Title 構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 - HERMES-IR

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構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定
程島, 次郎
一橋論叢, 94(1): 98-122
1985-07-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/12880
Right
Hitotsubashi University Repository
構造変化のある同時方程式モデ1レの
1)
識別と推定
程 島 次 郎
1問題と要約
この論文では,計量経済学における同時方程式モデルで構造変化のある場合
の識別と推定問題を考察する.ここで取り扱うのは,制限情報の下での構造方
程式の識別と推定問題であり,構造芳程式モデノレとして
(1・1) r131+Z11「1=σ1
(1・2) y232+Z21「2=σ2
を考える.(1・1)と(1・2)は,それぞれ構造変化のあった前後の構造方程式
モデノレを示す.ここでは構造変化の起きた時点は,既知と考えている.ま
た
γ’:T.X0,Z{1T.XX,σ{:T。×θ
(1・3)
月{:θ×θ,1「{:K×θ ({=1,2)
であり,y{,グ,σ壱(仁1,2)は,それぞれ内生変数,外生変数,誤差項を意味
する.ここでB1とB2,1「1と1「2は,構造変化のために一般に異なるが・
第一方程式を除いた都分に対応する石1,が,1「一,1「2についての制約条件は考慮
に入れない.第一方程式として,ゼロ制約を含み,かつ構造変化が起きなかっ
た場合,すなわち,
(1・4) γ11β十Z・’γ=砒1
(1・5) 姉十Z工2γ=批2
を考える.ただし
98
構造変化のある同時方穆式モデルの識別と推定 (99)
γ』(巧{〃),y、一:τ。・θ、.巧{:Tづ・θ、
(1・・)・{一(・工1,・、・),・、1=・、・・、,。、・、乃、。,(4=1・2)
β=(一1,β。’)’
で・βとγは・{とr{(仁1,・)の第一列のぜ口でない部分ベクトルである、
誤差帥’一と1σ里は…け個の各行カ1それぞれ亙いに独立に平均。,正
値定符号な分散行列21と22を持つ.ここでΣ1とΣ2の第一方程式に対
応する(1・1)要素は・構造変化が起きなかったため等しいと仮定する.
(1’1)・(1’2)・(…),(…)で麟されるモデ/レは,モデルの中に構造変化が
起きたが興味のある式には構造変化が生じていないモデルである.構造変化の
ある同時方程式モデルとして上のモデルの他にいくつか考えられるが,それら
の考察はここでは残しておく・このモデルの例としては,例えぱ,消費関数を
推定したい時に・消費者の消費行動は安定しているが企業の投資行動にある時
点以降大きな変化が生じてしまった場合が考えられる.
このモデルの制限情報としては,
ω 第一方程式のぜ口制約
㈹ (1・4)と(1・5)でβとγが共通な事
㈹ 誤差項砒1と刎2の分散が等しい褒
の3つの情報がある.このモデルの推定問題は,Barten and Bronsard(19晶),
Goldfeld and guandt(ユ976),Rich乱rd(ユ980)等によって考察されている.
しかし上の3つの制約条件(特に第三番目の制約条件)を考慮した推定量は,
未だに導出されていない・とくに識別条件については,これまで全く考察され
ていなかった・通常の回帰モデルと異なり同時方程式モデルでは,構造方程式
の分散行列についての制約は(制約条件の下で導出される)M・・(最尤推定
量)の漸近分布の分散行列を変化させる.さらに構造方程式の分散行列につい
ての制約は・’構造パラメーターの識月1条件にも影響を与える.われわれのモデ
ルでもこの2つの点が問題≒なるのだが,これまで十分な配慮がなされていな
かった.
この論文では・初めに上の・つの制約条件の下での構造パラメーターの(局
99
(100) 一橋論叢 第94巻 第1号
所的)識別条件,すなわち,階数条件と次数条件を示す.次に3つの制約条件
を考慮したN1MLE(制限情報量尤推定量)を導出し,その漸近分布を示し,
Barten and Bronsard(1970)とGOldfeld and guandt(1976)の推定量と比
較する.それによってこれらの推定量は,BAN(漸近的正規最良)推定量でな
い事が示される.最後に,われわれのモデルでの肌N推定量のクラスを示す
事により,推定量がBANであるための条件を明らかにする。その応用とし
て,TSLSE(二段階最小二乗推寒量)を修正してBAN推定量を得る方法を
示す.なおわれわれのモデルと関連した構造変化の検定問題を考える事ができ
るが,別の機会に残しておく.
2構造パラメーターの識別
第一方程式の構造バラメーターの識別条件を導出する前に,モデルの誘導型
を定義ずる.(1・1)と(1・2)に対応する誘導型として。
(2・1) y1=Z’π1+71
(2.2) γ2=Z2”十γ2
を定義する.”(仁1,2)はK×θ行列で,y{とグ({=1,2)の分割に従っ
て
(…)・一(搬:)一(π・・舳・(簑1:)・仏・(豊:二)
と分割する.誤差項171とプは,各行が互いに独立で平均O,正値定符号な
分散行列ρ1とρ2を持つ.分散行列ρ{({=1,2)は,r{(仁1,2)の分割に
従って
(…) ・・一(芸11:婁1:1)(1一・・)
と分割する.
こρとき前節で述べた3つの制約条件は,
(・・5・) 凪・1β=O
(2・5b) 皿112β=0
100
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (101)
(2・5・) 凪。1β=〃H2β
(2・5d) β’ρ・’β=β’91工2β
と表現できる。(2・5a)と(2・5b)の2つの制約は,r1とPの第一列のゼ
ロ制約に対応し・(2・5c)は,1「1とr2の第一列のぜ口でない部分γが構造
変化によって変化しない事に対応し,(2・5d)は,批1と砒2の分散が等しい事
を示している.また(2・5a)一(2・5d)で常に同じβが使われているのも,構
造変化の前後でβが変らない事を意味する.刎1と刎2の共通の分散をσとす
ると,第一方程式の構造パラメーターはθ=(β’,γ’,σ)’である.われわれが第
一方程式の構造パラメーターの識別と言う時は,当然全てのθの識別を意味
する。(2・5a)一(2・5d)は誘導型バラメーターと構造バラメーターβだけで
表現されているが,γとσは
(2・6) γ=一〃、。1β=一〃。。2β
(2・7) σ=β’9。。1β=β’9.2β
であるので,(2・5副)一(2・5d)の制約条件の下ではβが識別されるとγとo
は常に識別される・ここで誘導型バラメーターは常に識別される事を前提にし
ている・従って第一方程式の構造パラメーターの識別は,βの識別と同値となる.
βの識別は,(2・5d)の制約がβに関して非線形なので局所的識別(10ca1
3)
identiication)について述ぺる.ここで行列
(2・8)
咋㌧〕
を定義すると,βの第一要素が一1であるという正規化条件の下でβの局所
的識別の階数条件は,次の定理で与えられる.
4)
定理1(階数条件) βがS(β)の・e即1a・な点であれぱ,βが局所的に識
別されるための必要十分条件は,8(β)の階数がθ、一1である事である.
101
(102) 一橋論叢第94巻第1号
この証明は,例えぱRothenberg(1971)?定理2.から明らかである.なお
8(β)はβに関して解析的(ana1舛iC)な関数となっているので,∫(β)のre−
5)
gularでない点はノレペーグ測度ゼロである.定理1から構造バラメーターの識
別の必要条件として,次の系を得る。
系1(次数条件) 8(β)の階数がθ。一1であるためには,少くともθ1−1
個の制約条件が存在する事が必要である・従ってβが識別されるためには,
(2・9) K+X2+1≧θr1
でなけれぱならない.
(2・5a)一(2・5d)の制約条件または(2・9)の不等式から明らかなように,
われわれのモデルでのβの識別のための次数条件は,構造変化のない通常の
同時方程式モデノレと比べて制約条件が増えて満足される事が容易となる・
3uMLEの導出とその漸近分布
初めに第一方程式の構造パラメーターθのuMLEを導出する.前節で指
摘したように,θのうちγとσはβと誘導型パラメーターで表わす事がで
きるので,θのLI肌Eはβと誘導型パヲメーターのLI肌Eによって与
えられる.ここでLIMLEは,Anderson and Rubin(1949)の方法によって
導出されるが,K00pmans and Hood(1953)の方法によっても同じ結果を得
6)
る事ができる.
uMLEを導出する前に必要な仮定を設ける.
仮定1
.τ工,T2〉x
仮定2
βは識別される.’
仮定3
102
Z1とZ2の階数は五である.
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (103)
仮定4
7)
σ当(σ1’,σ2’)’の各行は互いに独立な正規分布に従っている.
以上の仮定の下で,誘導型(2・1)と(2・2)の制約条件(2・5a)一(2・5d)
の下での対数尤度関数は,
T1 τ2
(3・1) ム=0。十一1091ρ1l.’十一1oglρ21−1
2 2
1
一一t・{(91).1(γ1−Z’”)’(,γ」Z’”)
2
+(92)‘1(r㌧z2〃里)’(r2−z2∬2)1
+21’皿呈11β十λ2’凪12β十μ’(凪11β一凪12β)
φ
十一(β’ρu1β一μH2β)
2
となる.ここでλ1,λ2,μ,φは,それぞれ適当な次元のラグランジュ乗数の列
ベクトノレである.9‘(仁1,2)の逆行列はγ{の分割に従って
(…)(・)一一[(”二鮒;1ゾーτ壱;簑:ll:;lll(1一・・)
と書ける.ただし
τ」(ρn{).191。也
(3・3) (づ=1,2)
9。。.1{二9。呈」9。工{(ρ。工{)一ρ工里{
であり,(ρ11{,τ{,ρ22.1{)はα(仁1,2)と一対一に対応している.さらに
(3・4) lg{Hρn{llg。。.。{1 (ド1,2)
が成立する.
(3・2)一(3・4)を用いて,対数尤度関数(3・1)を(9u1)一1,(ρn2)’1,τ1,τ2,
(922.11)一1,(ρ。2、。2)一1,肌1,〃22,171.1,凪、2,巫11,∬2.2,λ1,λ2,μ,φ,βで微分すると,
(…)ρ・・1一去(巧1一・恢・1)’(γ1」州・差(…’1)(μρ・・’)
(…)・・2一去(γ12一・2凪2)’(巧2一州一差(・i121)(舳
(3・7) (r.1−Z工凪’)’(γ、1−Z’凪1)τI(ρ。。1.I)一1
103
(104) ’ 一橋論叢 第94巻 第1号
≡(γ。1−Z1∬。1)’(γ。1−Z1皿。’)(ρ。。.。1)・1
(3・8) (r12−Z2凪2)’(巧LZ217,2)τ2(ρ。。.。2)一1
=(r.2−Z2皿。2)’(巧2−Z2皿。里)(ρ。。.12)■1
1
(3・9) 9理、1」一1(巧1−ZI〃。1)’(巧」Z1凪1)
T1
−2(巧」Z’凪1)’(巧1一■1∬。1)τ1+τ1’(巧1
−Z1凪1)’(γ1」Z1凪1)τ11
1
(3・10) 9。。.。2=一1(巧2−Z2∬。2)’(巧しZ2〃。2)
T2
−2(巧2一γ里凪2)’(巧2一ク2凪2)τ2+τ2’(巧2
一グ凪2)’(r12−Z2凪2)τ21
(3・11) 皿。1=(Z1’Z1).’Z11巧」(Z1’Z’)一’Z1’(r.1−Z1凪’)τ1
(3・12) 皿。2=(Z2’Z2)’1Z2’巧し(Z2’Z2)■1Z21(巧2−Z2凪2)τ2
(3・13) Z,1’(r。」Z1凪’)((ρ、、1)一十τ1(ρ。。.。1)’1τ1’)
一Zi’1(巧1−Z1凪1)(9。。.。1)一’τ1’十μβ’=0
(3・14) Z12’(r12−Z2π12)((9u2)一1+τ2(922.12)一1τ2’)
一Z.2’(乃2−Z2凪2)(9。。.12).’τ2’一μβ’=0
(3・15) Z.1’(y,1−Z’凪1)((9。、1)■1+τ1(ρ。。.。1)‘1τ’’)
一Z・1’(巧1−Z’凪1)(ρ。。.。1)’Iτ1’十λ1β’=0
(3・16) Z.2’(γ。2−Z2凪2)((9u2)一1+τ2(9。。.。2)■’τ2’)
一Z・2’(巧2−Z2〃。2)(9里。.12).1τ2’十λ2β’≡0
(3・17) 〃。、’β=0
(3・18) 凪。2β=0
(3・19) (凪。」17,12)β=O
(3・20) β’ρ。1β=β’ρ、12β≡α
(3・21)〃・11’λ1+17・121λ2+(凪・」∬1・2)’μ十φ(91。」9工12)β=O
が得られる.
(3・ア)と(3・9)に(3・11)を代入して,
104
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (105)
(3・22) τ’=(r.1’〃1γ。1)一’(γ。1’〃1巧1)
1
(3・23)9。。.i’一1巧’’皿’巧’一巧1’〃’巧1(γ。1’〃1γ。’)’’巧’’〃1剛
丁1
を得る.ただし〃1=1−Z1(Z1’グ)■1Z1’.同様にして(3・8)と(3・10)に(3・
12)を代入して,
(3・24) τ2≡(r12’〃2r,2)■1(γ12’が巧2)
(。。。。)9、,.、・一⊥1巧・・灼,・一卿・巧・(巧・・〃・巧・)一・巧・・〃・瑚
丁2
が得られる.〃2=1−z2(z2’z2)一1z2’である.
(3・13)と(3・14)は,(3・11)と(3・12)の関係の下で
(3・26) 凪。1=(Z、’’Z.1)’1Z.1’γ。1一(Z、’’Z,1)■1Z.1’■。工凪。’
十(Z1hZ11)一1μβ’ρ111
(3・27) 凪。2=(Z工2’Z,2)一1Z.2’r.2一(■、2’Z,2)一1Z.2’Z.2〃。。2
一(Z12’Z12)■1μβ’ρ上12
となる.(3・26)と(3・2ア)を(3・19)に代入すると,μは(3・1ア),(3・18),
(320)の下で
1
(3・28) μ=一一((ク、1’Z,1).’十(Z・2’Z・2)■’)一11(Z・1刎一1Z・1’r・’β
α
一(Z12’Z12)一1Z12’γ12β}
と表わせる.(3・28)の下で凪。1と凪12は,
(3・29) 凪。1=(Z工1’Z,1)・1Z1’’γ。」(Z,1’Z。’)一’Z,1’Z・’皿・・1
1
一一(Z王1’Z11)一1((■11’Z11)一1
σ
十(Z12’Z,2)一1)一11(Z.1’Zj1)■1Z.1’巧1β
一(Z工2’Z.2)■1Z.2’r.2β1β’ρ、。’
(。.。。) 〃、、・一(・、…、・)一・・、;・巧・一(・、…、・)一・・、…,・π呈、・
1 ・
十一(Z12’勿2)一1((■工1’Z11)一1
α
十(Z.2’Z.2)一1)■11(Z.1’Z.1)■1Z.1’r.1β
105
(106) 一橋論叢 第94巻 第1号
一(Z・2’Z,2)■1Z.27i2β1β’9、、2
と示す事ができる.
(3・15)に(3・11)を代入して,
(3・31) Z・17・1−Z・1’Z・1∬・1−Z里1’Z.1凪11+λ1β’ρ、、』0
を得る.(3・29)を(3・31)に代入して,(3・17)の関係から,
1 1
(3・32)λ1=一一Z〃。1姉一一(Z,1’Z.1)(Z,I’Z,I)一1((Z,1・Z11)一・
α α
十(Z12’Z・2)■’)■11(Z,1’Z.1)一’Z,1γ。1β
一(Z工里’Z.2)一1Z,2’巧2β1
が得られる.ここで〃1」1−Z11(Z11’Z11)一工Z11’である、(3・29)と(3・32)を
(3・31)に代入して
(・…) 〃一(・〃・、1)一・(・、・・〃工・γ、・)1・」ββ・ρ、、・1
α
を得る.同様にして(3・12),(3・16),(3・18),(3・30)から,〃エ2=1−Z12(Z戸
Z12)一1Z121の下で,
1 1
(3・34)λ2=一一Z.2’〃。2r12β十一(Z.2’Z,2)(Z12’Z12)一’((Z11・Z.1)一・
α α
十(2121■・2)■1)一’1(Z旦’1Z1’)■1Z,17−1β
一(Z工2’Z.2).1Z.2’巧2β1
(・…) 凪、2一(・。2・晩。2)一1(・、・恢、・γ、・)1・一⊥ββ・9、、つ
α
がイ等られる.
仏1一〃1昌〃11ク21(Z21’〃、1Z21)一1Z211〃、1,〃1(〃11一〃1)=O,〃1Z、㌧0の関係の
下で,(3・29)と(3・33)を(3・5)に代入すると,
1 11
(i’36)91・’で11W+がβ’榊・’一カ舳1β
十β’(γ・1’■11(Zj1’Z工1)一Lr.2’Z.2(卯Z.2).’)((Z、’’Z,1)11
+(Z12’Z12)一1)一1(Z】I’Z11)■1((Z11’Z11)一1
+(Z12’Z12)11)一1((Z工1’Zユi)一1Z11711
106
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (107)
一(Z12’Z12)一1Z12’γ1聖)β十α2φ}(ρ111β)(β’ρ1]1)
となる.
(3・36)の両辺に右側からβ,両側からβ’とβを掛けると。それぞ
れ
(3・3ア)
1 1 1
ρ・1β一五巧’’〃1巧1βキπ1β7・1(”11■”1)帥
十β’(巧’刎(Z工’’Z、’)一’一γ、2’Zユ2(Z・2’■12)一1)((Z・’’Z・1)一1
+(Z工21Z12)一1)一(Z工1’Z11)■1((Z11’Z11)一1
+(Z121Z王2)二1)’1((Z11’Z11)’1Z工1’γ11一(Z12’Z12)一1Z12’γ12)β
十α2φ}ρ。。1β
(3・38)
τ、α=β’巧1’〃1γ。1β十β711’(凪」〃1)γ・1β
十β’(γ。11■、1(Z,1’Z.1)一1−r1里’Z.2(Z・2’Z1里)’1)((Z・1’Z・1)一1
+(Z12’Z12).1)一1(Z11’Z11)一1((■11’Z11)’1
+(Z12’Z12)一1)一1((Z11’Z11)■1Z11’γ11一(Z12’Z1!)’1Z12’γ12)β
十α2φ
となる.
(3・37) と(3・38)から
(3・39) ρ・11一β・。、1看・巧・β巧1Wl
を得る1
(3・36),(3・38),(3・39)から
1
(3・40) 91i1=一γ工11〃1y11
T1
・α耕箒採1)(舳11)(μ舳1)
1
=一r11’〃1巧1
T1
・α蒜蝋線)(去舳一・/)(去阿W)
と表わす事ができる.同様にして(3・6),(3・30),(3・35)から
1 1 1
(…1)ρ・2一瓦・・2怖・2・示阿21(払2.”2)姉
107
(108)
一橋論叢 第94巻 第1号
十β’(巧’’Z、’(■、’’Z、’)一I一巧2’Z.2(Z12’Z.2)■1)((Z,1’Z.1)一’
十(Z12’ク12)一1)一1(Z12’Z1里)一i((Z11’Z12)一1
+(Z・2’Z・2).’)一1((Z・1’2・1)一’Z・’’r・1一(Z.2’γ、里)■1Z.2’y,2)β
一α2φ}(9。、2β)(β’9u2)
(3・42)
1 11
9・12β=が’吻2β・π1β’巧W一〃2)沸
十β’(巧1刎(Z11’Z。’)’1一巧2’Z12(Z,2’Z12)’1)((Zi1’Z,1)■’
十(Z.2’Z.2)■’)一1(Z.2’Z,2)■1((2.1’Z.1)■’
十(Z.21Z.2)一1)一1((Z.1’Z.1)一■、1’巧1
一(Z・2’Z・2)一1Z・里’γ・2)β一α2φ1(9工。里β)
(3・43)
助=β’r・2’〃2巧2β十β’γ、2’(〃、2一〃2)γ、2β
十β’(r・11Z王1(Z。’’Z.1)一’一r.21Z.2(Z,2’Z,2)’1)((Z,1・Z,1)一’
十(Z12’Z,2)一’)’1(Z.2’Z,2)■1((Z,1’■工’)一1
+(Z12’Z12)一1)一1((Z11’Z11)■1Z11’γ11一(Z121Z12)’1Z12’r12)β
一α2φ
(3・44)
ρ・12β一岬缶・β榊巧2β
(3・45)
1
9112=一r12’〃2γ12
T2
・ω一滞祭2綴2)(舳・1)(μ舳・)
1
=一r12’〃2γI2
T2
十α諾祭緒)(圭巧仰1)(去岬w)
が成立する。なおラグランジュ乗数φは(3・38)と(3・43)から求められる
牟,以下の展開では必要でないのでここでは示さない.
(3・38)の両辺に(3・43)の両辺を加えると,
(3・46) Tα=β’[γ11’〃1「11+y1里’”2ア12+γ11’(”111”1)巧1
108
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (109)
十r.2’(〃。2一〃2)r.2+(巧1’Z11(Z1工’Z工1).一
一r.2’Z12(Z,2’Z,2)一1)((Z.1’Z、’)一1
+(Z.2’Z12)■1)‘1((Z.1’Z.1)一1Z11’K」(Z,2’Z.2)一1Z.2’γ、2)コβ
となる.ここでy1=(y11’「12’)1,Z1=(Z11’Z12’)’,〃1=1−Z1(Z1’Z1)一工Z1’とする.
このときy1’〃1y1は,
(3・47) (Z。’Z、).1=(Z.1’Zli)■1
■(Z11’Z11)一1((Z1i’■11)一1
+(Z12’Z12)一1)■1(Z11’Z11)’1
の関係の下で,
(3・48)r。’〃1r1=巧1’〃1巧1+巧2’〃2巧2+γ。1’(狐1一〃1)r。’
十y12’(〃12一〃2)γ12+{巧1’Z11(■11’Z11)一1
一γ、2’Z.2(Z.2’Z12)一’1((Z,1’■、1)一1
+(Z,2’Z.2)’1)一11(Z,1’211)■1Z.1’r。」(Z.2’Z,2)■1Z.2’r,21
となる(付録参照).従って(3・46)のσは,
(3・49) α=β’γ・’〃・γ・βノτ
と表現される.〃をr1の第亡行としβ’㈹=軌と書くと,β7〃1r1βは軌
のz工。への回帰から得られる残差(ここで標未の大きさはz)であり;αは
制約条件(2・5a)一(2・5d)の下でのσの推定量となっている.
次に(3・28),(3・29),(3・30),(3・32),(3・33),(3・34),(3・35)を(3・21)
に代入すると,(3・37)と(3・42)の関係の下で,
1 1
(3・50)一r.1’(〃。1一〃1)r1’β十一r工2’(〃、2一〃2)姉
伍 α
+一(γ!1’Z11(Z11’Z11)■1−yユ2’Z12(Z12’Z!2)一1)((Z11’Z11〉l1
1
ω
十(Z.2’Z.2)一1)一1((Z,1’Z。’)■’Z.17、」(■。2’Z.2)一1Z.2’γ。2)β
T1 1 T2 1
一一ρ。。1β十一巧I’〃1巧1β一一9。。2β十一y.2’〃2r・2β=O
α α α . α
となる.(3・50)は,実は(3・28)から(3・35)の関係を(3・21)に代入して
109
(110) 一橋論叢 第94巻 第1号
得られる式の符号を変えたものに相当している.(3・39),(3・44),(3・48)に
よって(3・50)は,
1 1 α
(3’51) τ肌巧βα岬州β〃、榊1巧1β
ユ α
α附附岬榊2咋0
となる.ここで(3・49)で与えられるαを代入すると,(3・51)式は,βとデ
ータだけで表わされたβに関する集申対数尤度関数(cOn㏄ntrated10g likeli・
hood fmct三㎝)の正規方程式に対応する.因に,KOopmans and Hood(1953)
の方法で得られるβの集中対数尤度関数は,
r T1
(3’52)Z(β:巧Z)†7b・β’帆巧β十万b・β’巧’批1β
T2
. 十万b・β’巾州β
で与えられる.ただしoはβに関係しない部分である.なお(3・50)と(3・
1
51)式で7が各項に共通であるが・これはβのuMLEの漸近分布の分散
行列をKoopmans.Rubm,and Leibnik(1950)の定理3・3・10によって求め
1
るためである・βのuMLEの漸近分布の分散行列は,(3・51)の左辺に一
丁
を掛けてβ’で徴分した式の確率極限で与えられる.
1
(3・51)式で共通な一を消去すると,
α
(3・53) 巧’払γiβ一州1’〃’r・’β一リ。y12’〃2沸=0
となる.ただし
(3・54) 炉(阿’〃1酬丁)/(β71{’がr、壱卯。) (1=1,2)
である.(3・53)式は,われわれのモデルの下で,A皿dersonandRubin(1949)
の(4・13)式(またはKooPmans and Hood(1953)の(6・30)式)に相当す
る。しかしAnders㎝and Rubin(1949)と異なり,ここでのβは一種の固
有値問題の解として得る事は困難である、(3・53)でリ1,リ2の値が与えられる
と,(3・53)はβに関する線形同次方程式と考えられ,βがゼロでない解を持
110
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定
(111)
つためには,
(3・55) lK’〃1巧一リ1γ、1’〃1巧’一リ。r12’〃2巧21二〇
である事が必要である.しかし(3・55)の解(〃1,”2)は,Anderson and Rubin
(1949)の場合と違って一般に無隈に存在し,解を具体的に得る事自体困難で
ある、
そこでわれわれは,βに関する非線形方程式(3・53)に適当なアノレゴリズム
を適用してβのH肌Eを得る。(3・53)式の左辺をβ’に関して微分した式
は容易に得られるので,ほとんど全ての非線形間題のアノレゴリズムが適用可能
である.ここで(3・53)式の左辺のβ’に関しての徴分を使用してNewtOn−
Raphsonの方法を適用する際,βの初期値として一致推定量(例えぱ以下で
示されるBartenandBronsard(1970)の推定量)を用いると,良く知られて
いるようにNe耐on−Raphsonの方法で第一回目に得られる推定量はBANで
ある.
以上でβのuMLEβが得られた.一γのuMLEは庇11βまたは厄12β
(広11と瓦1呈はそれぞれ(3・29)と(3・30)で定義される凪11と∬エ12を意
味する)で与えられるが,(3・47)の関係を利用すると(Zエ’Z1)一1Z171βと同じ
である事が示せる.σのHMLEは(3・49)で与えられる.
また(3・40)と(3・45)で与えられるρ111と9112のH肌Eに基づいて,
(3・56)
叱一1去附小
(3・57)
舳十榊外
が得られる.このとき尤度は,指数関数の部分が定数となるので,
T1 τ王
(・…)・一の1か叶1〆”プド{ヰ
となる.ただしo1は定数である.従って次の定理を得る.
定理2 仮定1−4の下で構造バラメーターθ=(β’,〆,σ)’のLI肌Eθは,
次のようになる.βは,非線形方程式(3・53)(または(3・51))の解として得
111
(112) 一橋論叢第94巻第1号
られる.デと6は,それぞれ
(3・59) デ=一(Z1’Z1)■’Z。’巧β
(3・60) 6=β7〃、r、β/τ
である.またこのときの尤度は,
乃 ■,
(・…)・一勿1去舳ゾ1去舳ガ・・七・一苧
で与えられる.
次にLIMLEの漸近分布を得るために,以下の仮定を設ける.
乃
仮定5 1im一≡d(0く∂<1).
■→蜆丁
■1’Z1 .Z2’Z2 .Z’Z
仮定6 Z=(Z1’グ’)’とすると,1m ,1m ,lm一は,全て正値
τ→oo乃 丁→酌 τ2 π→蜆丁
定符号行列で,それぞれ
・一(隻::隻:1)一(舳吋1い一(隻:1)
(・…)・一(隻::隻::)一(パ甜川一(隻::卜(隻::)
・一(隻1隻:)一(・1い・一(ll:)…一(隻:)
と表現する.81,82,8の分割はZの分割に従っている.
βが(2・8)で定義した行列8(β)のregu1arな点であれぱ,Koopma口s.
Rubin,and Leibnik(1950)の定理3・3・6と定理3・3・10から次の定理が成立
する.
定理3 戸が8(β)のregularな点であれぱ・構造バラメーターθのL1MLE
は,仮定1−6の下でBANである・とくにδ=(β1’,γ)’のuMLEδ=(β1’,デ’)’
112
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定
(113)
の漸近分布の分散行列風は,
(3・63)
で与えられる.ここで(3・63)の逆行列は仮定1−6のもとで存在する.また
巫{と92{({昌1,2)は,凪{とρu{をβの分割に従って
(3・64) 皿。{=(〃〃) (づ=1,2)
昨(葦11:貧::)一(量1)(仁・・)
(3・65)
と分割したときの部分行列である.
Barten and Bronsard(19アO)は,δの推定量として一種のTSLSE
ぺ㌘㌻llllll 一1111∴1
を提案した.ここで巧{は,βの分割に従って
(3・67) γ、{=(μ、{,ヱ。壱) (仁1,2)
と分割されている.仮定1−6の下で,δはCAN(一致漸近的正規推定量)で,
その漸近分布の分散行列∬里は,
(3・68)
1膿隼㌫鰐岬鮒十sプ)鮒r
で与えられる.
またGoldfeld and guan砒(1976)は,δの推定量として構造変化を無視
して丁個の標本にTSLSEを適用した場合,すなわち,
(3・69)
・一厳吻地芸1二11[㌶(1z)切1
113
(114) 一橘論叢第94巻第1号
の一致性を示した.ただし
(3・70)
巧一(皿乃)一(谷差:ly
である.仮定1−6の下でδはCANで,その漸近分布の分散行列凪は,
(・…)砥紺ε撚浮(8)一(”が十(’‘d)鮒
d鮒㌃∂)附1一
で与えられる.(3・68)と(3・ア1)の逆行列は,それぞれ存在するものと仮定
している.
(3・63),(3・68),(3・71)を比較すると,
2d(1−d)
(3・ア2)泌1’S1巫。工十(1−d)必筥’82〃十 (9.Iβ一必2β)(9.1β一9.2β)’
σ
≧d皿21’S1∬21+(1−d)巫22’82皿22
≧(d巫1’81+(1−d)皿22’S2)(8)一1(d∬21’81+(1−6)巫22’S2)1
である事が示せる.ここで“F≧θ”は,Fがθよりも非負値定符号の意味
で大きい事を意味する.従って次の系を得る.
系2 仮定1−6の下で,推定量δ,δ,δの漸近分布の分散行列∬1,理,Hヨに
は,
(3・73) 凪≧H。≧H、
の関係がある.ここで∬’が∬1と等しくなるためには(Barten and BrOnsard
(1970)の推定量がBANになるためには),
(3・ア・)一 g,1β=9,2β
である事が必要十分条件であ弔.
(3・74)が成立すると,(2・5d)の制約条件はβの識別には役に立たない事
が(2・8)から明らかになる.すなわち8(β)の最後の行は,(3・74)が成立す
ると全てゼロになる.(3・74)が成立する場合の一例としては,構造方程式の
114
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (115)
第一方程式に含まれる説明変数としての内生変数(γ2)と誤差項が構造変化の
前後を通して互いに無相関(または独立)である場合(すなわち必1β=922β
=0)が考えられる.
4BAN推定量のクラス
この節ではuMLEと同じ漸近分布を持つBAN推定量のクラスを特徴化づ
け,B千N推定畢であるための条件を明示する.その応用として,TSLSEをど
のように修正すれぱB州推定量になるのかを明らかにする.Hendry(19ア6)
は・構造変化のない同時方程式モデルで,FIMLE(完全情報最尤推定量)の
正規方程式から通常知られている全ての推定量が導出できる事を示した、’
Hendry(1976)は,このFIMLEの正規方程に基づいた式を推定量生成式
(eStimatOr generatingequa七iOn)と呼んでいる.初めにわれわれのモデノレで
.の推定量生成式を導出し,それによりBAN推定量であるための条件を萌らか
にしよう.
われわれのモデルは,
(4・1) X1■1=r1月o+Z101=E1
(4・2) X2λ2=y2が十グ02=刃2
と書くことができる.ここで
x」(γ{グ),が=(刎ケ曲‘)
(4・3) (1=1,…)
∠也一(州1が一(け・・一(1一〃)
であり,γ51,7聰2,∫砧,凪1,凪2のゐは,第二から第θ番目までのθ一1個の
内生変数の誘導型に対応している.(2・5a)一(2・5c)の制約条件は,Bo,01,02
の定義の中で与えられている・(2・5d)の制約条件は,刎Iと刎2の分散が等し
い事である・がと五2の各行の分散行列を〃とガとし,30の列の分割に
従って
〃一(㍑1)
(4・4)
({=1,2)
115
(116)
一橋論叢第94巻第1号
(〃)一1一(多多)
と表わす.
このときσ1昌σ2という制約条件の下での(4・1)と(4・2)の対数尤度関数
は,
(。.。)工一。。。!1。。■1,1一・・型1・。1」ll一・
2 2
1 . ξ
一デ・1(∠1)一1”’”・(」2)’’”W}十万(σ1iσ2)
で与えられる.
(∠1).1,(」2)’1,ξに関する正規方程式から,
・一去舳1λ・一六1(1:)(1・・レ)
(4・6)
(4・7)
1・一去舳・峠(;1)(σ・・ル)
σ1=σ2(…σ)
(4・8)
が得られる.(4・6)と(4・7)の(1,1)要素を(4・8)に代入して,
(。.。) ξ一肌1,1(盟1」X、・δ)・(里、・一・。1δ)/τ。
T(σ)
一(砂工LX.2δ)’(リ。2−X,2δ)ノ刎
が得られる.ここでX1{はδに対応するX’の部分行列である.また(4・8)
の下で,、(4・6)と(4・7)の(ユ,1)要素に対応する両辺を加えると,
(4・10) σ≡(翌rX・δ)’⑫rX・δ)/T
となる.ここでX一二(X11’X12’)’である.」
次にδ,凪1,凪2の正規方程式から,
(4・11)
舳1(1:)・舳・(1:)一・
(4・12)
Z’’(一型、I+X.1δ)P1’十Z1’(γ。1−Z1凪1)⑦」O
(4・13)
Z2’(一μ12+X12δ)ρ2’十Z2’(γ匝2−Z2∬02)¢2=O
が得られる.
(4・12) と (4・13)から,
116
構造変化のある同時方程式モデノレの識別と推定 (11ア)
(4・14)17.1=(Z1’Zヱ)一1Z1’ア匝1+(ZI’Z’)一1Z1’(一リ、1+X.1δ)ρ1’(¢1)■1
(4・15) 凪2=(Z2’Z2)一1Z2’巧2+(Z2’Z2)一1Z2’(一〃I2+X12δ)ρ2’(¢室)一1
となる.〆(が)一1=一q{’ノσ({=1,2)によ.って(4・14)と(4・15)は,
1’
(・・16) ∬。1=(Z1・Z1)一’犯’一(Z1・Z1)一1Z1・(一ψ、i+X,1δ)し
1 σ
2’
(・・1ア)∬日2=(Z2・Z2)一’Z2・巧2一(Z2・Z2)一IZ2・(一砂、・十肋)ζ
一 σ
となる.
(4・6)と(4・7)の関係を利用して,
(・…)附1一去(巧一〃)伽1(・)一一去(が)一(1:)(・・)
(・…)(が)一・一去(プー柵)灼・(・)一・・紗)一(1:)(・・)
を得る・(的一1一(㍑であ1・(石1)一・州)要素を除/第一列にl1応
する(4・18)と(4・19)の関係から
(・…) か〃(1:)一肋W(1:)・1・
(・…) 雌C:)一〃鮒(1:)一1ゲ
となる.(4・20)と(4・21)の関係でが(づ=1,2)に対応する部分を(4・11)
に代入すると,
(・…)(榊〃(ll)・(雪グ)ぺ:)・1((㎡プ))一・
を得る.ここでq1{はがに対応するq{の部分ベクトルである.(4・12)と
(4・13)から
(・…)(閉(〃一州一一(竺1デ)(一ψ1・肋)1W
(・…)(削(〃昨一(割(一州1)舳イ
が成立し,この2つの式を(4・22)に代入すると
117
一橘論鍛第94巻第1号・
(118)
(㌢)(一帥・十舳1一〃)一別・
(4・25)
(㌢)(一〃1)(パイ(炉閉・1((伽1プ))一・
1
が成立する.が一ρ{’(¢{)一1〆=一(4=1,2)と(4・9)の関係から,(4・25)は,
σ
÷(㌢)(一州1)・÷(閉(一〆十肋)
(4・26)
T1T21
+ 。1(〃、’一X.1δ)’(μ。1−X。’δ)/τ、
T(σ) 一 一
一吐鮒(〆一洲)側((ヴ))一・
となる.
1
また(4・26)の両辺に一を掛けると,
T
(4・27) 〃(δ,∬。1,∬。2,σ,9、’,q,2)
≡去÷(削(一州1)・÷÷(㌢)(一州1)
乃丁21
+ {(砂。」X11δ)’(〃1」X,1δ)/τ、
T2(σ)2一 一
廿肋)・ぴ一地)側((㌃パ))一・
が得られる.
δのHMLEは(4・26)(または(4・27))から計算され,(4・26)は三節の
(3・51)式に対応している.ル(…的(δ,皿21,巫2,σ、q11,q12))は,皿21,∬22,σ,
1. 1∂Z・ 一
q1,q1を正規方程式を用いてδで表現したときの, に対応する 一
丁∂δ
こでZoは,δに関する対数集申尤度関数である.従ってδのLI肌Eの漸
近分布の分散行列は,
(4・28)
で与えられる.
118
(班痔ジ
1
(4・28)を得る際に,plim−Z{’(1!十X1{δ)=O(仁1,2)と
r→蜆丁 一
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定
(119)
plim{(砂11−X11δ)’(μ1」X11δ)μr(砂12−X12δ)’(砂12一疋2δ)〃2}=Oであるので,
τ一一〇〇 一 一 一
∂Fπ
搬研=O
∂〃
搬硬=0
(4・29)
∂Fr
plim一=0
』岨∂σ
∂〃
嚇研=0
∂FT
搬研=0
が成立する.従ってδのB州推定量の漸近分布の分散行列は,巫1,必2,σ,
q11,q12の推定量が一致推定量であれぱBANであるか否かに影響されない.
上の結果からTSLSEを利用するBAN推定量として,次の推定量を提案
できる.
定理4 以下の3つのステヅプを経て得られるδの推定量は,BANである.
ω瓜1と∬22は,それぞれム1とム2のZ1とZ2へのOLSE(最小二
乗推定量)によって推定する.
㈹σは,(i)のOLSEに基づくTSLSEδ((3・66)参照)から得られる
(4・30) (砂rX。δ)’(砂rX、δ)ノT
によって推定する.q11とq12は,
(4・31) ム1’(砂、1−X.1δ)/τ、
(4・32) Z.2’(砂。2−X。里δ)/τ。
によって推定する.
㈹(i),(ii)で得られた皿21,巫2,σ,g11,g12の推定量を代入した(4・26)式
(または(4・26)式にσを掛けた式)のδについての解は,δのBAN推定
量である.(4・26)式のδについての解は,非線形問題のアルゴリズムを用い
て得る.
119
(ユ20) 一橋論叢 第94巻 第1号
、この定理によって構造変化のあるわれわれのモデノレにおいても,Li肌Eと
漸近卵に同等なBAN推定量がTSLSEを修正して得られる事が示された、
しかしTSLSEを修正してBAN推定量を得るためには,第三ステヅプの非
線形問題を解く必要がある.そのため通常の同時方程式モデルと異なりわれわ
れのモデノレでは・TSLSEに基づいたBAN推定量はLIMLEと比ぺて特に計
算面での利点はない.
1) この論文は筆者がCORE,U皿iversite Catholique de LowainIを訪れた時に書
かれたものである.
2) Barten and Bronsard(1970)は,也1と也2の分散が等しいか否かについては
何も言及していない.しかしもし似1と仙2の分散が等しくなけれぱ彼等の推定量
より漸近的に有効な推定量が存在する事は自明であるので,刎1と砒2の分散が等
しいと暗に仮定されていると考えられる.
3)大局的識別条件(globaI identi丘cation)については,Fisher(1966)とRothen−
berg(197ユ)に十分条件が述ぺられているが,非常に強い十分条件である.
4)βが8(β)のreguIa・な点であるとは,βの開近傍で8⑫)が一定の階数を持
ったものが存在する事を意味する.
5) F1sher(1966)のp.167を参照.
6) Koopmans and Hood(ユ953)の方法によると,HMLEの導出はもうと容易に
・ なる.
二7)uMLEの㌃致性士漸近的正規性は,構造変化のない場合のLIMLEと同様,
ここでもσの正規性には依存しない.
付録
(3・48)式の証明
(3・4ア)の関係の下で,
(A・1)γμ1「・=γ・17・1+r・叩・L(γ11’Zl一十y、里’Z−2)(Z。’Zl)一1(Z11’γ。1+Z凧・)
=γ。1’γ11+r121r1Lσ、1’Z,1+F、里・Z、里){(Z、・・Z1・)一・
一(Z・1’Z・’)・1((Z11’Z・1)一’十(Z・2’Z・里)一1)■’(Z.1’Z.1)一11(Z,1’γ、1+Z、叩、・)
昌y11711+γ121r12−r11’Z11(Z11’Z11)一1Z117,Lγ、一’Z11(Z,I’Z11)一1Z,2・γ12
−r1里’Z12(Z11’Z11)一1Z11’γ11一γ1里’Z12(Z11’Z11)’1Z1宝’ア12
一「1里’Z12(Z12’Z12)一1Z1”γ12+γ12’Z]2(Zi里’Z一里)一1Z12’γ12
economic relationships,”∫〃伽伽万60仇o肋肋ル肋oゐ、Hood,W.C.and T.
C・KooPmans(eds・),Wiley.
120
構造変化のある同時方程式モデルの識別と推定 (121)
十γ・1’Z・1(Z・1’Z・1)’1((Z・’’Z・1)■1+(Z。’’Z工里)一1)一’(Z1・lZ、・)一・Z、・7、・
十γ!1’Z・1(Z・!’Z・1)一((Z11’Z・1)一1+(Z、里’Z,2)一1)一1(Z、・・Z、・)一・Z、・・γ、・
十巧2’Z・2(Z・1’Z・1)一1((Z・1’Z、’)‘1+(Z、物、2)一1)一1(Z、・・Z、・)一・Z、・7、・
十「・2’Z・2(Z・1’Z・1)一1((Z・1’Z.1)一1+(Z、”Z,2)一1)一1(Z、・・Z、・)一・Z、・・η
=γ・1’”1ア・1+γ・1’(〃・」〃1)7,1+r。Ψη十1一・・(〃、し的y工・
一巧2’Z・2(Z・’Z1)■1Z〃。2+r。物、2(Z、里’Z王岳)一・2、・・r、・
十「・1’Z・1(Z11’Z・1)一1((Z・1’Z.1)一1+(Z,2Z。雪)一1)一・(Z、・・Z、・)一・Z、・7、・
一巧1’Z・1(■・1’Z・1)一11∫一((Z・1’Z.1)一1+(Z.2’Z、岳)一1)一・(Z、・・Z上・)一・}Z、叩、・
一巧”Z1211一(Z・1’Zl一)■1((Z・1’Z.1)一’十(Z。里’Z,2)一1)一・1(Z、・・Z、・)一・Z、・7、・
≡巧1’”1巧1+y・2’〃η十r・1’(〃。1一〃1)γ。1+巧・(〃、1一〃・)y工・
十y12’Z1里(Z1”Z12)■1((Z11’Z11)■1+(Zi2’Z1,)一1)一1(Z、里・Z,2)一1Z1里7、呂
十「・1’Z・](Z・1’Z・1)■1((Z・1’Z・1)一1+(Z.2’Z,2)一1)一・(Z、・・Z、・)一・Z、・・η・
一巧1’Z11(Z11’Z・1)■1((Z・1“Z11)■1+(卯Z,2)一1)一・(Z,1・Z、・)一・Z工・lr、・
一巧2’Z・2(Z・2’Z・2)一1((Z・1’Z・1)一1+(Z。盟Z,2)一1)一・(Z、・・Z、・)一・Z、・・γ、・
言ア・11”1γ11+㍗〃㍗十y・一’(』41一〃1)γ、1+巧卯(〃、L〃・)γ、・
十岬’Z11(Z・1’Z・1)’1−r・丑’Z・里(Z・2’Z12)一11((Z.1’Z,1)一・十(Z、・・Z、・)一・)一・
Xl(Z11’Z・1)’1Z.1’巧1一(2μ、2)一1Z。叩。21
となる。証明終り。
参考文献
[1]A・d…。・・T・W・(1・58)・ル・舳伽肋舳吻1肋〃〃ε∫吻鮒藺1ノ榊榊、
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