国際収支表をどう読むか 国際収支の均衡 国際収支とGDP 国際収支表の意義 • 国民経済計算体系の中の国際収支表 – 1国の居住者と他の国の人々との間の取引 • 国民所得勘定や資金循環表との密接な関係 – 1993SNAによる国際収支表の改訂 • 1995年より実施 • 国際収支表に何が見えるか – 財・サービスのフロー – 資金の貸借 – 貨幣のフロー 国際収支表の読み方 • 原表と国内発表形式 – IMF Balance of Payments Manual, 5th ed. • IMFへ報告される形式 • 複式記帳方式(複式簿記の基礎) – 会計の原則 – 国内発表形式 • 問題点の把握 • 収支の状況の明確化 経常収支とは何か • 経常収支(current balance) – 経常取引によって生ずる受け払い • 経常収支の構成 – 旧形式 • 貿易収支 • 貿易外収支 • 移転収支 – 新形式 • 貿易サービス収支 • 所得収支 • 経常移転収支 旧形式による経常収支 ①経常収支(②+⑤+⑧) 131,448 ②貿易収支(③-④) 141,514 ③輸出 351,292 ④輸入 209,778 ⑤貿易外支出(⑥-⑦) -3,949 ⑥受取 203,564 ⑦支払 207,513 ⑧移転収支(⑨-⑩) -6,117 ⑨受取 1,343 ⑩支払 7,460 1993年(単位:100万ドル) 旧形式による国際収支表 ①経常収支 ⑪長期資本収支(⑫+⑬) ⑫資産 ⑬負債 ⑭基礎的収支(①+⑪) ⑮短期資本収支 ⑯誤差脱漏 ⑰総合収支(⑭+⑮+⑯) ⑱金融勘定(⑲+⑳=⑰) ⑲外貨準備増減 ⑳その他 1993年(単位:100万ドル) 131,448 -78,336 -73,608 -4,728 53,112 -14,426 -260 38,426 38,426 26,904 11,522 新形式による経常収支 ①経常収支(②+⑦+⑧) ②貿易・サービス収支(③+⑥) ③貿易収支(④-⑤) ④輸出 ⑤輸入 ⑥サービス収支 ⑦所得収支 ⑧経常移転収支 2005年(単位:億円) 182,591 76,930 103,348 626,319 522,971 -26,418 113,817 -8,157 新形式による国際収支表 ①経常収支 ⑨資本収支(⑩+⑮) ⑩投資収支(⑪+⑫+⑬+⑭) ⑪直接投資 ⑫証券投資 ⑬金融派生商品 ⑭その他投資 ⑮その他資本収支 ⑯外貨準備増減 ⑰誤差脱漏 ①+⑨+⑯+⑰=0 2005年(単位:億円) 182,591 -140,068 -134,579 -47,400 -10,700 -8,023 -68,456 -5,490 -24,562 -17,960 250,000 日本の国際収支 200,000 150,000 100,000 億円 50,000 0 1972 1977 1982 1987 1992 -50,000 -100,000 -150,000 経常収支(旧系列) 経常収支(新系列) 総合収支(旧系列) 資本収支(新系列) -200,000 年度 1997 2002 国際収支の均衡 • 国内均衡と対外均衡 – マクロ経済政策の必要性 – 前提としての対外均衡 • 持続可能な国内均衡 • 国際均衡 – 各国の対外均衡間の調和 – 赤字国と黒字国 対外均衡の3つの意味 • 会計的な均衡 – 自生的取引と補正的取引 – above the line と below the line • 国際収支の均衡 – 経常収支の均衡 – 基礎的収支の均衡 • 国内政策との関連での均衡 – 無理のかかった国際収支の均衡 国際収支のマクロ経済学 • 輸出と輸入の経済的意味 – 輸出=海外からの需要の注入 – 輸入=海外への需要の漏れ • 経常収支の黒字 – 景気を支える要因 • 国際収支の改善への要求 – 輸入制限 – 関税 – 経済摩擦の根源 景気と貿易収支(数値例) (初期状態)貿易収支は均衡 あと1,000億円の生産があれば完全雇用 1,000億円の生産増加があった場合、所得が1,000億円増加 (仮定)家計は所得の増加の内 15%(150億円)を貯蓄に、 10%(100億円)を輸入に回す。 国内製品への需要増は750億円で売れ残りが250億円生じる。 (結論)250億円の投資の増加があれば、 1,000億円の生産増加を支えられる。(乗数4) 外国貿易乗数の問題 経済が以下のモデルで示されるようなものであったとする。 C=500+0.85Y I=600、G=400、X=1100 M=100+0.1Y (単位億円) ただしY=国民所得、C=消費、I=投資、G=政府支出、 X=輸出、M=輸入 ①均衡国民所得はいくらになるか。 ②その時の貿易収支(B=X-M)はいくらか。 ③もし完全雇用にするには国民所得をあと1,000増加させなけ ればならない場合、財政支出をどれだけ増加(ΔG)すればよ いか。 ④その時の貿易収支はどうなるか。 ⑤同じ国民所得の増加が輸出増で達成されたときの貿易収 支はいくらか。 解答 ① Y=C+I+G+X-M =500+0.85Y+600+400+1100-(100+0.1Y) Y-0.85Y+0.1Y=500+600+400+1100-100 0.25Y=2500 Y=2500/0.25=10000 ② B=X-M=1100-(100+0.1×10000) =1100-(100+1000)=0 ③ 1000=0.85×1000+ΔG-0.1×1000 ΔG=1000-850+100=250 ④ ΔB=-ΔM=-0.1×1000=-100 ⑤ ΔB=ΔX-ΔM=250-100=150 練習問題 経済が以下のモデルで示されるようなものであったとする。 C=50+0.7Y I=180 G=120 X=90 M=40+0.1Y (単位億円) ①均衡国民所得はいくらになるか。 ②その時の貿易収支(B=X-M)はいくらか。 ③もし完全雇用にするには国民所得をあと100増加させなけ ればならない場合、財政支出をどれだけ増加(ΔG)すれば よいか。 ④その時の貿易収支はどうなるか。 ⑤同じ国民所得の増加が輸出増で達成されたときの貿易収 支はいくらか。 経済摩擦 • 国際収支のマクロ的視点 – 世界全体の貿易収支は常に均衡 • 黒字国があれば必ず赤字国がある – 近隣窮乏化政策(beggar thy neighbour policy) • 輸入制限、関税のもたらすもの – 報復の可能性 – 戦間期における国際貿易の収縮 • 利害の対立とブロック化
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