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2章 システムの問題定義と概念化
2章では、問題定義及びシステムの概念化
に対する取り組みについて考える。
2.1.A 問題と問題定義
何をどう定義すればよいのか、そもそも問
題とは何か、について考えていこうと思いま
す。
問題とは何か
問題という概念は『理想と現実との差』としてとらえられる。
人口知能の分野を例にとれば、以下のように表現できる。
目標状態 Sg
an
S2
a2
S1
初期状態 Si
状態空間S
a1
図1
作用素空間A
状態の集合をS、状態を遷移させる作用素の集合をAとすると、これに
初期状態Si、目標状態Sgを加えた4つの要素からなる組<S、A、Si、Sg
>を問題と呼ぶ。
問題解決
問題解決とは、前ページ図1に示すように、SiをSg
にまで遷移させる作用素の系列(a1,a2,・・・,an,た
だしai∈A)の生成であるといえる。
問題定義
システム工学の問題定義では以下の項目を明確
にする必要がある。
①目的・目標
②制約
③評価基準
④現状
各項目を次ページより解説する。
①目的・目標
目標状態Sgを定性的に表現した問題解決
の目的、さらにはそれを定量的に表現した目
標を明確にする。
定性的:性質や成分に注目すること。
定量的:量や数値に注目すること。
②制約
問題解決の中で許容できない、または考慮する
必要がない状態、作用素、作用素の系列は、制約
として明確にしておく必要がある。
③評価基準
目標達成に至るまでの作用素の系列(a1,a2,・・・
an)は、複数個存在する場合がある。各系列は問
題解決の代替案となる。
問題定義では、各代替案の価値や優劣を判定す
るための評価基準も明確にしておく。評価基準は
現状と理想との差を計る尺度となる。
④現状
初期状態Siについては、それが自明である場合も
あれば、調査分析を通して把握しなければならない
場合もある。例えば、利用可能な問題解決の作用
素の調査なども現状把握に含められる。
留意点(1)
・問題とは、人間が問題状況の中から取り出すものであり、
人によって問題認知がされたり、されなかったりする。
・1つの問題状況の中でも、無数の問題定義が可能である
し、最初に得られる情報が完全であるとは限らないし、問
題解決の途中でも刻々と新しい情報が入ってくる。
・グループで問題定義に取り組む場合、各メンバーは自分
の担当部分についてのみ責任を持とうとしがちであり、
全体を見渡した問題定義がなされにくい。
留意(2)
従って、①~④の各項目を最初から完全に定義
することができるとは限らない。実際にはシステム
ズアプローチのサイクルを何回も繰り返すなかで、
徐々に明確になっていくことが多い。すなわち、
システムズアプローチでは、問題の再定義を可能と
する立場を忘れてはならない。