極値理論を用いた保険・金融データの理論及び実装手法 橋本欣典 東京大学大学院経済学研究科 (平成26年3月当時) 概要 本論文は、極値理論のサーベイ並びに、実際に分析ツールとして用いる際に踏むべき手 順及びその注意点を体系的に纏めたものである。 そもそも極値理論とは、 1953年オランダにて起きた大洪水を踏まえ、 オランダ政府か ら統計学者に投げかけられた次のような問いに対して答えるために生まれた比較的新しい 分野である。すなわち、洪水の発生頻度を1000年に1度の水準に抑えるために防波堤の 高さはどれほどにすればよいのかを、 100年分にも満たないデータから如何にして推定 すればよいのか、 という問題である。 このような性質から、 一部の保険商品評価で問題となる大規模災害発生リスクの分析、 ポートフォリオ管理上問題となる株価大暴落リスクの分析、 といったケースに応用すること が可能である。本論文では応用例として、東京・ニューヨーク・ロンドン3主要金融市場の株 式指標の大暴落リスクの評価並びにその相関構造の分析を行った。 後者の相関構造分析 は多変量極値理論の分野にあたり、 これを用いた実証研究は金融の分野では未だほぼ皆 無であるため、 この実証研究自体意味あるものである。 データ入手可能性の問題から、 当調査研究の主題である火災保険評価に直接的に関わ る応用例ではないが、 大規模災害リスク分析においても踏む手順は概ね共通しているため、 分析手法を提供するという形で、 当調査研究に貢献できれば幸いである。
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