Design of Fender 防舷材の設計 防舷材の機能 材がみられましたが,船舶が大型化し わが国では,海外からの貨物の た今日では,前述のような大きなエネ 99.8 %(重量ベース)が港を経由し ルギーを簡易な防舷材で吸収すること て入ってきます.このような物流拠点 は困難で,ゴム製の防舷材を用いるの である港の岸壁に付いている黒いゴム が一般的です.ゴム製の防舷材ではゴ の塊をご覧になったことがありますか ムの塊の形状効果によって反力特性を (写真-1)? 「防舷材」といい,船舶 生み出すソリッド型とゴムの袋に空気 が岸壁に接岸するときの衝撃力を和ら を内包した空気式とが主流です.なお, げ,船の舷側および岸壁自体を保護す ソリッド型にはV型,H型など種々の るものです.船が岸壁に接岸するとき 形状をしたものがあります. は,大型船の場合にはタグボートの支 防舷材の設計においては,防舷材の 写真-3 備蓄船係留用の防舷材(長崎県上五島) 援により岸壁に接岸することが多く, エネルギー吸収特性が速度や温度に依 また,カーフェリー等では船のスラス 存することに注意する必要がありま ターを働かしスピードを落として慎重 す.一般的な傾向としては,低温およ レーションを行うなどして,適切に防 に接岸します.そのような慎重な接岸 び速度が大きなときに反力が大きくな 舷材を設計する必要があります. 操船をしたとしても,接岸時の速度は ります.速度や温度に対する特性の依 数 cm/s から十数 cm/s になります. 存性は,天然ゴム系の防舷材と合成ゴ 2 接岸エネルギーは,E = fMV /2 (f :回転運動などによるエネルギーの ム系の防舷材とでは後者の方が大きく 防舷材は船舶の係留だけではなく, 浮体構造物の係留施設にも用いられて なります. います.浮体構造物の係留用に用いら 低減をあらわす係数,M:船の仮想質 量,V:接岸速度)であらわせること 浮体の係留 れている防舷材の最大のものは,石油 係留中の動揺も吸収 から,仮に排水量 50,000 t の船舶 外洋に面した波浪条件の比較的厳し 備蓄基地(写真-2)の貯蔵船の係留用 が 10 cm/s の速度で接岸するときの い港湾においては,波浪の影響を受け のもので,高さが 3,000 mm のゴム エネルギーは 225 kNm(ここでは, て船舶が大きく揺れることがあります. 防舷材が用いられています(写真-3). f= 0.5,仮想質量係数 1.8 として計 このときの防舷材の変形量は,接岸時 現在,大阪市で建設中の旋回可動式浮 算)になります.これは 1 t の質量の の変形量よりも大きくなることもあり 体橋梁の係留にもゴム防舷材が使用さ 車が時速約 80 km で壁に衝突するエ ます.実際に係留中の動揺が原因と思 れています.このような大型の浮体構 ネルギーに匹敵します.このように船 われる防舷材の損傷例もあります.し 造物の係留施設の設計においては,暴 舶の接岸時のエネルギーを吸収する目 たがって,防舷材の機能としては係留 風中の荷重に対する浮体の動揺および 的で設置されているのが防舷材です. 中の船舶の揺れによる変形も吸収する 係留系の変位を数値シミュレーション 昔は,岸壁の側面に木材等をおいて衝 ものでなければなりません.このよう により求め,防舷材を設計しています. 撃を和らげるような簡単な構造の防舷 な条件の港では係留船舶の動揺シミュ (運輸省 白石 悟) 写真-1 岸壁に設置されている防舷材 64 JSCE Vol.84, Aug. 1999 写真-2 石油備蓄基地(北九州市白島)
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