鶏の飼料米給与試験の予備試験 1 情報・成果の内容 (1)背景・目的 飼料代高騰により、輸入飼料の代替飼料、飼料自給率の向上が望まれている。そこで、 輸入とうもろこしの代替品として飼料米が注目されている。しかし、飼料米の給与方法 は畜種、品種等によって異なり、早急な給与方法の確立が求められている。そのため、 飼料米の給与方法の検討と、飼料米給与の効果の実証が必要である。 (2)情報・成果の要約 1)くず米給与により、平均増体重も小さくなる傾向にあった。 2)育成率については、くず米給与による影響は見られなかった。 3)腹腔内脂肪が増え、ササミ、ムネ肉が減る傾向であった。 4)食味官能試験では、くず米給与区が全体的に評価が高い傾向であった。 5)くず米給与区の脂肪酸組成は、おいしさに関与するオレイン酸が増えた。 2 試験成果の概要 (1)材料と方法 1)試験期間:2008 年 10 月 14 日~ 11 月 11 日までの4週間(28 日間) 2)供試鶏:GSR(シャモ♂×ロードアイランドレッド♀)41 羽 試験区1:12 羽、試験区2:14 羽、対照区:15 羽 3)試験区分:10 ~ 14 週齢の4週間、下記のとおり給与した。 ・試験区1:10 ~ 14 週齢の 4 週間、市販飼料の 30 %をくず米で代替する。 ・試験区2:10 ~ 14 週齢の 4 週間、市販飼料の 60 %をくず米で代替する。 ・対照区 :市販飼料のみ (2)結果の概要 1)体重では各日齢での有意差はなかったものの、対照区に比べて小さくなる傾向にあっ た(表1,2)。 2)くず米給与期間中の育成率については試験区1、2、対照区ともに100%であった。 3)精肉重量については、くず米給与により腹腔内脂肪は増える傾向にあり、雄では試 験区1、2と対照区で有意な差があった。ササミ、ムネ肉重量は減る傾向にあり、サ サミ重量は雄では試験区2と対照区で、雌では試験区1、2と対照区で、ムネ肉重量 では雌で試験区2と対照区で有意な差があった(表3,4)。 4)食味官能試験では、ムネ肉(蒸し)は、全体的にくず米給与区の評価が高く、噛んだ 時の旨味の強さは試験区②と対照区で有意に差があった。モモ肉(焼き)でも全体的に くず米給与区の評価が高い傾向であり、食べる前の香りの強さが試験区1と対照区で、 しなやかさ(柔軟性)は試験区2と対照区で有意に差があった(表5,6)。 5)脂肪酸組成については、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸の順に増えた(表 7) 。遊 離アミノ酸は、アラニンが増え、ヒスチジン、リジンが減った。イノシン酸や他のアミノ 酸には大きな差はなかった(表8,9)。 6)1),2)及び4)は、くず米給与による飼料中の CP、ME の変化によるものと考 えられ、長期給与の場合、成分補正が必要と考えられた。 表1.体重推移(雄) (g) 表2.体重推移(雌) (g) 日齢 n 6 9 7 試験区1 試験区2 対照区 70 1843.3 1785.6 1720.0 84 2310.0 2211.1 2181.4 日齢 91 2476.7 2337.8 2374.3 97 2625.0 2523.3 2577.1 表3.精肉重量(雄) 試験区① 試験区② 対照区 羽数 6 9 7 97日齢 生体重 2625.0 2523.3 2577.1 精肉量 ムネ 326.0 296.6 318.4 モモ 525.3 503.1 521.7 と体重 2365.0 2270.0 2262.9 表4.精肉重量(雌) 試験区① 試験区② 対照区 羽数 6 5 8 97日齢 生体重 1745.0 1724.0 1756.3 と体重 1560.8 1555.0 1544.1 n 6 5 8 試験区1 試験区2 対照区 70 84 91 97 1340.0 1598.3 1663.3 1745.0 1338.0 1582.0 1618.0 1724.0 1323.8 1575.0 1660.0 1756.3 (g) 精肉量 腹腔内脂肪 ササミ 筋胃 心臓 肝臓 83.2 55.5 a 38.2 10.8 37.8 75.8 a 68.7 a 37.2 11.7 37.3 86.7 b 20.9 b 38.4 12.9 39.7 a-b:各測定項目の区分において異符号間5%水準で有意 (g) 精肉量 精肉量 腹腔内脂肪 ムネ ササミ 筋胃 心臓 肝臓 233.3 64.2 b 44.2 25.8 7.7 24.3 213.8 a 54.4 a 67.0 29.0 8.2 26.0 247.0 b 68.4 b 27.4 26.6 8.1 27.0 a-b:各測定項目の区分において異符号間5%水準で有意 モモ 344.7 342.2 351.8 表6.食味官能試験結果 表5.食味官能試験項目 項目番号 項目 香りについて(食べる前) 悪い~良い ア 香りについて(食べる前) 弱い~強い イ かたさ(食感) 柔らかい~硬い ウ しなやかさ(柔軟性) しなやかでない~しなや エ 弾力性 弾力性のない~弾力性の オ 噛んだ時の旨味 弱い~強い カ 肉の味の強さ(こさ) あっさり~濃い キ 風味の好ましさ 悪い~良い ク あぶらっぽさ 弱い~強い ケ 総合評価 まずい~美味しい コ 項目 試験区① ムネ(蒸し) 試験区② ア 1.25 香り 0.63 ウ 1.00 柔軟性 0.75 オ 0.63 旨味 0.75 キ 0.75 ク 0.88 ケ -0.63 総合評価 1.25 1.41 1.29 0.82 1.18 1.53 1.06 0.82 1.06 0.00 1.88 対照区 0.71 0.59 1.29 1.06 0.47 a -0.35 -0.24 0.24 -0.71 0.94 試験区① b 1.25 1.50 1.50 1.25 1.63 1.63 1.25 1.25 1.13 1.20 モモ(焼き) 試験区② 1.50 a 1.25 1.63 2.25 2.00 1.88 1.75 1.63 1.25 1.60 対照区 0.63 -0.25 1.13 a 0.75 1.50 1.00 1.13 0.25 0.13 0.67 b b a-b:各測定項目の区分において異符号間5%水準で有意 表7.脂肪酸組成 (%) 試験区1 ミリスチン酸 パルミチン酸 パルミトオレイン酸 ヘプタデカン酸 ステアリン酸 オレイン酸 リノール酸 リノレン酸 エイコセン酸 エイコサジエン酸 エイコサトリエン酸 アラキドン酸 ドコサテトラエン酸 ドコサペンタエン酸 ドコサヘキサエン酸 14.0 14.1 16.0 16.1 17.0 18.0 18.1 18.2 18.3 20.1 20.2 20.3 20.4 22.4 22.5 22.6 未同定 n-6 n-3 n-6 n-6 n-6 n-6 n-3 n-3 0.61 0.15 23.43 4.51 0.19 7.99 42.87 14.14 0.47 0.41 0.24 0.23 1.93 0.4 0.28 0.49 1.75 試験区2 a b a a a a a b a 0.66 0.2 24.78 5.41 0.157143 7.62 43.57 12.28 0.42 0.38 0.21 0.25 1.75 0.31 0.24 0.4 1.49 b a a a b b a a a 0.6 0.2 22.64 3.78 0.2 9.15 39.42 16.65 0.57 0.42 0.26 0.27 2.45 0.5 0.34 0.65 2.08 c b b b c c b b b a-c:各測定項目の区分において異符号間5%水準で有意 表9.イノシン酸含量 (mg/100g) 試験区1 試験区2 対照区 イノシン酸 192.7 200.2 195.8 3 表8.遊離アミノ酸 対照区 Taurine L-Aspartic Acid L-Threonine L-Serine L-Glutamic Acid L-Proline Glycine L-Alanine L-Cystine L-Valine L-Methionine L-Isoleucine L-leucine L-Tyrosine L-Phenylalanine L-Histidine L-Lysine L-Tryptophan L-arginine 試験区1 10.9 2.7 15.2 12.8 23.0 2.4 6.9 15.3 a 0.0 5.7 4.9 4.8 11.3 8.3 5.9 1296.4 a 30.0 a 0.0 10.5 試験区2 12.2 2.8 14.1 13.3 29.6 2.2 6.2 12.5 b 0.0 5.6 4.8 4.7 11.0 7.6 5.7 1257.0 a 27.6 b 0.0 11.0 ( mg/100g) 対照区 12.2 3.2 16.5 12.8 25.1 2.3 6.7 11.9 b 0.0 6.6 5.3 5.2 11.9 8.8 6.8 1537.9 b 33.8 c 0.0 6.8 a-b:各測定項目の区分において異符号間5%水準で有意 利用上の留意点 2009 年度実施計画のある、本試験のモミ米給与試験の結果と合せ確認する必要がある。 4 試験担当者 (環境・養鶏研究室 研究員 橋本紘子)
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