C

薬物代謝
薬物代謝
• 薬物が体内に入り、体外に排出されるまでの過程に
おいて、生体内構造変換をうけること
– 酸化、還元、加水分解、抱合
• 生物学的に活性不活性 :解毒
• 生物学的に活性更に増強 :代謝的活性化
• 生物学的に不活性活性 :代謝的活性化
代謝的活性化
生物学的に不活性活性
• アセトアニリド、フェナセチン ・
アセトアミノフェン
• テガフール 5-フルオロウラシル
生物学的に活性更に増強
イミプラミン デシプラミン
ジアゼパム オキサゼパム
サラゾスルピリジン

5-アミノサリチル酸
腸内細菌
肝臓
• 体内で最も大きい臓器 1-1.4kg(adult)
• 栄養の処理・貯蔵・消費に関わる代謝、血液
成分の調節、胆汁の生成・分泌、生体異物の
代謝・排泄
• 安静時の血液流入量1400ml/min
– 3/4-4/5 門脈、1/5-1/4 肝動脈
(Bloom W, and Fawcett D. W:A Textbook of Histology,
W.B. Saunders, Philadelphia, 1968)
第1相反応 酸化酵素のほとんどが小胞体に存在する
第2相反応 グルクロン酸転移酵素は小胞体に存在
グルタチオンS、その他は細胞質やミトコ
アに存在
ンドリ
肝臓ホモジネート
800 x g 10min
沈渣
核
上清
6000-9000 x g 10-20min
沈渣
上清
ミトコンドリア、リソゾーム
沈渣
小胞体:ミクロゾーム画分
105000 x g 60 min
上清
細胞質
チトクロームP450は主に小胞体に存在するが、核膜、ミト
コンドリアにも存在
主な発現臓器
Organic Anion
Transporter
OAT
腎
Family(OATP1)
PATP Family(LST 1) 肝
Organic Cation
腎、肝
Transporter
OCT Family(OCT1,
OCT2)
代表的な基質
PAH, Furosemide,
Methotrexate,
Indometacin,
Pravastatin, タウロコール
酸
TEA, Procainamide,
Cimetidine
• 薬物代謝酵素
– 細胞内のミクロソーム画分、可溶性画分、ミトコンドリ
ア画分
– 極性の低い化合物を極性の高い化合物に変換
800xg
9000xg
ホモジネート
上清
105000xg
上清
上清
可溶性画分
沈渣
未破砕細胞、核
沈渣
ミトコンドリア
沈渣
ミクロソーム
• 第Ⅰ相反応
 酸化、還元、加水分解
– 水酸基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基などの
官能基が付加されたりることにより親化合物より水溶性に
なる
• 第Ⅱ相反応
薬物代謝全体の律速段階
 抱合、合成
– 官能基に対する抱合、合成反応
• 第Ⅲ相反応
– 肝実質細胞内で生成された代謝物は胆汁或いは血液中に
移行する。この過程をこのように呼ぶことがある ABC
transporter, BSEP, OATP1, LST1, OCT1, OCT2
第Ⅰ相反応
• 酸化反応
– Cytochrome P450 (P450, CYP)
– フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)
– アルコール脱水素酵素(ADH)
細胞質
(可溶性画分)
– アルデヒド脱水素酵素(ALDH)
ミトコンドリア画 – モノアミン酸化酵素(MAO)
ミクロソーム画
分
分
N-脱アルキル化
+
薬物例
O
H
N
Cl
ジアゼパム
テオフィリン
N
デスメチルジアゼパム
薬物例
N-脱アルキル
アミトリプチリン
ノルトリプチリン
芳香環の水酸化
イミプラミン
N-脱アルキル
デシプラミン
芳香環の水酸化
アロプリノール
オキシプリノール
O-脱アルキル化
+
HCHO
O-脱アルキル
リン酸コデイン
O
H
N
硫酸モルヒネ
O
H
N
NH
O
O
NH
O
プリミドン
フェノバルビタール
アルキル側鎖の水酸化
トルブタミド
O
O
O
S
NH
NH
H 3C
トルブタミド
ヒドロキシメチル体
ジアゼパム
インドメタシン
テオフィリン
薬物例
芳香環の水酸化
フェニトイン、ワルファリン、
プロプラノロール
R
N-ヒドロキシル化
クロルフェニラミン
アセトアミノフェン、キニジン
S-オキシド化
R1
R1
S
R2
S
R2
O
クロルフェニラミン、フルフェナジン
エポキシ化
カルバマゼピン
加水分解
カルバマゼピン
10,11-エポキシド
基質
RSR'
b5:チトクロームb5,
fp2:NADPH-チトクロームc還元酵素
fp1:NADP-チトクロームb5還元酵素
RSOR'
一原子酸素添加反応
RSO 2 R'
P450
• アミノ酸の相同性が40%を超える場合をfamily
• アミノ酸の相同性が55%を超えるものをsub
family
• CYP1〜 CYP4が存在
• 活性中心はプロトヘム
CYP3A4
family
iso-form
subfamily
基質となる医薬品
CYP1A1
ペンゾαピレン,7−エトキシクマリン
CYP1A2
テオフイリン,カフェイン,フェナセチン,プロプラノロール*, メキシレチン,タモキシフェ
ン,オランザピン
CYP2A6
CYP2B6
クマリン,ニコチン,メトキシフルラン,テガフール,パクリタキセル,パルプロ酸
CYP2C9
CYP2C19
トルブタミド,フェニトイン,ワルフアリン,ピロキシカム、テノキシカム、ジクロフェナク、ナプロキセン,イ
ブプロフェン,メフェナム酸、スルファフェナゾール,トラセミド,ロサルタン
CYP2D6
アミトリプチリン**,クロミプラミン,コデイン, デシプラミン,デキストロメトルファン,デプリソキン,エン
カイニド,フレカイニド, フルフエナジン,イミプラミン**,メトプロロール,ノルトリプチリン,ペルフェナジン,
プロパフェノン,プロプラノロール** ,スバルティン,チオリダジン,チモロール,ハロペリドール,クロ
ザピン
CYP2E1
CYP3A4
エチルアルコール、クロルゾキサゾン,イソフルラン
シクロフオスフアミド
オメプラゾール,ジアゼパム*,イミプラミン*,プログアニン、ヘキソバルビタール、メフェニトイン、メ
フォバルビタール、アミトリプチリン
ニフェジピン, コルチゾール,シクロスポリン,タクロリムス,エリスロマイシン,リドカイン, キニジン,ジ
ルチアゼム**,ベラバミル,ゾニサミド,ジアゼパム,デスメチルジアゼパム**,クモキシフェン,アミオ
グロン,エトポシド,ミダゾラム,トリアゾラム,コカイン, ダプソン,テルフエナジン,カルバマゼピン,トリ
メタジオン,クラリスロマイシン, アミトリプチリン*,イミプラミン*,ロバスタチン,インジナビル,グラニセ
トロン
*脱アルキル化,**水酸化
Cytochrome P450
• 薬物代謝反応全体の約8割を占める。
–
–
–
–
–
–
–
–
芳香環の酸化
側鎖アルキル基の酸化
二重結合のエポキシル化
N, O, S-脱アルキル化
ヘテロ原子の酸化
脱イオウ化
脱ハロゲン化
アルコールの酸化(エタノールは一部がエタノール酸化酵
素系により酸化される)
Cytochrome P450
• ミクロソームに局在する膜結合性のヘムタンパク質、還
元型が一酸化炭素と結合して450nm付近に吸収極大
を示す。
• 動物細胞では4種のfamilyが存在 相同性>40%
• 基質特異性は極めて低い
• 1A2, 2C9, 2C19, 2D6, 3A4で医薬品代謝の95%を占
める
• 医薬品や化合物が本酵素の誘導、阻害が起こる
• 遺伝的に多型を示す
• 分子量48000〜60000
P450以外による酸化反応
• フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)による
酸化
• アルコール脱水素酵素(ADH)
• アルデヒド脱水素酵素(ALDH)
• モノアミンオキシダーゼ(MAO)
還元反応
• 主に肝臓で行われ、種々の酵素が関与する。
• ニトロ基、アゾ基、カルボニル基、ヘテロ原子
のオキシドの還元、エポキシドの還元、二重結
合の還元、C-ハロゲンの還元
酸素による
阻害を受け
ない
NADPH-P450還元酵素による還元反応
NO 2
NO 2
NO
NHOH
NO 2
NO 2
NH 2
NO 2
ニトロ基
の還元
NH 2
N N
H2 N
SO 2NH 2
prontosil
NH 2
NHNH
H2 N
sulfanilamide
H2 N
SO 2NH 2
アゾ基
の還元
NH 2
NH 2 + H 2N
SO 2NH 2
加水分解
NH 2
NH 2
エステラーゼ
+ H O CH
2
O
O C
H2
procaine
NH 2
O
C
H2
N(C 2H 5)2
OH
O
加水分解されにくい
NH C
H2
procaineamide
C
H2
N(C 2H 5) 2
C
H2
N(C 2H 5)2
加水分解
O
O
OH
NHNH2
NH 2 NH 2
N
イソニアジド
脱ヒドラジン
N
第Ⅱ相反応
•
•
•
•
ステロイドホルモン、生理活性アミン、胆汁酸
水溶性の高い抱合体が生成される。
分子量が増大。極性化 水溶性
生体膜透過性の低下。尿または胆汁への排
泄促進
代謝的に活性化される場合もある
代謝反応
グルクロン酸抱合
ハンドグリップ官能
基
-OH, -COOH,
-NH2, -SH
薬物
モルヒネ、フェニルブタゾン、チオペ
ンタール、メプロバメート、アセトア
ミノフェン、ヘキソバルビタール
硫酸抱合
-OH, -NH2
アセトアミノフェン、ステロイド、メチ
ルドパ、イソプロテレノール
アセチル抱合
-NH2
イソニアジド、スルホンアミド類、ヒ
ドララジン
グリシン(アミノ酸)
抱合
-COOH
安息香酸、コール酸、サリチル酸、
フェニル酢酸
グルタチオン抱合
ニトロ、ハロゲン、不飽和カル
ボニル化合物、エポキシなど
ベンジルクロライド、ベンゼン、ニト
ロブタン
メチル抱合
-OH, -COOH,
-SH
イソプロテレノール、メチルドパ、ア
ザチオプリン
グルクロン酸抱合
•
•
•
•
•
-OH, -COOH, -SH, -NH2
β配位で結合
極性が増加、分子量増加、
cMOAT / MRP2で能動的に排泄。
排泄された抱合体は、腸内細菌によりグルクロン酸
が離れ、再び消化管から吸収されることがある。(腸
肝循環)
• Ⅱ相反応の中では最も広く行われている。
UDP-グルクロン酸転移酵素(ミクロソーム)
グルクロン酸抱合 (例)
HO
Glu
O
O
HO
O
N CH 3
HO
モルヒネ
N CH 3
HO
N CH 3
Glu O
sub
3-gluclonide
グルクロン酸(Glu)
O
+
main
6-gluclonide
グルクロン酸抱合される薬物の腸肝循環
腸肝循環する薬物
モルヒネ、グルテチミド、ジエチルスチルベストロール、フェノー
ルフタレイン、ヘキサクロロフェン
硫酸抱合
• フェノール、アルコール性-OH, -NH2, -SH
• カテコールアミンのような生体物質の代謝に関
係
• 極性が増加する。
• 生体内の硫酸塩プールは量的に限られており、
反応は飽和しやすい。
• 硫酸転移酵素(可溶性画分)
硫酸抱合
生体内の硫酸塩プールは限られているので、反応は飽和
しやすい。
活性硫酸(PAPS)
O N
O N
H 2N
NHS O3H
SO 2NH
H 3C
CH3
SO 2NH
H 3C
CH3
アセチル抱合
• 芳香族ーNH2, -NHNH2基, -SO2NH2基
• Acetyl-CoAを補酵素とし、N-アセチル転移酵
素(NAT)で触媒される。
• 本反応は一般に薬物の水溶性を減少させる。
• NAT2には遺伝子多型が存在する
• アセチル転移酵素(ミトコンドリア)
アセチル抱合
N-acetyltransferase
H3 C
O
SO 2 NH 2
N
H
acetyl-CoA
H 2N
SO 2 NH 2
SO 2 NH
H2N
O
CH3
sulfanylamide
H3 C
O
O
N
H
SO 2 NH
O
O
NHNH2
N
isoniazide
NHNH
N
CH 3
O
CH3
アミノ酸抱合
• -COOH基を持つ化合物に対して、acyl-CoA
合成酵素とacyl転移酵素によって、グリシンや
グルタミンなどのアミノ酸を結合させる反応
• アミノ酸N-アシル転移酵素(ミトコンドリア)
アミノ酸抱合(グリシン抱合)
反応は飽和しやすい。
RCOOH
+
RCO
CoA +
S
CoA
C OOH
benzoic acid
RCO
SH
R' NH 2
S
CoA
RCONHR'
O
NHCH2 COOH
hippuric acid
メチル抱合
• フェノール、アルコール性-OH, -NH2, -SH
• 極性が下がるので、未変化体より薬効が増加
することがある。
• メチル転移酵素には遺伝子多型が存在する。
• メチル転移酵素(可溶性画分)
メチル抱合
HO
HO
CH 3
CHCH2 NHCH
COMT
H 3 CO
CH 3
HO
CHCH 2NHCH
CH 3
OH
イソプロテレノール
OH
COMT:カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ
エピネフリン,ノルエピネフリン
S
S
N
N
N
TPMT
メルカプトプリン
N
N
N
H
CH3
N
N
H
6-メチルメルカプトプリン
TPMT:チオプリンメチルトランスフェラーゼ
CH 3
グルタチオン抱合
• グルタチオンS転移酵素(可溶性画分)
• 求電子性芳香族化合物、ハロゲン化合物、不
飽和カルボニル化合物が基質
• メルカプルール酸に代謝される。
• cMOAT / MRP2で能動的に排泄
グルタチオン抱合
グルタチオン抱合は極性基を持
たない化合物と反応する唯一の
例
O
HS CH 2CHCNHCH2 COOH
グルタチオン
NHCCH2 CH 2 CHCOOH
O
NH 2
R-X
グルタチオンS転移酵素
O
R-S CH2 CHCNHCH2 COOH
NHCCH2 CH 2 CHCOOH
O
NH 2
Glu
グルタチオン抱合体
O
R-S CH2 CHCNHCH2 COOH
Gly
R-S CH2 CHCOO H
acetyl-CoA
NH 2
R-S CH2 CHCOO H
NHCO CH3
メルカプツール酸抱合体
(N-アセチルシスティン誘導体)
P450を誘導する医薬品
P450分子種
誘導薬
誘導を受けやすい薬物
CYP1A1/ CYP1A2
テオフイリン,タモキシフェン,オメプラ
ゾール,ランソプラゾール,喫煙,3−メチ
ルコランスレン
CYP1A6
フェノバルビタール
CYP2B6
フェノバルビタール
ヘキソバルビタール,ペントバルビタール
CYP2C9/CYP2C19
フェノバルビタール,
リファンピシン
ワルファリン,トルブタミド
CYP2E1
イソニアジド,エタノール
アセトアミノフェン,ハロタン
CYP3A4
フェノバルビタール,リファンピシン、デキ
カルシウム拮抗薬、ステロイド,シクロス
サメタゾン,カルバマゼピン、フェニトイン, ポリン、ジソピラミド、ジアゼパム
グルココルチコイド
CYP2D6は基本的に代謝誘導を受けにくい
フェナセチン,カフェイン,プロプラノロー
ル
P450を誘導する物質
• St. John’s Wort
• ダイオキシン
• PCB
• コプラナPCB
CYP3A4
P450の誘導による相互作用
• P450 のタンパク合成増加
– DNAからmRNAへの転写の活性化
– 転写されたmRNAの安定性が増しその量が増加
する
– mRNA情報を翻訳してタンパクを合成する段階を
増幅する。
– 合成されたアポタンパクの安定化或いは分解の抑
制
AhR:受容体
Arnt:受容体核転写因子
Hsp90:ヒートショックプロテイン
XRE:異物応答配列
CYP1A1の誘導機構
細胞膜
AhR
Hsp90
Hsp90
AhR
核膜
核
Hsp90
ATP
A rn t
ADP
CYP1A遺伝子
m RNA
XRE
CYP1A
酵素誘導機構
ソリブジン薬害事件
P450を阻害する医薬品などの一覧
P450分子種
阻害薬の種類
CYP1A2
ニューキノロン系抗生物質
CYP2C9
スルホンアミド剤
CYP2C19
オメプラゾール
CYP2D6
キニジン、プロパフェノン、ハロペリドール、シメチジン
CYP3A4
マクロライド系抗生物質、アゾール系抗真菌剤、グレープフルーツジュース、シメチ
ジン、エチニルエストラジオール、クロトリマゾール
可逆的な阻害
例:ワルファリン→トルブタミド
オメプラゾール→ジアゼパム
ジルチアゼム→シクロスポリン
CYP
アポタンパク
S
Fe
薬物A
薬物B
単一のCYPの基質結合部位への
競合的な阻害
可逆的な阻害
•
•
•
•
•
•
メトプロロールプロパフェノン
プロプラノロールプロパフェノン
チオリダジンプロプラノロール
ジアゼパムオメプラゾール
トルブタミドスルファフェナゾール
シクロスポリンジルチアゼム
CYP2D6
CYP2C19
CYP2C9
CYP3A4
半可逆的な阻害
例:ケトナゾール→トリアゾラム
CYP
アポタンパク
S
O2
Fe
N
N
H
R
CYPのヘム鉄に配位することによる分子
種非特異的な阻害
半不可逆的な阻害
N
• イミダゾール骨格: シメチジン、ケトコナゾール、ビ
フォナゾール
• トリアゾール骨格: イトラコナゾール
N
N
N
N
N
N
• イソキノリン骨格: エリプチシシン
• ピリジン骨格: メチラポン
イトラコナゾール
ミコナゾール
エノキサン
メチラポン
HN
N
N
N
F
CO OH
O
不(非)可逆的な阻害
CYP
CYP
アポタンパク
アポタンパク
S
S
NADPH, O2
Fe
R
N
R'
脱アルキル化
脱水酸化
例:エリスロマイシン→テオフィリン
Fe
代謝物がCYPと複合体を生
成することによる阻害
非可逆的な阻害
• マクロライド系抗生物質
• 代謝物がCYPの活性中心であるFeと複合体
を作りCYPを不可逆的に阻害
• 原因物質が体内から消失しても阻害は持続し、
代謝機能の回復にはCYPのあらたな合成が
必要
エリスロマイシン
相互作用
本剤は,薬物代謝酵素CYP3Aで代謝される.また,CYP3Aと結合し,複
合体を形成することにより,CYP3Aの阻害作用を有する.
併用禁忌
(併用しないこと)
薬剤名等
テルフェナジン
(トリルダン)
臨床症状・措置方法
テルフェナジンの血中濃度が上昇し,QT延長,心室性不整脈(Torsades de pointesを含む),心停
止(死亡を含む)等の心血管系の副作用が報告されている.
・危険因子
本剤はCYP3Aと結合し,複合体を形成するため,これらの薬剤の代謝を抑制することがある.
その他
ヘムのアルキル化による不可逆的な阻害
• エチニルエストラジオール
P450のタンパク部分の修飾による
不可逆な阻害
• クロラムフェニコール
– P450の活性中心のリジンをアシル化
• 2-エチニルナフタレン
– 代謝物がP450のタンパク部分に共有結合
• スピロノラクトン
– P450のタンパク部分に共有結合
グレープフルーツジュースとの相互
作用
• ミタゾラム、
• Ca拮抗薬:ニフェジピン、フェロジピン、ニソルジン、シクロスポ
リン、テルフェナジン、シサプリド
• ジアゼパム(セルシン・ホリゾン)、サキナビル(インビラーゼ)、
トリアゾラム(ハルシオン)などでも相互作用
グレープフルーツジュースがCYP3A4を阻害する
フラノクマリン、オキシソラレン等による可能性が指摘されている
グルクロン酸抱合の競合阻害
インドメタシン、クロフィブラート、
ロラゼパム
プロベネシド
グルクロン酸抱合
P450以外による酸化
• Monoamine oxidase (MAO)
– エピネフリン、ノルエピネフリンアルデヒド
• アルコール、アルデヒドの酸化(ADH, ALDH) ア
ルデヒド、カルボン酸
QuickTimeý Dz
TIFFÅiàèkǻǵÅj êLí£ÉvÉçÉOÉâÉÄ
ǙDZÇÃÉsÉNÉ`ÉÉǾå©ÇÈǞǽDžÇÕïKóvÇ-ÇÅB
フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)の関与する酸化
P450は第一級アミンのN-水酸化を行うのに対してFMOは
塩基性の強い第二級、第三級アミン類の窒素原子の酸化を
触媒する。
H
OH
H
N
CH 3
OH
OH
epinephrine
nor-epinephrine
• 薬物がただ1種類の代謝しか受けないことはま
れで、実際には多くの代謝物となって排泄され
る。
分類
代表例
用途又は起源
医薬品
バルビツール酸、
フェニトイン、
リファンピシン
催眠、鎮静
抗てんかん
抗生物質(結核)
食品添加物
ジブチルヒドロキシトルエン
ニコチン酸アミド、
デヒドロ酢酸、
テルペン化合物
抗酸化剤
栄養強化剤、着色料
保存料
香料
植物成分
フラボン類
植物
嗜好品
タバコ、酒、コーヒー
農薬
アルドリン、クロルダン、ディエルドリン、
ヘプタクロール、BHC, DDT, ピペロニ
ルブトキシド
殺虫剤
殺虫薬の殺虫作用増強剤
工業製品
ベンザン、トルエン、キシレン、フタル酸エ 溶剤、合成原料、プラスチック可
ステル類
塑剤
環境化学物質
3,4-ベンゾピレン、3メチルコラントレン、
PCB類, ジオキシン類、トリハロメタン
類
タバコの煙、排ガス、焼却炉の
煤煙、絶縁体、熱媒体、殺虫
剤中の不純物、焼却炉の煤煙、
水道水
ヒトにおいて薬物代謝酵素を誘導する薬物
誘導薬物
代謝が促進される薬物
アンチピリン
カルパマゼピン
グリセオフルビン
クロルプロマジン
ジアゼパム
スピロノラクトン
バルビツール酸誘導体
コルチソール・ジアゼパム,ワルフアリン
カルパマゼピン・ドキシサイクリン・フ工二トイン.ワルフアリン
クマリン系抗凝血薬
アンチピリン
ジアゼパム
アンチピリン,コルチソール
クマリン系抗凝血薬・クリセオフルビン.クロルフロマジン
クロラムフ工二=−ル・経口避妊薬・=ルチ]ステロイド頬.ジギトキシン
テストステロン・ド手シサイクリン・ビタミンD,フ工二トイン
フ工ニンジオン
アンチピリン・クマリン系抗凝血薬・経口避妊薬・=ルチ]ステロイド頬.
ジギトキシン・チ口車シン・ドキシサイクリン,ビタミンD
アミノピリン・=ルチ=ステロイド頬.ジギトキシン
シクロフオスフアミド
クマリン系抗凝血薬
メフロノでメート
アセトアミノフ工ン・アミノピリン・経口避妊薬・コルチコステロイ曙
ジギトキシン・トルブタミド・ヘキソパルビクール.メサドン
ハロペリドール
フェニトイン
フェニルブタゾン
プレドニゾラン
抱水クロラール
メプロバメート
リファンピシン
薬物代謝に影響を与える因子
内的因子
• 種差
• 遺伝的要因(人種
– 遺伝的多型
• 年齢
– グルクロン酸抱合、
• 病態
外的因子
ビタミン類、ミネラル
A, B1, B2, C, E, ニコチン酸
Ca, Mg, Fe, Cu, Zn, I
アルコール、喫煙その他
アルコールの急性投与は薬物代謝を
阻害するが、慢性投与は誘導する
環境因子
高齢者の薬物代謝
• CYP
– CYP1A2, CYP2C19, CYP3A4 減少
– CYP2E1, CYP2D6, CYP2CP 変化なし
• グルクロン酸抱合
– 変化しない
小児の薬物代謝
• CYP(例CYP1A2)
– 新生児では成人の1/5
– 3-6ヶ月で成人のレベル
– 1〜3歳では成人の2倍
• グルクロン酸抱合
– 新生児では極めて低いクロラムフェニコールの投与で灰白症(gray
syndrome)
– 3ヶ月の乳児で成人のレベル
新生児では胃液pHは高く、胃内容排出時間は長い
1950年代
新生児に投与
クロラムフェニコール
グルクロン酸抱合活性が極めて低い
灰白症(gray syndrome)
急性末梢循環不全
皮膚の色が灰白色
3ヶ月では成人と同程度の活性
薬物の代謝と排泄能の生後発達的変化
水酸化
肝機能
アセチル化
グルクロン酸抱合
グリシン抱合
糸球体濾過
腎機能
尿細管分泌
出生
10
20 30
日齢
2
3
4
5
6
月齢
大西ら
臨床薬理学
p280-298,1998から参照
喫煙の薬物代謝に及ぼす影響
代謝が増加する薬物
変わらない薬物
アンチピリン
イミプラミン
テオフィリン
ニコチン
フェナセチン
メプロバメート
ジアゼパム
ノルトリプチリン
フェニトイン
ワルファリン
ヒトの肝疾患と薬物代謝
肝疾患
ウイルス性肝炎
メペリジン、ジアゼパムの血漿中半減期の延長
BSP抱合能の低下
アルコール性肝炎
薬物代謝酵素の誘導
慢性肝炎
アンチピリン、リドカイン、アセトアミノフェンの血中半減期の延長、チトクロム
P-450の減少、アミノピリン、4-ニトロアニソールのN-脱メチル化の低下
肝硬変
クロラムフェニコール(グルクロン酸抱合を受ける)の血中半減期の延
長,テオフィリン.トルブタミドの血漿中半減期の延長
クロルジアゼポキシド,ジアゼパムのN−脱メチル化の低下
リドカインのN一脱工チル化の低下、プロフラノロールの酸化の低下、
イソニアジドのアセチル化の低下、チトクロムP−450の減少、アミノピリ
ン、4-ニトロアニソールのN-脱メチル化の低下
肝癌
アニリン、エストロゲン、メサドン、ベンズフェルタミン、4-ニトロアニ
ソール代謝能の低下、チトクロームP450の減少
遺伝的要因
人種による薬物代謝酵素の欠損頻度(%)の違い
人種
モンゴル人種
日本人
韓国人
中国人
白人種
デンマーク人
スウエーデン人
スイス人
黒人種
ガーナ人
CYP2D6
CYP2C19
0.7
0.5
0.7
22.5
12.5
15.3
7.3
6.8
9.9
2.5
3.3
5.4
8.1
ー
CYP2D6
イミプラミン
CYP2D6
CYP1A2
デシプラミン
活性代謝物
N-アセチル転移酵素2
(NAT2)
イソニアジド
白人53家系267人における血漿中イソニアジド濃度の分布
N-アセチル転移酵素2(NAT2)
白人:活性の低い頻度 50%
日本人:活性の低い頻度 10%
イソニアジド
日本での用量は欧米より高く設定されている。
テーラメイド医療
• 遺伝子多型
– SNP (single nucleoside polymorphism)
– 例:Helicobacter Pylori 除菌
– CYP2C19
① 20mgのオメプラゾールを単回経口投与した後の血
漿中濃度時間下面積(AUC)
と平均胃内pHに対するCYP2C19遺伝子多型の影響
6 0 00
5 0 00
4 0 00
3 0 00
2 0 00
1 0 00
**
**
h om EM
h et EM
PM
7
6
5
h om EM
h et EM
PM
**
**
平
均 4
胃
内
pH 3
2
1
homEM=遺伝子型からCYP2C19のホモ野生型と考えられる
被験者、hetEM=同様にヘテロ野生型の被験者、PM=同様に
ホモ型の変異アレル(CYP2C19*2または*3)を有するためこ
の分子種代謝活性がPMと推定される被験者データは平均±
標準誤差**p<0.01
http://medical.tampa.co.jp/suzuken/final/030320html/index_2.html
② 2剤(オメプラゾール+アモキシシリン)、または3剤併
用(プロトン ポンプ阻害薬 +クラリスロマイシン+アモキ
シシリン)によるヘリコバクタ・ピロリ菌除菌療法の成功
率とCYP2C19分子種の遺伝子多型との関係
1 20
**
*
1 00
ピ
ロ 80
リ
菌
除 60
菌
率 40
( %)
**
**
*p< 0 .0 5
**p< 0 .0 1
*
20
0
2 剤併用
h om EM
he tEM
PM
3 剤併用
Fa・Fg・Fh
問
経口投与時に消化管壁で20%、肝臓で40%代謝を受
ける薬物のバイオアベイラビリティに最も近いのはどれか。
ただし、消化管粘膜を透過する割合は投与量の90%であ
り、この薬物の代謝は消化管壁と肝臓のみで行われる。
1.10%
2.30%
3.40%
4.50%
5.70%
Fa・Fg・Fh
腸内細菌による代謝様式
• グリコシド結合の加水分
解
• グルクロン酸及び硫酸
抱合体の加水分解
• アミド結合の加水分解
• 水酸基の脱酸素化
• アゾ基、ニトロ基、芳香
族二重結合の還元
•
•
•
•
脱アルキル化
脱ハロゲン化
脱炭酸
アミノ化
dX
 CLh  Cin
dt
肝臓へ流入する血中薬物濃度Cin
肝臓から流出する血液中薬物濃度Cout
dX
Cin  Cout
 QCin  QCout  Q 
 Cin
dt
Cin
Q:肝血流速度
静脈側へ通過してきた薬物の割合、Cout/Cinを
F:availability
肝臓に取り込まれて消失した薬物の割合(1-F)を抽出率E
Cin  Cout
CLh  Q 
Cin
 Q E
肝臓
流速 Q
Cin
流速 Q
Cout
定常状態では 組織中での薬物量の変化速度=0
0  QC in  QC out  CL org C in
CLorg
Q(Cin  Cout )

 QE
Cin
E:抽出率
組織内で代謝や排泄を受けるのは組織中の非結合型薬物である
E: 処理臓器の流入速度に対する抽出速度の割合
例
肝臓
流速 Q
90%
A
動脈
10% 代謝
薬物濃度 Cin
静脈
薬物濃度 Cout
抽出率
E=0.1
CLh=QX0.1=QXE
F  1 E
Cin  Cout
E
Cin
Cout
F
Cin
腎臓における薬物の排泄過程
糸球体ろ過、尿細管分泌、再吸収
CL r  GFR  fu  CL se (1  Fr )
GFR:糸球体ろ過速度
fu:血中薬物非結合型分率
CLse:分泌クリアランス
Fr:再吸収率
再吸収、タンパク結合のない薬物はGFRと同じ腎クリアランス
を持つことになる。
イヌリン、クレアチニン
薬物の消失には様々の経路が関与しており、消失速度定数は
これらの和として表せる。
k

k

k


e
u
m

CL tot  k uV  k m V    CL r  CL h  
dx
これを積分する
dt
CLtot  
C
CLtot


0
Cdt    dx

0
X0
CLtot 
AUC
薬物の組織での動きを考える上で以下の仮定が立てられている.
薬物は血液によってのみ運搬される.
血管から組織への薬物移行は血流による移動に比べて十分に
速く,常に血液と組織の間で濃度平衡が成り立っている.
血漿タンパクと結合していない非結合形の薬物のみが組織へ移
行し,その濃度は血液および組織中で等しい.
タンパク結合は即時平衡が成り立ち,非結合形薬物のみが代謝
や排泄に関与する.
• 臓器クリアランス: CLorg→ CLh
血液による薬物の臓器への流入過程
消失過程(臓器細胞膜輸送、細胞内代謝)
• 固有クリアランス: CLint
intrinsic
消失過程(臓器細胞膜輸送、細胞内代謝)
組織中での薬物量の変化速度
=薬物が臓器に流入する速度—薬物が臓器から流失する速度—臓器中での薬物処理速度
 QC in  QC out  CL h C in
 QC in  QC out  CL int fC out
静脈
動脈
Q
Cin
Q
毛細血管
Cout
細胞外液
細胞内液
CLint
臓器中での薬物代謝や排泄が無視できるときには0
組織(臓器)での薬物処理能力を固有クリアランス
(CLint)とする
組織中の非結合型
薬物濃度と静脈中
の非結合型薬物濃
度が等しいと仮定
する
完全攪拌モデル
Well-stirred model
Cin
Cout
定常状態では
dX
O
dt
Cin  Cout
Cin
CLint f  Q
 Q(
1)
Cout
Cout
Q  CLint f
Cin CLint f

1
Cout
Q
Q
消失
組織から消失する薬物量の速度=CLintftCt= CLintftCout
dX
 QCin  QCout  CLint fCout
dt
f:血中非結合分率
Cout
Cin  Cout
)
CLh  Q
 Q (1 
Cin
Cin
Q
CLh  Q (1 
)
Q  CLint f
QCLint f

Q  CLint f
CLorg
Q
 Q(1
)
Q  CLint f
QCLint f

Q  CLint f
Q  fCLint
CLh  Q
Q  fCLint
CLh  CLint f
組織血流に比べて固有クリアランスが
十分に大きい時には
問題
正しいものはどれか
a) 肝抽出率が90%の薬物の肝クリアランスは,肝血流速度の
変動の影響をほとんど受けない。
b) 静脈内投与後,未変化体として尿中に排泄された量が投与
量に等しい薬物の腎クリアランスは,全身クリアランスと等し
い。
c) 肝抽出率が10%の薬物の肝クリアランスは,血漿たん白非
結合率の変動の影響をほとんど受けない。
d) 経口投与後,未変化体として尿中に排泄された量が投与量
に等しい薬物は,肝初回通過効果を受けない。
CLh  Q
CLh  CLint f
臓器CL
0  CLorg  Q
抽出率E
0  E 1
fCLint  37 Q
fCLint
E 
Q  fCLint

固有クリアランス律速
0  E  0.3
fCLint  101 Q
CLorg  fCLint
CLorg 
QCLint f
Q  CLint f
3
7
Q  fCLint  73 Q
タンパク結合
感受性
タンパク結合
非感受性
0.3  E  0.7
fCLint  73 Q
0.7  E  1
fCLint  101 Q
CLorg  Q
血流律速
肝疾患
•
•
•
•
代謝酵素活性(固有クリアランス)の減少
肝血流量の減少
肝細胞への薬の取り込みの減少
血漿における薬のタンパク結合の減少
肝硬変時の薬の
血漿クリアランスの変動
• リドカイン、プロプラノロール(肝血流依存性薬物)
– 大部分は血漿クリアランスは低下
• フェニトイン、ワルファリン、クロルプロマジン(代謝能依存
性・タンパク結合感受性薬物),
– 血漿クリアランスは不変または増加
• テオフィリン、アモバルビタール、アンチピリン(代謝能依存
性・タンパク結合非感受性薬物)
– 血漿クリアランスは低下
心疾患
• うっ血性心不全では心拍出量が低下
血流量が低下
妊娠時における薬物動態に影響する生理的諸因子の変動
胃内pH 
胃内容排出速度
胃酸分泌の減少と胃粘液分泌の減少
第Ⅲ期に向かい30~50%の減少,プロゲステロンが原因と
される
小腸運動
血漿容積
次第に増加し末期には約50%増加
心抽出量
次第に増加し末期には約40%増加
肝血流量
次第に増加し末期には約30%増加
糸球体ろ過量
次第に増加し末期には約50%増加
血漿タンパク量
アルブミン量は増加するが,血漿容積の増加におよばず
含量としては減少,α1-酸性糖タンパク含量は変化せず
血漿タンパク結合率
ステロイドや胎児ホルモンなどによりアルブミン上の薬物の
結合部位が減少,含量の低下をともない,多くの薬の蛋白結
合率は低下
薬物代謝活性
CYPIA2活性の低下,
CYP2D6活性の上昇,
CYP2A6および3A4活性の軽度の上昇
UGT活性の上昇
妊娠時における薬物動態
• 薬の分布容積が増加
• 肝および腎への非結合形の薬の供給量が増
加
– 肝血流量が増加 血流依存性の薬のクリアランス
が増加
– 糸球体ろ過量が増加するので、腎で排泄される薬
の腎クリアランスが増加
腎排泄
• 水溶性薬物は主に腎から排泄される。
腎疾患
• 腎排泄機能の低下(糸球体ろ過機構にもっとも障害が現れや
すい。)
• 血漿アルブミン値の低下
• アルブミンの薬物結合率の低下
• 血漿タンパク結合率が高く、腎排泄以上に、肝臓での代謝に
より消失しやすい薬物は低アルブミン血症により遊離形分率
が増加するので、全身クリアランスが増加することもある。