地震発生に関する現象の呼称に ついての住民意識調査 小山研究室 3041-6017 嶋内 康 研究目的 地震のマグニチュードの情報を伝達する際に、 いまだに混乱や誤解が生じている。 小山・里村(2000)は、「地震」の意味のとらえ 方が専門家と一般市民とで異なることを指摘 し、そのことが専門家にほとんど理解されて いないことが誤解や混乱の原因と考えた。 本研究では小山・里村(2000)の仮説を検証 するためのアンケート調査を実施し、詳細な 原因の把握、ならびに解決策の考察をおこ なった。 アンケート内容 図1 A 震源断層運動と地震と 震災の関係 (石橋、1997) B A 大地の揺れによる人間 社会への影響を何と呼ぶ べきか。 B 大地の揺れを何と呼ぶ べきか。 C 震源断層破壊による地 C 震発生現象を何と呼ぶべき か。 アンケートの対象 2004、2005年静岡大学 教育学部(2004年前期「総合科学への招待」受講生1年生 45人、2005年4月20日「自然 災害と現代社会」受講生男5人 女15人、2004年4月「地震防災」受講生3年生、男7人 女 4人、2005年前期「総合科学への招待」受講生1年生男5人 女11人、2005年前期「総合科 学への招待」受講生1年生男16人 女16人、2004年4月21日「自然災害と現代社会」受 講生3年生 女4人、2005年7月7日新入生セミナー受講生1年生 男110人 女128人、) 理学部(2004年4月21日「自然災害と現代社会」受講生4年生男11人 女7人、2005年4月 20日「自然災害と現代社会」受講生3,4年生男21人 女20人、2004年4月「地震防災」 受講生3年生 男24人 女15人、2005年7月7、14日新入生セミナー受講生1年生 男70 人 女44人、) 工学部(2004年7月新入生セミナー1年生男119人 女61人、2004年4月「地震防災」受講 生 男83人 女11人、2005年7月7日新入生セミナー受講生 工学システム科 男68人 女4人、2005年7月7日新入生セミナー受講生 電気・電子工学科1年生 男96人 女3人、 2004年7月14日新入生セミナー受講生(工学部夜間主コース)(社会人) 男70人、2005年 7月14日新入生セミナー受講生 機会工学科1年生 男129人 女7人、2005年7月14日新 入生セミナー受講生 物質工学科1年生 107人 女24人、) 人文学部(2004年4月「地震防災」受講生男32人 女12人、2005年7月21日新入生セ ミナー受講生1年生 男52人 女28人、人文3年 男38人 女19人、) 情報学部(2004年4月「地震防災」受講生3年生 男18人 女9人、2005年6月30日新入 生セミナー受講生1年生 152人、) 農学部(2005年7月14日新入生セミナー受講生1年生 男67人 女49人、2004年4月「地 震防災」受講生3年生) 計、1852人 静大全体と教育学部と理学部の比較 A 表1 大地の揺れによる人間社会への影響 100% 無回答 その他 被災 地震災害 地震 被害 災害 震災 80% 60% 40% 20% 0% 静大全体2006 教育全体5456 理学部273 静大全体と両学部ともに震災が一番多い。また、それぞれの 現象名が全体に占める割合は異なるが、呼称自体には違い はあまり見られない。これは他の学部、学年でも同じで震災、 災害、被害、地震災害といった表現が中心となっている。 静大全体と教育学部と工学部の比較 B 大地の揺れ 表2 100% 80% 無回答 その他 振動 ゆれ 震度 地震動 地震 60% 40% 20% 0% 静大全体1982 工学部全体837 工学部夜間76 教育学部では地震が非常に多く他の学部でも同じ結果が得られ たが、工学部では地震が約30%、地震動が約22%と他の学部よ りも地震動の割合が多い。これは工学部だけの特徴 静大全体と工学部と工学部夜間の比較 B 大地の揺れ 表3 100% 80% 無回答 その他 振動 ゆれ 震度 地震動 地震 60% 40% 20% 0% 静大全体1982 工学部全体837 工学部夜間76 工学部は他の学部より地震動の割合が多いが、 その中でも工学部夜間は地震動が全体の約60% を占めている。 静大全体と工学部と工学部夜間の比較 C C 地震波を発生させる地下の岩石破壊 表4 100% 80% 無回答 その他 震源地 マグニチュード 震源 地震 60% 40% 20% 0% 静大全体1974 工学部全体801 工学部夜間主77 3つ共に地震が最も多いが、工学部は他の学部と比べ て地震の割合が高いことが分かった。特に工学部夜間 主では全体の約60%も占めている。 静大全体 B 大地の揺れ 1982 A 大地の揺れによる人間社会への影響 2006 無回答 15% その他 41% 無回答 15% 震災 30% 災害 9% 被害 地震 3% 2% Aでは震災が約30%、B では地震が34%、Cでは 地震が15%で最も多か ったが、Cは回答がばら ついた。 地震 34% その他 36% C 地下の岩石破壊 1974 無回答 23% その他 46% 地震 15% 地震動 13% ゆれ 震度 2% 4% 震源 8% マグニチュード 4% 震源地 4% Aの考察 Aについては震災という呼称が静大全体で 30% (表1) 、震災は静大のどの学部でも高 い割合を占めている。 専門家も震災と呼称している。 アンケートの結果から震災以外で災害や被 害など表現があるが、どれも似た表現である ため、意味を理解する際に混乱が生じるとは 考えられない。 Bの考察 Bは地震動と呼称する専門家が多い。 アンケートの結果から地震が静大全体で約30% (表2,3)で一番多い。 地震動は約12%ほどの割合を占めているが、学部 や学年で大きく割合が異なっている(表2,3)ことか ら授業内で教えてもらっているかどうかが関係して いると考える。 従って、地震動は広く一般的とはいえず、専門家が 一般に多く使われている地震ではなく地震動と呼称 していることが原因の1つと考える。 Cの考察 Cでは専門家は地震と呼称している。 アンケートの結果でも地震は約15%(表4)で 静大全体に占める割合は一番多かったが、A, Bに比べると全体に占める割合は半分に減り、 理解している人が少ないのが分かる(表1,2, 3,4)。しかも、工学部などの専門的授業が 影響している可能性が高い。 よってCを地震とするのは、一般市民の知識 から離れた専門的かつ特殊な用法といえる。 まとめ Aでは震災が最も多く、専門家も震災と呼んでいるので、混 乱はないと考える。 Bでは専門家は地震動と呼んでいるが、アンケートでは地震 の方が多い。混乱の原因の1つと考えられる。解決策として 専門家が一般市民に合わせて地震とするのが良い。 Cでは専門家は地震と呼称している。アンケートでも地震が 最も多かったが、全体に占める割合は小さく、学部全体には 広がっていない。また、Cの呼称を地震とするとBと重なり混 乱の原因になるので、呼称を地下の岩石破壊を連想させる 別の呼称に改善するのがよいだろう。
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