子供とともに、吃音と向き合う指導 - 静岡県言語・聴覚・発達障害教育

第3回定例研
吃音分科会
子供とともに、吃音と向き合う指導
熱海市立第二小学校
ことばの教室 戸田
1
由美子
はじめに
本校の「ことばの教室」には、今年度21人の通級児童がいる。そのうち、吃音の児童は6人であ
る。
「ことばの教室」の担当になって4年目であるが、担当になった当時、吃音の児童は2人であった。
吃音の指導については研修等で学んではいたものの、実際子どもたちを前にすると、どんな目的でど
んな活動を取り入れどんな支援をしていったらよいのか確信がもてず、手探りの状態だった。子ども
一人ひとりが、気持ちを発散し、せいせいと自分を表現できるようになってほしい、自分に自信をも
ってほしいと願い、スピーチやゲーム、粗大運動、ことば遊び、音読などを行ってきた。子どもたち
は楽しく活動し、吃音があっても自分を素直に出せるようになってきた。しかし、肝心の吃音につい
ては、あまり触れることがなかった。
吃音指導について悩んでいた時、静言研の研修で伊藤伸二先生の本を読んだり講演を拝聴したりす
る機会を得た。学んだことをもとに、子どもたちにクイズ形式で吃音について投げかけてみると、「吃
音の人がこんなにいるとは思わなかった。」
「アナウンサーや俳優にもいるなんてびっくり!」
「ぼくは、
緊張すると出にくいんだよ。」など、思っていた以上に子どもたちからの反応があり、ほっとした様子
が感じられた。このことをきっかけに「吃音と向き合う学習」の大切さを感じ、様々な教材を取り入
れてことばの教室で子どもたちと吃音と向き合うための活動に取り組んでいる。
今回は、2年生になってから通級を開始した吃音の児童への指導から、吃音についての学習を通し
て自分の思いを伝え、吃音と向き合っていくようになった経過を報告する。
2
対象児の概要
(1)対象児
Aさん…
他校通級児
小学校3年生
男子
(2)現在までの経過
〈初回相談〉
平成24年10月末
(7才7ヶ月 小学校2年生)
①主訴
・吃音。緊張すると、特にどもる。「えっ」とすぐにことばが出ない時がある。
・言いたいことを話せないことがある。
②行動観察の様子
・やや緊張しての来室だったが、あいさつはしっかりできた。
・「活発に」ではなかったが、初対面の担当者ともことばのやりとりをすることができた。
少し担当者に遠慮しているようには感じた。
③ことばについて
・ことばのはじめに、連発、難発の吃音症状が出ていた。
・ことばのはじめに、
「んー」
「何だろう」
「何だっけ」ということばを付けることがあった。
・検査中は緊張するのか、足をゆらしたり、母親の顔をのぞき込んだりしていた。
・質問に対して、ちぐはぐな応答があった。
(母親より)
・保育園に入った頃(4才)から吃音が出始めた。
小学校に入学し、吃音が少し軽くなったように感じていたが、担任の先生に「ことばの
教室」を紹介されて来室した。保育園では、吃音について特に何も言われなかった。
・母親は、本児が言いたいことを話せないことがあると気にかけていた。
〈通級開始〉
平成24年12月
3
指導方針
(1)より楽に話す経験を積み重ねる。
・Aさんが安心して話したり行動したりできるような受容的な雰囲気の中で、楽に話せたという
経験を積み重ねる。こうした経験を通して、どもりながらもよりスムーズに話をすることがで
きるようにする。
(2)吃音について正しく知り、自分の吃音を理解する指導を行う。
・吃音についての正しい知識を学ぶ。
・自分の吃音や、自分自身のことについて考える。
→吃音のある自分を理解する。
・同じ吃音をもつ仲間とふれ合う。
(3)聞き手(周囲)の理解を促す働きかけを行う。
・Aさんが興味があること、得意なことを広げたり伸ばしたりする活動を行い、Aさんのよい側
面を周囲に伝えていくことで、自信をもって生活し、周りの人と関わることの楽しさを味わえ
るようにする。
・担任や保護者と情報交換を行い、吃音についての理解を図る。
【教師の役割】
・よい聞き手となる。
・よい相談相手となる。
・在籍校、保護者との連携を図る。
4
指導内容と経過
(1)2年時の様子(H24.12~)
指導内容
12 月
初回
主な活動と子どもの表れ
担当に慣れよう
・自己紹介をしよう。
☆「よろしくね」カード(自己紹介)を書いた。
・顔の絵は、「かいていいのかな。」と確認しながら、髪の毛を
かいて塗った。顔は、のっぺらぼうのまま。
・特に、かしこまると吃音(連発)が見られた。
・ ことばの教室で学び
T「ことばの教室で、どんなことを勉強したい?」
たいこと。
A「自分からお話しできるようになりたい。」
吃音について知ろう
・吃音の絵本
『どもるって
どんなこと』
☆『どもるって、どんなこと』(本)を使って、吃音について
話し合った。
A「ぼくもなる。ぼ…ぼってなる。保育園の頃から。」
「緊張すると言いにくいから、言わないこともある。」
「友達に仲間はずれにされないか心配。」
「友達に『早く言えよ』と言われないようになりたい。」
…今まで吃音について思っていたことを語り始める。
親子でクッキー作り
☆Aさんと母親、担当の3人で、クッキー作りを行った。
○教育相談(母親と面談) ・スカイツリーの形を作るなど、とても器用に作っていた。
・リーフレット
・焼き上がるのを待っている間、好きな遊びをしてよいことを
『吃音相談シリーズ』
伝えると、勝敗のあるゲームを選んだ。
〈母親から〉 …家でも吃音について語り始める。
・今まで言ったことがなかったが、最近「ことばが早く言える
ようになりたい。」と言うようになった。また、友達に「早
く言えよ。」と言われて気にしていたとか、「どもりそうだと
思うと言わないこともある。」とも言っている。母親が「家
では平気じゃん。」と言うと、
「お母さんは分かっているから。」
と言う。
「吃音は悪いことじゃない。」と言うようにしている。
3
学
期
たくさん話そう
○好きな遊び
・黒ひげ危機一髪
・ジェンガ
・すごろく
・だるま落とし
・パンチング
○話す活動
・サイコロスピーチ
・カルタ
・音読
☆まずは、ことばの教室が安心して自分を出せる場、自由で楽
な場になるように好きな遊びを行った。
・勝敗のある遊び、ドキドキする遊びを好んで選んだ。
・遊びを通して口数が増え、自分から話したり、「これやりた
い。」と思いを伝えたりするようになった。吃音は出ていた
が、気にせず話していた。
・パンチングは、思い切り蹴ったり投げたりしていた。
【いやがる活動】→緊張する様子。自信がなさそうである。
音読…出だしは連発、難発。丸読みをしたり一緒に読んだ
りした。カルタを読むことも躊躇した。
絵を描くこと…A「何て描いたらいいか分からない。」
吃音について知ろう
・吃音クイズ
☆吃音についてクイズ形式で学び、理解を深めた。
・自分のことと照らし合わせて、クイズに答えていた。
Q「吃音の人は、日本に1万2千人ぐらいいる。」
A「吃音の人が多いと、何か言われたりおこられるか
もしれないから、こんなにいないと思う。」
担任との情報交換
・学校での様子アンケート
・指導報告書
・連絡帳
☆Aさんのよい表れ
等、担任と情報交
換を密に行うよう
にした。
〈担任より〉
(2)3年時の様子(H25.4~)
4月
1
学
期
たくさん話そう
○「よろしくね」カード
○好きな遊び
・すごろく
・パンチング
・ドッジビー
○話す活動
・スピーチ ・音読
☆「よろしくね」カードを書いて、3年生の自分を紹介した。
・絵も躊躇なく描くようになった。
【気になること】将来の夢
ない
好きな勉強
ない
・会話がさらに活発になった。吃音が出ていても自分から積極
的に話し、おどおどした感じはなくなった。
・音読はどもるが、いやがらずに読むようになった。読み慣れ
たものや暗唱は自信があるようで、あまりどもらなかった。
吃音について知ろう
・吃音クイズ
☆吃音について知り、理解を深める活動を、引き続き行った。
・自分の吃音についても率直に話すことができた。
・自分のよいとことも悪いところも見つめ、自分のことばで言
うことができた。
担任との情報交換
☆新しい担任になったため、改めて吃音について理解を促し、
・学校での様子アンケート
Aさんのよい表れ、気にしていること等、情報交換を行った。
・指導報告書
・「マットの学習でお手本になった」などよい表れを聞き、A
・連絡帳
さんに伝えほめたところ、とてもうれしそうだった。
・在籍校訪問
A「先生がクラスで、『Aさんのことばがつまってもとや
・リーフレット
かく言わないで待っているのはえらい。』と言ってく
『吃音相談シリーズ』
れた。」
2
学
期
ペア
学習
吃音について知ろう
☆吃音の理解を深めるとともに、吃音と向き合う指導に進んだ。
・『吃音ワークブック』 ・「吃音が治るとは、どういうことか。」
A…『いつでもどこでも、どもらない状態』を選ぶ。
T「何で吃音をなくしたいと思うの?」
A「友達に何か言われるといやだから。」
「でも、吃音のことを分かってくれる友達もいる。」
一緒に遊んだり、話し
たりしよう
○自己紹介をしよう
・「よろしくね」カード
・「質問じゃんけん」
○好きな遊び
・ドッジビー
・ブロックス
・マジックナイン
・すごろく
(サイコロジーゲーム)
○話す活動
・サイコロスピーチ
☆同じ吃音をもつ仲間とふれ合う活動を取り入れた。
(月1回)
Bさん… 自校通級児 小学校3年生 男子
・初対面のBさんに、しっかりと自己紹介をすることができた。
・「質問じゃんけん」でも、お互いに質問することができた。
話しかけることも自然にでき、将来の夢も話した。
・「ドッジビー」と「すごろく」はAさんがすぐに提案した。
ドッジビーは、Aさんの父親も入って活動したこともあり、
積極的だった。声を出して笑うなど楽しく遊ぶ姿が見られた。
・2回目、3回目と活動を重ねるごとに仲良くなり、担当が席
を外しても2人で話すようになった。あいさつも「ぼくから
する。」と積極的だった。
☆吃音についても一緒に考える時間を設けた。
吃音について知ろう
・「吃音が治るとは、どういうことか。」を話題にして、Aさん
・『吃音ワークブック』
にBさんの考えを聞かせた。
・「すごく!すごろく」
B…『どもるけれど言いたいことを言い、したいことをす
る。吃音に悩まない状態』を選ぶ。
T「何でそう思うの?」
B「話したいことを話しているし、したいことをしてい
る。(吃音を)気にしていないから。」
・Bさんの考えを真剣に聞いていた。
・Aさんに、Bさんが学級委員として活躍していることを伝え
ると、「そうなんだ。」と驚いた様子だった。Bさんにも、A
さんが持久走大会でクラス1位など頑張っていることを伝え
た。Bさんに「すごい!」と言われ、うれしそうだった。
11 月
吃音について知ろう
「言語関係図を作ろう」
☆吃音についての理解が進むにつれ、さらに自分の吃音と向き
合える学習を取り入れたいと考え、「言語関係図」に取り組
ん だ。
*Aさんの「言語関係図」の変化
Z
X
Y
〈通級開始時(2年時)の状態〉…5×5×5
X:話しことばの特徴
Y:聞き手の反応
Z:話し手の反応
X軸:吃音の程度
Y軸:周りの理解・反応
Z軸:吃音の悩み・不安
〈言語関係図〉
(ウェンデル・ジョンソン)
〈現在(3年時)の状態〉…2×2×3
(小さくなった理由)
〈Aさんが書いた文〉
・前より気楽に話せるようになった。
・クラスに言いたいことを言える雰囲気がある。
・あまり悩まなくなった。理由はよく分からな
い。
・まだ、友達に何か言われるかもという不安は
ある。
12 月
親子でクッキー作り
☆昨年度に続き、2度目の親子でクッキー作りを行い、母親と
○教育相談(母親と面談) 面談をした。
・保護者アンケート
〈母親から〉
・ことばの教室で、吃音の正しい理解ができたことがよかった。
そのため、本人の考え方が変わった。気持ちが楽になった。
・同じ吃音の友だちとペアで一緒に指導を受けられたことがよ
かった。自分だけではないと思えたようだった。
・今は、Aのことを分かってくれる友達がいるから安心してい
るが、気にしがちな所があり、心の面が心配。
5
まとめと今後の課題
本児の指導を始めて、1年がたった。本児と一緒に吃音について考え、吃音と向き合う指導を
続けてきた結果、以下のような表れが見られた。
・自由会話やゲーム等の遊びを通してリラックスし、吃音を気にしないで楽しく話すようになった。
苦手に感じていた発表や音読も挑戦するようになった。
・吃音について正しく理解することで、今までもっていた吃音に対する不安な気持ちが少し軽くな
り、「気にしなくていいんだ。」と思えるようになったようである。
・吃音の友達とのふれ合いによって、「自分だけではない。」と安心したようだった。また、友達の
吃音についての考えを知り、自分の考えを振り返ることができた。
・「言語関係図」の学習では、自分の吃音について考えることができた。吃音の症状があっても「(担
任の)先生が知っているからいい。言いたいことが言える。」「友達が言わなければ大丈夫。」と
話すようになった。
・担任の先生と連絡を密に取ることにより、吃音や指導内容についての理解を図ることができた。
学校とことばの教室の双方から適切な支援を行うことができ、本児の安心感や自信につながった。
今後に向けては、
・さらに自分の吃音と向き合い、吃音を受け入れながら自己肯定感を高めていくためにどのような
指導を行っていったらよいのか
・保護者への支援はどのようにしていったらよいのか
・友達との関係の中で不安感をもっているので、在籍学級にどのような働きかけができるのか
など、課題は多い。
ことばの教室で、吃音の指導をどのように進めていったらよいのか、まだまだ悩みはつきない
が、まずは子どもや保護者の信頼を得て、ことばの教室が安心できる場、吃音を気にせず自分を出
せる場であるよう努めながら、これからも子どもとともに吃音について向き合う指導を継続してい
きたいと考えている。
〈主な参考文献〉
・伊藤伸二 著(2008) 『どもる君へ いま伝えたいこと』 解放出版社
・伊藤伸二・吃音を生きる子どもに同行する教師の会 編著(2010)
『吃音ワークブック
どもる子どもの生きぬく力が育つ』
解放出版社
・ことばの臨床教育研究会 編 『吃音相談シリーズ リーフレット(学童編)(幼児編)』
・ことばの臨床教育研究会 編
NPO法人
全国言友会連絡協議会
絵本『どもるってどんなこと』
NPO法人
全国言友会連絡協議会
1
質疑応答
Q 担任の先生に指導の様子をどうやって連絡していますか。
・ 担任の先生とは、月 1 回連絡を取り合っている。熱海市の学校は7校ということもあり、
すぐに伝えた方がいいと思うことは電話で連絡を取っている。吃音についてのリーフレット
を送ることもある。校長会で、校長が担任との連携をお願いしてくれたことも大きい。
Q
・
指導の中で話す時間を決めていますか。
話す時間は特に決めていない。遊んでから話すというかんじ。
Q
就学指導の時に客観的な資料を出した方がいいと言われたことがあるが、吃音の検査はど
うやって行っていますか。
・ 構音検査の絵カードや絵の話の時に吃音が出るかどうかで調べている程度で、吃音の頻度
のチェックはしていない。
2
研究協議
☆司会者
○参加者
吃音について考えさせるタイミング
○ とても参考になった。担当している2年生で吃音の子は「吃音を気にしていない。」と言
うので、取り立てて指導はしていない。でも発表を聞いて吃音について少しずつ話していっ
た方がいいのかと思った。
○ 戸田先生とは近くの学校ということもあり、以前にも話を聞き、刺激を受けていた。今日
の発表がパワーポイントでないことを気にされていたが、とても参考になり、大変貴重な資
料だと思った。自分が担当している 1 年生は、幼い子で、話しはじめで同じ音を連発してい
る。吃音について聞いても気にしていないようで、「困っていることはない。」と言われた。
しかし、吃音について、考えさせた方がいいかなと思った。一方、お母さんは、不安を抱え
心配し、他の機関に相談しているらしい。母親指導というか、深い指導ができないまま来て
いるのでがんばらなくてはと思った。
☆
○
吃音理解について、幼児部担当の先生、どうですか。
幼児の子には、とにかく「どんどん話して。」と言っている。小学校に入って吃音につい
て気にし始めたら、やってもいいのではないかと思うが。この頃、吃音以外のその子の背景
にあるもの、例えば家庭環境や気質的なものを踏まえる必要があるのかなと思う。
○ 吃音に向き合わせるタイミングは、3年生だと自他がわかってくるのでちょうどいいのか
もしれない。1年生だと反応がなく大変である。しかし、時々は吃音について聞いていくこ
とも必要なのではないか。常にやっていくことで2年3年とつながっていく。根気かなと思
う。
○
○
母親に対して
今年は、心理学の勉強をしている。幼児のお子さん2人を担当している。子どもだけでな
く、親御さんとの話は難しい。吃音についての情報を伝えることはできるが。あるお母さん
は、たくさんの家族から見られ、周りからの圧力を感じている。また、あるお母さんは、逆
に1人で育てて不安を抱えている。それらをどうやって支えていくか。お母さん自身の不安
をどうしたら解消したらいいのかと思う。お母さんと話す別な時間を取るようにしている。
吃音というより、全く違うこと、例えば「お母さんお好きなこと話して。」などと投げかけ、
お母さんの話をとにかく聞くようにしている。それがお母さん自身を助けるかもしれないと
考える。結果が出ているわけではないが、お母さんもリラックスして、子に寄り添うように
なったと感じている。
吃音の子のお母さんが初回相談の時に「吃音は治りますか。」と聞いたので「治りますと
ははっきり言えない。」と言うと「治らないんだったら通いません。治るんだったら仕事を
休んでも通わせますが。」と言われた。同じようなことを言っても通わせてくる親御さんも
いますが・・・。自分の子どもも、どもっていたが、その経験から言うと、先生という立場
にある人に、吃音についてあまり言ってほしくないと思っている。近所のおばさんのような
雰囲気の先生だったが、我が子が「おかあさん」「おはよう」「ありがとう」などア行音が
うまく言えない子で、言ってほしいことばを言ってもらえなくていやだったという話を聞い
てもらえて、母親としてうれしかった。また、「3年保育がいいよ。吃音でどもったりしゃ
べれなかったりと同じような子がいるかもしれないからね。」とアドバイスされたこともう
れしかった。
○
私のところでも「治らないなら、(ことばの教室に)来ない。」という方がいた。学期に
1回は指導とは別の時間をつくって保護者と話すようにしている。吃音の子は敏感で、その
ことを気にしているので気を遣っている。60分から90分くらい話すこともある。お母さ
んの話を聞く。吃音の核心に触れるのではなく、環境調節というかちょっと環境を工夫した
ら変えることができそうなことを見つけて投げかける。何もしないよりはいいかもよという
ことばかけをする。以前お母さん方と交換ノートをやっていたが、最近の方は好まない。そ
れよりも直接話をしたり、メールをしたりする方がいいみたいだ。
グループ指導
○ 集団というかグループで指導すると、待っているお母さん同士が話をする。世間話や情報
交換ができ、子どもだけでなくお母さんのメリットもある。自分のように担当が男だと世間
話もしにくいところもある。
○ うちは、ことばの教室に幼児から通っているお子さんが多いので、お母さんも吃音につい
てもよく分かっている。先輩のお母さんのことばが参考になる。グループは3人か4人。1
対1でやっていると涙を流したり困ったことがないと言っていたりする子が、グループでは
たくさん話したり、困ったことを言ったりしている。個別にやることもあるが、グループで
やることもあり、週ごとにかえている。(余裕があってうらやましいという声も。)
○
○
吃音は生き方かなと思う。どう乗り越えていくか。症状を治すことはできない。子を支え
る。保護者を支える。先生が言いすぎるとつらくなる。「お母さん、精一杯やってきたんだ
ね。」と伝えたい。お母さんの家庭の中での大変さをわかってあげることが、保護者の支援
につながる。そうすれば、お母さんは子どもが困ったときに助けることができると思う。
幼児年長児5人を3人の先生で指導している。毎年、年明けから学校ごっこを行い、好評
だった。しかし、今年「もっと心を鍛える方法でやってください。」と言うお母さんがいた。
工作をやれば「はさみで紙を上手に切れないじゃない。」サーキットをやれば「まっすぐ走
れないじゃない。」などと、できるかできないかで子どもに対応するお母さんも存在するよ
うになったのを感じる。
○ まず、お母さんの話を聞いてあげる。一生懸命な気持ちを受け止めることが大事だと思う。
吃音の指導をこのようにやっていくという話をする。お母さんに子どもたちの様子をしっか
り見てもらい、いい表れがあったときほめてもらう。そしてお母さんに気づいてもらう方向
に持っていきたい。
○ サーキットを見て批判するお母さんに一緒に参加してもらい、子どもと一緒に楽しんでも
らうといいのではないか。
☆ 今日は、多くの方から貴重な意見をたくさん出していただきました。ありがとうございま
した。