電気回路学 Electric Circuits コンピュータサイエンスコース、 ナノサイエンスコース4セメ開講 回路に関する諸定理 山田 博仁 連絡事項 1. 教科書および参考書 1) 大学課程 電気回路(1) (第3版) 大野 克郎、西哲 生 共著、オーム社 2) 電気回路 - 三相、過渡現象、線路 - 喜安 善市、斉藤 伸自 著、朝倉書店 3) 電気・電子工学基礎シリーズ 電気回路 山田 博仁 著、朝倉書店 2. 成績評価 ・ 講義点と定期試験の点数(約3:7の比率)を勘案して行う ・ 講義点(約30点)は毎回講義時のレポート提出をもって認定する ・ 定期試験を受けていない者は再試を受けても失格となる (再試は行なわないかも知れない) 3. オフィスアワー 随時、場所: 2号館203号室 (事前に電話またはE-mailにより予約のこと) E-mail: [email protected]、電話(内線): 7101 4. 連絡および講義資料のダウンロード: http://www5a.biglobe.ne.jp/~babe/ 5. 講義に関するご意見などはブログ「講義の落書き帳」へ: http://kougi.at.webry.info/ 講義日程と内容 日程 (回目) 講義内容 10/1 (第1回) 重ね合わせの理 10/8 (第2回) 双対回路と相反定理 10/15 (第3回) 等価電源と補償定理 10/22 (第4回) 供給電力最大の法則 10/29 (第5回) 二端子対網、 Y行列 11/5 (第6回) Z行列と縦続行列 11/12 (第7回) 諸行列間の関係、Y-D変換 11/19 (第8回) 二端子対網の伝送的性質 11/26 (第9回) 円線図 12/3 (第10回) 分布定数線路の方程式 12/10 (第11回) 線路の縦続行列、波の反射 12/17 (第12回) 理想線路、無ひずみ線路 1/7 (第13回) 複合線路 1/14 (第14回) 無損失線路と反射波 1/21 (第15回) まとめ 1/28 (予備日) 教科書、参考書の章との対応 1) 2) 3) 8.1 5.1, 5.2 8.2, 8.3 5.3~5.5 8.4, 8.5 5.6, 5.7 8.6 3.4e 9.1, 9.2 6.1, 6.3 9.3, 9.4 6.2, 6.4 9.7, 9.8 6.6, 6.7 10.1, 10.2 6.8 10.7 3.5c 8.1~8.3 7.1~7.4 8.4~8.6 7.5~7.8 8.8 7.9 9.1 7.10 9.2 7.11 TAの紹介 井元 敦生(M1) E-mail: [email protected] 研究室Tel: 795-7104 電気回路学の学習に関すること、 何でもお気軽にご相談ください 線形回路 実在する抵抗は、抵抗値が素子を流れる電流 I の関数になっている (非線形素子) V = R(I) I RR (I) I V つまり、V と I は比例関係にない しかし、電流がごく小さい範囲では、R =一定とみなせる (線形近似) V=RI R が線形素子なら、 つまり、V と I は比例 (重ね合わせ) R (I1+I2) = R I1 + R I2 R が線形でなければ、 R(I1+I2) (I1 + I2) ≠ R(I1) I1 + R(I2) I2 である (重ね合わせ) R が線形であれば重ね合わせが可能で、素子に I1 のみが流れている状態と、 I2 のみが流れている状態を重ね合わせると、 I1 と I2 が同時に流れている状態 に等価となる 実在する電気回路素子は非線形素子であるが、線形電気回路学では近似的に 線形素子として扱える場合を対象にしている 重ね合わせの理 複数の電源を含む線形回路網中の電圧・電流分布は、各電源が単独にその位置 に存在するときの分布の総和に等しい。 I1 I V E1 のみ存在 V1 E1 J1 E1 その他の電源 は殺す 電圧源→短絡 E2 電流源→開放 J2 複数の電源を含む回路網 In Vn V = V1 + V2 + ‥ + Vn I = I1 + I2 + ‥ + In J1 J1 のみ存在 その他の電源 は殺す 重ね合わせの理の証明 n 個の電圧源 E1, E2, ‥, En が存在する線形回路網において、各閉路に電流 I1, I2,‥, In が流れていたとすれば、 E1 z11 z12 z1n I1 インピーダンス I E z z z 2 21 22 2 n 2 (Z)行列 (1) En z n1 z n 2 znn I n 次に E1 のみが存在する場合の各閉路の電流を I11, I12,‥, I1n とすれば、 E1 z11 z12 z1n I11 Z行列は、 I 0 z z z 21 22 2 n 12 線形回路 ( 2) なので普遍 z z z 0 n1 n 2 nn I1n 次に E2 のみが存在する場合の各閉路の電流を I21, I22,‥, I2n とすれば、 0 z11 z12 z1n I 21 I E z z z 21 22 2 n 2 22 (3) z z z 0 n1 n 2 nn I 2 n 重ね合わせの理の証明 さらに En のみが存在する場合の各閉路の電流を In1, In2,‥, Inn とすれば、 0 z11 z12 z1n I n1 0 z I z z 21 22 2 n n2 ( 4) En z n1 z n 2 z nn I nn (2), (3), ‥ ,(4)式の左辺同士、右辺同士を足し合わせると、 E1 E1 0 0 z11 E 0 E 0 z 2 2 21 E 0 0 n En z n1 z12 z22 zn 2 z1n I11 I 21 I n1 I z2 n I12 I 22 n2 znn I1n I 2 n I nn (5) (5)式と(1)式とを比較すると、 I1 I11 I 21 I n1 I I I I 2 12 22 n2 ( 6) I I I n 1n 2 n I nn 即ち、もとの回路の電流は、各電源が単独に存在する場合の電流の総和となる。 重ね合わせの理 例題8.1 E1のみ I I1 E1 7R E2のみ 重ね合わせの理 I2 I1 I2 E2 21R I I1 I 2 I 3 J のみ I3 4J 7 I3 重ね合わせの理 例題8.2 E1のみ I I1 I1 E2のみ Jのみ I2 I2 E1 R1 重ね合わせの理 I I1 I 2 I 3 I3 E2 R1 I3 J 重ね合わせの理 演習問題(8.1) I E1のみ I1 I1 E1 4R 重ね合わせの理 E2のみ I2 I2 I2 E2 R Jのみ I3 I3 J 4 出席レポート問題 以下の回路において、I と I4 を求めよ R1 I R2 R E 2R J (a) 2E R3 I4 2R E R4 J (b) • 次回の講義(10/8)の時までに提出された場合のみ、本日の出席を認定 • 提出先: 次回の講義時に持参するか、私のメールボックスまで 双対性 電気回路においては、法則や記述などが多くの場合に二つずつ対をなして現れる。 例えば、電圧と電流、抵抗とコンダクタンス、並列と直列などがそれに当たり、この ような対応関係にある概念は双対といわれる。 双対関係にある素子などの例 双対関係にある概念の例 電圧 V 電流 I 直列接続 並列接続 インピーダンス Z アドミタンス Y 短絡 開放 抵抗 R コンダンタンス G 閉路 カットセット Y型接続 D型接続 キルヒホッフの 第2法則 キルヒホッフの 第1法則 インダクタンス L キャパシタンス C リアクタンス X サセプタンス B 電圧源 E 電流源 J 双対回路 ある電気回路に対して成立する関係式があるとき、その関係式に対して電圧と電 流とを入れ替えた式もまた成立し、この新たな関係式を満足するような電気回路が あるとき、このような2つの回路を互に双対回路という。 双対回路 I I E J V R E=RI E G J = GV J 上の2つは双対回路 V L E = jw L I C J = jw C V 上の2つも双対回路 双対回路の作り方 双対な回路を求めるには、まず双対グラフを求め、原グラフの枝と双対グラフの枝 とが合い交わる枝同士で、素子をそれと双対な素子に入れ換えればよい。 Z q 1 E q J p 原グラフ 双対なグラフ 電源など、極性のある素子の扱い (a) 電圧源 → 電流源 原回路で点 p を囲んで時計回りに 電圧が上昇(降下)する電圧源なら、 新回路では点 p の方向(点 p から出 る方向)に電流を流す電流源になる E J Y 2’ p 双対回路 2 原回路 1’ p 双対回路の作り方 (b) 電流源 → 電圧源 原回路で点 p を囲んで時計回りに (反時計回りに)電流を流す電流源な ら、新回路では点 p の方向に電圧 が上昇(降下)する電圧源になる J p E (c) ダイオード → ダイオード 原回路で点 p を囲んで時計回りに 順方向(逆方向)のダイオードなら、新 回路では p の向きに順方向(逆方向) のダイオードとなる p 以下の回路と双対な回路を求めよ Z1 E1 Z3 Z2 E2 J L C G 双対回路の作り方 Z1 E1 Z3 Z2 E2 原回路 原グラフ Y3 Y1 Y2 J1 Y 1 Y3 J2 p Y2 q J1 J2 r 双対回路 双対なグラフ 双対回路の作り方 4 J1 2 1 J2 原回路の電源 E1が 閉路3と同じ向きな ので、節点3に向か うように J1=E/K を入 れる E2 E1 3 原回路の電源 J2が 閉路2と同じ向きな ので、節点2に向か うように E2=K J2 を 入れる 逆回路 逆回路とは 2つの二端子回路があり、そのインピーダンスを Z1, Z2 とするとき、その積が周波数 w に関係なく Z1 Z2 =K2 となるならば、二つの回路は K に関し て互いに逆回路であるという。 Z1 逆回路 逆回路の作り方 D=1/C K2 R1 R2 L1 Z2 2 K2 L K D R2 K2 R3 D R1 K2 Z2 Z1 R3 K2 D1 L1 ただし、D1=1/C1 逆回路 演習問題(8.2) Kに関しての逆回路を求めよ L1 R1 D1 R2 逆回路 K2 D1 L1 K2 R1 K2 L1 D1 K2 R2 上の二つの回路は双対回路となっているが、逆回路は Z1 Z2 =K2 の関係を満たし ていればよいので構造的な双対性は必要なく、一般に種々の逆回路が存在する 逆回路 演習問題(8.2)の解答 Kに関しての逆回路は、 K2 L1 D1 K2 D2 L2 K2 D1 L1 K2 D3 L3 K2 L2 D2 K2 L4 D4 K2 R K2 D2 L2 K2 L2 D2 K2 D3 L3 K2 L3 D3 K2 D4 L4 定抵抗回路 インピーダンスが w に依存しない二端子回路 下の回路のインピーダンスはいずれも R となり、w には依存しない定抵抗回路 Z Z R R R R2 Z Z R R Z R2 Z R2 Z R Z R2 Z R R2 Z 10/8の出席レポート問題 上記回路のインピーダンスがいずれも Rとなることを確かめよ ※ 次回の講義(10/15)前までに私のメールボックスに投函か、講義に持参のこと 定抵抗回路 演習問題(8.4) R1 R2 L C インピーダンス w 2 LCR1R2 jw ( LR1 LR2 ) R1R2 Z (w ) R0 w 2 LCR2 jw ( L CR1R2 ) R1 この式が、周波数 w の値に関係なく成立するためには、分母と分子の各項 の係数の比が R0 に等しくなければならない つまり、 従って、 LCR1R2 L( R1 R2 ) R1R2 R0 LCR2 L CR1R2 R1 R1 R2 R0 L R02 C 定抵抗回路 演習問題(8.6) I1+I2 I1 Z R02 Z V R02 ZI1 I 2 E (1) Z R02 R0 ( I1 I 2 ) ZI1 I2 0 I2 Z R0 E I2 R02 Z I1- I2 Z I1+I2 I1 E R0 Z I2 Z E R0 R0 Z I1 Z R Z 0 R02 ( R0 Z ) I1 ( R0 ) I 2 0 Z (2) I1 E R02 I 2 0 ( R0 ) z R02 Z 2 2 E R R 0 0 I1 1 ( R ) 0 I Z Z 2 2 0 2 Z ( R R0 ) R0 ( R Z ) ( R0 Z ) Z 0 0 Z Z ∴ I1 I 2 E R0 また、 V R0 ( I1 I 2 ) R0 Z E R0 Z 相反定理 Ip’ Ep JpVp’ p Iq 相反回路 Black Box Black Box 相反回路 q Eq’ Ep Ip’= Eq’Iq の関係が成り立つ時 VqJq’ Jp Vp’= Jq’ Vq の関係が成り立つ時 相反定理の証明 線形回路網において、各閉路に電圧源E1, E2, ‥, Enが あるとき、各閉路の電流をI1, I2, ‥, Inとすると、 I1 E1 E2 I2 In 線 形 回 路 網 En E2’ I2’ In’ En’ Z12 Z 22 Z n2 Z1n I1 Z 2 n I 2 Z nn I n (1) 回路が線形ならば、Z行列は電流値に依らず普遍。 また、回路網が相反回路なら、Zjk = Zkj が成り立つ。つ まり、Z行列は対称行列となる。 I1’ E1’ E1 Z11 E Z 2 21 En Z n1 線 形 回 路 網 また、各閉路に電圧源E1’, E2’, ‥, En’があるとき、各閉 路の電流をI1’, I2’, ‥, In’とすると、 E1' Z11 E ' Z 2 21 En' Z n1 Z12 Z 22 Z n2 Z1n I1' Z 2 n I 2' Z nn I n' ( 2) 相反定理の証明 (1)式から、転置行列の公式および Z 行列が対称行列であることを用いて、 t E1 E 2 En t I1 I 2 In t Z11 Z 21 Z n1 Z12 Z 22 Zn2 t Z1n I1 Z11 Z 2 n I 2 Z 21 Z nn I n Z n1 Z12 Z 22 Zn2 I1' I ' 上式の両辺に対して右から 2 を作用させると、 I n' t E1 I1' E I ' 2 2 En I n' t I1 Z11 I Z 2 21 I n Z n1 Z12 Z 22 Zn2 Z1n I1' Z 2 n I 2' Z nn I n' Z1n Z 2 n Z nn 相反定理の証明 (2)式の関係より、 t E1 I1' E I ' 2 2 En I n' t I1 E1' I E ' 2 2 I n En' つまり、 E1 従って、 E2 I1' I ' En 2 I1 I n' I2 E1' E ' In 2 En' E1I1' E2 I 2' En I n' E1'I1 E2'I 2 En'I n この特別の場合として、p番目の端子対にのみ電圧源 Ep を接続し、それ以外の端 子対を短絡(Ep≠0 = 0)した時、q番目の端子に電流 Iq が流れたとする。次にq番目 の端子対にのみ電圧源 Eq’ を接続し、それ以外の端子対を短絡(E’q≠0 = 0)した時、 p番目の端子に電流 Ip’ が流れたとすると、EpIp’ = Eq’Iq となる。
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