国際コミュニティの中で海洋基本計画の実現方策を考える 海洋保全生態学の立場から 松田裕之(横浜国立大学) 日本生態学会・東アジア生態学会連合会長 Pew Marine Conservation Fellow DIVERSITAS科学委員 日本水産学会政策委員長 Pew Marine Conservation Fellow 利用と保全の調和を図る Co-Managementの推奨 レギュラトリ科学の創生 1 知床世界遺産科学委員会 が直面した「矛盾」 読売新聞 • 政府は漁協に新たな規制なし と公約(「公文書」にて確認) • IUCNは保護レベル強化を求め る →漁協の自主規制強化しかない • 3年後に海域管理計画(1年後 に素案) • 登録海域を1kmから大陸棚が ほぼ含まれる範囲まで拡大 2 世界に認められた知床の漁業共同管理 • International Association for the Study of the Commons (初代会長 E. Ostrom) の選ぶ世界のインパクト・ストーリー(2010年) http://www.iasc-commons.org/impact-stories 3 知床世界遺産の取り組みを賞賛 したIUCN(国際自然保護連合) 2008/2/21 10:45 10:38 (28)調査団は、知床世界遺産の保護について、特に2005年の世界遺産委員会と IUCN技術評価書からの勧告に対し、日本は良好な進捗を遂げている旨確認した。調 査団は、特に(知床遺産の)全てのレベルの関係者が遺産の顕著で普 遍的な価値を確実に維持し、次の世代へとそのままの形で引き 継ごうとする強い責任感に感銘を受けた。これは、北海道知事、斜里 町長、羅臼町長が2005年10月に署名した「世界の宝、しれとこ宣言」によくあらわれ ている(別添C参照)。また、調査団は、地域コミュニティや関係者の参画 を通したボトムアップアプローチによる管理、科学委員会や個々 の(具体的目的に沿った)ワーキンググループの設置を通して、科学的知 識を遺産管理に効果的に応用していることを賞賛する。これら は、他の世界自然遺産地域の管理のための素晴らしいモデル を提示している。 IUCN知床調査報告書 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/080605.html 4 日本にも海洋保護区(MPA)がたくさん ある(八木信行 ら2010 Marine Policy) • 日本には海洋保護区が1161箇所以上ある • そのうち1055は禁漁区である • 3割以上が法的措置でなく漁協の自主管理 5 漁業の構造(データは1997当時, FAO 1999) 国名 漁民数 漁船数 零細比率 アイスランド 6,300 826 0.63 ノルウェー 22,916 8,664 0.89 デンマーク 4,792 4,285 0.86 英国 19,044 9,562 0.82 フランス 26,113 6,586 0.78 カナダ 84,775 18,280 0.74 NZ 2,227 1,375 0.74 スペイン 75,434 15,243 0.76 米国 C.A. 290,000 27,200 0.53 韓国 180,649 50,398 0.9 日本 278,200 219,466 0.98 豪州 13,500 C.A. 5,000 N.A. SSF < ISCFV 25 (the International Statistic Classification of fishery Vessels) 牧野光琢氏作成 零細漁船がほ とんど(政府に よるトップダウ ンの監視はコス ト高) 6 6 JC Castilla氏 チリの零細漁民優遇策 ○企業体漁業 8000 A II 1800 1600 FAL Artisan & Industrial (includes algae) 7000 1400 Industrial Artisan (includes algae) 6000 1200 5000 1000 4000 800 3000 600 2000 400 1000 200 0 0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 I miles Export Value ( US$ 1000) * Landing (metric tons 1000) * 9000 5 2005 III IV V RM VI VII VIII IX X ▼零細漁業 5 miles AEZ = Artisan Exclusive Zone (ca. 27.000 km2) XI Territorial User Rights for Fishers (TURFs) are allocated to communities with MEABRs. •MEABRs = Management and Exploitation Areas for Benthic Resources C H I L E み祝 ど り生 賞物 二多 〇様 一性 二 XII 7 自然の価値を計る (Costanzaら1997) • • • • 05/8/4 供給 農林水産物約140兆円/年 調整 物質循環約1700兆円/年 資源価値<<調整サービス 漁場の自然価値 >漁業補償では守れない 8 8 結論 • 漁業は海の恵みの一部である。 • 沖合の漁業資源は膨大にある。ただし優占種が 交替する非定常系。これを持続的に利用する企 業体漁業の資源管理と加工流通技術が必要 • 沿岸小規模漁業は地域の食糧安保、生態系機 能維持、多面的利用とともに考える(専有アクセ ス権) • 国の管理と地域担い手の自主管理の両方が重 要 • 不確実性を考慮したリスク管理が必要 • 未実証の前提に基づくレギュラトリ科学の創生 9
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