トビハゼの再生産における巣孔内空気貯蔵の役割(第3回MRI(Marine

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Title
トビハゼの再生産における巣孔内空気貯蔵の役割(第3回MRI(Marine
Research Institute)シンポジウム「Marine ecophysiology」)
Author(s)
石松, 惇
Citation
MRIレポート vol.3, p.15-15; 2001
Issue Date
2001-04
URL
http://hdl.handle.net/10069/5693
Right
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トビハ ゼ の 再 生 産 に お け る巣 孔 内 空 気 貯 蔵 の 役 割
石松
【
背
惇 (
長崎大学水 産学部)
景 】 トビハ ゼ類 は熱 帯 ∼温 帯 の潮 間帯 に発 達 す る泥 干潟 に生息 し、魚類 で あ り
なが ら生活 の多 くの部 分 を干潟泥 上 で営 む特 異 な グルー プで あ る 。 この仲 間 は泥 中 に
巣孔 を掘 り、 そ の 中 に産卵 す る こ とが知 られてい たが 、極度 の低 酸素 条件 にあ る泥干
潟 の泥 中で どの ように して卵 が発育 してい るのか は不 明であ った。
トビハ ゼ pe
r
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字型 の巣孔 を干潟 に掘 り、その中 に産卵 す る。
産卵 か ら醇 化 まで の約 1
週 間の 間、雄 親 魚 が卵 保護 を行 うこ とが 知 られ てい た。演 者
らの グルー プは、 その産卵 行 動 を明 らか にす るため、佐賀県芦刈 町の干潟 で 1
9
9
8
年か
ら トビハ ゼの産卵 期 で あ る 5月下旬 ∼ 7月 にか けて野外調査 を行 ってい る。
【
方
法 】① 巣 孔 内環境 測 定 :トビハ ゼ の巣孔 を満 た してい る海水 を採 取 し、溶存酸
素飽 和 度 、p
H、塩分 を測定 した。巣孔 内 か らの ガス採取 を行 い、酸素及 び二酸化炭素
濃 度 を測 定 した。(
参卵 醇 化 条件 :産卵 室 か ら採 取 した卵 を飼育 し、空気 中の卵発 達 に
つ い て観 察 す る とと もに、醇 化 に必 要 な条件 につ いて検討 した。③ 産卵行 動 の観 察 :
産卵 室頂部 に工 業用 ス コー プ を設 置 し、卵 保護 か ら醇 化 にい た る までの親魚 の行動 を
観 察 した。④ 産卵 室 内 ガス濃 度 の連続測 定 :卵保護期 間中の産卵 室 内 ガス濃 度 を連続
測 定 し、雄 親 魚 の行 動 も記 録 す るため 、 産卵 室 に工 業用 ス コー プの ほか、酸 素電 極 、
イ ンピー ダ ンス測定用電極 を設置 し、観 察 を行 った。
【結
果 】① 巣 孔 は干潮 時 もほ とん ど干 潟 表面 まで水 で満 た され てお り、溶存 酸 素 の
飽 和 度 はいず れ も1
0%以 下 で あ った。巣 孔 内 に平均 47
ml
の ガスの存在 が確 認 され た。
巣 孔 内 ガスの酸 素濃度 は外 気 と同程 度 の場合 が あ り、二酸化 炭素濃度 との 間 に負 の相
関が あ った。(
∋日本 産 トビハ ゼの卵 を採 取 して巣孔水 の酸 素条件 を模 した水 中で飼育
4時 間以 内 に死滅 した。空気 中で卵 の発育 は進行 したが、空気 中 に留 め
した ところ、2
お かれ る と醇化 は起 こ らず 、最終 的 に死 滅 した。卵 の醇 化 には水 - の浸 演 が必 要 な こ
とが室 内実験 の結 果 明 らか にな った。③ 卵 保護期 間の終 了時 に、雄親魚 が産卵 室 内の
空気 を口 を使 って巣孔外 に排 出 した。 この行 動 の結 果 、産卵 室 内の水位 が上昇 し、卵
が水 に浸 漬 され て醇 化 が起 こった。醇化仔 魚 は直 ち に巣孔外 へ脱 出す る もの と思 われ
るが 、 その過程 に親魚 の関与 が あ るか は明 らか にで きなか った 。 ④ 産卵 室 内 ガスの酸
素 濃度 は、低 潮 時 の巣孔 干 出時 には親魚 の空気持 ち込 み行動 に よ り0
.
4±0
.
3
%/h
r
で上
昇 し、高潮 時 の巣孔水 没 時 には0
.
8±0
.
3
%/h
r
で低下 した。親魚が放 棄 した巣孔 の産卵
量の [
02
]gは一貫 して低 下 し、親魚 の空気持 ち込 み は卵 の発育 に とって不可 欠であ る
と考 え られ る。
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5-