津軽海峡におけるカマイルカの推定来遊個体数と餌生物豊度の関係

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松田純佳 I)松石
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高木優樹 I) 水野裕菜
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森光雄大
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要旨
津軽海峡で最も多く発見される鯨類であるカマイルカ L
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sは、この海域で
摂餌を行っていることが示唆されている。カマイルカは一般にカタクチイワシを主な餌生物とする
ほか、スケトウダラ、イカ類、サケ科魚類なども捕食することが知られている。また津軽海峡での
カマイルカとの遭遇率は年により大きく変動している。本研究ではまず、 2
004∼ 2009年の津軽
海峡に来遊するカマイルカの個体数を年別に推定した。次にカマイルカの来遊個体数の変動要因が
餌生物にあると考え、主要な餌生物の豊度とカマイルカの来遊個体数との関係を検討した。その結
果、カマイルカの推定来遊個体数は年により 2
000頭∼ 8000頭と大きく変動していることが明ら
かになった。また餌生物の内、カタクチイワシ太平洋系群の年級群豊度と、カマイルカの推定来遊
.
7
5
, P=0.0249)
、カタクチイワシ太平洋系群の年級群
個体数の聞に有意な正の相関がみられド=0
豊度が高いときに、カマイルカの来遊個体数も多くなる傾向が見られた。日本海側に分布するカタ
クチイワシ対馬暖流系群の年級群豊度や津軽海峡内のカタクチイワシの漁獲量についても検討した
が、有意な相関は見られなかった。他の餌生物であるスルメイカ、サクラマスの各漁獲量、スケト
ウダラ太平洋系群年級群豊度や海峡内の表面水温との関係を検討したが、同じく有意な相関は認め
られなかった。調べた要因の中では、津軽海峡へのカマイルカの来遊個体数は、カタクチイワシ太
平洋系群の豊度に最も高い相関を示した。少なくとも津軽海峡へのカマイルカの来遊個体数が太平
洋側の餌環境要因に応答していることが示された。
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目的
津軽海峡は北日本において日本海と太平洋を結ぶ唯一の海
峡であり、日本海∼太平洋聞を回避する鯨類の回避時期や個
遊し、 4月∼ 6月にかけてその来遊数が集中していることが
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明らかになっている。(柴田ら 2
2
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)(
図2
。
)
007)。北海
体数を観測するには重要な地点である(柴田ら 2
日本周辺に生息するカマイルカはいくつかの系群に分かれ
道大学鯨類研究会では、津軽海峡フェリー株式会社の協力を
ており、津軽海峡に来遊するカマイルカは、太平洋系群か日
得て、津軽海峡において 2
003年 5月から継続して鯨類目視
9
9
8)。また
本海系群のいずれかであると考えられる(天野 1
調査を行い、発見記録を集めている。 2
003年 5月∼ 2
0
1
1
その来遊個体数は日本海系群、太平洋系群の各個体数からみ
年1
2月までの調査結果では、カマイルカ Lagenorhynchus
れば小さく、系群の一部の個体のみが津軽海峡に来遊してい
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。
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ると考えられる(松田ら 2
8
7
.
7
%を占めており、出現する鯨類の大半がカマイルカで
津軽海峡でのカマイルカの遭遇率は年ごとに大きく変動し
)。カマイルカは毎年 3月∼ 7月に津軽海峡に来
あった(図 1
ているが、一般的に長命である鯨類が年ごとにその資源量を
1
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41-8611函館市港町 3
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岩井 卓也 ・高木俊樹 ・水野裕菜 ・森光雄大 ・省J
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(由佳 ・松田純{圭 ・松石|径
目視調査
目視調査は柴田ら(2007)に準じ、 2003年 5月から通年、
原則として週 l回実施した。目視調査では津軽海峡フェリ ー
株式会社が運行している函館∼青森間航路において、往路は
函館を午前中に出発する使、復路は青森を午後に出発する使
に乗船した。目視は調査員 2∼ 4名により、往路復路ともに
離岸約 20分後から着岸約 40分前までの 2
1
時間 30分程度、
船橋内から肉眼及び双眼鏡を用いて行った。調査 日時、航路
図1 :
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I
!軽海峡鯨頒目視調査における 2003年 5月∼ 201l年 l月ま
での鯨紐別発見群数割合
及びその時の海況を目視努力量記録に記録した。目視努力量
記録は乗組員が記録したフェリ ーの航海日誌と照合 し、正確
調査1往復あたり発見群数
圃聞園
材料・方法
20
.
8
5
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n)以下になった場
を期した。また、視程が l海里(約 l
合もしくは風力階級が 4以上にな った場合は、目視調査を中
1
5
寺刻、緯度、経度、中断理由を目視努力量記録に記録した。
断し、 H
鯨類の発見があった場合は、 t
:
!
r
:
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.ごとに発見距離、角度、
10
発見個休数を記録した。発見記録に記載する発見時のフェ
リーの位置(緯度、経度)、進行方向、船速は船内に搭載され
5
0・
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-•
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月1
1月1
2
F
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図 2 i:I!軽海峡財!矧'~'視調査における 20 1 l年の月別ー航路あたりの
カマイルカの発見群数
た CPS によって確認した。 種判別には独自に作成した種!j~lj別
マニュアルを用いるとともに、可能な限りビデオカメラ、デ
ジタルカメラで撮影して誤判別の回避に努めた。
個体数推定
増減させているとは考えにくい。また系群の一部のみが来遊
カマイルカの来遊個休数推定には 2004年∼ 2009年の各
していることからも、津軽海峡に来遊する比率が年ごとに変
3月∼ 7月の目視調査記録を用いた。カマイルカの推定来遊
動していると考えられる。さらに、津軽海峡に来遊するカマ
数はライントランセクト法(Buc
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.
l1
993)に基づき算
イルカは、海峡内に摂餌目的で滞留すると考えられている(小
出した。算出に際しては、カマイルカの分布が津軽海峡内に
野ら 2010)ことから、飼生物がカマイルカの来遊個体数を変
おいて一様であると仮定 した。また有効探索1
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iはソフ トウェ
動させる要因であろうと考えた。
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回帰分析
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報告もある(田中 1
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997a
)
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餌生物について、カタクチイワシの豊度の指標としては、
クチイワシの漁場形成時期がカマイルカの来遊時期に影響を
カタクチイワシ太平洋系群の年級群豊度(久保田ら 20
1
1)
与えている ことが示唆されている(北村ら 2008)が、両者の
(
図3
)と対馬暖疏系群の年級群豊度(木下 ・田中 201
1)を用
豊度に関する定量的な検討はなされていなかった。
いた。年級群豊度の指標として、コホー 卜解析で推定された
本研究では,まずカマイルカの津軽海峡への年別来遊個体
O歳魚の力
[I
入量を用いた。また、津軽海峡内のカタクチイワ
数の推定を行った。次に来遊個体数の年変動の要因を探る
シの豊度指数として北斗市のカタクチイワシ漁獲量(農林水
ために、カマイルカの推定来遊個体数と津軽海峡内でカマイ
産省 2004・2009)を用いた。スルメイ力、サクラマスについ
ルカの来遊時期に漁獲される餌生物であるカタクチイワシ
ては津軽海峡に面する 三厩 ・佐弁 ・平館地区での漁獲量の合
やスルメイカ T
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s、スケトウダラ、サクラマス
計(青森県水産総合研究センタ− 20042009)を、スケ トウ
Onc
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uとの関係を検討 した。さら に、海洋生物
ダラについては年級群豊度(森ら 20
1
1)を用いて分析をおこ
の分布への影響が強い表面水温についてもカマイ ルカの来
なった。水温については津軽海峡の平均海表面祖度(気象庁
遊個体数との関係を検討した。
20042009)を用いた。求められたカマイルカの推定来遊個
津軽海峡におけるカマイルカの推定来遊個体数と餌生物豊度の関係
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450
カタクチイワシ年級群豊度(千t
)
図 4 カタクチイワシ太平洋系群の年級群豊度とカマイルカ推定来遊
個体数の関係 2004∼ 2009
2004
年 2005
年 2006
年 2007
年 2008
年 2009
年
図 3 カタクチイワシ年級群豊度の年推移 2004∼ 2009
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個体数
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平均群れサイズ
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発見群数
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表 1 津軽海峡における年別カマイルカ来遊個体数推定結果
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0
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津軽海峡内カタクチ
イワシ漁獲量(t
)
体数と朗生物や水温との関係について単回帰分析を行った。
3 4
5
6
7
図 5 カタクチイワシ以外の餌生物や水温
と津軽海峡に来遊するカマイルカの
関係
カタクチイワシ対馬暖流系群
)
年級群豊度(千t
タクチイワシ対馬暖流系群の年級群豊度、スケトウダラ太平
洋系群の年級群豊度、津軽海峡内のスルメイカ、サクラマス、
結果
個体数推定の結果、カマイルカの来遊個体数は 1
,
7
11頭∼
カタクチイワシの漁獲量、海峡内の表面水温を用いた単回帰
分析等では,いずれも有意な相聞は見られなかった(図的。
r値は 0.20∼ 0.50の範囲であり、 p値は 0.12∼
8
,
1
5
3頭となった(表 1
)。調査した期間の中で、最も来遊個
それらの
体数が多かった年は 2
0
0
5年、最も少なかった年は 2
0
0
7年
0
.
4
8の範囲であった。
となり、一年ごとに来遊個体数は変動していることが明らか
となった。
津軽海峡のカマイルカ推定来遊個体数とカタクチイワシ太
考察
北海道南部に来遊するカマイルカは、津軽海峡において 3
平洋系群の年級群豊度の聞には有意な正の相闘がみられた
月∼ 4月にその年初めての来遊が確認され(北村ら 2
0
0
8
、
)
(
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7
5
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.
0
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)(
図4
。
)
室蘭沖では 5月∼ 6月にその年初めて来遊が確認される(田
また、カマイルカ推定来遊個体数と日本海側に分布するカ
9
9
8
)。との来遊時期の差は、 5月∼ 6月中旬にかけて、
中1
園田
尾崎司宙・黒田実加・富安信・伊藤啓仁・岩井卓也・高木俊樹・水野裕菜・森光雄大・岩原由佳・総回純佳・松石隆
カマイルカが津軽海峡内に摂餌を目的に滞留するためと考え
木下誠二・問中寛繁(2011)平成 22年度カタクチイワシ対
られている(小野ら 2010)。同時に、津軽海峡では 4月∼ 6
馬暖流系群の資源評価.平成 22年度我が国周辺水域の漁
月にかけて、津軽暖流の流入量が増加し、水温の上昇がみら
業資源評価,水産庁増殖推進部,独立行政法人水産総合研
れる(川崎 1987,久保川 1989)。これらの背景に加えて、津
:7
9
6
8
1
3
.
究センター,魚種別系群別資源評価, 2
軽海峡へのカマイルカの来遊時期は、海峡内の餌生物資源量
北村志乃・栗原縁・柴田泰宙・松石隆(2008)津軽海峡内に
。
)
と水温の影響を受けていると考えられている(北村ら 2008
おけるカマイルカの出現時期の変化.日本セトロジー研究,
しかし、来遊個体数の変動については、今回の結果から、太平
(
1
8
)
:1
3
1
6
.
洋の餌生物環境といった津軽海峡外の要因が大きく関与して
いる可能性が示された。
久保川厚 (1989)流出水の挙動に関する理論とその津軽暖流
3
.
への適用の試み,海と空, 65:334
カマイルカは太平洋側と日本海側では別の系群であるとさ
久保田洋・阪地英男・高須賀明典・川端淳・赤嶺達郎・清水
れ、津軽海峡に来遊する個体はどちらの海域からも来遊して
昭男(2011)平成 22年度カタクチイワシ太平洋系群の資
いる可能性もあると考えられていた(天野 1998)。しかし今
源評価.平成 22年度我が国周辺水域の漁業資源評価,水
回の結果では、津軽海峡へのカマイルカの推定来遊個体数は、
産庁増殖推進部,独立行政法人水産総合研究センター,魚
カタクチイワシ太平洋系群の年級群豊度とのみ相聞があり、
:7
2
5
7
5
2
.
種別系群別資源評価, 2
対馬暖流系群とは有意な相聞が見られなかったことから、今
回の結果は、太平洋からの来遊を示唆する結果となった。
しかし、来遊量決定のメカニズム等は不明であり、本結果
松田純住・岩原由佳・小林沙羅・金子信人・鈴木励・松石隆
(
2
0
1
1)津軽海峡におけるカマイルカの来遊個体数推定.
1
)
:1
5
1
8
.
日本セトロジー研究,( 2
によって来遊経路を断定するには至らない。今後、函館∼青
森賢・船本鉄一郎・山下タ帆・千村自之( 2011)平成 22年
森間航路以外での目視情報の解析、他の海域での来遊時期の
度スケトウダラ太平洋系群の資源評価.平成 22年度我が
解明、遺伝学的解析やバイオテレメトリーなどの手法なども
国周辺水域の漁業資源評価,水産庁増殖推進部,独立行政
加えて、来遊経路が解明されることが期待される。
法人水産総合研究センター,魚種別系群別資源評価, 1:
4
0
8
4
5
7
.
謝辞
目視調査及び解析に携わった北海道大学鯨類研究会会員の
各氏、調査実施にご協力をいただいた津軽海峡フェリー株式
会社に感謝する。また、本研究の一部は 2003年度∼ 2010
年度北海道大学元気プロジ、ェクトの助成によって行われた。
農林水産省( 2004-2009)海面漁業生産統計調査市町村別
データ.
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小野雄大・佐橋玄記・西沢文吾・山田若奈・柴田泰宙・松石
隆( 2010)津軽海峡におけるカマイルカの群れサイズの時
3
1
5
.
間的変動.日本セトロジー研究,(20):1
引用文献
天野雅男 (1998)黒潮・親潮移行域における小型ハクジラ類
3
)
:1
8
7・1
9
1
.
の分布と回避.月刊海洋/号外,( 1
青森県水産総合研究センター(2005-2010)ウオダス漁海況
速報.(1405・1
4
3
4
,14701
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5
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1
2
1
6
3
7
-
田莱利・鵜山貴史・飯塚慧・松石隆(2007)津軽海峡内に
おけるカマイルカの季節的・地理的分布について.日本セ
7
)
:
1
1
1
4
.
トロジー研究,( 1
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田中美穂 (1998)室蘭沖に来遊するカマイルカ群の生態学的
研究.東京大学修士論文.東京大学.東京.
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川崎康寛( 1987)津軽暖水の変動機構.杉本隆成・石野誠・
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.恒星社
杉浦健三・中田英昭編,水産海洋環境論, 4
厚生闇,東京.
圃.園
柴田泰宙・片平浩孝・篠原沙和子・鈴木初美・岡田佑太・上