アカマツ林におけるツツジ科低木4種の樹冠発達造

アカマツ林におけるツツジ科低木4種の樹冠発達造
樹形にみられる種特性は、その種の空間獲得戦略を反映していると考えられる。本研
究では、様々なタイプの森林の林床に出現する種群として知られるツツジ科低木4種に
ついて樹形の比較を行った。母親シュートに対する娘シュートの数や長さを解析し、そ
の結果に基づいてシミュレーションを行った。シミュレーションは母親シュートから分
岐した娘シュートまでの2世代の計算をし、娘シュートの総数、娘シュートの平均長、
娘シュートの長さの合計値を集計した。このとき、母親シュートの長さ(初期値)を
5cm、10cm、15cmと変えてシミュレーションを行った。シミュレーションは50回
行ったときの平均値に標準偏差をつけて表現した。
その結果、ヤマツツジはトウゴクミツバツツジよりも分岐数が多く、かつシュートの
平均長および総長が短かった。バイカツツジとホツツジの枝数やシュート長は、初期の
母親シュートの長さによって、ヤマツツジやトウゴクミツバツツジを上回ったり下回っ
たりした。初期値が小さい場合には、ヤマツツジやトウゴクミツバツツジよりも小さな
成長を示したが、初期値が大きい場合にはヤマツツジを上回り、トウゴクミツバツツジ
とほぼ同じ値を示した。すなわち、バイカツツジとホツツジは樹形発達の可塑性が高く、
また好適な条件下では他の2種の成長を上回る可能性を示している。
キーワード:ツツジ科低木、シュートのサイズ構造、シュートの機能分化
城田徹央・岡野哲郎(2009),アカマツ林床に生育するツツジ科低木4種の樹形比較,第58回 日
本林学会中部支部大会,名古屋大学,2009/10/10,
城田徹央・岡野哲郎(投稿中),アカマツ林床に生育するツツジ科低木4種の樹形比較,中部森林研
究,58
8
7
6
5
4
3
2
1
0
ヤマツツジ
●:1番目
○:2番目
+:3番目
×:4番目
20
15
10
5
0
0
8
7
6
5
4
3
2
1
0
10
0
20
25
トウゴクミツバツツジ
(R=0.674***)
5
10
15
20
25
15
20
25
10
15
20
25
10
15
20
25
トウゴクミツバツツ
ジ
20
15
10
0
8
7
6
5
4
3
2
1
0
10
20
バイカツツジ(R=0.797***)
娘シュート長(cm)
分岐数
25
ヤマツツジ(R=0.705***)
5
0
0
25
5
10
バイカツツジ
20
15
10
5
0
0
8
7
6
5
4
3
2
1
0
10
0
20
25
ホツツジ
(R=0.823***)
5
ホツツジ
20
15
10
5
0
0
10
20
0
5
親シュート長(cm)
親シュート長(cm)
図 親シュート長
シュート長と分岐数の
分岐数の
関係
図 親シュート長
シュート長と娘シュー
ト長の関係
親シュートの長さと娘シュートの数、長
さの関係を解析した。娘シュートの数や
長さは親シュートの長さに依存していた
が、同時におおきな変動を伴っていた。
そこで、推定モデルにランダムな要素
を取り込みながら、分岐様式を評価す
ることにした。
回帰式+誤差
15
10
5
0
1
0
ヤマツツジ
娘シュートnの長さ
2
娘シュートの数:n
図 計算の概要
図 計算の結果
ホツツジ
・
・
と乱数
10
バイカツツジ
娘シュート3の長さ
5,10,15cm
15
20
トウゴク
ミツバツツジ
娘シュート2の長さ
3つの初期値
10
娘シュート1の長さ
総当年枝長(m)
親シュート長
5
0
平均当年枝長(cm)
計算された当年枝の数や長さは種に
よって異なった。しかし、初期値による
相互作用も大きかった。例えばバイカ
ツツジやホツツジの総当年枝長は、初
期値が5cmの時にはヤマツツジやトウ
ゴクミツバツツジを下回ったが、初期値
が15cmのときは同等の値を示した。
当年枝数(本)
30