初級ミクロ経済学 -消費者行動理論- 2014年10月17日 古川徹也 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 1 いくつかの話題について 労働供給モデル・貯蓄モデルを取り上げる。 特徴 (1)価格は消費者にとって与件だが,所得は 固定ではない(価格に依存する)。 (2)供給面を表すので,導出される曲線は右 上がりのものとなる。 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 2 労働供給モデル 2財モデル:消費財(すべて)と時間 時間全体が決まっており,それを T とおく(たと えば24(時間))。T を労働時間 h と余暇 l に振り 分ける。 消費財の価格を1,労働時間1単位当たりの賃金を w とおく。 消費財購入量を c とする。消費財を購入するため の資金が(労働時間)×(賃金)から得られるとする と, c wh が成立する。これに時間に関する仮定を 代入すると,最終的に以下の形となる。 c wl wT 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 3 グラフ化する c wT wT 右下がりの直線。 傾きは-w w w w wT 0 T 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 l 4 選択する点の移動:オッファー曲線 c wT wT wT 0 T 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 l 5 余暇の消費が減る(労働供給が増える)場合 c wT ・余暇が下級財 ・余暇が正常財だが,所得効果 が十分小さい wT 0 T 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 l 6 余暇の消費が増える(労働供給が減る)場合 c wT ・余暇が正常財で,所得効果が 十分大きい場合 wT 0 T 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 l 7 分析 余暇も消費財も,多ければ多いほどよいとする。ま たどちらも正常財であるとする。 賃金の上昇は,余暇の消費財に対する相対価格を上 昇させるので,代替効果は余暇の需要を減らす方向 に働く。 しかし同時に,賃金の上昇によって実質所得は上昇 するから,所得効果は余暇の需要を増やす方向に働 く。 所得効果のほうが大きければ,賃金の上昇は余暇に 対する需要を増やす,すなわち労働供給は減少する。 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 8 労働供給曲線 w 必ず曲がるとは 限らない。 h 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 9 貯蓄モデル 第1財を現在消費(若年期の消費),第2財 を将来消費(老年期の消費)と考えて分析す る。 現在消費を x1 ,将来消費を x2 とおく。 若年期,老年期それぞれ y1 , y2 の所得があ るとする。 利子率を r ,貯蓄(マイナスの場合は借 入)を s であらわす。 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 10 予算制約 「現在」の予算制約 x1 y1 s 「将来」の予算制約 x2 y2 (1 r ) s 2つを合わせる( s 消去)と以下のように なる。 1 1 x1 x2 y1 y2 1 r 1 r 「将来」の変数が割引現在価値で表される。 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 11 グラフ化する x2 右下がりの直線。傾きは-(1+r) 必ずこの点をとおる。予算線は,rが 変わるとこの点を軸に回転する。 y2 0 2014年10月17日 y1 初級ミクロ経済学 x1 12 若年期に貯蓄する主体 x2 若年期の消費が所得を下回り, 貯蓄を老年期に利子つきで受 け取り,消費に回す 最適な選択 x2* y2 0 x 2* y2 (1 r ) s 2014年10月17日 y1 x *1 貯蓄 x1* y1 初級ミクロ経済学 x1 13 若年期に借金をする主体 若年期の消費が所得を上回り, 借金を老年期に利子つきで返 済,残りを消費に回す x2 最適な選択 y2 x 0 y2 x 2* (1 r ) s 2014年10月17日 x *1 y1 借金 * 2 y1 x1* 初級ミクロ経済学 x1 14 借金はいけないことか? 若年期に借金するかどうかは,各期に手に入 れられる所得と,人々の選好(無差別曲線の 形状)に依存する。「好み」「ライフスタイ ル」の問題。 したがって,「借金がよくない」とか「若い ときは借金してでも勉強しろ」とかいうこと を,一概に言うことはできない。 問題は,若年期に借金した場合に,それを老 年期にきちんと返すかどうかである。 2014年10月17日 初級ミクロ経済学 15
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