第112回生涯研修セミナーシンポジウム マルチスライスCT マルチスライス CTでここまで分かる! でここまで分かる! MDCTが腹部診断にもたらすもの 山口大学大学院大学医学系研究科 放射線医学 田辺 昌寛,清水 建策,松永 尚文 MDCT((多列検出器型CT MDCT CT))の特徴 • 術者の技量に左右されない。 • 短時間に薄いスライス厚で広範囲の画像が得られる。 partial volume artifactの減少 3次元画像における体軸方向の分解能の向上 • X線吸収値を唯一のパラメータとした画像 • 造影剤の使用 ダイナミックCTが多時相にわたり撮像できる。 CT angiography(CTA)などの画像が作成可能。 腹部臓器のMDCT 肝臓 胆道,膵臓 胃 小腸 血管腫 HCC ほとんどの病変が低濃度に描出される !! 肝嚢胞 肝内胆管癌 肝細胞癌 + 脂肪肝 単純 門脈相 動脈相 脂肪肝には要注意!! Subtraction (IP-OP) 限局性結節性過形成(focal 限局性結節性過形成( focal nodular hyperplasia: hyperplasia: FNH FNH) ) 単純 動脈相 単純CTだけでは見えない病変もある!! MDCTのダイナミック造影 早期 後期 動脈相 門脈相 (HU) 平衡相 大動脈 多血性肝細胞癌 門脈 肝実質 300 250 200 150 100 50 0 0 20 40 60 180 (秒) 市川智章.; CT造影理論.121, 医学書院,2004より改変 腹腔動脈と上腸間膜動脈の共通幹 ネッター解剖学アトラス(原著第4版)より引用 置換右肝動脈(replaced 置換右肝動脈( replaced right hepatic artery) artery) 右肝動脈は上腸間膜動脈から, 左肝動脈は左胃動脈から分枝している。 肝細胞癌(中分化型) 単純 早期動脈相 後期動脈相 門脈相 平衡相 動脈相で早期濃染し,平衡相で洗い出しが 認められる。被膜形成やモザイク状構造も みられ,典型的な肝細胞癌である。 単純CTの淡い高吸収は出血が示唆される。 コロナ様濃染 肝細胞癌には静脈がないため造影剤は周囲肝実質に環流する。 この周囲のリング状濃染はコロナ様濃染と呼ばれ,主に後期動脈 相∼門脈相で描出される。 CTA(早期) CTA(後期) 肝細胞癌のコロナ様濃染 単純 早期動脈相 早期動脈相 後期動脈相 後期動脈相 門脈相 平衡相 門脈相 ダイナミックCTでは造影剤量が多いため(100mL前後), 腫瘍濃染とコロナ様濃染が同時に見える時相がある。 限局性結節性過形成(FNH 限局性結節性過形成( FNH) ) 単純 早期動脈相 後期動脈相 門脈相 平衡相 動脈相で濃染するが平衡相での洗い出しはない。内部にcentral scarと思われる低吸収域が見られる。 肝血管腫 単純 早期動脈相 後期動脈相 門脈相 平衡相 動脈相で辺縁が血管と同程度に濃染し,平衡相では内部の遅延性濃染が認められる。 肝血管腫 後期動脈相 門脈相 平衡相 早期動脈相 早期動脈相では辺縁が血管と 同程度に濃染していることが 明瞭に描出され,肝血管腫の 確信度が高くなる。 腹部臓器のMDCT 肝臓 胆道,膵臓 胃 小腸 DIC--CT DIC • 胆道排泄性造影剤を使用することで胆道系の3次元画像が 作成可能である。 • 腹腔鏡下胆嚢摘出術における術前の胆道系の評価として 有用である。 volume rendering法 胆嚢腺筋症 • 胆嚢の限局性壁肥厚 • 壁内の小嚢胞構造(Rokitansky-Aschoff-sinus:RAS) 下部胆管癌 総胆管から肝内胆管に拡張が認められる。MPRでは下部胆管が高度狭窄し, 膵実質よりも造影効果の乏しい下部胆管癌が描出されている(矢印)。 膵管癌 単純 早期動脈相 後期動脈相 門脈相 平衡相 動脈相(特に後期動脈相)では腫瘍と正常膵組織とのコントラスト が強く,腫瘍範囲が同定できる。平衡相で腫瘍は淡く染まっており, 線維成分の存在が疑われる。 膵管癌 (随伴性膵炎を伴う) 動脈相 限局性の膵管閉塞により尾側膵に随伴性膵炎を起こしている。 膵管癌 生検でadenocarcinomaであった。総胆管の拡張はなし。 主膵管(矢印)は腫瘍の辺縁を走行しており,副膵管あるいは 分枝膵管由来の膵管癌であることが示唆された。 膵腫瘍と鑑別を要した食道癌+リンパ節転移 水平断では膵腫瘍のように見えるが,冠状断MPRで 膵は圧排されており,膵由来の腫瘍ではないことが分かる。 腹部臓器のMDCT 肝臓 胆道,膵臓 胃 小腸 飲水法の必要性 AGMLで胃壁が浮腫状に肥厚している。背側の胃液が 貯留している部は高吸収の粘膜層が描出されている。 (※画像は飲水法ではありません) GIST 粘膜が保たれており,粘膜下腫瘍が示唆される。 胃癌(0 胃癌( 0-I) 胃内を水で満たすと粘膜層がきれいに描出される。 腫瘍の形状や栄養血管(矢印)の様子が切除標本のルーペ像と 1対1で対応できる。 Shimizu K et al.: Diagnosis of gastric cancer with MDCT using the water-filling method and multiplanar reconstruction: CT-histologic correlation. AJR 185:1152-8,2005 0-I 0-Ⅱa type 1 0-Ⅱc type 3 Shimizu K et al.: Diagnosis of gastric cancer with MDCT using the water-filling method and multiplanar reconstruction: CT-histologic correlation. AJR 185:1152-8,2005 胃癌(type 胃癌( type 4) 4) 播種 膵浸潤 CTでは播種や他臓器浸潤など周囲組織の状態を評価できる。 Shimizu K et al.: Diagnosis of gastric cancer with MDCT using the water-filling method and multiplanar reconstruction: CT-histologic correlation. AJR 185:1152-8,2005 腹部臓器のMDCT 肝臓 胆道,膵臓 胃 小腸 CT enteroclysis entero-: 腸を意味する連結語 -clysis: 注入,浣腸に関する連結形 CT小腸造影 or CT+小腸造影 小腸の拡張とCT撮影が原則 Gregory N. Bender et al. : CT Enteroclysis: a superfluous diagnostic procedure or valuable when investigating small-bowel disease: AJR 172: 373-8, 1999 CT enteroclysis enteroclysisの方法 の方法 • 経鼻内視鏡を十二指腸水平脚まで進める。 • 鉗子孔を通してガイドワイヤーを空腸側に挿入する。 • 経鼻内視鏡抜去後,ガイドワイヤーに沿って先端バルーン付き の十二指腸チューブ(14F)を十二指腸空腸曲まで挿入する。 • 先端バルーンを膨らました後,自動注入器を用いて150ml/min の割合で小腸内に約37℃に暖めた腸管洗浄剤(ニフレック)を 約1,500ml注入する。 • 腸管洗浄剤の注入終了直後より単純および造影CT撮影する。 CT enteroclysis 冠状断MPR像 Thin MIP 主訴:下血,貧血 深部空腸に異常濃染域 第3空腸動脈 血管奇形 第3空腸動脈枝をコイル塞栓し,下血は消失。貧血も改善した。 主訴:下血,貧血 回腸癌 主訴:下血,貧血 リンパ節転移 クローン病,イレウスを繰り返す 全周性の狭窄 ダブルバルーン内視鏡にてバルーン拡張術が施行された。 MDCTのまとめ MDCT のまとめ • 肝臓における多時相の造影パターンは質的診断に 役立つことが多い。 • 膵・胆道系では空間分解能の飛躍的な向上により, 病変部がより明瞭に描出されるようになった。 • 飲水法やCT enteroclysisによる消化管CTでは,病変 部および周囲との関係を評価することができる。
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