1 - 科学技術振興機構

薬剤標的の内訳
膜タンパク質:主要な薬剤標的
その他
7%
酵素
9%
水溶性タンパク質
23%
膜タンパク質
膜輸送体
70%
24%
受容体
67%
Rask-Andersen et al., Nat Rev Drug Disc (2011)
特に膜輸送体は近年注目される薬剤標的
2
膜輸送体を標的とした創薬にむけて
超高感度, 定量的かつハイスループットな
膜輸送体の機能解析が必要
3
従来の手法で定量的に
機能計測できない膜輸送体
長年にわたり、超高感度, 定量的かつ汎用的な
膜輸送体の機能解析手法の開発が望まれていた
4
超高感度かつ定量的な
膜輸送体の機能計測にむけて
 高効率に安定な生体膜を
人工的に量産できる技術の開発
半導体製造プロセスを利用して
生体膜の形成技術を洗練化させた
 膜輸送の超高感度検出方法の開発
微小な試験管, 均一な生体膜, 新しい指示薬を
自主開発し、活性検出技術を超高感度化させた
5
半導体製造装置を使って
人工生体膜チップを開発
Watanabe et al., Nat Commun (2014)
Watanabe et al., Sci Rep (2014)
 半導体製造プロセスにより微小な試験管を作成
 微小な試験管を10万個以上集積化
6
チップを利用した生体膜の形成方法
試験管の入口に生体膜を形成
1, 水溶液を導入
2, 脂質入り有機溶媒を導入
3, 再度水溶液を導入
 簡単な溶液交換のみで脂質2重膜の
集積アレイを作成できる。(特願2013-171493)
7
生体膜の形成効率:99~ %
本技術で改善したこと
1, 生体膜の形成効率の大幅な向上
 本手法:> 99 %, 従来法:< 30 %
2, 生体膜の量産枚数 (1分あたり)
 本手法:10万枚以上, 従来法:100枚以下
8
生体膜マイクロチップを利用した
膜輸送体の超高感度機能計測
生体膜マイクロチップ
Watanabe et al., Nat Commun (2014)
Watanabe et al., Sci Rep (2014)
9
超高感度化, 高定量化に求められる
計測システムの仕様
 膜輸送体と相性のよい生体膜の作成
膜輸送体と相性のよい薄い生体膜の
形成技術の開発 (特願2013-171493)
 微小試験管の容積の最小化
容積がaLの微小試験管の開発
 膜輸送体の駆動力の定量的な制御
膜電位の制御システムの開発
(特願2015-116045)
 蛍光指示薬の生体膜透過性を削減
非透過性蛍光指示薬の開発
(特願2015-202821)
10
膜輸送体と相性のよい生体膜の作成
従来の溶媒膜を作成するとき
残留する
有機溶媒
使用する有機溶媒
デカン、ヘキサデカン
技術的な課題
有機溶媒が膜内に残留
• 薄膜化に時間がかかる
• 十分な薄膜化ができない
• 膜輸送体との相性が悪い
11
膜輸送体と相性のよい生体膜の作成
本開発技術で生体膜を作成するとき
(特願2013-171493)
使用できる有機溶媒
技術的な利点
クロロホルム
デカン
ヘキサデカン
スクワレン
クロロホルムを利用すると
• 薄膜化が速い(20分以下)
• 十分な薄膜化が可能
• 膜輸送体との相性が良い
12
試験管の容積の小型化
超小型生体膜マイクロチップの開発(容量: aL)
φ
3.4m
480nm
120nm
30nm
Soga & Watanabe, Sci Rep (2015)
世界最小の容積(aL)をもつ生体膜マイクロチップ
13
試験管の小型化のメリット
微弱な輸送活性を超高感度に検出
小さい試験管は輸送基質の濃度変化を
能動輸送体の平均活性
100 s-1
劇的に大きくすることができる
1分子の膜輸送体であっても
1000秒程度で1 Mの基質濃度変化が可能になる
1 fL = 10-15 L = 1 m3
蛍光指示薬(一般的なK
は1 M程度)を利用すれば、
濃度変化
容積
反応時間
d生成物
1 膜輸送体の活性を試験管内の基質の濃度変化として
M x 1 mL = ~1015個 = 1013秒 (30万年)
超高感度に検出できる。
1 M
x
10 fL = ~103 個 = 1000秒
14
膜輸送体の駆動力の定量的な制御
膜電位の定量制御システムの開発
(特願2015-116045)
Watanabe et al., IEEE Trans Nanotech (2015)
金ナノ電極を実装した生体膜マイクロチップ
15
金ナノ電極を利用して膜電位を制御
DiBac4
蛍光性膜電位指示薬
長時間にわたり定量的に膜電位を制御できる
16
蛍光指示薬の生体膜透過性の制御
従来の蛍光指示薬
従来の蛍光指示薬の開発は細胞内での
生体反応の検出に主眼を置いている
開発された指示薬は生体膜の透過性の高いものが多い
すなわち、in vitro での生体反応計測に利用できるもの
は少なく、従来の指示薬を簡単に膜非透過性の指示薬
へ改造する技術が必要とされていた
17
膜非透過性の蛍光指示薬への改造技術
電荷を帯びた高分子鎖と蛍光指示薬を結合
(特願2015-202821)
1本鎖DNA
新しい指示薬
蛍光指示薬
(Fluorescein)
従来の指示薬
簡単に蛍光指示薬の膜透過性を改造できる
18
超高感度化により
様々な膜輸送体の機能計測が可能に
溶血素
P2X4
種類
ポア
チャネル型
受容体
基質
色素
Ca2+
F-ATPase
V-ATPase
POT
トランスポーター
トランスポーター
1次性能動輸送
2次性能動輸送
H+
H+
ジペプチド
膜輸送体の1分子機能解析
(例:F-ATPase)
プロトン輸送速度
~30 (s-1)
能動輸送の1分子機能解析も可能 (世界初)
20
生体膜マイクロチップの特徴まとめ
1, 生体膜でシールした微小試験管アレイ




生体膜の形成効率は99 %以上.
約10万個集積化されている.
生体膜はイオンなどの物質透過性はなく安定.
膜電位の定量制御も可能に.
2, 膜輸送活性計測の検出感度を大幅に改善
 検出感度が106倍改善 (検出限界:毎秒2分子).
 膜輸送体の活性を1分子単位で計測.
 能動輸送の計測も可能に.
21
想定される用途 (創薬)
薬剤スクリーニングシステム
(標的膜タンパク質の評価、薬剤の膜透過性の評価)
膜タンパク質チップ
膜タンパク質の高感度活性計測を基盤とした
薬効の評価および薬剤の膜透過性の評価
薬剤スクリーニングシステムへの展開
22
想定される用途 (医療)
膜タンパク質の個数計測システム
(早期疾患診断システム)
Watanabe et al., Proc. MicroTAS (2015)
膜タンパク質の1分子活性計測を基盤として
細胞内の標的膜タンパク質の発現個数を定量計測
細胞内発現個数の定量計測に基づく
早期疾患診断システムへの展開
23
実用化に向けた課題1
人工生体膜チップに細胞環境を再現する技術開発
生体膜の脂質組成、再構成要素群などを
徹底的に検証する必要がある
24
実用化に向けた課題2
従来の薬剤探索に利用されてきた
ロボティクス技術を実装する
96well プレートを利用した
自動液体分注装置
各wellの底に
膜タンパク質チップを実装
25
企業への期待
生体膜チップの実用化は、膜タンパク質を標的とした
超高感度・ハイスループットな薬剤探索および
医療診断システムが実現する可能性を秘めています。
実用化にあたり、様々な階層の実用開発研究が想定さ
れますが、これらを大学の研究室レベルで遂行するこ
とは極めて困難です。
創薬、分析機器開発、生体材料開発のノウハウのある
企業様のお力添えで是非とも生体膜チップの早急な実
用化を目指して参りたいと考えています。
26
本技術に関する知的財産権
知的財産権
発明の名称:高密度微小チャンバーアレイおよびその製造方法
出願番号:特願2013-171493
出願人:国立大学法人 東京大学
発明者:渡邉力也, 藤田大士, 菅裕明, 野地博行
発明の名称:高密度微小チャンバーアレイおよびこれを用いた測定方法
出願番号:特願2015-116045
出願人:国立研究開発法人 科学技術振興機構
発明者:渡邉力也, 曽我直樹, 野地博行
発明の名称:脂質膜非透過性蛍光指示薬
出願番号:特願2015-202821
出願人:国立大学法人 東京大学
発明者:渡邉力也, 大舘真也, 曽我直樹, 野地博行
27
本技術に関する問い合わせ先
技術問い合わせ
渡邉 力也
東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻
Email: [email protected]
ライセンス問い合わせ
神崎 修
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)
Email: [email protected]
鈴木 和哉
株式会社 東京大学TLO
Email: [email protected]
28