イネごま葉枯病の防除の考え方について

イネごま葉枯病の防除の考え方について
従来はあまり発生が見られなかったごま葉枯病が、平成20年は県内各地で発生し問
題となりました。ごま葉枯病は土壌条件や肥料条件によって、発病が大きく左右される
病害です。「秋落ち」と密接に関係があり、後半の肥切れが発病を助長するため、「秋落
ちのバロメーター」とも言えます。防除対策としては、まず「土づくり」、「秋落ちさせ
ない肥培管理」が基本となりますので、ごま葉枯病による被害を防ぎつつ、高品質米生産
に取り組んでいただきたいと思います。
どんな症状なの?
苗にも発生しますが、本県では苗での発生はほとんど認められませんので、ここでは
本田の症状(主に葉と穂)を説明します。7月頃から葉に病斑が出始め、葉身に周辺が
黄色くなった黒褐色楕円形斑点(2∼3mm程度)の病斑ができます。病斑が拡大すると、
丸みを帯びた大型病斑となり、色は黒褐色から灰褐色のやや不鮮明な輪紋ができます。
一見、いもち病の病斑と間違えやすいですが、いもち病は葉脈に沿って褐色の壊死線が
でき、縦長の菱形に近い病斑になるのに対し、ごま葉枯病は丸みのある病斑で壊死線は
できません。
穂の症状もいもち病に似ていて、穂軸や枝梗が淡褐色∼飴色になり、穂枯れ症状とな
りますが、いもち病のように白穂とはならず、ある程度は稔実します。
図1 葉の病斑
図2 穂枯れ症状
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図3 激発状況(止葉枯死、穂枯れ)
図4 ほ場条件の違いによる発病差
近年の発生状況と被害は?
従来は、上越地域や魚沼地域の常発ほ場で発病していましたが、近年は下越地域での
発生が目立ってきました。平成20年には県内各地で7月下旬頃から少しずつ発病が見え
始め、特に9月以降収穫間際頃に急増したため問題となりました。特に下越、新潟地域
を中心として、止葉の枯れ上がりや「穂枯れ」まで至る多発生ほ場が見られ、一部では
収量低下や品質低下にも繋がりました。
病気のもとはどこから?
ごま葉枯病菌の伝染源は、種子とほ場に残った被害わらですが、本病の発生時期が生
育後半となり遅いことと、苗での発病報告がほとんど認められないことから、被害わら
の影響が大きいと考えられています。そのため、ごま葉枯病に関しては本田での対策が
より重要ですが、種子消毒がいらないわけではありません。本病を含め、様々な種子伝
染性病害の防除に必須ですので、種子消毒を徹底しましょう。
ごま葉枯病は「イネの生育が不健全なときに取り付く貧乏神」!?
以下の条件で発生が多くなります。
(1)土壌・ほ場・施肥条件
砂質土壌に代表される秋落ち水田では、地力や保肥力が低く各種養分が流亡しやす
い特性を持っています。そのため、生育後期に栄養凋落が起こりやすくなり、本病に
対する抵抗力が低下して発病が増えます。また、生育制御や施肥設計が適切でなく、
生育後期に栄養凋落となった場合にも発病しやすくなります。さらに、作土下に礫層
があったり作土層が浅い場合や、ワキの発生等で根の健全な生育が阻害される場合も
同様です。
(2)気象条件
病原菌は比較的高温を好む菌ですので、特に出穂期以降登熟後期まで高温、多
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照の年に発生が激しくなります。これは高温、多照によってイネの老化、とりわ
け葉色の低下や下葉の枯れ上がりが急速に進んで抵抗力が低下することと、イネ
の抵抗力が低下する登熟後期まで病原菌が活動できることによります。
防除対策はどうしたら?
☆まずは、発生しにくい環境にするため、土づくり、施肥改善、栽培管理改善を最
優先に実施しましょう。すぐには結果は出にくいですが、長い目で見て腰をすえ
て取り組みましょう。
☆穂枯れが多発し減収や品質低下したほ場や常発ほ場では、他病害の同時防除も含め
て薬剤防除も検討しましょう。
(1)土づくり
○ 稲わらの秋すきこみを実施するとともに、完熟堆肥等有機物を積極的に施用しまし
ょう。
○ ケイ酸や鉄等を含む土づくり肥料を施用しましょう。可能な場合には客土も有効で
す。
○ 作土層が浅い場合は土壌中の根の分布を広めるために、徐々に深耕を進めましょう。
田畑輪換も根の分布を広めるのに有効です。
(2)施肥や栽培管理の改善
○ 後期栄養を確保できる施肥設計としましょう(分施、適切な穂肥施用、緩効性肥料
の利用等)。
○ 根腐れを助長しないよう、硫酸根肥料(硫安等)は使わないようにしましょう。
○ 中干しを徹底することで、イネの過剰生育を抑え根に酸素を供給し、根の活力を維
持させましょう。
(3)殺菌剤散布
水面施用剤もしくは液剤・粉剤の登録がありますので、適切な薬剤を選択して防除
して下さい。当年の発病抑制は、翌年以降の伝染源量抑制にも有効です。
(※農薬の種類については農作物病害虫雑草防除指針を参考にして下さい。また、農
薬の登録内容および使用方法については、必ず最新の農薬登録情報を確認してくださ
い。)
(専門技術指導担当
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堀武志)