4 - 広島市立皆実小学校

特別支援教育だより
№4
平成 20 年6月23日発行
広島市立皆実小学校 校内支援委員会
℡(251)2358
《ことばときこえの教室》をご存知ですか。
北校舎の3階にあり、ドアを開けて正面がことばの教室、
右側がきこえの教室になっています。
《きこえの教室》について
《きこえの教室》には、1年生1名、2年生1名、4年生2名が在籍しています。
交流学級で学習しながら、日に1∼2時間ずつきこえの教室に来て、一人一人に合わせた
指導や教科の補充指導などを受けています。
子どもたちは補聴器をつけて学習していますが、
「人工内耳」といって、手術をして音を聞
くための機械を頭の中に入れている子どももいます。そのため、耳や頭にボールが当たった
り、たたかれたりすると大きなダメージを受けることになります。最も気をつけなければな
らないことの一つです。また、水や湿気に非常に弱いため雨に濡れないように注意が必要で
す。汗をかく季節には、こまめに汗をふいたり補聴器に汗を吸い取るカバーをつけたりする
よう指導をしています。このことは、学級・学年の子どもたちにも、お互いに気をつけて生
活するよう、機会を捉えて話をしています。
《きこえ方》について
難聴の人にとって音や言葉はどのように聞こえているのでしょうか。
聞こえには個人差があるので、検査器(オージオメーター)からの検
査音の聞き取りも様々です。それで、
「しき」を「いき」と聞き違えた
り、
「かす」を「かつ」と聞き違えたりすることがあります。音は聞こ
えていても、内容については、しばしば聞き違えるのです。
難聴の子どもは授業中、教師の口元をじっと見つめていますが、それは、口の形から教師
が何をしゃべっているかを読み取るためなのです。教師が発する声、すなわち『音声の情報』
だけではわかりにくい場合が多いので、教師の口の形という『視覚の情報』をあわせて取り
入れ、必死に内容を理解しようとするのです。
また、子どもたちがつけている補聴器や人工内耳はすべての音を大きくするので、教科書
のページをめくる音、机や椅子を動かす音、友だちの話し声等、近くにあるものの音から増
幅されて耳にとびこみます。必要な音だけを選ぶことができません。そのために、机や椅子
にテニスボールをつけ騒音を抑えたり、教師が FM マイクを使い、マイクから直接補聴器に
電波をとばしたりという手だてをしています。加えて、儀式、
朝会、集会等、児童が集合する時の視覚支援(プロジェクター
による提示)は、聴き取りにくさを補うためにどうしても必要
なのです。
6月11日の学校朝会「校長先生の話」では、ステージ上の
スクリーンに2枚の写真が映し出されました。1枚目は被爆やなぎ、2枚目は給食に入っ
ていた“しあわせにんじん”です。全員がスクリーンに注目です。学校長は、
「スクリーン
はみんなにとってわかりやすく役に立つものであること、文字や手話、めがねや松葉づえ・
車椅子などは必要がある人にとってはとても大切な道具であること」
「お話を聞くときやあ
いさつをするときは、相手の人と目を合わせると、心のキャッチボールができること」な
どをわかりやすく話してくださいました。その間、スクリーンにはいつもどおり文字が映
っていました。
しかし、それでも聞き間違うことはあります。言葉を聴き取るときは、
「耳に入ってきたこ
とば」と「自分が知っていることば」とを照らし合わせ、その中から「耳に入ってきたこと
ば」のより近いものを選択しようとします。
きっと、誰だってそのようにしていると思います。
そして、
「耳に入ってきたことば」が「自分の知っていることば」の中になかったり、今の
話題が何であるかがわからなかったりすると、
「耳に入ってきたことば」が聴き取りにくくな
るのです。
心が通い合う《コミュニケーション》
難聴の子が交流学級で学習をしている様子を見ていると、隣の席の子がさりげなく教科書
のページを指したり、顔を見ながら先生の指示を繰り返したりという場面に出会います。
「わ
かったよ」というようにうなずき、お互いが笑顔で再び学習に向かう姿は心温まるものがあ
ります。
4月のクラス替えの翌日、こんなことを言った女の子がいました。
「先生は手話ができるか
ら、きこえの教室の子とお話ができていいね。」と。そこで、「お顔とお顔を合わせてお話し
たらわかるよ。手話でなくてもお話できるよ。
」と話すとその女の子はパッと笑顔になりまし
た。
数日後、身ぶりを交えながら、一生懸命話したり笑ったりする子どもたちを見かけました。
もちろんあの女の子もいました。
「手話を覚えたい。教えて!」とたくさんの子どもたちが言ってくれ、とても嬉しく思って
います。今年度は、4年生以上のクラブ活動に「手話ソングクラブ」が仲間入りしました。
意思を伝え合う手段として手話は確かに便利です。しかし、顔と顔を合わせて話したり、
同じものを見て一緒に笑い合ったり、文字(筆談)や身ぶりで伝えあったりすることも、心が
通い合う大切なコミュニケーションの方法であると考えています。
《ことばの教室》について
《ことばの教室》には次のような子どもが通ってきます。
◎
発音に課題の見られる子ども
・
・
・
・
、
「かめ」を「ため」のように発音するなど
「おかあさん」を「おかあたん」
◎ 話のリズムに課題の見られる子ども
・
・
・
・
・
・
「おおおおかあさん」と最初の音を繰り返す、
・
「おーおーかあさん」とある音を引き伸ばすなど
◎
言葉の発達に課題の見られる子ども
ことばの数が少ない、文がつながらないなど
◎ その他、ことばに課題の見られる子ども
現在、
「ことばの教室」には、14名の児童が、週に1回∼数回、決められた曜日、時間に
通って学習しています。校内通級以外に、南区にある他の小学校の児童が、放課後、保護者
とともに通級して学習しています。
「ことばときこえ」のことで気になることがありましたら、いつでもご相談ください。
ことばときこえの教室直通 ℡255−1949
【きこえの教室】
【ことばの教室】
※ ことばの教室もきこえの教室も2重窓に
なっており、壁面も音楽室と同じように小
さい穴があいたボードが使われています。
※
観察室は、ことばの教室ときこえの教室
の間にあり、保護者や参観者が子どもの学
習の様子を観ることができるようになって
います。教室側は鏡になっているので、子
どもの集中を妨げることはありません。
難聴児のための音環境の補償(騒音対策)と
して、児童用の椅子や机の脚に使い古しのテニ
スボールを装着するという試みは、九州の方か
ら始まったのだそうです。
今や、難聴児のいる教室だけではなく、学校
全部の教室にテニスボールをつけている学校も
珍しくはなくなりました。
本校では、2年毎にテニスボールを交換できるように、年間約3千個のテニス
ボールを確保して、穴あけの作業を計画的に行っています。
忙しい仕事の合間、業務の今井先生と福本先生によって穴を
開けられたテニスボールに、全職員がカッターナイフで切れ目
を入れます。春休みや夏休みに作業をします。
一度手に入れた静けさはもう手放せません。
できるだけ汚くならないように使用すること、
すなわち“メンテナンス”をしっかりやることで、
寿命は延ばすことができます。
メンテナンスでもっとも大切なのは、“こまめ
にゴミをとる”ことです。
ボールはゴミを吸着しやすいので、ガムテープ
や使い古しの歯ブラシなどでゴミ取りをします。