134-(22 ) 断層映像研究 会 雑誌 第 33巻 第3号 特集 FPD によ る コー ンビ ー ム CTの進歩 腹部 IVR における日at P a n e lDetector搭載 Cone-beamCT の有用性の検討 総説 阿知波左千子、虞回省 三 、 山 本聡、新井桂介、 小林 前田弘彰、安藤久美子、石蔵 礼一 、中尾 薫、 宣夫 兵庫 医科大 学 放射線 医学教 室 Cone-beamCTe q u i p p e dw i t hF l a tP a n e lD e t e c t o rDSAi n a b d o m i n a li n t e r v e n t i o n a lr a d i o l o g y SachikoAchiwa , Syozo Hirota, S a t o s h iYam創ηoω , Keis叫句Arai , KaoruKobayashi , H i r o a k i Maeda, K山由ko An do , R e i i c h iIshikura, No r i o Nakao g eo fMed D e p a r t m e n to fRadiology , HyogoCol le ic i n e 要旨 大視野 Flat Pane lD et e c t o r ( 以下 FPD ) を搭載した 天井走行 C アーム型装置 PARTIRE を用いて、回転撮影 画像から Cone-beam CT 画像を 生成する機能を日 立 メデイコと共同開発し、 2003年から臨床応用を行 っ ている 。 腹部 IVR における CT Angio の有用性を肝腫蕩を中心 に検討し、臨床画質=制面、腫蕩検出能、将来の展望に関して 論ずる 。 Abstract Wehaved e v e l o p e dacone-beamCT oitcnuf nsu ni gp r o j e c t i o nd a t aa q iu r c e dd u r i n gr o t a t i o no fht eC -arm system(PARTIRE ),with ala g ea r r e af l a tp a n e ld e t e c t o r(FPD ) i nc o o p e r a t i o nw i t hH i t a c h iMed iac l W.noitaropc eeva ul a t e du s e f u l l n e s so fCTAng iou s i n gcone-beamCTf o rabdomina l tni er v e n t i o nand det tce iono fh e p a t i ctumors Keywords:noc eb eamCT ,HCC , 1. はじめに CBCT機能として臨床に応用可能とな っ た 。 2005年に、 Feldkamp がコーンビーム CT ( CBCT ) の理論を シーメンス社も CBCT を発表 し、我が国でも徐々に 発 表 して以 来 、 多 くの試みが行われてきたが J) 2) 、 導入されはじめている 。 CBCT は、 FPD搭載血管造影 我々は日 立 メデイコと組み、大型 (0 4 x 30cm) の elD e t e c t o r (FPD) を検出器に用いた 装 置 による回転 DSA で得られた情報を、 volumeデ F l a tPan ータとして処理し、 CBCT の共同開発に成功した 。 体幹部では初めて臨床 で得られた情報は、 完全な isotoropic な voxel を形成す 的に評価できうる性能をも っ た CBCT であり、 2004 ることから 、 横断、冠状断、 矢状断などの断層 面が同じ 年 4 月に IVR 専用機 PARTIRE ( 日 立 メデイコ ) の 情報で作成される点も画期的である 。 3D 表示 もワーク 別刷 請 求先: T' 663・8501 兵庫 県西 宮 市武庫川町 1-1 兵庫医 科大 学放射線 医学教室 阿知波左千子 TEL:0 7 9 8 4 5 6 3 6 2 FAX:0 7 9 8 4 5 6 3 6 1 CT 画像を再構成する 。 面検出器 531 -(2 3 ) 2006年 12 月 20 日 特集 FPD によるコーンビーム CTの進歩 一ーーーーーーーーーーーーーーーーー一一一ーーー『、 、 、 、 、 ‘ J旦 Video o u t p u t , ,, ,J 'E1 ・, pis'f 』 Et--'P1414612a CBR ac l c u l a t o r 3Dorce nst ur ct i o n ,, C o n t r o lroom d , d 図 1. Cone-BeamCTSystem FPD; 40X30cm A c q u i s i t i o nr a t e: 5 0p r o j e c t i o n s 30f/s, 1 R o t a t i o n: 02 - / 5 s e cS I D :120cm , ,, CBCT システム 200度の回転婦影はデータ収集装置Clavis-AGtこより行われる 。 CBCT再構成演算器は複数の CPU を用 いて並列演算を行う PC ベースの高速演算器でコーンビーム CT再構成演算を行 って 3 次元 CT像を生成し 内蔵された自動表示Viewer にスライス像を表示するとともに 3D Viewerへ 自動転送する 。 ステーションで作成できる 。 この装置は血管造影装置 の再構成処理では、収集したデータにさらに 2x2 画 でありながら CT が撮影できることから、省スペー 素加算を 行 って、 ス、短時間撮影を可能にし、 Angio CT が簡単に撮影で 補正、対数変換し投景銀L理を行った後、視野はみ出し補 きる利点を有する 3) - 10) 。一 般病院や手狭な Angio 正をし、 Feldkamp の方法により再構成を行う 。 再構成 5 12 x384 画素のデータとして感度 室で行う IVR にと っ ては、極めて有用な装置である 。 できる領域は直径 235 mm、 高さ 176 mmの円柱領域 我々の施設では2003年に FPD による CBCT 画像が撮 で、 影可能となり、臨床例を中 心に 経験を積み重ねている 時間は約 2 分 30 秒である 。 3D 再構成は Voxar 11 )1 2) 。 (Voxar imil 今回、被爆線量の検討に加 えて、腹部の画像を中 512x 512 画素で、の再構成を行っている 。 再構成 t e d) または Virtual Pcal e (株式会社 心に画質の評価、造影 MDCT との腫療検出能の比較 AZE) で行なった 。 アイソトロピックなボクセルのた を中心に述べる 。 め、精細な冠状断、矢状断が撮像できる 。 また、最初の スキャンから 20 秒干呈度おけば、第 2 スキャンカt撮{象で 2. コーンビーム CT(CBCT) について(図 1 ) 血管撮影装置としては間接型の 40 x30 cmの大型 FPD を搭載した回転 DSA 装置 PARTIRE を用い た。 C アームは LAO 95度- RAO105 きる 。 この機能は、他社製品にはなく、後期相が撮像で き、濃染パタ ー ンの W~析に役立つ 。 時間分解能が高い CT といえる 。 度の 200 度を 5秒で回転し、毎秒 30 フレームで、秒間 150 枚撮影す る 。 データ収集は 2 X2 の束 ね読み 出しを行い、画素サ イズ 0.388 mmで、 1024 X 768 画素の収集を行う 。 標準 3. 被爆に関する基礎的検討 線量 は円柱状ファントムモデル と線量計 で計測をした 。 Single (CTDI; ゆ 160mm) hel i ac lCT である -631 (42 ) 断層映像研究会雑誌第 33巻第3号 特集 FPD によるコーンビーム CTの進歩 R e l a t i o n0 1CTDIa n dmA uì t 由n J " ' αコ 6 0 0 0 . 0 05 .0 場。 ー 日 0 E 間 4 0 0 0 . 0 E E 3 0 0 0 . 0 コ ' " 2 0 0 0 . 0 広 E •。 1 00 .0 図 2. 。 。 。 1 0 0 2 0 0 3 0 0 W2000 ( 日立メデイコ)より被曝線量が少ない。 (図 2) 4 0 0 mA 被爆 S i n g l eh e l i c a lCTである W2000 ( 目 立メディコ ) より被曝線量 が少ない 。 C) 肝腫蕩検出能の検討 CBCTAP と術前 MDCT との腫蕩の検出個数を比較 4. 臨床的検討 検討した。 肝腫蕩56例中、個数言↑1則が可能で、あった46症 例で検討した。 言↑1則不能で、あったのは、腫蕩が無数に存 a) 対象及び方法 2004年9 月から 2006年 1 月までの問でコーンビーム 在している l 例と、門脈浸潤により CTAP で区域性の CT にて CTAP を撮影し(以後 CBCTAP) 、術前の経静 defect像を 呈 した 5 例であり、除外した 。 46 症例中、 脈性造影 Mu!ti D e t e c t o rCT(以後 MDCT) と比較で きた肝痛 46例、転移性肝癒6例の計52例にて検討した 。 CBCTAPの病変数は258個、 MDCTでの病変数は 211 個で、あった 。 術前 MDCT と CBCTAPの撮影できた時期の間隔は平 また、同 一症例での腫蕩検出能の比較として、 CBCT 均 39 日であり、最長は 84 日、最短では 1 日後に の病変数を MDCT の病変数で除した値を R CBCTAP を撮影している 。 (ratio:R=CBCTの病変数/MDCTの病変数) と定義し、 撮影プロトコルとして、大視野 FPD 搭載天井走行C Rが1 以上の時、 CBCTの方が1重傷検出能は高いとした。 アーム型装置 PARTIRE にて、 200度の回転角度を 5秒 Rの平均値は 1.4であり、 R>l であるのは 12例、 R=l であ 間でプロペラ回転し、回転中に毎秒30 フレームの速度 るのは31 例、 R く I であるのは4例で、あ っ た。 (図 3) で合計 150枚の投影像を撮影した。 その回転撮影データ CBCTAPの腫蕩検出個数は、血管造影前の経静脈性 からコーンビーム CT再構成を行 っ た 。 CTAPは造影剤 造影 MDCT に比べ多く検出できた 。 特に、腫蕩個数が を 2ml/秒、計45m!で、30秒後に娠影し、 CTA は2m!/秒、 少ない症例ではほぼ同等の検出能を示したが、腫蕩個 言十20m!で、10秒後』こ撮影した 。 数が多くなると CBCTAPの検出能が高く、臨床的有用 性を示した。 b) 画質評価 3人の放射線科専門医がそれぞれ5点評価で画質評価 し、その評価点数平均値を求めた 。 肝の辺縁が追え、 MDCT と同等 と考えられる画質を3点とした。 その評価 d)IVR における CBCTの有用性 PSE3例、 B-RTO 5例、牌動脈癒コイル塞栓術2例で 検討した。 点数平均値は2.7 ,点で、あった 。 CBCTの画像は放射状の PSEで)同一梗塞の範囲予測に、 B-RTO ではカテーテル アーチファクトによる画質劣化か若干みられるものの、 先端位置と静脈癒との位置関係の把握に、牌動脈癒コ 血管造影の併用でコントラストの上昇が得られ、臨床 イル塞栓術では、バルーン閉塞後の牌への側副路の予 使用上問題がないレベルの画質といえる 。 測に有用で、あ っ た 。 13 -7 2006~n2 月 20 日 (25 ) 特集 FPD によるコ ー ンビー ム CTの進歩 60 5 0 訴 召 40 ~ 図 3. 富 30 CBCTAP の腫癌検出能 横軸: MDCT の病変数 、 縦軸: a . . < CBCTAP の病変数 。 R=CBCT の病変 520 数 /MDCT の病変数と定義し、 R 孟 1 ∞ で CBCT の有用性があるとする 。 ライ 10 ンが MDCT と CBCTAP との病変数が . 。 同数すなわち R=1 のラインで、ライン 一一一 ι 一一一~一一一一一一~ 。 5 1 0 15 20 25 30 35 MDCT腫蕩検出数 上には 31 症例みられ、 R が 1 以上であ るのは 12症例 、 R が 1 以下であるのは 4 症例であ った 。 a :CBCTAP b:MDCT(e a r l y esahp ) c :MDCT(I a t e esahp ) d:C BCT(p EATtso ) 5. CBCT はIVR施行中でもテーブル移動がなく、 CTの 撮影までの時間短縮が可能となる 。 そして、画像は横断 像だけでなく、冠状断像、矢状断像も同時に観察でき、 症例 1 :47才男性 症例提示 HCC(図 4) MDCTでは 1 ヶ所しか腫揚を検出できなかったが、 i s o t o r o p i c voxelなので、冠状断像、矢状断像ともに横 CBCTAPにて2 ヶ所検出できている 。 TAE後も 2 ヶ所集 断像と同等の画質を得ることができる 。 これはIVR 施 積している 。 尚、 CBCT と MDCTの撮影時期の差 は 30 行時において有用で、あった 。 日 。 画質評価3点。 -831 (26 ) 断層映像研究会雑誌第 33巻第3号 特集 FPD によるコーンビーム CTの進歩 図 5. a :CBCTAP , b:MDCT(I a t e esahp ) 症例2: 72才女性転移性肝癌(図 5) も、画質のスコアは 2.7で、 あった 。 しかし、腫蕩の検出 MDCT では肝辺縁の腫蕩がはっきりしないが、 能は血管造影を併用することで高くなり、経静脈造影 CBCTAP にて肝辺縁の腫蕩が検出できている(矢印) 。 MDCT よりも腫蕩の検出能が高い結果を得たことは、 CBCT と MDCTの撮影時期の差は28 日 。 画質許咽i3点。 CBCT の臨床的有用性を担保したものと考えること ができる 。 症例 3: 66才男性胃静脈檀(図 6) 胃静脈痛とカテーテルの関係が冠状断像でよくわ 開械時間が2分30秒と 長いことは短所の一つで、即 時性が要求される IVR においては血管走行の判定目 的ならば回転 DSA で十分である 。 撮像範囲が 235 かる 。 mm とやや小さいことも弱点の一つに上げられる 。 これ 6. まとめ 最近、 Siemens社はじめ、 2,3社から CBCT が発表 さオL、にわかに IVR に対する CBCT が往目を集めてき らの欠点は、第二世代のデータ 量のより多いFPDが導 入されると解決されると期待されており、再構成時間 の短縮も期待できる 。 た。 その魅力は回転 DSA により C ア ー ムが 200 度回 CBCT は省スペース、省コスト、省被曝、省時間とい 転するだけで、 CT が娠影できることで、 一般病院に う素晴らしい利点を有しており、今後の更なる発展が と っ て設置の利点は極めて大きいと思われる 。 Angio 待たれる 。 を併用する Angio CT専用装置と考えるなら、臨床的 にイ吏えるマシーンとなる 。 CBCT はさらに、 CT ガン トリーが不要で、省スペースであり、価格もガントリー 付き CT と比べ安く、省コストであり、被曝も今回の検 討結果からみられるように single ヘリカルCT より低 く、テーブル移動がなく、スキャン時聞が5秒と省時間 も 実現している 。 空間分解能も比較的高い。 また、日立 メデイコの CBCT は2相の撮影が可能である 。 この2 相撮影は腫蕩の質的診断に有用で、特に vascularity や、 washoout をみることができ、大きな長所である 。 一方、欠点としては、低濃度分解能が低く、また散乱線 アーチフ ァ クト、 streak アーチフ ァ クトという欠点が あり画質の程度がやや劣ることである 。 今回の検討で 2006年 12 月 20 日 139・ (27) 特集 FPD によるコーンビー ム CTの進歩 図 6. a, b: 牌動脈起始昔日をバ ルーン閉塞させた牌動 脈盆影制服相、冠状断像。 参考文献 1. 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