29P-0341 LC/MS/MS を用いた OATP1B3 の絶対定量と過剰発現細胞のプロテオーム解析 三枝 大輔 1 ,菱沼 隆則 1 , ◯金光 祥臣 1 ,阿部 拓哉 1 ,中曽根 正皓 1 , 1 1 東北大院薬) 鈴木 直人 1 ,富岡 佳久( 【目的】Organic anion transporter polypeptide 1B3(OATP1B3)は通常ヒト肝細胞のシ ヌソイド膜に特異的に発現し、胆汁酸などの内因性物質や薬物などの外因性物質 の取り込み輸送に関与しているトランスポーターの一種である。また、大腸がん、 乳がんなどの腫瘍組織において OATP1B3 が過剰発現し、細胞増殖やアポトーシス 抑制などの細胞生存制御過程に影響を及ぼす可能性が示唆されているが、その詳 細な生理的意義は不明瞭な点が多い。そこで本研究では、LC/MS/MS を用いた OATP1B3 の絶対定量系を確立し、さらにプロテオーム比較解析を行うことで OATP1B3 の生理機能を解明することを目的とした。 【方法】OATP1B3 を過剰発現させた HEK293 細胞を用い、トリプシン消化に対し て特異的に生じるペプチドを選択後、その安定同位体標識ペプチドを作製し TSQ Vantage による絶対定量法を確立した。また、LTQ Orbitrap velos から得られた OATP1B3 過剰発現細胞と mock 細胞のプロテオーム測定結果を、SIEVE 及び SIMCA+P による多変量解析法により比較した。 【結果・考察】LC/MS/MS を用いた OATP1B3 の定量値及び基質輸送能測定結果か ら、単分子あたりの基質輸送能を算出することが可能となった。また、Mascot 検 索を用いたプロテオーム解析によって同定された OATP1B3 過剰発現細胞と mock 細胞の総計タンパク質数は 5616 分子(Gene Ontology 検索結果、細胞内タンパク質 及び膜タンパク質はそれぞれ 3053 及び 2139 分子)であり、これを対象としたプロ テオーム比較解析結果から、OATP1B3 過剰発現細胞において変動が示唆されたア ポトーシス関連タンパク質を抽出した。今後、これらのタンパク質の変動と基質 輸送能の相関性を明らかとすることで、より詳細な生理機能の解明が期待される。
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