四年に一度の踊りを披露 ふ く で ん 田植え踊りは東北の民俗芸能 で、山形県内だけでも か所以 上に存在しますが、小塩に伝わ る踊りには他所とは異なる二つ の特徴があります。 一つ目は、座敷で踊るという こと。家の者よりも下段の庭先 で踊るのが一般的ですが、小塩 では踊り手は神の使いとされ、 家の者よりも上段の座敷で踊り ます。小塩田植え踊り保存会(以下、保存会)の渡邉会 長は「座敷に上がるのは全国的に見ても珍しい。おそら く小塩だけだろう」と話していました。 二つ目は踊りを中断すること。小塩では、踊りが盛り 上がると、踊り手に対し見物客から誉め言葉がかかりま す。すると一同ぴたりと踊りを中断してしまうのですが、 踊りが終わったわけではありません。場が静まり返る中、 前列の踊り手が「誉めていただき嬉しいが、今は踊りの 途中なので後で改めてお礼をする」という旨の言葉を返 すと、再び賑やかな踊りがはじまります。 ➡ ➡ ご 小塩御福田田植え踊り ➡ き き み ➡ 「 小 塩 御 福 田 田 植 え 踊 り 」 と は、 小 塩 地区に江戸時代から伝わる豊作の祈りを こめた踊りで、地中で眠る田の神を起こ す場面からはじまり、田植えや収穫など の 動 き を 題 材 に し て い ま す。 4 年 に 一 度、うるう年に地区内の新築や結婚など の祝いごとがあった家で披露され、町指 定無形文化財になっています。 今 年 は、 2 月 日 に 地 区 内 の 3 軒 の 家々と公民館で披露されました。 はじめに葉山大権現に仕える法印らが 慶事のあった家々を巡り、五穀豊穣や無 ほ 病息災を祈祷しました。その後法印の法 ら 螺を合図に、入れ替わりで踊り手の「テ デ衆」 「 早 乙 女 」 や 演 奏 担 当 の「 下 座 」 など約 名が座敷に上がって踊りを披 露。踊りが披露される家や公民館には多 くの人が集まり、盛り上がってくると見 物客からおひねりが飛び交うなど、賑や かな行事となりました。 ほ ら 法印は誰にでも勤まるわけではあ りません。保存会の渡邉会長による み と「体格がよく、法螺貝を吹けるよ うな肺活量があり、しかも神酒をグ イグイと飲み干せるようなお酒の強 たけ ひら 今年法印に選ばれた のは、それらの条件を 満たす渡辺剛啓さん (小塩3) 。 家の主人から神酒を振舞われたら、 法印はぐいっと飲み干します。 「棒を持って踊るところが すごくかっこよかった。大 きくなったら一緒に踊って みたい」 堂々とした姿で家々 を回り、五穀豊穣など の祈祷をしました。 「 す ば ら し い 踊 り だ っ た。 田植え踊りは地区の宝。後 継者を絶やさず、後世に引 き継いで欲しい」 い方でなければならない」 とのこと。 伝統芸能を地区の誇りに 各地で後継者不足に悩む 中、常に 人以上のメンバー 植え踊り保存会。今年は3名 の青年が踊り手として初めて の舞台に立ちました。 て会の運営をしており、新しいメンバーは同年代の 友人同士で誘い合っている。そして何より、地区全 体で田植え踊りを大切にしており、小塩の青年は田 植え踊りを踊れることを誇りに思っている。これら が後継者が絶えない理由だと思います」と話してい 左から渡辺久子さん、 ツヨエさん、光子さん、 小松常子さん 12 田植え踊り当日、法印は案内役を先 にたて、若頭を従えて慶事のあった 家々を回ります。 ました。特色に富んだ小塩の田植え踊り。今後も長 じょうたろう 左から下山穣太郎くん、 小松桜子ちゃん、 下山ひなのちゃん 10 祈祷が終わると、若頭の持ってきた 箱からお守りとなる“虫除け札”を 取り出し、家の主人に手渡します。 見物客の誉め言葉に対し 返し言葉で応えます 2月11日の夜、田植え踊り行事を前に身を 清めるため、踊り手が水垢離を行いました。 撒いた水が数分で凍ってしまうほどの厳し い冷え込みの中、大きな声で気合を入れ、一 気に水をかぶる踊り手の皆さん。水をかぶる たびに、見学していた方たちも悲鳴や歓声を あげ、明日行われる踊りへの期待を高めてい ました。 「今年は家族が踊るということ で見学にきました。堂々として いてとても迫力があった」3代 続いて踊り手になっているとい う佐藤さんご家族は、そろって 見学に来てくれました。 家に着くと、神棚の前で祭文をあげ、 五穀豊穣・無病息災の祈祷をします。 ご り 20 がそろっているという小塩田 20 保 存 会 の 渡 邉 会 長 は、「 会 長が会を仕切るのではなく、メンバー全員で協力し 渡邉英一郎さん 法印の祈祷によって清められた場 で、田の神の使いとして豊作を祈願 する踊りを披露します。 24.3.15 2 24.3.15 田植え踊り保存会会長 水垢離で身を清める 佐藤和夫さんご家族 小塩御福田田植え踊りは町指定無 形文化財です。小塩地区だけでな く、町の宝として後世に引き継い でいくため、田植え踊り行事の一 連の流れを学びましょう。 く伝 承 し て 欲 し い も の で す 。 踊りが披露される家や公民館には、子どもからお年寄りまでた くさんの見学者が集まりました。地区全体で田植え踊りを大切 にしていることが分かります。 田植え踊りの流れ 今年の法印 法印一行が去ると、今度は入れ替わ りで賑やかな踊り手の一行がやって きます。 3 ➡ 広報なかやま
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