水稲栽培用基肥一発肥料の肥効特性 (7月)

水稲栽培用基肥一発肥料の肥効特性
基肥一発肥料は、銘柄・種類などにより肥料からの窒素成分の溶出(溶出パターン)
が異なるほか、地温や水温により溶出速度が変わってきます。
そのため、それぞれの銘柄・種類毎の溶出パターンを十分把握した上で品種や栽培環
境(土壌条件や気象条件等)に合った基肥一発肥料を選択する必要があります。
1 肥料成分の特徴
(1)基肥一発肥料では、窒素成分は基肥用の速効性肥料と穂肥用のシグモイド型被覆
肥料(LP コート、エムコート等)を配合し、リン酸、カリは通常の単肥を配合しています。
(2)基肥用の速効性肥料と穂肥用のシグモイド型被覆肥料の窒素成分割合は基肥用 1
に対し穂肥用は1∼2の割合になっています。
また、有機質肥料が 30 %∼ 50 %配合された有機入り基肥一発肥料では基肥(有
機質含む)1 に対し穂肥 0.5 以下の割合になっています。
(3)穂肥用のシグモイド型被覆肥料は、早生用では 60 日タイプ(肥料分が 80 %溶出す
るのに 60 日かかるタイプ)
、中生用では 100 日タイプが多く使用されています。
(4)つなぎ肥としてリニア型被覆肥料や緩効性窒素を加えている肥料もあります。
2 肥効の特徴
(1)気象条件(地温、水温)による肥効のちがい
基肥一発肥料は、地温や水温によって穂肥用のシグモイド型被覆肥料からの窒素溶
出速度が変わります。低温
では窒素分の溶出が遅れ、
高温では早まります(図1)
。
従って、低温年では窒素
分の溶出が遅れ、高温年で
は溶出が早まります。しか
し、水稲の生育も低温年で
は遅れ、高温年では早まる
ため、窒素分の溶出が、予
定していた生育ステージと
大きく異なることは少ない
と言えます。
図 1 各温度毎の被覆肥料の溶出パターン
(2)施肥日と田植え日の関係
被覆肥料の窒素溶出時期は、施肥日からの地温や水温が影響するため、施肥から田
植えまでの期間が長くなると、相対的に稲の生育ステージに比べ被覆肥料からの窒素
溶出が早くなります。
(3)施肥量の考え方
基肥一発肥料は、その年の気象条件や水稲の生育が予測できない状態で施肥量を決
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め、穂肥までの肥料を一括して基肥施用時に施肥しなければなりません。このことか
ら、基肥一発肥料での栽培で一番問題となるのは施肥量です。
そのため、慣行栽培に比べ窒素成分で1∼2割程度減肥し、生育状況を見ながら必
要に応じ追肥する方が良いでしょう。
(4)窒素の溶出パターン(葉色の変化)
基肥一発肥料の窒素溶出パターンの例を図2に示します。基肥一発肥料に配合され
ているシグモイド型
被覆肥料は、施肥か
ら一定期間溶出が抑
えられ、ある時期か
ら溶出量が増加しま
すが、慣行栽培の穂
肥施用のように、一
気に稲体へ窒素が供
給される訳でないの
で、慣行栽培に比べ
葉色の変化は少なく、
出穂期以降はやや淡
く推移します。
図2 基肥一発肥料の溶出パターンの例
(5)有機入り基肥一発肥料の溶出パターン
有機入り基肥一発肥料の場合は、田植え直後に稲体が吸収可能な窒素成分はリン安
等速効肥料のみのため
初期の窒素溶出は少な
くなります。その後、
有機質肥料からの窒素
成分の無機化が徐々に
進むため、有機質を含
まない図2と異なり、
全期間において窒素の
溶出量は、ほぼ一定と
なります(図3)
。
そのため、慣行栽培
に比べ初期生育は劣
り、茎数も少なめに推
図3 有機 50 %入り基肥一発肥料の溶出パターンの例
移し、最高分げつ期を過ぎても一定量の窒素溶出があることから茎数の切れ上がりも
悪くなりやすい傾向があります。
次回は、実際に基肥一発肥料を使用する際の留意点を述べたいと思います。
【経営普及課 専門技術指導担当(土壌・肥料)長谷川雅義 】
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