 (m m ) 脱 皮 後 (m m ) 区 個体数 (比 率 ) 甲幅 甲長 全長 甲幅 甲長 全長 1 齢区 49 8( 16 % ) 2.8 4 5.5 3 5.7 7 6.6 7 7.5 3 8.6 5 2 齢区 20 3( 15 % ) 3.9 9 8.8 8 9.7 1 9.7 0 11. 20 14. 40 図 3. カ ブ ト ガ ニ の 測 定 各 部 名 称 図 4 . 1 齢 (a ), 2 齢 ( b) お よ び 3 齢 ( c) カブトガニの形態 1 齢 幼 生 で は 、 49 個 体 中 8 個 体 が 脱 皮 し 、 2 齢 幼 生 に な っ た 。 甲 幅 、 甲 長 お よ び 全 長 の 測 定 結 果 で は 、 1 齢 幼 生 は 、 脱 皮 に よ り 、 甲 幅 が 3 .8 3 mm、 甲 長 が 2 . 00 mm、 全 長 が 2 . 88 mm 大 き く な っ た 。 脱 皮 前 と 脱 皮 後 を 比 較 す る と 、 甲 幅 は 約 1.3 倍 、 甲 長 は 約 2. 3 倍 お よ び 全 長 は 約 1.6 倍 大 き く な っ た 。 生 残 個 体 数 は 、飼 育 開 始 後 2 5 日 か ら 死 亡 個 体 が 出 は じ め 、2 47 日 後 に は 全 個 体 が 斃 死 し た。 2 齢 幼 生 で は 、2 0 個 体 中 3 個 体 脱 皮 し 、3 齢 幼 生 に な っ た 。2 齢 幼 生 は 、脱 皮 に よ り 、 甲 幅 が 5 .71 mm、 甲 長 が 2. 32 mm、 全 長 が 4 .69 mm 大 き く な っ た 。 脱 皮 前 と 脱 皮 後 お よ び 3 齢 を 比 較 す る と 、 甲 幅 は 約 1. 3 倍 、 甲 長 は 約 2. 4 倍 お よ び 全 長 は 約 1. 5 倍 大 き く な っ た 。 生 残 個 体 数 は 、飼 育 開 始 後 2 5 日 か ら 死 亡 個 体 が 出 は じ め 、1 86 日 後 に は 全 個 体 が 斃 死 し た。 感 想 今回、カブトガニの飼育を行うにあたり、飼育方法を自分たちで考え、工夫して飼育を 行ったが、他の甲殻類とは違う給餌方法、塩分濃度の調整等、カブトガニを飼う難しさや 大 変 さ を 感 じ た 。し か し 、難 し さ や 大 変 さ の 中 に 、1 齢 幼 生 が 2 齢 幼 生 に 脱 皮 し 、2 齢 幼 生 が 3 齢幼生に脱皮したときは感動した。機会があれば、今回の飼育経験を生かし、カブト ガニの長期飼育に挑戦したい。 謝 辞 今回、カブトガニの幼生を提供していただいた愛媛県西条市立東予郷土館、飼育に協力 していただいた愛媛県立宇和島水産高等学校増殖専攻科生に感謝の意を表する。 参考文献 「ぼ く に も 、 わ た し に も で き る カ ブ ト ガ ニ の 幼 生 飼 育 」 西 条 市 立 東 予 郷 土 館
© Copyright 2024 ExpyDoc