水処理工学ノート 4 砂ろ過処理 4-1 緩速ろ 緩速ろ過と急速ろ 急速ろ過 通常、浄水における粒子状濁質の除去はろ過処理によって完了する。ろ過法には緩速ろ過法と急速ろ 過法がある。両法は、砂をろ過材として利用している点では同一であるが、その濁質除去の技術原理に は差異があり、それに伴い構造や運転法も異なる。 緩速ろ過 急速ろ過 適用原水 濁度<10 度、BOD<2 mg/L 特に基準なし 前処理 普通沈殿(必要ならば) 凝集沈殿 ろ過機構 表面ろ過(生物作用) 深層ろ過(物理作用) ろ過継続時間 数ヶ月~半年 一日程度 ろ材洗浄方法 掻き取り→池外洗浄(機械洗浄) 池内洗浄(逆洗) ろ過速度 3~5 m/day 120~150 m/day 一池規模 5000 m2 以下 200 m2 以下 ろ層構造 砂 層 層厚 70~90 cm(運転中半減) 60~70 cm 材径 ES 0.30~0.45 mm、UC<2.0 ES 0.45~0.70 mm、UC<1.7 砂利層 層厚 40~60 cm 20~50 cm(集水装置による) 材径 3~60 mm (注) 2~50 mm ① ろ過速度(U) ;流量(Q)を池の表面積(A)で割った値 ② 有効径(ES ;effective size);土質工学でいう d10 均等係数(UC uniformity coefficient) ; UC=d60/d A Q 80 U= Q A 累積重量% y L Q ろ材粒径; dm 空げき率; ε 40 20 10 d10 0.2 d60 0.4 0.6 0.8 1.0 砂粒子直径.( mm) U; ろ過速度( 透水速度) Q; ろ過流量 A; ろ層面積 L; ろ層厚さ 60 有効径(ES)=d10=0.2 mm 均等係数(UC)=d60/d10=3 y; 損失水頭 4-2 緩速ろ 緩速ろ過法 緩速ろ過法は 1809 年に英国で利用され始めた技術であるが、19 世紀後半コレラが蔓延したドイツの 諸都市のなかで、この技術を浄水に取り入れていた都市だけがコレラ禍から免れたことから、欧州にお ける浄水の標準技術の位置を占めるに至った。わが国においても第二次世界大戦以前は、大部分の浄水 場で緩速ろ過法を濁質除去の中心技術として利用していた(例;淀橋浄水場―現新宿副都心) 。 1/8 藻類を増殖さ せるために 屋外設置が好ましい Schmutzdecke 緩速ろ過池 流入管 浄水池 ろ過砂層 支持砂利層 下部集水装置 流出管 砂表面の 砂表面の Schmutzdecke 緩速ろ過法では、ろ過層の表層に糸状細菌や珪藻類が微生物膜(Schmutzdecke)を形成し、その微生 物が排出する粘着物の吸着作用と微生物自身の網状構造による篩い作用によって濁質粒子を除去する。 時間の経過とともに、この微生物膜は増殖し、そのためにろ過抵抗が増加して通水速度(ろ過速度)は 低下する。この段階で水位を下げ、表面の砂層の 2~3 cm 程度掻き取り、ろ過速度の回復をはかる。 掻き取った砂はろ過池外に設けた砂洗浄機で洗浄し、補給砂として保存する。このような操作を繰返し て砂層厚が半減(40 cm 程度)したら、砂を補給し、砂層厚を元状に復す。この操作周期は水道原水の 2.0 0.06 損失水頭( m) 微生物密度(mg- C/cm 2 ) 汚染程度に依存するが、おおむね数ヶ月から半年である。 0.04 0.02 運転日数 40 80 120 1.5 1.0 0.5 運転日数 40 80 120 緩速ろ過法は原水の濁度や汚染度が高い場合に適用できない上に、広い用地を必要とする。このため、 わが国の大都市の浄水場で緩速ろ過法を採用している例は極めて少ないが、微生物の作用を利用してい る緩速ろ過法では粒子状濁質だけではなく、有機物や NH4+の酸化除去も期待できる上に、クリプトス ポリジウム(下記註参照)のような塩素消毒では殺せない病原微生物も高い効率で除去できる利点があ り、最近、緩速ろ過法は見直されている。 註 クリプトスポリジウム 学名 Cryptosporidium parvum 腸粘膜に寄生し烈しい下痢症状を起す水系伝染性の原生動物。米国で 1982 年に AIDS 患者から発見 され、米国では毎年のように水道水が原因で流行している。最大の事件は Milwaukee で起きたもので 市民 160 万人のうち 40 万人が感染し、4000 人が入院、AIDS 患者・老人・乳児を中心に 100 人が死亡 した。日本での主な発生例は下記の通り。 1994 年 神奈川県平塚市 雑居ビル住人 786 人中 461 人が感染 原因;雑居ビルの受水槽が下水 管とクロス・コネクション(誤接続)していた。 1996 年 埼玉県越生町 町営水道水を利用する 13800 人のうち 8812 人が感染。児童を中心として 約 1000 人が烈しい下痢を訴えた。原因は確定していないが、水源であった越辺川伏流水 が汚染されていた可能性が高い。 水道にとってクリプトスポリジウムが厄介なのは、その卵(オーシスト)が塩素消毒に対して耐性があ り、浄水で消毒処理を行っても生き延びてしまうことである。 2/8 水処理工学 4 4-3 急速ろ 急速ろ過法 急速ろ過法は、比較的に濁度の高い河川水に緩速ろ過法を適用して失敗した米国で 19 世紀末に生ま れた技術で、当初より凝集沈殿との組み合わせで実施されていた。この凝集沈殿と組み合わせる急速ろ 過法は 1910 年頃より米国の標準的な浄水方法になったが、我が国においても第二次世界大戦以後に建 設された浄水場の大部分はこの方式を利用している。 (1) 急速ろ過池の構造と運転法 表面洗浄水配管逆洗排水用樋 逆洗排水用樋 ろ過原水 流入管 表面洗浄ノ ズル 逆洗排水管 逆洗用水管 ろ過済水 流出管 急速ろ過装置は大別すると重力式ろ過器、圧力式ろ過器に分けられるが、浄水に利用されている急速 ろ過池は右図のような重力式に属し、水はろ過層表面と裏面の間の全水頭差(ろ過損失水頭)を駆動力 として Darcy の法則に従い、ろ過層を下方向に流れる。この過程で、水中に存在した粒子状濁質はろ 材(砂)に補足される。補足された濁質量の増大とともにろ材間隙は閉塞する。その結果、透水係数は 低減し、損失水頭は増大する。また、ろ過層内の抑留濁質量が過剰になると、濁質の補足が不十分にな り、場合によってはろ過水に濁質が残留するようになる。この現象を breakthrough (破瓜現象)と云 ろ過操作時の水の流れ 許容損失水頭 損失水頭 許容濁度 濁度 運転時間 ろ 過水濁度 ろ 過層損失水頭 う。 逆洗操作時の水の流れ 急速ろ過池の運転では、損失水頭とろ過水濁質濃度を運転管理指標とし、これらのいずれかが設定基準 値を越えたら、ろ過操作を停止し、逆洗操作に移る。逆洗と は、ろ材洗浄用水をろ過層下部より上方向より流し、砂粒子 を流動化させる操作である。この流動化により砂粒子は相互 衝突を繰り返し、その過程で砂粒子表面に付着していた濁質 が脱着する。ろ過原水に含まれる濁質の性状によっては逆洗 だけでは砂粒子洗浄が不十分な場合もある。特に、膠質の濁 質はろ過層表面の砂粒子に強く付着する傾向がある。表面洗 浄はこれを脱着するための操作で、水位を下げた後、逆洗操 作に先立ち、ろ過層表面に噴流水を吹き付ける。また、いく 3/8 つかの浄水場では、逆洗に先立ち、砂層内に高圧空気を吹き込み、砂粒子間に閉じこめられた気泡が抜 ける際の砂粒子相互の衝突によって濁質脱着効率を高めている(気泡洗浄)。このような洗浄操作によ り砂粒子から脱着された濁質を含む逆洗排水は沈殿池流入口に戻され、沈殿処理後、濃縮脱水操作など を経て浄水汚泥として処分される。 逆洗操作時においては、砂は均一に流動しなければならない。このためには砂の大きさは可能な限 り均一であることが好ましいが、実際には、まったく均一径の砂を多量に集めるのは難しいので、均等 係数の上限を 1.7 と定めている。逆洗流 ① の上昇流速は池全体に均等でなければ ② ③ ④ ①に戻る ならぬので、急速ろ過池の一池規模は 上限が 200m2 と小さくなる。また、急 速ろ過池の運転は、通水操作と逆洗操 作の繰り返しになるので、小さなろ過 池を複数個設けて、それらをメリーゴ ーランド式に運転したほうが浄水工程 通水中 逆洗中 全体を定常的に運転する上で好都合で ある。 (2)急速ろ過の濁質粒子捕捉機構 一般に流れのなかにある小粒子が大き な粒子に捕捉される機構には次の 4 つの 汚濁粒子の砂粒子表面への捕捉さ れかた 機構がある。 ①篩 捕捉 ;流れに乗った小粒子が 複数個の大きな粒子の間にはさまれる ②遮り捕捉 ;大きな粒子に近接する 流線に乗った小粒子がその流れのため に大きな粒子に近づいたときに、その 引力圏に引き込まれる。 ③沈殿捕捉 ;流体よりも比較的密度 が大きい小粒子は流線から逸脱して大 拡散捕捉 きな粒子上に沈着する。 沈降捕捉 遮り 捕捉 ④拡散捕捉 ;小粒子が非常に微小な場合には、その微小粒子はブラウン運動(熱運動)流線の周り にランダムな運動を行ない、バイ・チャンスで大きな粒子の引力圏に引き込まれる。 このうち、①の篩作用は捕捉される粒子と捕捉する粒子が同じオーダーの大きさの場合に限られ、急速 砂ろ過法のようにその大きさが 10 倍以上も違う場合にはでほとんど考慮する必要がない。 Yao and O’Melina は②から④の機構を検討し、直径 D の砂粒子 1 個に向かっている流れにある直径 x の汚濁粒子が砂砂粒子に補足される確率(捕捉効率という)η(無次元数)を次のように表現している。 2 v 2kT 3 x η = + + U 3πµx 2D ここで、 U ;ろ過速度〔LT-1〕 2/3 4 DU 2/ 3 ・・・・① v ;微小粒子の沈降速度〔LT-1〕 k ;ボルツマン定数 T ;絶対温度 a ;係数(0.9) µ ;水の粘性係数 上式右辺の第 1 項が遮り捕捉に、第 2 項が沈殿捕捉に、また第 3 項が拡散捕捉に相当する。この式によ れば、微粒子径 x が比較的に大の場合には遮り捕捉と沈殿捕捉が支配的な捕捉機構となり、逆に微粒子 径 x が小の場合には拡散捕捉が支配的な捕捉機構となることが理解される。捕捉効率 η を実際の場合に 4/8 水処理工学 4 あてはめて計算すると、0.1~0.001 という非常に小さな値である。しかし、この概念を砂ろ過層厚さ全 体の捕捉にあてはめると、 − dC 3(1 − ε) = ηC 2D dz ・・② となり、これより Cout L 3 = exp− (1 − ε )η Cin 2 D を得る。 ここで、 C ;砂層の深さ z の位置における水中の濁質濃度〔ML-3〕 ε ;砂層空隙率 Cin ;砂層入口での濁質濃度 Cout ;砂層出口での濁質濃度 L ;砂層厚さ 砂層空隙率は 0.4 前後であり、砂層厚さを 50cm、砂粒子径を 0.5mm として計算すると、たとえ η が 0.001 という小さな値であっても、Cout/Cin Cout/Cin は 0.46 (濁質除去率 54%)で、もしも η が 0.005 であ れば、Cout/Cin Cout/Cin は 0.01 (濁質除去率 99%)ということになる。 なお式②で、 λ = 3(1 − ε) η 2D とおけば、②は dC = −λ C dz となる。 この式は中央大学土木工学科の初代衛生工学担当教授岩崎富久氏が 50 年前に提案した式で、その後の 濾過理論研究の出発点になった式である。 濁質粒子が水中から除去されることは、それは濁質粒子の砂層中への蓄積を意味する。これを数学的に 表現すると、次のようになる。 U ∂C ∂σ + =0 ∂z ∂t ; ∂C = − λC ∂z ここで、 σ は砂層体積あたりの蓄積濁質粒子量(次元は〔ML-3〕)である。 濁質粒子がいったんは砂の表面に捕捉 されても、その一部は砂表面から脱着 砂粒子表面に 蓄積した汚濁物 捕捉さ れる汚濁粒子 して再び水中の濁質となるので、岩崎 が提案した式の λ も、この堆積堆積濁 質粒子量 σ の影響を受けて通水期間中 脱着した汚濁粒子 に変化する。このことを考慮に入れた 砂粒子 岩崎式の修正には様々な形の数式が提 案されているが、そのうちで下記の Mintz 式はもっとも簡単なものである。 M int z Model ∂C aσ = − λ0 C − ∂z U この式の a 値は砂-濁質間の結合力の強さを表すもので、その結合力が強いほど a 値は小さい。事前に 凝集処理を施さない濾過(これを「直接濾過」という)の場合には、砂-濁質の付着が弱く、それだけ 破瓜現象(breakthrough)も早く生じる。 (3)上向流ろ過と多層ろ過 ろ過理論の研究はろ過機構を理解する上では役立っているが、実際のろ過池の設計や運転とは結びつ いていない。その理由のひとつは、実際の砂ろ過層で使われる砂は砂粒子径が一様ではないことである。 このような粒径分布があるために、逆洗操作を行うと必然的に表層ほど小粒径になる層をなす。①式か ら理解されるように、砂粒子の補足効率は砂粒子径が小さいほど高く、結果として通常の下向流ろ過で は、濁質の捕捉と蓄積は表層に集中しやすく、そのことが通水運転期間を短くする。上向流ろ過と多層 ろ過は普通の下向流単層ろ過のもつこの欠点を解消するために生まれた技術である。すなわち、上向流 ろ過では処理すべき水を砂粒子径が大きな下部からの砂粒子径が小さな上部に向かって流すことによ って、濁質粒子蓄積の均等化をはかっている。この方法は極めて合理的ではあるが、通水と逆洗が同方 向なので、逆洗直後のろ過水に逆洗廃水の一部が混入する恐れがあるので浄水では使われていない。多 5/8 層ろ過とは砂よりも軽いろ材(通常は anthracite;無煙炭)をろ層上部ろ材に用いることにより、逆洗 を行っても上部ろ材径が下部ろ材径よりも大きくなるようにして濁質蓄積の均等化をはかる技術であ る。二層ろ過法は単層ろ過法に較べて通水間を長くとれるが、アンスラサイトの強度が砂ほど大きくな く、逆洗によって磨耗していくという欠点がある。 上向流ろ過 下向流二層ろ過 通水時 普通( 下向流) ろ過 通水時 逆洗時 通水時 (4)水頭損失 Q ろ過池面積A ろ過速度 U= 管内速度 v = 流量Q A 4Q 2 πd L1 砂 層 L2 砂利層 集水装置 流線 流量制御弁 但し d;接続管径 浄水池 全損失 水頭 y l y = y1 + y2 + y3 + y4 + y5 L1 L2 U: y2 = U K1 K2 y3 集水装置での損失 2 v2 l v y4 = λ : y5 = k d 2g 2g y1= K1:砂層透水係数 K2:砂利層透水係数 l :接続管長 λ :管摩擦損失係数 k :制御弁抵抗係数 急速ろ過池での損失水頭yは砂層で水頭損失y1、砂利層での水頭損失y2 、下部集水装置での水頭損失 y3 、浄水池までの接続管における摩擦水頭損失y4 、および流量制御弁での水頭損失y5 、の 5 つの構 成要素に分けることが出来る。 y=y1+y2+y3+y4+y5 砂層および砂利層での損失水頭は、ダルシーの法則に従い下記のように表すことが出来る。 y1= L1 L U y2= 2 U K1 K2 ここで、L1と L2はそれぞれ砂層と砂利層の厚さで、K1と K2 は砂層と砂利層の透水係数(注;実際に は一定の値ではなく層の深さ方向に変化する)である。また、U はろ過速度で U=Q/A である。 集水装置での水頭損失y3 の大きさは装置の種類や運転状態に依存するが、高々数 cm の値である。接続 6/8 水処理工学 4 管での摩擦損失と流量制御弁での損失水頭は下記式で求められる。 y4=λ v2 l v2 y5=k d 2g 2g ここで、 λ;摩擦損失係数 l ;接続管長 d;接続管径 k;制御弁の損失係数 v;接続管内平均流速(=4Q/πd2) である。 通水過程で流量 Q が一定であればy2 ~y5 の値はほとんど変わらない。しかし通水によって砂層に濁質 が蓄積してくると透水係数 Kiは減少し、それに対応して砂層での水頭損失は増大し、もしも浄水池へ の流出水位が上図のように一定であれば、急速ろ過池の水位もそれに応じて上昇する。砂層における損 失水頭増大量は施設(ろ過池の高さ)の面からも制約が生ずるが、たとえ施設的に余裕があったとして も、ある一定以上の砂層損失水頭は好ましくない。通常の単層下向流ろ過では、濁質蓄積は砂層表面に 集中して起こり水頭損失もそこに集中する。結果として、砂層表面から水面までの高さ以上の水頭損失 が生ずると砂層上部は負圧(絶対圧が大気圧より低い水圧)になる(図参照)。このような負圧帯が出 来ると、結果としてろ過水の水に溶解していた空気成分(窒素および酸素)がガス化し、気泡が発生す る。気泡の発生はそれ自身の流れの経路を狭め、圧力損失が加速される。また気泡が合体すると、その 浮力で砂層にクラックを生じせしめ、流れの短絡が起こり、ろ過水の濁度が高くなってくる。このよう な現象を防ぐためには、砂層での損失水頭は 1.5 ないし 2m 以内に抑えなければならない。 (付録)砂ろ過の水理 ☆通水時の水理 右図のような粒径Dのろ材だけから構成される理想ろ過地を考える。 砂層内を層流としてダルシー(Darcy)の式を適用すると y A U= =Ki=K Q L となる。 ここに K;透水係数 i;圧力勾配 従って、損失水頭は LU K y= となる。 透水係数 K に関してフェア~ハッチ(Fair-Hatch)は次の式を提案している。 g K= kν ここで 2 D σ 2 ε ε 1-ε ν ;水の動粘性係数 g;重力加速度 ε ;ろ層空隙率 D;ろ材粒径 σ ;ろ材形状による係数(完全球形粒子; σ =6、角張った粒子; σ =8.5) k;ろ過係数(Dにメッシュ径を用いた場合;k=5、D に実径を用いた場合;k=6) フェア~ハッチの透水式の原型はコゼニ~カルマン(Kozeny -Karman)が行った次のような解析を基 礎としている。 1) 細孔内の層流に関するハーゲンの法則 V= g 2 g 2y g 2 y = R i= R R 2ν 2ν l 2ν ς L ここで V;細孔内実平均流速 R;細孔平均径深 l ;紬孔平均長 g;細孔長補正係数(3 前後の値) 体積 Q のろ層に含まれる細孔の平均径深 R は、その中のろ材数 n およびろ材の全表面積を S とす ると次のように計算される。 n=(1-ε ) 6Ω 6Ω S=nπ D2=(1-ε ) 3 D πD εΩ εD 空隙体積 R= = = ろ材表面積 S 6(1-ε ) 7/8 U=ε V の関係があるから、 g V= = ε 2ν U kσ 2=72 ς 2 gD2 ε D y すなわち = U 6(1-ε ) ς L 72 ν ς ε 2 y y =K 1-ε L L とおけば Fair-Hatch 式と一致する。 2)径や形状の異なるろ材で構成されるろ層での損失水頭 フェア~ハッチ(Fair-Hatch)式 kν y= g 2 2 σ 1-ε LU Pi i ∑ ε ε i Di Di、 σi;i 種ろ材の粒径および形状係数 Pi;i 種ろ材の全ろ材に対する重量構成比 【註】ろ材径分布がヒストダイヤグラムで与えられている場合、 Diには上限径下限径の幾何平均を用 ここで いる。 ローズ(Rose)式 2 y= ここで PC 1.067 U 24 3 + +0.34 2 L∑ i i Ci = g ε i ϕiDi Re Re ϕi;i種ろ材の形状係数、 完全球形ろ材; ϕ =1.00 摩擦した砂; ϕ =0.82 普通の砂; ϕ =0.75 角ばった砂; ϕ =0.73 【例題】下記のようなろ材構成をもつニ層式重力ろ過池に、ろ過速度 U=230 m/day で水温 20℃の清 水(ν =1×10-6 m2/s)を流す予定である。ハッチ式およびローズ式の双方により、この場合の損失水 頭を推定せよ。ただし各ろ材の粒径は均一とし、ハッチ式の k は k=6 とする。 ろ材径 空隙率 形状係数 ろ材種 ろ層厚 ϕ σi Li(mm) Di(mm) ε 無煙炭 300 1.6 0.4 8.5 0.73 砂 300 0.5 0.4 7.6 0.82 [解答]ν =1×10-6 m2/s =1 mm2/s U=230 m/day =2.66 mm/s 2 ハッチ式による場合 2 σ kν (1-ε ) y= 3 LiUi i g ε Di 2 無煙炭層 2 8.5 6 × 1 0.6 y= =77.6 mm × 3 × 300 × 2.66 × 0.4 1.6 9800 2 砂層 2 7.6 6 × 1 0.6 y= =634.9 mm × 3 × 300 × 2.66 × 0.4 0.5 9800 合計 y=77.6+634.9=712.5 mm=約0.71 m 8/8 水処理工学 4
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