富士火山の地球科学と防災学 富士山の謎を さぐる

富士火山の地球科学と防災学
富士山の謎をさぐる
編者 日本大学文理学部地球システム科学教室
30116020
吉岡 和樹
1.富士山南西麓の砂防施設
大沢崩れから流出する土砂を沈砂
池や遊砂池などの砂防施設内で推
積させ、下流への流出を食い止め
ている。
2.御殿場岩屑なだれ推積物の
断面
赤色の火山灰や内部が著しく破砕
された紫灰色の溶岩のブロック
(岩屑なだれ岩塊)が接している
3.3200年前の大沢火砕流
とこれをおおう2500年前の
大沢火砕流
西側斜面大沢崩れ末端の「横崩
れ」
目次
 Ⅰ
富士は日本一の山
 Ⅱ
噴火する富士山
 Ⅲ
富士山の空と水
 Ⅳ
富士山の火山災害と恵み
 Ⅴ
富士山の火山災害にかんするなんでもQ&A
Ⅰ 富士は日本一の山
4 富士山の生い立ち
この項目内のいくつかを取り上げてい
く
次の噴火はいつ?
2000年から2001年にかけて、富士山
の地下で深部低周波地震が著しく増加した。
このことは、富士山の地下では、マグマの活
動が依然として活発であることを示している。
富士山はいつ噴火してもおかしくない
状態にあるといえるので、噴火への備
えは常に必要である。
数十年間隔で噴火を繰り返す活火山の場合は、い
つごろ噴火が起きそうであるか、ある程度の予想
が可能である。これに対して、1707年の宝永
噴火を最後に噴火がまったく起きていない富士山
で、同じように噴火時期の予測をすることはきわ
めて困難である。最近、気象庁をはじめとする防
災機関が、地震計や傾斜計、GPS観測装置など
の噴火予知のための観測機器を、富士山の周辺に
設置しつつある。現在の観測体制は必ずしも十分
なものだとはいえないが、今後さらに観測機器の
整備が進めば、数日ないし数週間前に噴火発生の
予測を行うことも、不可能ではなくなるだろう。
予測される噴火の規模は?
最新の宝永噴火が大規模であったこと
から、次も大規模の噴火が起こるので
はないかと考えられがちであるが、実
際には必ずしもそうなるとは限らない。
最近3200年間の富士山の噴火についてみてみる
と
大規模噴火
中規模噴火
小規模噴火
7回
20~30回
100回以上
そしてこれまでに知られているマグマ噴出率から考
えると、小・中規模噴火が繰り返される可能性のほ
うが高い。
ただし、大規模地震を引き起こすだけのマグ
マがすでに地下に蓄積されていることは事実。
Ⅴ 富士山の火山災害にか
んするなんでもQ&A
この章には、普段私たちが気に
なっている質問や富士山の火山災
害に関する専門的な質問に対する
考えがかかれています。
Q ハザードマップの想定を超
える範囲に被害がおよぶことは
ありうるのでしょうか?
富士山ハザードマップ検討委員会により作成された
ハザードマップは、富士山の過去の噴火履歴にもと
づき作成されたものです。
過去に発生したことがないような想定外
の噴火現象が発生し、予想外の被害が発
生することはありえます。
ただし、他の火山の例をみても突然過去になかった
ような噴火現象が発生する可能性はきわめて低いの
です。
また想定火口はあくまで過去の噴火履歴にもとづき設定した
ものなので、この範囲からはずれた場所で噴火が発生するこ
とがまったくないとはいえません。ただし、このような場合
は、噴火前に地殻変動や火山性地震の活動などの変化が現れ
る可能性が高いと思われる。
噴火が予測できる!