緩衝液 - 札幌医科大学

緩衝作用
復習:緩衝作用とは
血液のpH(動脈血)
pH=7.4±0.05
酸性に傾いた状態…アシドーシス
塩基性に傾いた状態…アルカローシス
pH が 7.0 以下になると昏睡に陥り、7.7 以上になると痙攣を起こし、いずれも
心臓が停止してしまう。
何故人体に緩衝能が必要か
・全身の細胞組織ではつねに代謝が行われ、その酸化過程の終末産物と
してCO2が産生される。このCO2は血液中での反応によって弱酸として作
用する。
・筋肉運動を行うと、血液中にCO2以外の有機酸・乳酸・ピルビン酸な
どの固定酸が増量し血液を酸性にする。
生体ではつねに酸性に傾く傾向がある
細胞が正常な機能を営むためには体液のpHが、ほぼ一定の値に
保たれることが必要
生成された酸を中和したり、過剰な酸を体外に排出して体液の
pHを一定に保とうとする仕組みが必要→緩衝能
人体は酸性に傾く傾向にある
生産される代謝産物
代謝される基
質
代謝
好気的代謝
嫌気的代謝
糖
CO2
*乳酸
脂肪
CO2
*ケトン体
タンパク質
*リン酸,*硫酸,アンモニア
*:糸球体からろ過される不揮発性酸
それぞれの酸性物質は,血しょう内で
リン酸 ←→ H+ + リン酸イオン
のように化学的平衡を保っている。
血しょう緩衝系
緩衝作用
ヒトの緩衝系
①炭酸-重炭酸系
②リン酸系
③血漿蛋白質系
④ヘモグロビン系
最も重要なのは、炭酸-重炭酸系である。
重炭酸緩衝系(53%):血漿重炭酸(35%)、赤血球重炭酸(18%)
非重炭酸緩衝系(47%):ヘモグロビン(35%)、リン酸(5%)、血漿蛋白(7%)。
血しょう蛋白緩衝系
タンパク質に緩衝作用がある
タンパク質を構成するアミノ酸に緩衝作用がある
アミノ酸は、水素イオン(H+)をひきつける性質のあるアミノ基と、水素イオンを
放出する性質のあるカルボキシル基を同一分子内に有しています。
つまり、分子内に酸と塩基の両方が存在しています。
アミノ基
H
|
H2N-C-COOH
|
R
カルボキシル基
酸性に傾いたとき
アルカリ性に傾いたとき
H
+ |
H3N-C-COOH
|
R
H
|
-
H2N-C-COO
|
R
酸性の溶液中ではアミノ基が解離して弱塩基として働き、
アルカリ性の溶液中ではカルボキシル基が解離して弱酸として働く。
ヘモグロビン緩衝系
血しょう中で乳酸やリン酸などの酸性
物質を緩衝する
カルバミノヘモグロビン
炭酸・重炭酸塩緩衝系
CO2 + H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H+ + HCO3【血中にH+が加えられた場合】
H2CO3 ← H+ + HCO3の反応が進み、加えられた酸は大部分溶液から取り除か
れる。
【血中にOH-が加えられた場合】
OH-はH+と結合し水になる→反応の結果不足したH+は
H2CO3 → H+ + HCO3の反応が進むことによって補充される。
血中に加えられたH+はH2CO3を介して最終的に呼吸によって容易に排出
できるCO2とH2Oに変換されること
→呼吸によるpH調節が可能である・・・生理的に重要な系
リン酸緩衝系
主に細胞内pHの緩衝
H2PO4-⇔ H+ + HPO42-
【血中にH+が加えられた場合】
H2PO4-← H+ + HPO42の反応が進み、加えられたH+は大部分溶液から取り除かれる。
【血中にOH-が加えられた場合】
OH-はH+と結合し水になる。反応の結果不足したH+は
H2PO4-→ H+ + HPO42の反応が進むことによって補充される。
細胞内ではリン酸塩の濃度が高いため重要な系である。
緩衝作用の強さ
pH
= pK a
pH7.4では
リン酸塩系(pKa6.80)が最も緩衝能
が強く、
次いで、炭酸・重炭酸塩緩衝系
(pKa6.10)のように思えるが、
実際の緩衝能(緩衝価)は
それぞれの緩衝物質のpKaだけでなく、緩衝
物質の濃度が関係する。
細胞外(血しょう中)ではリン酸塩の濃度が低いので、緩衝作用は小さい。