3D-CTによる乳房再建のための 皮弁移植用微小動静脈の術前評価

第 3 回造影チャンピオン画像 受賞画像紹介
第 3 回造影チャンピオン画像 受賞画像紹介
3D-CTによる乳房再建のための
皮弁移植用微小動静脈の術前評価
防衛医科大学校病院 放射線部, 防衛医科大学校 放射線医学講座
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征矢 強 ,曽我 茂義
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エーザイが運営するX線造影剤・MRI造影剤の情報サイト
「造影剤.com」では,診断・治療に必要な造影画像の
撮像や画像処理のスキルをWeb上で共有していただき,診療に役立てていただくことを目的に
『造影チャンピオン
画像』
を公募しています.第 3 回造影チャンピオン画像は,防衛医科大学校病院放射線部 征矢 強 技師が受賞
されました.受賞画像や撮影プロトコールについてご紹介いただきます.
はじめに
管および胸部レシピエント血管の術前評価
撮影プロトコール
乳房再建の最近の進歩は著しいが,遊離穿通枝皮弁
による再建では 1mm前後の細径の血管吻合という,高
使用装置:Aquilion64
(東芝メディカルシステムズ)
いマイクロサージャリー技術を要する.また,下腹壁
<撮影条件>
動脈穿通枝などの対象血管は,解剖学的変異や既往の
管電圧:120kv,管電流:Real EC,スキャンモード:
手術による変形など個人差が大きい.近年,3D-CTに
ヘリカル,撮像スライス厚:0.5mm×64列,再構成関
よる乳房再建術前の血管マッピングの有用性が注目さ
数:FC13,スキャン速 度:0.6sec/rot.,ヘリカルピッ
れており,当院での手法を紹介したい.
チ:75
症例紹介
<造影条件>
使用機器:Dual Shot GX
(根本杏林堂)
年齢:40歳代,性別:女性,体重:85kg,既往歴:乳
使用造影剤:イオメプロール350シリンジ 135mL,造影
癌術後,帝王切開術後
剤使用量:135mL,注入速度:4.8mL/sec
(40mL生食後
検査目的:乳房再建のための皮弁移植用腹壁ドナー血
押し)
トリガ ー位 置:リアルプレップ を 用 い
て,腹腔動脈レベルの大動脈でのトリ
ガー
(120HU)
から 8 秒後に胸部,13秒後
に腹部領域を撮影開始とした.
撮影および画像処理の工夫
胸部から骨盤までの広範囲で,サブミ
リメーターの動静脈の詳細な描出が求め
られ,細い標的血管の造影効果を最適化
するように,造影剤の血行動態を考慮し
たプロトコールを作成した.深下腹壁動
脈では,筋内の微細な穿通枝の走行を描
出するため,血管周囲の腹直筋のサブト
ラクションを用いる工夫を行った.また
胸部でも骨をマスクし,胸背および内胸
動脈末梢の描出能向上を目指した.
結 果
1 回の撮影で胸部から鼠径までの広範
囲かつ,微小な動静脈のマッピングが可
能となった
(図 1,2)
.深下腹壁動脈が
図 1 胸部volume rendering
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腹直筋内を走行するレベルでは,サブト
第 3 回造影チャンピオン画像 受賞画像紹介
図 2 腹部volume rendering
ラクション処理により腹直筋のCT値は59HUから
5HUまで低下し
(図 3)
,血管と筋肉のコントラス
a
トを増大させることで,筋内での血管の走行を明
瞭に描出し得た.
画像処理
ZIO STATION SYSTEM 1000 Ver.1.17t
(ザイオ
ソフト)を用いて,胸部のレシピエント血 管で
は,動脈相から胸背動脈や内胸動脈を,平衡相
から胸背静脈や内胸静脈を描出し
(図 1)
,腹部ド
ナー血管では,浅および深下腹壁動静脈を色分
b
けし,皮膚面と重ね合わせた
(図 2)
.Maximum
intensity projection
(MIP)
で穿通枝と臍の位置関
係や腹直筋内での走行を表現した
(図 4)
.
手術での有用性
帝王切開術後ではあるが,本検査によって,
傍臍部に皮弁の栄養に十分な太さをもった深下
腹壁動脈穿通枝の残存が確認でき,正確な位置
もマッピングし得た.乳房再建にあたり,優位な
穿通枝を術前に把握でき,手術計画ならびに手
図 3 a:サブトラクション前,b:サブトラクション後
術実施時の穿通枝検索に大変有用であった.
謝 辞
この度は第 3 回造影チャンピオン画像という大変光
栄な賞をいただき,とても嬉しく思います.今回ご協
力いただいた埼玉医科大学総合医療センター 形成
外科・美容外科 三鍋俊春教授に深く感謝とお礼を
申し上げます.
図 4 腹部maximum intensity projection
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