茶(PDFファイル313KB)

肥料費節減のために
~施肥に関する基本的知識
1
はじめに
世界的な資源の需要拡大に伴い、肥料価格も大きく上昇しています。茶業情勢の厳しい
中、資材コストの上昇は経営をさらに圧迫しています。効率的な施肥技術を心がけ限りあ
る資源の有効活用を行ってください。
2
施肥体系の考え方
チャの時期別養分吸収量は下記の図のようになっています。
チャの時期別養分吸収量(高橋・石間、1938より作図)
60
成
分
吸
収
割
合
窒素
リン酸
カリ
50
40
30
(
20
)
% 10
0
12~3月
7~8月
10~11月
リン酸吸収量をみると4~6月と9月に吸収量が多くなるため、春と秋に年間リン酸量
の半分ずつ施用します。窒素およびカリ吸収量は4~11月の生育の盛んな時期に多く、
特にカリは9月に多くなる傾向があります。そのため春~秋の茶樹の生育時期に合わせ
て分肥します。
これらの特性を勘案して年間の施肥配分は下表のように行います。
表1
施肥基準と時期別配分
春肥
3月上旬
芽だし肥
4月上旬
夏肥1
夏肥2
一番茶摘採後 二番茶摘採後
せん茶
窒素
リン酸
カリ
15
8
6
5
0
2
10
0
5
かぶせ茶
窒素
リン酸
カリ
16
9
6
7
0
3
13
0
6
秋肥
9月上旬
合計
10
0
5
15
8
6
55
16
24
13
0
6
16
9
6
65
18
27
【留意点】
・施肥成分の吸収率を向上させるため、施用後は浅耕しましょう。
・降雨前の施用は施肥効率が高まります。
3
時期別施肥と土壌管理
(1)春肥
気温が高くならないうちに施用しても吸収量があまり多くないと考えられますので、極
端に早い施用は避けましょう。この時期は地温が低く雨量が少ないため分解が遅れること
が多く、速効性の化成肥料を組み合わせて施用すると良いでしょう。また、リン酸の約半
分を施用するようにしましょう。
(2)追肥
一・二番茶の収量・品質や三番茶の生育に影響することから一・二番茶摘採後速やかに窒
素主体の速効性肥料を施用します。この時期は一時に多量の降雨があり、地表から流亡す
ることもあるので施用後は土と混ぜるようにしましょう。
(3)秋肥
摘採や整枝によって消耗した樹勢を回復させるため有機質主体の肥料を施用します。
9月にリン酸の吸収量が多くなるため、秋肥として年間リン酸施肥量の半分を施用します。
(4)土壌改良
1)深耕
深耕は茶園管理作業によって踏み固められた土壌を膨軟にしたり(特に乗用管理機導入
茶園)、土壌改良剤や有機物等をすき込むことによって、酸性矯正と土壌の肥沃化を図る
ことが目的です。
リン酸はうね間表層に集積している反面、下層土では不足している茶園も多く見受けら
れます。そのため深耕により表層部のリン酸を下層部へ移動させることにより不足を補い、
吸収を向上させることができます。
一般的には8月中旬~9月上旬頃が適当な時期であり真夏の干ばつ時は避けるようにし
ましょう。この時期の深耕は10~11月の根の生育が盛んな時期の新根の発生がしやす
くなるといわれています。
【留意点】
・過度の断根には注意(特に根の浅い茶園)します。
・中切り更新茶園や干ばつの激しい時期などはさけます。
・長年深耕していなかった園は一度に実施せず、1うねおきに2年かけて深耕するなど、
茶樹の負担を考慮することが望ましいです。
2)土壌pH の適正管理
チャは他の作物にくらべ、弱酸性土壌(pH4~5)を好みますが、極端な酸性土壌
(pH4未満)は肥料成分の利用度の低下、細根量の減少などの悪影響が出ます。その対策
として、苦土石灰など土壌改良剤を深耕前の7~8月に施用します。
【土壌改良剤の施用についての留意点】
・事前に土壌診断をしましょう。
・施用後は十分混和しましょう。
・次の施肥まで2~3週間間隔をあけましょう。
・投入量が多い場合は夏期の深耕前と、春肥の施肥前の2回に分けましょう。
・石灰、苦土、カリの各含有量のバランスに注意しましょう。
4
堆肥の施用
高騰する肥料の代替として最近堆肥が見直されています。堆肥の施用効果として、①肥
料的な効果(緩効的な養分供給のはたらきや微量要素の供給)②土壌の化学性改良効果(腐
植含量の増加により、CECを高めたり、土壌pH の急激な変化を抑える)③土壌の物理性
改良効果(通気性、透水性、保水性の改善など)があげられます。
堆肥は一般的な肥料に比べ施用量が多いため、堆肥散布機の導入により省力化が図られ
ています。ただ、乗用堆肥散布機等は価格も高いことから地域での共同利用についても検
討しましょう。
各種有機物の特性(西尾ら 1988)
有機物の種類
堆肥
厩肥
木質混合堆肥
バーク堆肥
籾殻堆肥
施肥効果
施肥上の注意
肥料的 化学性改良物理性改良
稲わら、麦わらおよび野菜くずなど 中
少
中
もっとも安心して使用できる
(牛糞尿)牛糞尿と敷料
中
中
中
肥料効果を考えて施用量を決定する
(豚糞尿)豚糞尿と敷料
大
大
少
(鶏糞)鶏糞とわらなど
大
大
少
(牛糞尿)牛糞尿とおがくず
中
中
大
未熟木質があると害虫が発生しやすい
(豚糞尿)豚糞尿とおがくず
中
中
大
(鶏糞)鶏糞とおがくず
中
中
大
少
大
同上
バークやおがくずを主体としたもの 少
籾殻を主体としたもの
少
少
大
物理性の改良効果を中心に考える
原 材 料
【留意点】
・完熟堆肥を施用しましょう。
・使用する堆肥の特性、効果、土壌条件などを十分把握しましょう。
・有効成分量を考慮し、施用量に応じて化学肥料を減肥しましょう。
・土壌表面に置くだけでなく、土と良く混ぜましょう。
有機物の成分量と化学肥料代替率及び有効成分(現場での土づくり・施肥(1996)よ
有機物の種類
堆肥
(牛糞尿)
厩肥
(豚糞尿)
(鶏糞)
(牛糞尿)
木質混合堆肥 (豚糞尿)
(鶏糞)
バーク堆肥
籾殻堆肥
水分(%)
75
66
53
39
65
56
52
61
55
成分量現物(%)
窒素 リン酸 カリ
0.41
0.19
0.44
0.71
0.70
0.74
1.34
2.03
1.05
1.76
3.13
1.63
0.58
0.56
0.60
0.93
1.48
0.81
0.93
1.96
1.03
0.47
0.33
0.28
0.50
0.56
0.47
C/N比
19
17
13
13
25
19
20
36
44
肥料代替率(%)
窒素 リン酸 カリ
30
50
90
30
60
90
70
70
90
70
70
90
30
50
90
30
60
90
30
60
90
20
60
90
20
50
90
有効成分量1)(㎏/㌧)
窒素 リン酸 カリ
1.2
1.0
4.0
2.1
4.2
6.7
9.4
14.2
9.5
12.3
21.9
14.7
1.7
2.8
5.4
2.8
8.9
7.3
2.8
11.8
9.3
0.9
2.0
2.5
1.0
2.8
4.2
1)有効成分は、施用後1年以内に有効化する成分量
乗用型堆肥散布機
自走式堆肥散布機
乗用堆肥散布機、自走式堆肥散布機の比較
散布機名
能率
容積
機械装備
乗用堆肥散布機
70a/日・2 人
1㎥
乗用管理機本体 400 万円、
堆肥散布装置 100 万円
自走式堆肥散布機
30~50a/日・2 人
0.28 ㎥
本体 60 万円
能率については導入事例の聞き取り数値(圃場条件等により異なります)