太陽熱土壌消毒によるスイセン葉先枯病の防除法

太陽熱土壌消毒によるスイセン葉先枯病の防除法
県花の越前スイセンは、越前海岸地帯に長年に
病気の感染が著しく減少しました(写真1,表1)。
わたり作付けされる本県を代表する花きですが、
被覆期間は1週間でも有効でしたが、安定した効
近年、フォーマ菌(Phoma sp.)による葉先枯病
果を得るためには2∼3週間が適当です。
の発生が多くなり、大きな被害を被っています。
この病気に対してスイセンに登録がある農薬
はなく、また産地が観光の景勝地にあることなど
また、マルチ被覆により、発芽や開花が早まり、
草丈も伸び、さらには雑草がほとんど発生しなく
なりました。
から、園芸試験場では農薬をできるだけ使用しな
なお、この技術は環境に優しい技術として、ス
い防除法を検討したところ、太陽熱を利用した土
イセンだけではなく、他の作物の土壌病害や雑草
壌消毒法が有効なことが明らかになりました。
の抑制にも利用できると考えられます。
この方法は7月下旬から8月上旬の最も暑い
キーワード:太陽熱土壌消毒、スイセン、葉先枯病
時期に、透明のポリエチレン(透明ポリマルチ
(園試
花き
厚さ0.03mm)を、スイセンが植えられている畝全
面に被覆します(表紙写真)。3週間被覆して、
土壌の深さ5cmのところの地温を調べたところ、
最高地温はマルチ被覆で約54℃となり、無被覆の
43℃より11℃以上高くなりました。また、菌の死
滅に有効である45℃以上の温度が132時間確保で
きました。
このことにより発病に大きく影響する地表の
マルチ被覆3週間
浅い場所に多い菌がほとんど死滅した結果、この
表1 マルチ被覆による太陽熱土壌消毒が葉先枯病の発生
に及ぼす影響
試験区
無被覆
萌芽率
(%)
97.5
マルチ
96.3
調査日
10月11日
12月26日
10月11日
12月26日
発病株率
(%)
25.0
64.7
0
2.6
備考)処理期間2002年7月10日∼8月9日(透明ポリマルチ被覆)
発病株率:葉先枯病株数/総株数×100
葉先枯病株数は1株の葉の中で1枚でも病斑のあるもの
無
写真1
被
覆
マルチ被覆の効果
数馬俊晴)